日本臨床麻酔学会誌
Online ISSN : 1349-9149
Print ISSN : 0285-4945
ISSN-L : 0285-4945
28 巻 , 2 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
日本臨床麻酔学会第26回大会 招待講演
  • 和泉 幸俊
    2008 年 28 巻 2 号 p. 191-202
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      術中覚醒とは術中に意識が回復する事態だが, 術後記憶が保持されれば外傷後ストレス障害に帰着しうる. よって術中覚醒について論じる場合, 使用される麻酔薬の記憶に対する薬理作用が明らかにされなければならない. 記憶の実験的モデルである海馬の長期増強 (LTP) の誘導を後からの投与で阻止するものとしては代謝性グルタミン酸受容体の拮抗薬があるが, 術中覚醒時の使用が論議されるベンゾジアゼピンよりも, 術中覚醒後の記憶形成の阻止には有用かもしれない.
—日本臨床麻酔学会第26回大会 シンポジウム—脊髄鎮痛は何を満たしてくれるのか?
  • 齊藤 洋司
    2008 年 28 巻 2 号 p. 203
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
  • 相田 純久
    2008 年 28 巻 2 号 p. 204-216
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      硬膜外鎮痛法は周術期や慢性・急性疼痛の管理に有意義である. 使用される薬剤はモルヒネが主流であるが, さまざまな薬剤が試用され, その評価もさまざまである. 硬膜外投与された薬剤は拡散して脊髄に作用するため, 血液脳関門は関与しない. 脊髄には多数のμおよびκ受容体が発現しているが, モルヒネなどのμ作動薬に比較してκ作動薬は副作用が少なく, 安全性が高い. それ故, 硬膜外κ作動薬は有意義な鎮痛法であり, 全身の鎮痛 (頭部・顔面に対しては頸部硬膜外鎮痛で可能) に応用できる. 一方, NMDA拮抗薬は, 痛覚過敏や中枢性感作などの疼痛の促通・増幅を抑制し (鎮痛とは異なる) , オピオイドとの相乗作用や耐性・依存性抑制作用がある (オピオイドの補助薬としての適応) . しかし, 一次求心性インパルスをブロックしないためNMDA拮抗薬に脊髄性鎮痛作用は期待できない. 全身投与によるNMDA拮抗薬は上位中枢神経系の統合機序に影響すると考えられ, 中枢痛・視床痛などには効果が期待できる. しかし, 硬膜外NMDA拮抗薬の効果は脊髄に限られるので, 全身投与に優る効果は期待できない. ケタミンについて考えると, この薬剤は作用特異性が低く, 多彩な効果が期待できる. これにより, 大量投与で全身麻酔作用が, 少量投与で鎮痛作用が現われると考えられる.
  • 川真田 樹人
    2008 年 28 巻 2 号 p. 217-227
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      脊髄鎮痛法は, 脊髄レベルでの鎮痛効果を最大限に発揮し, 薬物の全身作用による副作用の発現を軽減するという利点を有し, これまでも多くの疼痛状態に用いられてきた. 今後, さらに脊髄鎮痛を発展させるためには, 臨床に即した疼痛モデルの開発・使用と, 臨床に応用可能な研究デザインが不可欠である. そこで, 臨床上最も頻度の高い急性痛の一つである術後痛のメカニズムをラット術後痛モデルで検討し, 術後痛に対する脊髄鎮痛の戦略について考えてみたい.
—日本臨床麻酔学会第26回大会 シンポジウム—今求められている硬膜外麻酔
—日本臨床麻酔学会第26回大会 パネルディスカッション—女性麻酔科医だからできること
  • 御村 光子
    2008 年 28 巻 2 号 p. 247-251
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      今回のパネルディスカッションはこれまでと異なり, 麻酔科領域の仕事に 「女性であることが逆に有利ではないか」 という視点で企画された. 事前の調査では麻酔科関連の仕事に女性が 「向いている」 との意見が優勢であった. 現状では女性の方が育児・介護等を通じて社会とのかかわりが強く, これらの生活上の経験がインフォームドコンセント, 小児麻酔, 緩和医療に生かされる. また, 患者としての経験が臨床麻酔上, 一層の力となりうる. 麻酔科関連の仕事が真に両性にとって働きやすい領域であるために解決すべき問題も多いが, 女性医師を取り巻く環境は必ずしもハンディキャップとなるものではない.
  • 中村 久美
    2008 年 28 巻 2 号 p. 252-258
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      男女差は生物学的要因だけでなく社会的要因にもよっている. 女性医師は男性医師よりも多くの時間を, 育児, 老親の介護, その他の家族的な問題にあてている. しかし, これを否定的にばかりとらえるべきではない. このような経験は, 手術や麻酔に直面している患者やその家族の精神的側面を理解する力を養い, インフォームドコンセントに大いに役立つ. 男性医師も, 同様の力を獲得するためにも, 自分の家族のためにもっと時間を割くべきである. 性差別の解消は, 女性に男性同様の権利を与えること (いうなれば, 女性の男性化) だけではなく, 男性にも家族のためや趣味を含めた社会的活動のための時間を与えることによってなされるべきである.
  • 中江 文
    2008 年 28 巻 2 号 p. 259-265
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      麻酔科医として勤務しながら3度の帝王切開を経験し, その実体験と, 女性麻酔科医の可能性について考察した. 私の仕事に対する考え方は, 実際に手術を体験し, 子育てにかかわるようになってから変化した. 実体験と想像の間にはかけ離れた世界があることを知り, 他の手術を担当する際も患者の様子を注意深く観察し, 訴えに謙虚に耳を傾け, できるだけ不快感を取り除くことが重要だと考えるようになった. 若手の先生に対する指導の仕方も変わった. 女性は上記のような体験, 子育てにかかわる可能性が高く, それらの経験がよい麻酔管理につながり, 女性麻酔科医の利点と考えられる. 私自身もそのことを念頭にさまざまな恩に報いたい.
  • 小澤 章子
    2008 年 28 巻 2 号 p. 266-272
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      現役の医師で手術を受ける確率は女性の方が高く, 性差を仕事に活かすという点で, 女性だからこそ2回の開腹手術を受ける機会を得られて幸運であった. この体験から, (1)開腹手術の周術期管理における硬膜外麻酔の有用性, 十分な輸液療法と消化管蠕動運動の維持の重要性を再認識し, 自分が受けたい麻酔, 医療を体験できたので, 今後, 実施していきたい, (2)周術期の性差医療 (gender medicine) を念頭において, 麻酔と術後管理を行っていきたい, (3)自分や自分の家族を安心してゆだねられる麻酔科専従医による麻酔管理症例が増えることを願い, 微力ながら力を尽くしていきたいと考えている.
  • 間宮 敬子
    2008 年 28 巻 2 号 p. 273-280
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      女性麻酔科医は精神面, 肉体面の双方から小児麻酔に適していると考えられる. 女性医師には母性があり, 細かいところまで配慮できる才能がある. また, 育児を経験することは, 新生児や小児の扱いに慣れ, こころを理解する助けとなる. 肉体面では, 男性医師に比べ手が小さく, 器用で, 小さな患者の体を容易に, また優しく扱うことができる. 小児麻酔において女性麻酔科医に対する患者側のニーズはどれほどのものなのか, また女性医師は本当に小児麻酔が好きかどうかアンケートを行い集計した. 女性麻酔科医が目指す理想的な小児麻酔とはどんな麻酔なのであろうか. 私たちだからできる, 優しい小児麻酔を追い求めて日々努力していきたい.
  • 合田 由紀子
    2008 年 28 巻 2 号 p. 281-288
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      「女性麻酔科医は緩和医療に向いている」 ということを, 自身の体験を通じて明らかにした. 緩和ケアの領域において麻酔科医は疼痛治療のスペシャリストとして大きく期待されており, 特に緩和ケア病棟医よりも緩和ケアチームを担う緩和ケア医にふさわしい. なかでも女性麻酔科医はチーム医療において協調し協働すること, 患者・家族の話を聴き, 気持ちを理解すること, 生活に配慮した治療法を工夫することなどにおいて, 男性に優る力を発揮できる. 麻酔科のサブスペシャルティに緩和医療を位置づけ, 緩和ケアチームに専従または専任医師を送る体制をつくることにより, 麻酔科および緩和医療が相互に発展できる仕組みづくりは十分可能である.
講座
  • 藤田 智
    2008 年 28 巻 2 号 p. 289-292
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      心肺蘇生のガイドライン2000において早期除細動が強調され, AEDを用いて蘇生に成功した症例が数多く報告されるようになってきていた. しかしながら, 実は蘇生率がそれ以前とあまり変わっていないという報告が出てきた. そのために2005年のガイドラインではいくつかの変更がなされた. 特に大きな変更はBLSの部分で, 「Push Hard, Push Fast, Do not interrupt, Allow recoil, Avoid hyperventilation」 に示されるように, より質の高いBLSが要求されるようになった. そのため胸骨圧迫と換気の比 (CVR) は, 15 : 2では胸骨圧迫の中断時間が長いことから30 : 2へ変更された. また, 換気時間も, 1回2秒から1秒へと変更となった. 心室細動に対する3連続除細動も, 3連続の間心電図の解析, 除細動と継続すると胸骨圧迫の中断が長くなる, 3連続除細動が有効な症例の多くは1回目の除細動で波形が変化しているということから, single shockに変更された.
  • 吉澤 明孝, 行田 泰明, 石黒 俊彦, 井上 大輔
    2008 年 28 巻 2 号 p. 293-300
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      緩和ケアとは疼痛コントロールだけでなく全人的ケアであり, そのリーダー的役割には, われわれ麻酔科医が科別の垣根を越えたケアによって力を発揮できると考える. また, 疼痛コントロールの基本の理解と普及に務めることもわれわれの役割と考える.
  • 岡崎 薫
    2008 年 28 巻 2 号 p. 301-309
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      プロポフォールに関する注目すべき留意点として, 注入時痛とpropofol infusion syndrome (PRIS) がある. 溶媒の違いが注入時痛に影響し, 中・長鎖脂肪乳剤プロポフォールではその痛みの程度と頻度が少なくなった. PRISはまれではあるものの致死性合併症である. 高用量プロポフォールの長期投与時に代謝性アシドーシス, 脂質異常症, 多臓器不全が進行し, 徐脈性不整脈, 心停止に至る. 乳酸アシドーシスやBrugada型心電図変化は前駆症状と考えられ, 認められたらただちにプロポフォール投与を中止する. 原因としてミトコンドリアにおける脂質代謝障害や, 遺伝子欠損症の関与が疑われている. 炭水化物の摂取不良に陥らないように解糖系代謝を正常に保ち, プロポフォールの過剰投与を避ける. PRISは麻酔科医が知っておくべき重大なトピックである.
  • 鈴木 昭広
    2008 年 28 巻 2 号 p. 310-318
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      エアウェイスコープ® (AWS) とエアトラック® (ATQ) は, ともにチューブ誘導機能を有する間接声門視認型の硬性喉頭鏡である. 両者とも, 喉頭所見を劇的に改善し, ガイド溝を経由したチューブを高い確率で気管に安全・確実に留置することを可能とし, 現行の気管挿管器具のなかで最も進化した喉頭鏡と考えられる. 両者は外見上の構造は類似しており, 共通のコンセプトを有してはいるが, 喉頭蓋の挙上法や声門に至るアプローチなどに相違がある. これら新しい気道確保器具はマッキントッシュ型喉頭鏡の後継者としてきわめて有望であり, 今後の気道管理に重要な役割を果たすと考えられる.
原著論文
症例報告
  • 多田羅 恒雄, 長尾 佳奈, 木下 雅晴, 太城 力良
    2008 年 28 巻 2 号 p. 325-329
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      肝部分切除術後に硬膜外血腫が発生した1症例を経験した. 手術終了直後, 集中治療室にて硬膜外カテーテル挿入部位に皮下血腫が認められたため, 止血目的にて硬膜外カテーテルを抜去した. カテーテル抜去10時間後, 患者が両下肢の麻痺を訴えた. 集中治療室当直医は麻痺を硬膜外腔に投与された局所麻酔薬によるものと判断したが, 4時間後に施行されたMRIにてT6-T11に及ぶ硬膜外血腫が発見された. ただちに椎弓切除術が施行されたが, 神経学的予後は不良であった. 術後管理に携わる医師は, 硬膜外カテーテル留置に伴う硬膜外血腫の危険性および出血傾向を認める時期には事前に麻酔科医に相談する必要性を認識すべきである.
  • 西池 聡, 白石 美治, 唐澤 紀幸, 関 純彦, 土田 英昭
    2008 年 28 巻 2 号 p. 330-333
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      拡張型心筋症を合併した末端肥大症患者に対する, 経鼻的下垂体腫瘍摘出術の麻酔管理を経験した. 患者は57歳, 女性. 心エコーで収縮拡張障害を認めたが, 日常生活はNYHA I 度であった. 循環器内科からは周術期, 肺動脈カテーテルによる循環管理を行うよう指示があった. しかし, 本手術は出血量も少なく細胞外液量の変動が小さいことから, 肺動脈カテーテルの適応はないと考えて挿入しなかった. 代わりに術中は, 中心静脈圧とインピーダンス法による心拍出量測定で麻酔管理を行い, 術後を含めて大きな問題は生じなかった. 心機能が保たれている拡張型心筋症合併末端肥大症の経鼻的下垂体腫瘍摘出術においては, 周術期に細やかな循環管理が必要であるが, 肺動脈カテーテルの適応ではないと考える.
  • 中川 博文, 東 俊晴, 松原 由紀, 白石 成二, 中尾 正和, 山崎 京子
    2008 年 28 巻 2 号 p. 334-338
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
      厚生労働省の 「輸血療法の実施に関する指針」 が2005年9月に改定された後, AB型患者の大量出血に対して異型適合血輸血を考慮した2症例を経験した. 緊急輸血に携わる医療従事者は, 異型適合血輸血の適応に関する認識を新たにするとともに, 危機的出血に際して迅速に適合血の選択を確認できるよう小冊子を配置し, 定期的な勉強会を開催するなど, 速やかな緊急輸血実施のための院内体制の整備に努める必要があると考えられた.
紹介
feedback
Top