日本臨床麻酔学会誌
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26 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
日本臨床麻酔学会第25回大会 招聘講演
  • 佐藤 哲雄
    2006 年 26 巻 4 号 p. 339-346
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      NPO法人医療・麻酔安全普及協会を設立して2年が経過しました. この間, 第1に公開講座や医療相談を通し麻酔科を宣伝するとともに医療, 特に麻酔に関する情報を一般と共有することによって, よりよい医療のための啓発活動としてきました. 第2に会員のもつ経験, 知識, 技術を病院に提供したり仲介することを通して麻酔科のあり方を説明してきました. 第3の目的として, これからは将来の麻酔科医増員のため奨学金制度の開設や麻酔科開業への道を開きたいと思っています. このNPOはすべて会員のボランティア活動により支えられています.
日本臨床麻酔学会第25回大会 学術講演
  • 川口 昌彦, 古家 仁
    2006 年 26 巻 4 号 p. 347-352
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      脳神経外科麻酔に欠かせないスキルとして, 1) 脳神経外科領域における最近のトピックス, 2) 麻酔薬と軽度低体温による脳保護作用, 3) 脳機能モニタリングについて概説する. 最近のトピックスとして脳動脈瘤や脳出血の治療の変遷などは興味深い. 麻酔薬や軽度低体温の脳保護作用についても, その効果や限界, 臨床的有効性などの情報が必要である. 機能的予後温存のための, 運動機能や言語機能モニタリング, てんかん焦点同定なども必要とされるスキルであり, 麻酔薬との関連性についての理解が必要である.
  • 奥富 俊之
    2006 年 26 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      わが国の臨床産科麻酔では帝王切開術の麻酔が最も多く行われている. この麻酔を母児ともに少ない危険性で安全に行うためには, 確実な区域麻酔法の手技を身につけることが第一歩である. そのためには妊娠に伴う解剖学的, 生理学的変化をふまえ, 正確な位置への針の刺入法を修得することと, 妊婦の背景や病態, 施設の支援体制を考慮して, 適切な薬剤の選択を行うことが重要で, それにより, 適切な麻酔が確立される. 特にわが国の6割の施設で帝王切開術の半数以上に用いられている脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔の手技は, 単純に脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔を組み合わせたものではなく, 両者の相互作用を念頭に行う必要がある.
—日本臨床麻酔学会第25回大会 シンポジウム—市民の命を支える麻酔科; なぜわかってもらえない? 麻酔科の影はどこに?
講座
  • 長谷川 愛, 畑埜 義雄
    2006 年 26 巻 4 号 p. 383-388
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      大学病院での手術室運営の一環として, 小児日帰り麻酔と保護者同伴入室を導入した. 大学病院は教育機関としての役割を担っており, 一般病院と比較すると, 新しいシステムの導入にさまざまな制約を受ける. その制約の中での新たな患者サービスを目指したわれわれの試みについて報告する.
  • 辛島 大士
    2006 年 26 巻 4 号 p. 389-397
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      出張麻酔を生涯の職業として開業する場合, 麻酔科医としての独自性, 身分, 誇りの確保は無視できない最重要事項である. 周術期グループ医療の中で, 麻酔科医が外科医の補助ではなく, 麻酔科医として主体性をもった対等の立場で責任ある医療を患者に提供する唯一の手段は, 保険医療機関開設による 「対診型出張麻酔」 の選択にある.
      本稿では, 対診型出張麻酔の現状を辛島クリニックの実例で紹介し, 出張麻酔開業を選択する場合の麻酔科医の生き方, 職業意識について私見を述べる. さらに, 対診型出張麻酔の将来像として著者が提唱している 「センター麻酔科医療機関構想」 について解説する.
  • 輪嶋 善一郎
    2006 年 26 巻 4 号 p. 398-403
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      著者の所有しているデータをもとに, エスモロール, ランジオロールなどのβ1遮断薬に関して将来的な新しい臨床応用法を探ってみた. 臨床研究における結果として, (1) 高用量ランジオロールの投与は電気痙攣療法時に生じる急激な血圧上昇や心拍数増加の予防に有効であり, また, 痙攣時間も短縮せず, したがって治療効果を衰えさせる可能性が少なく, 電気痙攣療法時に使用される薬剤として推奨される. (2) ランジオロールの投与によりセボフルランを用いた1回深呼吸法 (single breath vital capacity rapid inhalation induction) による意識消失時間を短縮させる. (3) ヒトにおいてランジオロールはセボフルランの最小肺胞濃度を低下させる. 以上の3つの結果が得られた. この結果より, β1遮断薬が本来もつ心拍数減少作用のみを期待するだけではなく, その中枢神経に及ぼす作用, 麻酔薬の必要量を減少させる作用などを応用し, 将来的に周術期を通して新しい臨床使用法が可能と考える.
  • 押田 茂實, 勝又 純俊, 岩上 悦子
    2006 年 26 巻 4 号 p. 404-410
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      医療に関連して生じた事故を医療事故といい, 過失によって生じた医療事故を医療過誤という. 医事紛争になり, 患者側が裁判を提起すると, 医事裁判になる. 医療事故発生時には民事責任, 刑事責任, 行政処分等が問題になる. 平成16年には1,110件の医事関係民事訴訟が提起され, 405件の判決があった (そのうち, 患者側勝訴が39.5%) . 平成11年以降, 医療事故による医師や医療従事者に対する刑事判決は約90件弱であった. 医療安全管理体制の確立が求められており, リスクマネジメントが重要な課題となっている. ビデオやヒヤリ ハット劇などの具体的な実例に学んで, 事故を引き起こしやすい状況を改善することに多くの目が向くよう期待している.
原著論文
  • 田村 美貴, 阿部 伊知郎, 内田 治男, 河崎 純忠
    2006 年 26 巻 4 号 p. 411-417
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      携帯用超音波診断装置を用い術前・術後に大腿静脈血栓症のエコー検査を施行した. 予定手術時間2時間以上の患者62症例のうち, 術前より異常所見を認めた2症例を除き, 60症例 (男性29症例, 女性31症例) を検討した. 術後第1病日に異常所見を認めた症例は13症例 (男性7症例, 女性6症例) であった. ロジスティック回帰分析の結果, 術後異常所見の出現と有意な関連性を示す因子は, Body Mass Index, 砕石位, 麻酔時間であった. 肺動脈血栓塞栓症を疑わせる臨床症状を呈した症例はなかった. 大腿静脈血栓症のエコー検査法は, 非侵襲的で, 簡便かつベッドサイドで反復施行が可能であり, 麻酔科医が周術期に施行できる有用な下肢深部静脈血栓症の検査法と考えられる.
  • 上田 聡子, 中村 真之, 野上 裕子
    2006 年 26 巻 4 号 p. 418-428
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      女性麻酔科医 (331名) と男性麻酔科医 (300名) を対象に, 「女性麻酔科医が仕事をするうえでの障害, 特に社会的性別意識と育児負担」 について, アンケート調査を実施した. その結果, 「3歳までは母親がそばにいて育てた方がよい」 という『3歳児神話』について, 女性麻酔科医の39.5%, 男性麻酔科医の46.4%が 「気になる」 と回答した. また, 女性の育児負担は非常に大きく, 育児支援体制はまだ不十分と思われた. このような状況で女性麻酔科医が仕事を継続するためには, パートタイム制度や託児所以外の育児支援制度, 適正な労働報酬などが必要とされていた.
症例報告
紹介
  • 渋谷 正夫
    2006 年 26 巻 4 号 p. 438-443
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
      平成12年度から大腿骨頸部骨折の麻酔に大腿神経ブロックと外側大腿皮神経ブロックを併用したのを手始めに, 坐骨神経前方ブロックや坐骨神経傍仙骨ブロックを併用した全身麻酔で各種の下肢手術を行っている当院の現状を報告した. 下肢末梢神経ブロックは, 認知症や体位変換に伴う疼痛や褥創で断念することもなく簡単確実な手技で施行でき, 高齢者の全身状態や循環も安定し, 抗凝固療法や術後鎮痛の面でも有用な麻酔法の選択肢である. ロピバカインの登場や深部静脈血栓予防の抗凝固療法などで下肢末梢神経ブロック併用の麻酔に関心が集まり, 機材や研修の機会が欧米並みに増えてくれば, より安全な麻酔の選択肢として認知されるであろう.
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