術中経食道心エコー (IOTEE) は心臓大血管手術において必要不可欠な診断機器としてだけではなく, 心臓大血管手術麻酔の管理においても大変有用性の高いモニターであり, 拡張機能を含めたリアルタイムでの心機能や心室内容量の評価が可能である. 従来, 左心室容量の評価に肺動脈カテーテルが利用されていたが, その解析や治療方法の選択にばらつきが多いため, 近年, IOTEEが心臓大血管麻酔管理における血行動態モニターとして日常的に利用されるようになった. さらに, IOTEEの情報を心臓外科医と共有することで, 体外循環離脱時の薬剤の適切な選択や麻酔管理の戦略に応用することも可能である. IOTEEは比較的安全な機器ではあるが, 適切に使用することがIOTEEに関連する合併症の防止には肝要である. IOTEEの技術や知識を効率的に蓄積し, 実践できるようなトレーニングシステムを構築し, 客観的な評価を通して, 心臓外科医や集中治療医とこれらの情報を共有すれば, 循環器疾患に対する包括的な理解とともに, 心臓大血管手術患者に対する周術期管理の質をさらに向上させることができると考えられる.
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