多発性内分泌腺腫症(multiple endocrine neoplasia: MEN)2A型(Sipple症候群)は甲状腺髄様癌に加え,副腎褐色細胞腫と副甲状腺過形成を合併することのある遺伝性疾患である.患者の手術は複数回に及ぶことが多く,手術順序,手術体位,告知の問題を含めた患者とその家族の精神ケアなどに注意を要する.今回,胆石症に伴う上腹部痛を契機にMEN2Aが発見され,両側副腎腫瘍(褐色細胞腫)摘出術,甲状腺全摘出術,胆嚢摘出術および総胆管切開術の3回の手術が短期間のうちに施行された患者の麻酔を経験した.複数回手術や遺伝性疾患の告知を念頭に入れた患者とその家族への精神ケアの重要性が示唆された.
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