日本臨床麻酔学会誌
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27 巻, 3 号
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日本臨床麻酔学会第25回大会 学術講演
  • 斎藤 祐司
    2007 年 27 巻 3 号 p. 197-206
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      一般に, 筋弛緩モニターは手の母指で行うが, 腹臥位で行われる手術に際しても, 患者の大腿下部内側において, 簡単に筋弛緩モニターを施行できる. 糖尿病患者では, ベクロニウム投与後, 筋力回復が遅延するが, 全静脈麻酔を選択すれば, 筋力の回復は遅延しない. また, 糖尿病患者では, 残存筋弛緩効果に対するネオスチグミンによる拮抗効果が劣る. 高コレステロール血症患者でも, ベクロニウム投与後の筋力回復が遅れる. ウリナスタチン, メシル酸ガベキサート, ニコランジル, ミルリノン, アミノ酸輸液を投与すれば, ベクロニウム投与後の筋力の回復が早まる. 女性患者はネオスチグミンに対して男性患者よりsensitiveなので, ネオスチグミンを投与して筋弛緩に拮抗させた場合, 女性患者では筋力が十分に回復することが多い.
  • 赤田 隆, 泉 薫, 吉野 淳, 白水 和宏
    2007 年 27 巻 3 号 p. 207-217
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      揮発性麻酔薬による全身麻酔導入に伴い, 血行動態は多少なりとも変動する. 特に, 心血管系機能が低下している高齢患者や心疾患, 動脈硬化, 高血圧, 糖尿病などを有する患者では, 時に血行動態は大きく破綻することがある. 最も顕著な変化は全身性低血圧であり, 重要臓器血流は低下する. その機序として交感神経系抑制作用や心血管系への直接作用に起因する心筋収縮性低下や末梢血管拡張があげられる. 本稿では, 全身抵抗血管において交感神経系伝達物質として体血管抵抗の維持に中心的役割を演じるノルアドレナリンに対する血管応答に及ぼす揮発性麻酔薬の直接作用に関して, 特に, 加齢, 高血圧, 糖尿病に伴う変化に注目して概説する.
講座
  • 射場 敏明, 神山 洋一郎, 水嶋 章郎
    2007 年 27 巻 3 号 p. 218-224
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      術後急性肺障害 (肺損傷) の病理組織像は, 肺にび漫性に生じる肺胞内硝子膜形成, フィブリン析出, 炎症細胞浸潤, 肺胞上皮障害および間質における炎症細胞浸潤と浮腫性変化などに特徴づけられる. これらはいずれも完成された病理像であるが, これらに至る過程を生体顕微鏡下に観察すると, 急性肺障害の発生過程においては活性化好中球の果たす役割がきわめて大きいことが明らかになった. したがって, 急性肺障害の管理においては, 肺保護戦略に準じた呼吸管理とともに, 好中球エラスターゼ阻害薬を用いた薬物療法による微小循環保護が必要と考える.
  • 貝沼 関志
    2007 年 27 巻 3 号 p. 225-233
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      手術室だけでなく救急集中治療領域でも働く麻酔科医のために, 急性期モニタリングの最近の進歩を中心に概説する. 比較的新しい情報として, 吸入および静脈麻酔薬濃度モニタリング, 運動誘発電位 (MEP) モニタリング, 尿酸素分圧モニタリング, 肝静脈血酸素飽和度モニタリング, 連続心拍出量モニタリング, 持続血糖モニタリング, 麻酔中の中枢神経系モニタリングの最近の進歩について述べる. さらに, 救急集中治療領域で最近広く行われている頭蓋内圧モニタリング, 腹腔内圧モニタリング, 活性型トロンボエラストグラフィーについても述べる. 麻酔・救急集中治療分野は, 本質的に急性期の患者を絶え間なく診療するという性格をもっており, 今後のモニタリング技術の開発と進歩の中枢部分を担うことが期待される.
  • 鈴木 昭広
    2007 年 27 巻 3 号 p. 234-241
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      ブラード型喉頭鏡 (BuLS) は気道の解剖に基づきデザインされた, 内視鏡を有する喉頭鏡である. 頸部を中立位に保ったまま, 頸部や気道周辺の組織にほとんど外力を加えることなく声門にアプローチできる. 挿管困難対策の道具は数多くあるが, 多くは手技のなかに盲目的, あるいは半盲目的操作を伴う. BuLSの重要なポイントは “声門観察下に挿管が可能な点” である. 麻酔科医は盲目的に気管チューブを押し込むような挿管方法を第一選択とすべきではない. 挿管が成功しても, 声門など組織への外力の結果, 抜管困難や合併症を生んでは意味がない. BuLSは今日まで20年近く, 本邦唯一の声門観察下の挿管が可能な器具としてその重要性を説いてきたが, 時代を先取りしすぎたために正当な評価を受けてこなかった往年の名器具である. 本稿では, BuLSを極めるためのコツを紹介する.
原著論文
  • 田邉 孝大, 福崎 誠, 寺尾 嘉彰, 藤永 有博, 安藤 優子, 山下 和範
    2007 年 27 巻 3 号 p. 242-245
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      トラキライト™ による気管挿管が術後咽頭痛, 嗄声の発生率に及ぼす影響を検討し, 喉頭鏡の場合と比較した. 腰椎手術を予定された患者105例を対象とし, 両挿管法に熟達した麻酔科専門医がトラキライト™ , あるいは喉頭鏡のいずれかの方法 (トラキライト™ 使用群: 45例, 喉頭鏡使用群: 60例) で挿管を行い, 術後1日目に咽頭痛, 嗄声の有無を調べた. 嗄声の発生率は両群間で有意差を認めなかったが, 咽頭痛の発生率はトラキライト™ 使用群 (8例, 17.7%) が喉頭鏡使用群 (3例, 5.0%) より有意に高かった. その原因として, 咽喉頭への接触刺激が頻回であったためと考えられた.
  • 久利 通興, 谷上 博信, 神原 紀子, 岸 義彦
    2007 年 27 巻 3 号 p. 246-252
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      手術後硬膜外腔に投与したモルヒネ (3mg/日) とフェンタニル (0.5mg/日) の鎮痛効果と副作用, およびドロペリドール (1.25mg/日) 併用の効果について前向きに検討した. 177名を対象とした. モルヒネとフェンタニルでは, 鎮痛効果はほぼ同等であったが, フェンタニルで補助鎮痛薬を使用した頻度が高かった. 嘔気・嘔吐およびかゆみの発生頻度と重症度は, モルヒネとフェンタニルで違いはなく, ドロペリドールの併用で低下する傾向が認められた.
  • 蒋 奕江, 白石 義人, 青木 善孝, 佐藤 重仁
    2007 年 27 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      [目的]この研究の目的は, 仰臥位から側臥位に体位変換することにより気管支腔から気管支カフの逸脱を示唆する, 気管支カフ圧の減少値を調べることにある.
    [方法]全身麻酔導入後, 二腔気管チューブ (DLT) で気管挿管した (n=18) . DLTの位置を気管支ファイバースコープで確認した後, 気管, 気管支両方のカフが漏れのないよう最少量の空気を注入した. 両側のカフ圧変化は仰臥位から側臥位に体位変換後に記録した. 気管支カフの位置を気管支ファイバースコープで確認し, カフの逸脱の程度とカフ圧の変化の関係について調べた.
    [結果]気管カフ圧は仰臥位で21.2±2.4cmH2Oから側臥位で15.2±7.8cmH2O (平均±SD, P=0.003) に減少した. 6症例では急速に10cmH2O以上のカフ圧減少を認め, 6症例すべてで気管支腔から気管支カフが逸脱しているのを認めた.
    [結論]二腔気管チューブ (DLT) の気管支カフ圧は仰臥位から側臥位の体位変換で減少した. 気管支カフ圧の急速な減少 (10cmH2O以上) は気管支腔からの気管支カフの逸脱によるものであった. 気管支カフ圧の持続的なモニタリングは気管支カフの逸脱を検知するのに有用である.
症例報告
  • 一ノ宮 大雅, 原 哲也, 橋口 英雄, 趙 成三, 澄川 耕二
    2007 年 27 巻 3 号 p. 259-263
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      小児にはまれなplastic bronchitisに対する麻酔管理を経験した. 症例は11ヵ月の男児で, 発熱と犬の鳴き声様の咳嗽を主訴に来院. 胸部CTで右中下葉の無気肺を認めたが, 明らかな異物は指摘できなかった. 全身麻酔下に気管内精査および異物除去術が施行された. 気管支ファイバースコープで観察し, 右中下葉枝に白色の粘稠物を発見したが, 異物の除去は非常に困難で, 計20回に及ぶ硬性および軟性鏡による操作を必要とした. 最終的に, 右中下葉分岐部から末梢気管支まで連続する, 気管支の鋳型様の粘液栓を摘出した. 術後は集中治療室で管理し, 合併症なく退院した. 異物はplastic bronchitisと診断された.
  • 諏訪 一郎, 奥田 隆彦, 二川 晃一, 岩崎 英二, 白井 達, 古賀 義久
    2007 年 27 巻 3 号 p. 264-267
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      開心術後, 冠橋義歯脱落による気管内異物症例を経験した. 異物は内視鏡下にバスケット鉗子を用いて除去した. 手術によるストレスや覚醒過程の繰り返しが歯軋りの原因となり脱落に至った可能性がある. 抜管前に口腔内異物の有無を確認することは重要である. また, 抜管後に咳嗽を伴う急激な呼吸状態の悪化がみられた場合, 気管内異物の存在を要因として念頭におく必要がある. とりわけ長期挿管患者では, 歯軋りの反復でバイトブロックに接触する歯や補綴物が気管内異物となる危険性がある.
  • 中里 桂子, 本郷 卓, 金 徹, 寺嶋 克幸, 竹田 晋浩, 坂本 篤裕
    2007 年 27 巻 3 号 p. 268-272
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      抜管後, 上部気道閉塞による換気不全をきたし, negative pressure pulmonary edema (NPPE) を発症した2症例を経験した. <症例1>55歳, 女性. 関節リウマチ, 肥満があり, 麻酔導入時換気困難となり, 手術終了後ラリンジアルマスクを抜去すると上部気道閉塞を生じた. <症例2>58歳, 男性. 睡眠時無呼吸, 挿管困難があり, 手術終了後抜管すると上部気道閉塞を生じた. 両症例とも過度の吸気努力の結果, 強い胸腔内陰圧が生じ, NPPEを発症したと考えられる. 症例1ではnoninvasive positive pressure ventilation, 症例2では気管挿管によるPEEPを用いた呼吸管理により, 経過は良好であった.
  • 道幸 由香里, 小川 幸志, 中田 亮子, 水本 一弘, 畑埜 義雄
    2007 年 27 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      大量出血に対し, 照射MAP加赤血球濃厚液急速投与を行ったところ, 高カリウム血症から心停止に至った症例を経験した. 症例は68歳, 女性. 大量出血による血圧低下のため, 輸血速度を80ml/minに速めたところ, 心電図上QRS幅の延長に引き続き心停止に至った. ただちに胸骨圧迫心マッサージを行い, 塩化カルシウムと炭酸水素ナトリウムの投与で洞調律に復帰した. 心停止直前の血清K値は8. 3mEq/Lであった. 投与したMAP血のK値は45mEq/L (照射後11日) であったため, 以後の赤血球輸血には自己血回収装置 (Cell Saver) を用いて照射血を生理食塩水で洗浄したものを用いた. Cell Saverにより作製した洗浄照射赤血球の輸血は, 高カリウム血症の回避に有効であった.
  • 大森 亜紀, 杉本 一久, 岩橋 静江, 山田 伸, 伊良波 浩, 畑埜 義雄
    2007 年 27 巻 3 号 p. 278-281
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/28
    ジャーナル フリー
      全身麻酔下腰椎手術において, C1インヒビターの補給なしで周術期に血管浮腫をきたさなかった遺伝性血管神経性浮腫 (hereditary angioneurotic edema, 以下HANE) 患者の麻酔を経験した. HANEはC1インヒビターの遺伝的欠損疾患であるが, しばしば喉頭浮腫を再発する. HANE患者の周術期の浮腫予防にC1インヒビターや新鮮凍結血漿の補給が重要とされている. 本患者の浮腫はダナゾールで抑制されていた. 今回の症例はダナゾールなど他の治療で浮腫が防止できている場合, HANE患者の周術期管理においてC1インヒビターの予防的補給は必ずしも必要でないことを示唆している.
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