日本臨床麻酔学会誌
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26 巻, 1 号
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日本臨床麻酔学会第24回大会 教育講演
  • 加藤 正人, 黒澤 伸
    2006 年 26 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      大侵襲手術によって, Interleukin (IL) -6をはじめとする各種の炎症性および抗炎症性サイトカインが誘導されることが知られている. また, それらのサイトカインに加えて, 好中球を遊走させるIL-8に代表されるケモカインと呼ばれる一群の炎症因子も手術侵襲により産生が増強され, 炎症細胞を局所に集積させる. これらの生体反応は適度な範囲であれば, 周術期の生体防御に有利に働くと考えられる. しかしながら, こうした反応がまったく制御されないままに過剰な生体反応として放置されると仮定すれば, むしろ免疫能をはじめとする生体防御能を抑制する方向に働き始める可能性がある.
      これらの知見を含めて手術侵襲により惹起される炎症反応について概説し, さらには揮発性吸入麻酔薬による免疫抑制作用の機序についての当教室の研究を紹介するとともに, injury-induced immunosuppressionについても展望する.
—日本臨床麻酔学会第24回大会 シンポジウム—
麻酔科医の緩和ケアを語ろう
  • 的場 元弘, 月山 淑
    2006 年 26 巻 1 号 p. 9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
  • 月山 淑, 畑埜 義雄
    2006 年 26 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      和歌山県立医科大学附属病院緩和ケア病棟は1999年5月, 大学・附属病院の統合移転に伴って新設された. 開設から2004年末までの緩和ケア外来受診患者 (新患数) 411名, 入院患者 (延べ数) 339名, うち60%が院内紹介患者である. 死亡退院患者は249名で, 病院全体の死亡者の約9%である. 当院緩和ケア病棟の特徴は, 院内紹介患者が多いこと, 病床数の割合からみて死亡患者が多いことである. 大学附属病院としての利点は, 症状緩和のために専門的処置を受けられることと, 医学部や保健看護学部学生の卒前・卒後教育を行えることである. 大学附属病院で緩和ケア病棟を運営していくには, 多くの問題点もあるが, 緩和ケアの普及のためにも意義は非常に大きいと考えられる.
  • 下山 直人, 村上 敏史, 高橋 秀徳, 中山 理加, 首藤 真理子, 下山 恵美
    2006 年 26 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      麻酔科医を出身母体として, 救急医療, 集中治療, ペインクリニックに転向する医師は多いが, 緩和医療に転向していく麻酔科医はいまだに少ない. その理由として, 緩和ケア病棟を中心としてきた日本の緩和ケアにおいては, 病棟での受け持ち患者制度に不慣れな麻酔科医が入り込みにくい現状がある. しかし, 最近の緩和ケアチームへの関心の高まりによって, 終末期だけでなく, 診断時から開始される緩和ケアが普及してきている. 麻酔科医が精通していることは, とくに治療に伴う急性痛に対して非常に有用であり, コンサルテーションにも慣れているため, 緩和ケアチームの緩和ケア医は麻酔科医が適任であると思われる.
  • 冨安 志郎, 北條 美能留, 中根 秀之, 龍 恵美, 松尾 久美, 澄川 耕二
    2006 年 26 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      緩和ケアチームの立ち上げを依頼され, コンサルテーション型のチーム活動を行っている. 紹介理由の87%が痛みの緩和であったが, 呼吸困難, 消化管閉塞, 適応障害などでの紹介もみられた. 活動開始2ヵ月後に行った職種別アンケート調査の結果から, 活動開始にあたっては, 一般病院での緩和ケアの必要性や意義について啓発していくこと, 病棟や主治医とのコミュニケーション方法を確立するさまざまな試みが必要と考えられた. 麻酔科医として緩和ケアチームに参加したが, もともとケアを中心とした医療に携わってきた麻酔科医は, 緩和ケアにおいて重要な役割を果たすことができると考えられた. また緩和ケアの習熟は麻酔の質向上にもフィードバックできると考えられた.
—日本臨床麻酔学会第24回大会 シンポジウム—
満足感を追求した麻酔 —とくに術前のケアマインド—
  • 岩崎 寛
    2006 年 26 巻 1 号 p. 34
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
  • 菊地 博達
    2006 年 26 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      1993年2月から2003年の12月までの期間週1回の頻度で外科系病棟のデイルームで手術室・麻酔教室を術前患者およびその家族を対象に実施してきた. 一般的な麻酔法, 麻酔の危険性・安全性, 患者の手術室入室までの手順を写真などを用いて説明した. 直接語りかけることにより直接患者からの質問に応えられ, 改善すべき問題点などの参考となった. 一方, 聞かれなかったことを含め, 患者自身からの種々の情報提供が必要であることを理解してもらった. 積極的に患者が自分の受ける医療に参加することにより, 患者自身が安全に医療を受けることができるとの啓発活動となった.
  • 村田 洋
    2006 年 26 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      子供が手術を受けると決まったとき, その手術の大きさにかかわらず, 児も親も麻酔や手術に対する不安感や恐怖感を感じるのは, 当然の感情である. それ故, 小児医療においては児の精神的愛護だけでなく, 親に対する精神的な援助も求められる. 麻酔科医や手術室看護師は, 手術前に患児や親と直接接触する機会を利用して, この不安感や恐怖感の解消のために努力するのも務めの一つである.
      われわれの施設の日帰り手術部門では, 児や親がとくに不安を感じたり, 求めていることを分析し, 実際の行動として以下のことを実践して効果を上げている. (1) 術前オリエンテーションの充実, (2) 音楽療法の取り入れ, (3) 母児同時入室, 親立ち合いによる麻酔導入, (4) 麻酔導入時の工夫 (キャラクターグッズの活用, 吸入麻酔薬への芳香の添加, 医療者側の服装) , (5) 術後の疼痛の緩和, (6) 帰宅後のフォローアップ. これらの確実な実践によって, 子供達にとって 「手術が楽しい思い出となるように」 を目指している.
  • 重見 研司, 水野 省司, 大西 佳子, 木村 命子
    2006 年 26 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      麻酔科医は, ケアマインドを基本姿勢にもち, 技術的な 「安全」 を確保したうえで, 術前の 「安心」 や 「快適」 な処置, そしてその後の 「満足」 を患者に提供できるように麻酔全体を計画する役目を担っている. 本稿では, 脳機能評価も含めた前投薬の意義づけと小児に対して最適量のミダゾラムを舌下投与するため, 鎮静が得られればそこで投与が中止される棒付きキャンディーを利用した工夫を紹介する. 術後のPCA (Patient-Controlled Analgesia) と同様に, 術前に鎮静を患児自身が調節する方法 (Patient-Controlled Premedication) として, このキャンディーの開発経緯や特性, 現在の使用状況, 今後の方向や問題点などを検討した.
  • 鈴木 昭広, 平井 裕康, 岩波 悦勝, 川向 みさき, 佐野 克敏, 舘岡 一芳, 朝井 裕一, 木村 仁美, 國澤 卓之, 横田 啓, ...
    2006 年 26 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      定期手術患者445名の手術室入室時に, 前投薬の有無, 術前点滴の有無, 入室時の服装, 入室方法 (歩行, 車椅子, ベッド) を自由に選択させる試みを多施設で行った. 前投薬は全体の40%が希望した. 前投薬を施行しない場合, 入室時の不安度を示すVASは有意に増加した. 血圧はどの群でも入室時に増加した. 歩行入室の場合, 心拍数も有意に増加したが臨床的に重要な変化とはいえなかった. 点滴の有無は脈拍数に影響しなかった. 今回の試みに対する満足感を示すVASは89±16mmと高値であった. 患者の希望を最大限尊重し, 叶えられない事項については十分に説明を行うことで患者の満足感を向上させることができ, 安全な入室が行えると考えられた.
原著論文
  • 羽場 政法, 小川 幸志, 堂城 真友子, 畑埜 義雄
    2006 年 26 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      血管拡張薬は低酸素性肺血管収縮を抑制し, 肺酸素化能を低下させる可能性がある. 硝酸薬としての作用と KATPチャネル開口薬としての作用を併せもったニコランジルの持続静脈内投与が肺酸素化能に及ぼす影響を, ニトログリセリンのそれと比較検討した.
      心筋虚血危険因子を有する非心臓手術症例50例において, 術中虚血予防のためニトログリセリンあるいはニコランジルを持続静脈内投与し, 動脈血酸素分圧に及ぼす影響を無作為, 前向きに検討した. 術中, 心筋虚血を呈した患者は認められなかった. ニトログリセリン投与により動脈血酸素分圧は有意に低下したが, ニコランジル投与ではそのような低下は認められなかった. 術中の心筋虚血予防目的でのニコランジル投与は, ニトログリセリンに比べ肺酸素化能への影響が少なく有用な方法と考えられる.
症例報告
第11回硬膜外麻酔研究会
  • 鈴木 利保
    2006 年 26 巻 1 号 p. 92-107
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      日常臨床で麻酔科医が頻繁に使用する種々の針について, その歴史, 構造, 使いやすさについて解説し, 理想的な針について考察した. 多くの針はメーカーが設計・製造を行い, 使用者である医師の主観的評価のみがあり, その特性が客観的に評価されていない. これらの針を用いた手技は, 生体にとって侵襲的であり, ときに多様な合併症を引き起こし, 死に至る例の報告もある. われわれ医師は, 用いる針の特性を十分に理解し, 合併症を起こしにくい器材を世に出す必要がある. その際には, 使いやすさをわれわれ自身が客観的に評価する必要がある. こうすることにより, 患者と医療従事者の安全が守られると考える.
  • 檀 和夫
    2006 年 26 巻 1 号 p. 108-114
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      止血は凝固系と線溶系という相反する作用をもつ機構とこれらの働きをコントロールしている凝固制御系, 線溶制御系というさらに精緻なメカニズムにより成り立っている. 止血は, 血小板による一次止血と, 凝固因子による二次止血, さらにこれらに引き続き起こる線溶により完了する. これらの止血機構に異常をきたす疾患および病態には, 血小板の数的・機能的異常, 先天性および後天性の凝固因子異常などがあるが, 手術および麻酔に際して最も注意を要するのは, さまざまな薬剤により引き起こされる止血異常であろう. とくに抗血栓療法に用いられる抗血小板薬, 抗凝固薬についてはその休薬時期, 開始時期を含めて慎重な対応を要する.
  • 中谷 俊彦, 齊藤 洋司
    2006 年 26 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      血液凝固異常時に硬膜外麻酔を行うかどうかの判断は, その有用性と合併症を認識して慎重に考慮することが必要となる. そのためには血液凝固異常の病態を把握することと, 止血機能に影響する薬剤の中止および変更についての知識を要する. そして, 各種凝固系血液検査の基準値を定めておき, 各施設での対応をマニュアル化しておくことが重要である. 静脈血栓塞栓症のリスクがある場合には, その予防のための抗凝固療法と硬膜外麻酔の併用について慎重に検討しなければならない. 硬膜外麻酔の施行においては, 各科主治医と連携をとり, 患者に対して硬膜外麻酔の有用性と起こりうる合併症について十分に説明を行い, 施行後の神経学的観察を慎重に行うことが大切である.
  • 小倉 明
    2006 年 26 巻 1 号 p. 120-127
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/01/24
    ジャーナル フリー
      硬膜外麻酔に伴う脊髄硬膜外血腫の発生頻度は穿刺150,000回に1例程度とされており, まれな合併症であるが, いったん発症すると対麻痺をきたすなど重篤な状態に進展する. 抗凝固療法を受けている患者に硬膜外麻酔および脊髄くも膜下麻酔を行う場合の, 薬物投与に伴う脊髄硬膜外血腫形成のリスクと休薬期間および麻酔実施の実際について, 米国局所麻酔学会 (以下ASRA) は2004年に改訂版を発表している. この指針作成については2002年のASRA Annual Spring Meeting において検討され, Horlockerら1) によりまとめられた. 本稿ではこの指針の概要を紹介し, それが本邦の現状に合ったものであるのか, あるいは独自の制約を受けるのか, その他問題点を検討した.
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