日本臨床麻酔学会誌
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28 巻 , 3 号
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日本臨床麻酔学会第27回大会 特別講演
  • 松木 明知
    2008 年 28 巻 3 号 p. 349-358
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      本邦で麻酔科が誕生して以来半世紀以上経つが, 麻酔科の存在が社会に十分に浸透し理解されているとはいえない. その理由は, 患者や術者の関心は患者の 「局所」 に限局しているのに対し, 麻酔科の医療が患者の 「全身」 を対象としており, 麻酔科医と術者や患者の視野に大きな齟齬が認められることに加え, 「麻酔」 が本質的にホメオスターシスの安全域を拡大することにあり, 具体的に患者や手術者の目には見えないためである. 麻酔科医は “In Cura Jucunditas” (Amenity in Care) をモットーに, 不断の日常の診療, 活発な学会活動を通じて麻酔科に対する社会の認識を高める必要がある. 医療事故予防のための医学史的手法, 本学会の名称についても言及した.
日本臨床麻酔学会第27回大会 教育講演
日本臨床麻酔学会第27回大会 シンポジウム レミフェンタニルは麻酔法を変えたか
  • 武田 純三
    2008 年 28 巻 3 号 p. 374
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
  • 木山 秀哉
    2008 年 28 巻 3 号 p. 375-386
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      長時間持続投与してもcontext-sensitive half-timeが延長しない独特の薬物動態学的特徴を有するレミフェンタニルは, 術後の呼吸抑制を懸念することなく高いオピオイド濃度を維持する麻酔を可能にした. 併用する就眠鎮静薬や筋弛緩薬の必要量が減るなど, バランス麻酔の概念が変化している. 術中の循環動態の安定と, 麻酔終了時の迅速な自発呼吸回復が得られる利点がある. 一方, 筋強直や声門閉鎖に起因する換気困難, 鎮静薬の過少投与による術中覚醒を防ぐことが重要になる. 局所麻酔, 長時間作用性オピオイド, ケタミン等を適切に組み合わせることで, 術後鎮痛への円滑な移行と術後痛覚過敏の防止を図る. 静脈麻酔を安全に行ううえで, チェックリストの使用を推奨する.
  • 佐藤 清貴, 上井 英之, 加藤 正人
    2008 年 28 巻 3 号 p. 387-392
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      神経麻酔において鎮痛薬としてレミフェンタニルを主に使用した場合の, 適切なフェンタニルの併用量を検討することを目的とした. 対象は脳外科予定手術症例75例で, 閉頭の際にフェンタニルを2μg/kg (RF2群) または3μg/kg (RF3群) 併用し, 併用しなかった場合 (R群) と比較検討した. 麻酔はプロポフォール, レミフェンタニル, ベクロニウムにより, 導入・維持した. プロポフォール, フェンタニルの平均投与速度は群間で差がなかった. またフェンタニルを併用しても覚醒時間は延長しなかった. 抜管時の高血圧はRF3群で有意に少なかった. 術後疼痛の訴えはR群で2例, RF2群で1例あったが, RF3群ではなかった. 神経麻酔において, プロポフォール, レミフェンタニルによる麻酔にフェンタニルを併用する場合, 3μg/kgが適切と考えられた.
  • 上山 博史
    2008 年 28 巻 3 号 p. 393-398
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      レミフェンタニルは, onsetの早さ, 短時間作用性, 蓄積性が小さい点から産科麻酔においても臨床応用が検討されてきた. 分娩痛緩和法においてレミフェンタニルの鎮痛作用は従来のオピオイドに勝るが, 区域麻酔による無痛分娩に対する優位性は認められていない. 全身麻酔下帝王切開術におけるレミフェンタニル投与は, 母体の挿管時や執刀時の循環動態を安定化させるが, 娩出した児に短時間の呼吸抑制がみられる例があり, 蘇生可能な環境下での投与が推奨されている. 産科麻酔におけるレミフェンタニルの適応は現時点において限定的であり, 今後の研究が待たれる.
講座
  • 国沢 卓之
    2008 年 28 巻 3 号 p. 399-410
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      デクスメデトミジンの特徴は, 「呼吸に及ぼす影響はほとんどなく, 鎮痛作用も有した鎮静薬」 , 「呼べばすぐ起きるが刺激がないと眠っている」 である. これは理想的な鎮静薬にほかならない. しかし実際に投与してみると血圧変動や効果の個体差があまりに大きく, 「使いづらい鎮静薬」 との印象をもたれがちである. しかし, これらはデクスメデトミジンの薬理学的特徴を理解し薬物動態学的アプローチによる解析を行うことで, その原因の推測・対処が容易となる. 本稿では, デクスメデトミジン投与による不都合の原因と対処法を呈示し, 理想的特徴のみを利用する手法を解説する.
  • 藤森 貢
    2008 年 28 巻 3 号 p. 411-414
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      定年前には多くの人は組織の長としての地位にあるが, 定年準備として他人を管理する立場から脱却し, 自己管理する方向へ向かうことが大切であろう. 秘書等に頼っていた仕事を自分でするように転換する努力が必要である. 退職しても学問には定年はないという心構えで, 専門誌の購読は続けるべきである. 臨床から離れていても, 世間の人は医者としていろいろと質問してくるので最新の医学知識を身につける必要がある. 医学の世界で暮らしてきたわれわれは, いつの間にか専門馬鹿になっている. 新しい世界に目を向けるべきと考え, 文系の方との会合等に顔を出すように努めている. 定年後の生活では何事にも興味を抱くという知識欲が大切なことと感じている.
  • 田中 義文
    2008 年 28 巻 3 号 p. 415-430
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      麻酔科医にとって心電図診断能力は大変重要であるが, 近年の医学教育はマニュアル化して, なぜそのような波形に変化するのかという理論的な思考が欠如し, 単に異常波形の暗記だけで満足しているように思われる. またこのような理論は, 一般の心電図診断学書には記述されず, 生理学書に散見するだけである. 本稿では, 体表心電図は心筋活動すべてを包括した細胞外電位を計測しているという視点に立って, 正常心電図, QT延長症候群を含む異常心電図発生のメカニズムを近年の電位依存性イオンチャネルの知見を含めて解説する.
  • 見崎 徹, 大井 良之
    2008 年 28 巻 3 号 p. 431-438
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      歯科治療 (特に局所麻酔) は, 患者にとって痛みを伴うことから不安感や恐怖心が強い場合が多く, 特に高齢者や医科疾患を有する場合にはさまざまな偶発症を引き起こす原因ともなっている. 歯科治療をより安全に行うために, 意識を保った状態で不安感や恐怖心を軽減する患者管理法として, 精神鎮静法 (psychosedationまたはconscious sedation. 意識下鎮静法) が30年以上前から行われている. 精神鎮静法は2種類に大別され, 30%以下の亜酸化窒素を70%以上の酸素とともに鼻マスクなどから吸入させる亜酸化窒素吸入鎮静法 (nitrous oxide inhalation sedation) と, 抗不安薬, 静脈麻酔薬や鎮痛薬を静脈投与する静脈内鎮静法 (intravenous sedation) がある. 最近では一般歯科治療以外に, 口腔インプラント手術や埋伏歯抜歯の際などにも併用される機会が増えている.
      本稿では, 歯科外来における鎮静法の有用性を, それぞれの歴史的背景, 特徴, 文献的検討などを交えて解説する.
原著論文
  • 徳嶺 譲芳, 新田 憲市, 照屋 孝二, 比嘉 達也, 宮田 裕史, 須加原 一博
    2008 年 28 巻 3 号 p. 439-446
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      血管の短軸像を基に超音波ガイド下に内頸静脈穿刺を行った. その有効性や合併症を調べるため, 過去の記録を基に検討した. 穿刺法のマニュアルを基に学習, シミュレータで練習してから, 臨床に臨んだ. 穿刺は, 医師1~3年目 (18人) が行い, 穿刺困難例では指導医師が代わった. 患者数は203人, 年齢64±13歳, 身長158±9cm, 体重58±11kgで, 初回穿刺成功率は91%, 平均穿刺回数1.1±0.5回, 総穿刺成功率は99%であった. 動脈誤穿刺が2症例に発生 (1%) し, 外科的に修復した. 適切な学習と訓練により高い穿刺成功率を得たが, 動脈誤穿刺は避け得なかった. 今後の課題は合併症回避のための訓練法にある.
  • 多淵 八千代
    2008 年 28 巻 3 号 p. 447-452
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      プロポフォール麻酔からの覚醒について, 高齢者 (60~79歳) の性差を開腹手術症例で後向きに検討した. 麻酔は目標制御注入法 (TCI) システムによるプロポフォールにブプレノルフィンと硬膜外麻酔を併用し, Bispectral Index (BIS) モニター下で管理した. 女性と男性の麻酔時間, プロポフォール維持量, ブプレノルフィン静注量, 硬膜外腔ロピバカイン投与量に有意差はなかった. 手術終了時の予測脳内・予測血中濃度およびBIS値に有意差はなかった. 開眼時間は, 女性11.2±4.7分, 男性12.4±5.8分で有意差はなかった. BIS管理下, プロポフォール麻酔からの覚醒に高齢者で有意な性差はなかった.
症例報告
  • 鈴木 尚志, 竹島 亜希子, 江花 泉, 世良田 和幸
    2008 年 28 巻 3 号 p. 453-456
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      硬膜外カテーテルが胸腔内に誤挿入された症例を報告する. 71歳, 女性. 147cm, 58kg (BMI 27kg/m2) . 食道癌のために胸腔鏡補助下食道切除術が硬膜外麻酔併用の全身麻酔下に予定された. 第6・7胸椎間から傍正中法で挿入したカテーテルの胸腔内留置が胸腔鏡下に発見されたので抜去した. 有害事象は生じなかった. 自験例を含めた硬膜外カテーテルの胸腔内誤挿入11症例の報告を検討した. 10症例は開胸術ないしは胸腔鏡下手術の術中に発見された. BMIが算出できた8症例中の6症例は肥満 (BMI≧25kg/m2) であった. X線造影を用いた研究では, カテーテルの胸腔内誤挿入はまれではない. 胸部手術以外でも, 未診断の誤挿入はしばしば発生していると推測する.
  • 高木 佑芙紀, 栗田 忠代士, 佐藤 重仁
    2008 年 28 巻 3 号 p. 457-460
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      上下顎骨切り術中に経鼻気管チューブが損傷された症例を経験した. 斜顔裂による上顎前突症・下顎後退症のため上下顎骨切り術が施行された. 気道は経鼻挿管で確保した. 術中, 上顎裂部を骨ノミで分割骨削した際, 術者から気管チューブを傷つけたと報告があった. このとき術野では浮腫が著しく, 出血も多量であったためチューブの入れ換えは危険であると考えられた. 換気は十分可能であったので, 鼻入口にガーゼを詰めて手術を続行した. 術後, 気管支ファイバースコープで気管チューブ内を観察すると, 鼻入口部から約3cm内部に約7mmの損傷部を確認した. 気管チューブを引き抜き, 損傷部をテープで修復し, 挿管したままICU入室となった.
  • 城山 和久, 酒井 明彦, 三木 智章, 田嶋 実, 小林 雅子, 森脇 克行
    2008 年 28 巻 3 号 p. 461-464
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      症例は38歳の女性で, 統合失調症に対し複数の治療薬を内服していた. 乳房切断術後2日目に術後出血に対する止血術を受けた. プロポフォールを用いた全静脈麻酔管理中, 出血点確認の昇圧目的でエチレフリンを8分間に計7mg投与したところ, 強い体動と開眼がみられた. エチレフリンのβ作用による心拍出量の増加は, 肝腎血流増加による代謝クリアランスの増加によりプロポフォールの血中濃度を一過性に低下させ, 覚醒徴候の主な原因になったと考えられた. また, 統合失調症患者では血液脳関門の機能異常のため, 通常中枢神経に作用しない薬剤が作用する傾向がある. したがって, α作用を有するエチレフリンが覚醒に関与する中枢神経のα1受容体に働き, プロポフォールの血中濃度低下による覚醒徴候を助長した可能性が推察された.
  • 会沢 美由紀, 菊地 利浩, 熊倉 誠一郎, 佐藤 和恵, 山口 敬介, 稲田 英一
    2008 年 28 巻 3 号 p. 465-469
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      近年, 脳神経外科手術において, 病変が運動野や言語野に近接する症例では, それらを保持するために, 静脈麻酔を用いて覚醒下開頭腫瘍摘出術を行うことが主流となりつつある. 一方, てんかん焦点切除術に関しては, てんかん波誘発作用を有するセボフルランを用いた全身麻酔法が多く行われている. 今回われわれは, 運動野と言語野に病変が近接するてんかん合併脳腫瘍患者で, プロポフォールを用いた覚醒下開頭腫瘍摘出術とセボフルラン麻酔によるてんかん焦点切除術を一期的に受けた2症例を経験した. それぞれの術式において, 異なる麻酔方法や気道確保法を連続して行ったが, 種々の工夫により円滑で安全な麻酔管理を行うことができた.
  • 酒井 一介, 澄川 耕二
    2008 年 28 巻 3 号 p. 470-473
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      脊髄小脳変性症患者の気管喉頭分離術の麻酔を経験した. 既往歴として声帯の外転障害による上気道の閉塞があり, 気道管理に配慮を要した. 喉頭展開時に観察された声門に異常は明らかでなかったが, 細径の気管チューブでなければ気管挿管は困難であった. 脊髄小脳変性症など多系統萎縮症では, 後輪状披裂筋の麻痺のため上気道の閉塞が起こることがある. 全身麻酔を行う場合には, 声門部の狭窄に注意し, 細径の気管チューブを準備するとともに, 経皮的気管穿刺や気管切開などの準備が必要である.
紹介
  • 納谷 一郎太, 横田 美幸
    2008 年 28 巻 3 号 p. 474-477
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      重症心身障害者は重度の知的障害のため歯科治療に協力を得ることが難しく, 一般的な方法での治療はきわめて困難である. 鎮静下または全身麻酔下での治療が必要となるが, 患者は躯幹変形のほか, 消化器・呼吸器疾患を合併していることが多く, 気道確保と呼吸管理に難渋する. さらに, 多くの向精神薬を服用しており, 麻酔薬との相互作用にも注意を要する. われわれはデクスメデトミジンとプロポフォール併用による鎮静法により, 自発呼吸を維持した状態で, 歯科治療を行っている. 適切な鎮静に加え, 注意深い呼吸・循環管理で, より安全で質の高い歯科治療環境を提供できると考える.
日本小児麻酔学会第12回大会 シンポジウム 小児麻酔における輸血拒否
  • 早崎 史朗, 三浦 実, 有賀 友則
    2008 年 28 巻 3 号 p. 480-489
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      エホバの証人は命を大切にしており, 命を長らえるために, 道理にかなった取り組みを積極的に行う. そのため, 良質の医療を求め, ほとんどの医療処置を受け入れる. しかし, 聖書に基づく宗教上の理由から, 同種血輸血は受け入れず, 無輸血で行われる代替療法を求めている. その立場が医学的な面からも法律的な面からも道理にかなったものと言える理由を考察する. 未成年者に対する医療が問題となるが, 判断能力のある未成年患者であればその意思を尊重すべきであり, 判断能力がないのであれば基本的には親権者の意思が尊重されるべきである.
  • 香川 哲郎
    2008 年 28 巻 3 号 p. 490-497
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      患者が小児で, その親がエホバの証人 (以下, エホバ) の場合, もしくは小児患者本人がエホバである場合の医療機関の対応について, 日本小児麻酔学会評議員の在籍する施設を対象にアンケート調査を行った. エホバに対応するためのガイドラインを回答施設の63%が有し, その多くが小児に対する規定を整備していたが, 小児を規定する年齢, エホバの受け入れなどの内容は施設によりさまざまであり, また, 小児患者で親が輸血を拒否した場合最終的には輸血するかどうかについても, 多くが 「輸血する」 とする一方で 「輸血しない」 とした施設も存在した. 法的な整備や対応を望む意見が多くあげられた. エホバの小児に不利益がなく, かつ医師が安心して診療を行える環境を整備することが重要である.
  • 瀬尾 憲正
    2008 年 28 巻 3 号 p. 498-512
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      「エホバの証人」 信者の宗教的理由による輸血拒否への医療従事者の対応には, いわゆる 「絶対的無輸血」 と 「相対的無輸血」 の立場がある. これまで 「エホバの証人」 信者の輸血拒否に関する訴訟は散見されるが, いずれの立場をとるべきかについては, 法令による規制はない. 自治医科大学附属病院は2007年8月30日より 「絶対的無輸血」 から 「相対的無輸血」 の立場をとることに変更した. 対応においては, 宗教的理由による輸血拒否を人格権として認めるとともに, 病院全体としての立場を明示し, 十分に説明した後に, 病院の立場を認めるかどうかについて, 宗教的圧迫にも配慮して自由に意思決定ができるようにすることが重要である.
  • 粟屋 剛
    2008 年 28 巻 3 号 p. 513-519
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/07
    ジャーナル フリー
      患者に, 輸血を含めて医療行為を行うには, 原則的に, 患者本人の承諾が必要である. 患者の承諾のない医療行為は一般に, 法的に違法, 倫理的に不当である. この医療行為の承諾の場面では, 患者の判断能力が要求される. 患者に判断能力があることは, 承諾が法的, 倫理的に有効であることの必要条件である (ただし, 十分条件ではない) . 輸血の可否を判断するのは誰なのか, という点に関する法的, 倫理的ルールはきわめて簡単・明瞭である. 患者本人に判断能力があれば, 当然に本人が輸血を受けるか否かの判断-意思決定-をする. したがって, この場面では代行判断者が登場する余地はない. また, ここでは, 医療側は, 判断能力のある患者の判断に反する医療行為を行うことはできない. 患者本人に判断能力がなければ, 本人に代わって 「代行判断者」 が代行判断をする. ここでは, 医療側は原則的に, その代行判断者の代行判断に従う必要がある. ただし, そもそも代行判断者は本人に不利益になる代行判断はなし得ない. 医療側が, 判断能力のない未成年の患者に, その親権者が拒否しても輸血を行うことは, それが患者本人の利益になる限りにおいて, あるいは少なくとも不利益にならない限りにおいて, 適法かつ正当である.
      以上のように考えるならば, 15歳以上18歳未満であって, かつ, 判断能力のある患者が輸血を拒否する場合, 医療側はその拒否の判断に反して輸血を実施することはできない. 15歳未満であって, かつ, 判断能力のない患者の親権者が輸血を拒否する場合, 輸血をしないことがその患者の不利益になるならば, その親権者の輸血拒否の代行判断は法的, 倫理的に無効であるので医療側がその親権者の代行判断を無視して輸血してもそれは法的に違法ではないし, 倫理的に不当でもない. ここで, 親権者の代わりに親権代行者を立てる論理的な必然性はない.
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