日本臨床麻酔学会誌
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27 巻, 7 号
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—日本臨床麻酔学会第26回大会 シンポジウム—
麻酔科医はどこまで臓器保護に関与できるか?
  • 外 須美夫, 土肥 修司
    2007 年 27 巻 7 号 p. 587
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
  • 合谷木 徹
    2007 年 27 巻 7 号 p. 588-598
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      麻酔科医が脳保護に関与する場合には, 術中に脳虚血に陥る状況が予想される際や, すでに少なからず存在する脳虚血に対して, 脳保護効果を期待して周術期の管理を行うことが考えられる. 脳虚血に影響を与える生理的因子には, 低血糖, 高血糖, 高体温, 低脳灌流圧, および低二酸化炭素血症がある. 血糖に関しては, 170mg/dl以上の高血糖は脳障害を悪化させ, これは動物実験においてもヒトにおいても当てはまる. 体温に関しては, 低体温が脳保護効果に有用との報告があるが, 近年脳動脈瘤手術中の低体温が有用でないとの報告もある. 脳保護効果に関して, 動物実験において有用性が示された多くの薬物でも, ヒトに応用した場合には, 依然として明確に有用であるとは認められない状況である. 麻酔薬にはin vitro, in vivoにかかわらず脳保護効果があるとされてきた. しかし, イソフルランの脳保護効果は長期的にはみられないという報告があり, 遅発性脳障害に対する効果には疑問もあるが, イソフルランの脳保護効果はGABA-A受容体を介しているとの報告もあるため脳保護効果に有用であることは確かである. われわれは動物実験においてβ遮断薬の有用性を検討し報告した. さらにヒトにおいても有用性が示唆されるが, 結論には今後の検討が必要である. ナトリウムチャネルブロッカーのリドカインも多くの研究がなされ, 脳保護効果があるとされる. 以上より, 脳保護のためにできることとして, まず病態を把握して脳灌流を適正に維持し, 脳機能を悪化させる要因の排除が必要であり, 可能な脳保護法を適切に選択することが重要である.
  • 飯田 宏樹
    2007 年 27 巻 7 号 p. 599-607
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      麻酔科医は脊髄保護のために, 脳脊髄液圧のコントロールを含めた適正な脊髄灌流圧の維持という重要な役割を担う. 脊髄血管の反応性の特徴を知ることは, 脊髄循環を適正に維持するための助けとなる. また, 循環作動薬の投与, 虚血再灌流, 血液・脳脊髄関門の破綻, 低体温等が脊髄循環を修飾するため配慮が必要である. 薬理学的脊髄保護に加えて低体温も併用されるが, いまだ完全には解決されない臨床的な課題である. 一方, 短時間の先行する非致死的な虚血に引き続いて起こる, より長時間の虚血に対する抵抗性を示すプレコンディショニングと呼ばれる現象は, 脊髄でも認められる. この臓器保護効果は非常に強いものであり, 従来の脊髄保護法に加えて臨床への導入が期待される.
  • 植木 正明
    2007 年 27 巻 7 号 p. 608-612
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      周術期の虚血性腎障害に対する腎保護戦略を立てるには, まず腎臓の生理, 特に腎循環の特徴を理解し, 低血圧および低酸素により急性尿細管壊死に進展する病態と急性腎不全の病態生理を理解する. 次に腎虚血を伴う手術, 特に大血管手術, 人工心肺を伴う心臓手術による腎臓への影響, 高血糖による腎虚血への影響などを理解し, 腎毒性物質 (造影剤, 免疫抑制剤など) の術中使用を可能なかぎり回避する. 虚血性腎障害に対する腎保護戦略のためには術中の適切な輸液管理, 酸素化のみならず, 手術に応じた適切な薬物療法を行うことが重要である.
—日本臨床麻酔学会第26回大会 イブニングディスカッション—
今後,筋弛緩薬の使い方はどうなる?
  • 小田切 徹太郎
    2007 年 27 巻 7 号 p. 613
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
  • 中塚 秀輝, 佐藤 健治, 竹内 護, 森田 潔
    2007 年 27 巻 7 号 p. 614-619
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      麻酔導入時の筋弛緩薬は現在ベクロニウムが用いられることが多い. スキサメトニウムはその副作用から敬遠される傾向にあるものの, 1分程度で挿管可能となるため急速導入時に依然として広く使用されている. ロクロニウムは欧米ではすでに10年以上前から臨床使用され, 挿管までの時間をスキサメトニウムと同程度に短縮することが可能な非脱分極性筋弛緩薬であるが, 投与量の増加により作用持続時間は延長する. スガマデクスは, 抗コリンエステラーゼ薬とはまったく別の薬理作用で, ロクロニウムまたはベクロニウムによる神経筋遮断を迅速に拮抗する. 深い筋弛緩状態からの回復が可能となり, 筋弛緩薬の使用法を大きく変化させる可能性がある.
  • 小竹 良文
    2007 年 27 巻 7 号 p. 620-630
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      麻酔維持における神経筋遮断薬の意義は, 手術操作に必要な筋弛緩を麻酔深度とは独立して調節できる点であり, 今後も神経筋遮断薬によって術中の筋弛緩を調節する必要性は存在すると予想する. 本稿出版時には使用可能となっているであろうロクロニウムの作用持続時間はベクロニウムと同程度であるとされており, ロクロニウムが登場しても維持に関しては現状の使用方法を大きく変える必要はなさそうである. また, 投与されたロクロニウムの大部分は肝臓から代謝されることなく排泄されるとされており, ベクロニウムと比較して, 長期間投与の際の蓄積性, 肝機能障害, 腎機能障害における作用時間の延長などのリスクは少ないものと予想される.
  • 鈴木 孝浩
    2007 年 27 巻 7 号 p. 631-638
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      スガマデクスは臨床麻酔において“革新的”な薬物となることは間違いない. ロクロニウム分子との間に1: 1のホスト-ゲスト複合体を形成し, 筋弛緩に拮抗するという点で本来の特異的拮抗薬といえる. その拮抗作用は迅速かつ確実で, ロクロニウム投与直後の深部遮断時にも1~2分で完全拮抗が可能である. 副作用がないため, 投与禁忌となる症例もない. 本薬の臨床使用が可能になれば, 挿管困難時の対処が容易になるとともに, 術後筋弛緩遷延に基づく呼吸器合併症の発生率は減少するはずである. 近い将来, ロクロニウムとスガマデクスのコンビネーションは, 患者の安全に確実に貢献するであろう.
—日本臨床麻酔学会第26回大会 ランチョンセミナー—
麻酔科研修におけるTIVA/TCI教育の意義
  • 小板橋 俊哉
    2007 年 27 巻 7 号 p. 639
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
  • 七野 力
    2007 年 27 巻 7 号 p. 640-644
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      初期研修期間中にTIVA/TCI教育を行うことは, 研修医の麻酔に対する興味をより高める効果が期待でき意義のあることだと考えている. 段階を踏んで指導することによりスムーズに学ぶことができる. 反面, 少ない常勤医でTIVA/TCI教育を行うことは指導医に大きな負担を強いることになる.
  • 森本 康裕, 歌田 浩二
    2007 年 27 巻 7 号 p. 645-651
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      厚生労働省のアンケート調査によると, 大学病院は他の臨床研修病院と比べて研修体制についての満足度, 研修プログラムについての満足度ともに低い. TIVA/TCIの教育が, プライマリケア重視という面からも研修医教育にとって重要であり, またこれにより麻酔のおもしろさを伝え興味をもってもらうことが可能になると考えている. 大学病院でしか経験できない症例を生かした研修プログラムを実施することで, 満足度を高めていくことが重要になる. わが国では約1/3の麻酔科医が主としてTIVAで全身麻酔を行っているにすぎない. TIVA/TCIポンプや脳波モニターの普及とともにTIVA/TCIに精通した指導医の養成が重要となる.
  • 小板橋 俊哉
    2007 年 27 巻 7 号 p. 652-657
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      プロポフォールTIVA/TCIの使用実態調査を行った. その結果, 手術の種類にもよるが開胸手術, 心臓外科手術ではTIVA施行頻度が50%以上であった. TIVAを躊躇する理由は 「吸入麻酔の方が調節しやすい」 と 「吸入麻酔の方が使い慣れている」 が多かった. また, 覚醒遅延の経験もTIVAを躊躇させていた. 日本麻酔科学会の教育ガイドラインによると, プロポフォールによるTIVAの行動目標について, 「プロポフォールを用いて全静脈麻酔ができる」 と記載されていることから, 研修医教育を行ううえでプロポフォールTIVA/TCIは必須である. 当施設のTIVA/TCI教育の実際を示し, それにより得られる効果を考察した.
講座
  • 高橋 麗子
    2007 年 27 巻 7 号 p. 658-664
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔 (以下, 脊硬麻. combined spinal-epidural anesthesia: CSEA) は, 脊髄くも膜下麻酔 (脊麻) と硬膜外麻酔 (硬麻) を同時に行う方法であり, 速く確実な麻酔で, かつ, 長時間手術や術後鎮痛にも適用できる. Needle-through-needle法で知られている一ヵ所穿刺法は, 熟練しないと不成功率が高く, 硬膜外カテーテルのくも膜下腔への迷入, 硬膜外腔からくも膜下腔への薬液の移行などの問題があり, 二ヵ所穿刺法は, 2回の穿刺を必要とする. おのおのの特徴を知り使い分けることが望ましい. 脊硬麻で硬麻の広がりが速いのは, 硬麻によりくも膜下腔が狭められ, くも膜下腔の局麻薬が頭側へ広がるためである. 脊硬麻が, より確実で低侵襲な区域麻酔として確立されることを期待する.
  • 金 徹
    2007 年 27 巻 7 号 p. 665-674
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      主な補助循環には大動脈内バルーンパンピング (IABP) , 経皮的心肺補助 (PCPS) , 左心あるいは右心バイパスがある. 特に麻酔科医が習熟する必要があるのはIABPとPCPSである. IABPはdiastolic augmentationとsystolic unloadingの二つの効果による冠動脈, 腎動脈などの流量増加と後負荷の軽減を目的とし, PCPSは循環ポンプと人工肺を用いた閉鎖回路による流量補助を目的とする. それぞれの特徴と管理上の注意点について麻酔科医に必要な事項を説明する. 循環動態の安定化と全身の酸素化, 危機管理と安全確保が補助循環作動時の麻酔科医の役割である.
総説
  • 滝口 鉄郎, 山口 重樹, 北島 敏光
    2007 年 27 巻 7 号 p. 675-683
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      Neuraxial anesthesia[脊髄くも膜下麻酔 (脊麻) や硬膜外麻酔 (硬麻) ]に関連する脊柱管内の形態学的な問題については, これまであまり注目されることがなかった. 筆者らはミエログラフィを用いて研究を行い, 脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔 (脊硬麻) 時の硬膜外腔容量効果を明らかにした. さらに, 硬膜外注入や妊婦で起こる脊柱管内の変化を脊髄MRIを用いて観察した. 次に, 筆者らは体位変換に伴って脊髄馬尾神経がくも膜下腔内で移動することを, MRIおよび献体を用いた脊髄の解剖を行い確認した. この馬尾神経の動きは成人と小児で違いがみられた. 本稿では, これらの脊柱管内の現象について概説する.
症例報告
  • 平石 舞, 大黒 倫也, 飛田 俊幸, 馬場 洋
    2007 年 27 巻 7 号 p. 684-688
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      赤血球輸血用カリウム吸着フィルター使用中に著しい低血圧をきたし, 原因としてフィルターの関与が疑われた5症例を経験した. 血圧低下は輸血開始直後や輸血速度を速くした直後に起こり, 昇圧薬投与で比較的速やかに回復するのが特徴である. カリウム吸着フィルターは急速輸血が必要である場合など術中の循環動態の変動が激しい症例での使用が多く, フィルターの使用と低血圧との因果関係を証明することは困難である. 白血球除去フィルターや微小凝血塊除去フィルターによる血圧低下が過去に報告され, フィルターと血液との接触により血管拡張物質が産生されることがその原因とされている. カリウム吸着フィルターで同様の現象が起き, 低血圧の原因となった可能性がある.
  • 真弓 雅子, 佐藤 重仁
    2007 年 27 巻 7 号 p. 689-692
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      82歳, 女性. 身長142cm, 体重49kg. 胆石症に対して, 腹腔鏡下胆嚢摘出術が予定された. 気腹前の呼気終末二酸化炭素分圧 (EtCO2) は34mmHgであった. 気腹開始後からEtCO2は上昇し, 気腹開始1時間後には75mmHgに上昇した. このとき, 胸部, 上肢, 頸部, 下顎に及ぶ皮下気腫を認めたため, 気腹を中止した. 動脈血液ガス分析値はpH 7.03, PaCO2 111mmHg, PaO2 148mmHg, BE-5mmol/Lと著明な呼吸性アシドーシスを示していた. 人工呼吸を続けたところ, PaCO2は徐々に低下し, 開腹手術に変更し約40分後に手術を再開した. 高齢女性の気腹手術中は皮下気腫を伴う高二酸化炭素症の発生に注意する必要がある.
第13回日本麻酔・医事法制(リスクマネジメント)研究会
  • 木内 淳子
    2007 年 27 巻 7 号 p. 695
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
  • 池田 典昭
    2007 年 27 巻 7 号 p. 696-703
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      医療事故の再発防止のためには情報開示が必要であり, 原因調査のために死体はすべて解剖するべきである. それがなされていないため, 同じ事故が繰り返される. 公平性の担保という意味からは, 司法解剖には一定の意味があるが, 結果が公表されないという点で, 医療側・遺族側いずれにとっても問題がある. 法医解剖のなかの承諾解剖は, 家族の許可を得て遺体を解剖し, 結果を公表するもので, 解剖の主体が法医である以外, 病理解剖と差がない. 公平性を担保しながら, 原因追求をする一つの方法と思われる. また, 第三者機関による死因調査のシステムとして, 厚生労働省が推進しているモデル事業を簡潔に紹介する.
  • 後藤 貞人
    2007 年 27 巻 7 号 p. 704-712
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      (1) 医療への警察の介入: 消極説・積極説両方があるが, 今後警察の介入は増加していくと考えられる. (2) 刑事訴追の流れ: 告訴・告発, 医師法21条による届出を受けて, 警察による捜査が始まる. 捜査は任意捜査と強制捜査があり, 強制捜査は, 逮捕や書類の押収を伴う. 検察の判断により起訴される. 刑事被疑者・被告人の主要な権利として, 黙秘権と弁護人依頼権があり, 事実上の義務としては取調べ受忍義務がある. (3) 刑事訴追実例: 硬膜外麻酔による死亡事故について, 過失とされた事例をあげ紹介する. (4) 医師としての防御: 記録の改竄をしない, 関係者の辻褄合わせをしない, 事実を正確に供述する. 率直であることが最大の防御である.
  • 江原 一雅
    2007 年 27 巻 7 号 p. 713-718
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      医療事故対応の基本的考え方として, 1) 隠蔽をせず早期に説明すること, 2) 公正な調査による原因究明と説明責任を果たすこと, 3) 再発防止策を実行し検証すること, が必要である. 本院では平成12年以降, 医療安全管理体制と医療事故発生後の対応に関してさまざまな改革を行ってきた. 現行の医師法21条, 警察への報告制度や刑事罰の制度はさまざまな弊害や問題点も指摘されている. 刑事訴訟, 民事訴訟は増加し医療者にとってはますます厳しくなると思われるが, 医療機関は自ら自浄作用を示すことが, 結果的に当事者や医療機関を守り, 制度改革につながると信じる.
  • 井上 聡己, 佐々岡 紀之, 高橋 正裕, 古家 仁
    2007 年 27 巻 7 号 p. 719-722
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      硬膜外カテーテル留置時にカテーテル切断を生じ, 体内遺残とした症例を経験したが, その際の患者への対応の経緯を報告する. 子宮脱の診断を受け, 開腹術が予定された. 全身麻酔, 硬膜外麻酔およびその合併症について本人ならびに家族に説明した. その際, カテーテルの切断の可能性について説明しなかった. 硬膜外麻酔を施行したが, カテーテルが体内に12.5cm残し切断された. 本人と家族の同意のもと, 小切開にて摘出を試みたが発見できず終了した. 神経症状が出ていないため経過観察をする方針を勧め, 患者・家族も希望された. 以後1年ごとのフォローで異常は認めていない. これらの経過中, 患者は 「硬膜外カテーテルの切断による体内残留について麻酔前に説明が行われなかったことについての不満ならびに硬膜外カテーテル体内残留による精神的不安に対してどうするのか」 といったクレームを発し, 患者・家族と病院側との相談により補償を行った.
  • 吉富 修, 趙 成三, 前川 拓治, 原 哲也, 槇田 徹次, 澄川 耕二
    2007 年 27 巻 7 号 p. 723-727
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      中心静脈カテーテル挿入は, 救急・集中治療領域において欠かすことのできない処置の一つであるが, 近年, そのカテーテル挿入・留置・管理に伴う事故はインシデント・アクシデントレポートとして取り上げられることも多い. 今回, 中心静脈カテーテルを挿入し, 4日後に椎骨動脈への誤挿入が判明した症例を経験した. 明らかな神経学的合併症を併発することはなかったが, 動脈穿刺, 動脈への薬剤誤注入などの機械的合併症は, 時に重篤な事態に至ることもある. そのため中心静脈カテーテルの挿入・留置に関する統一された適切な確認方法を確立し, また施行する医師も正しい知識, 合併症に対する認識を身につけることが重要である.
  • 木内 理子, 石山 忠彦, 小口 健史, 樫本 温, 松川 隆
    2007 年 27 巻 7 号 p. 728-731
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      過去8年間に当院麻酔科で発生した薬剤関連インシデントの内容と対策, 年間総数の推移について調査した. 薬剤関連インシデントは, 調剤ミス, 投与量の過誤, 薬剤シリンジの取り間違いが多かった. 対策として2001年に薬剤ラベルのシリンジへの貼付を導入した. これにより薬剤関連インシデントは減少したが, ゼロにはならなかった. そこで, 卒後臨床研修医マニュアルを作成し, 薬剤の投与法を記載し, 投与の際には上級医の指導を受けることとした. この結果, 2006年は8月現在で薬剤関連インシデントは1件と著明に減少した. 薬剤関連インシデントを防ぐためには, 薬剤ラベルの貼付だけでは不十分であり, 複数の麻酔科医の介在が必要である.
  • 青井 良太, 野坂 修一
    2007 年 27 巻 7 号 p. 732-735
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/07
    ジャーナル フリー
      当院において腹臥位手術の際, 顔面の皮膚損傷が発生し, 術後麻酔科外来にてトラブルとなった症例を経験した. 腹臥位手術に関しては, 循環器系や呼吸器系への影響はよく論じられるが, 顔面の皮膚損傷についての言及は少ない. 腹臥位手術時の皮膚損傷リスクおよびその対処法について検討を行った. また術前診察時に美容にかかわる合併症についてふれることの必要性に言及した.
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