日本臨床麻酔学会誌
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29 巻, 5 号
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日本臨床麻酔学会第28回大会 教育講演
  • 井出 雅洋
    2009 年 29 巻 5 号 p. 563-577
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      術中経食道心エコー (IOTEE) は心臓大血管手術において必要不可欠な診断機器としてだけではなく, 心臓大血管手術麻酔の管理においても大変有用性の高いモニターであり, 拡張機能を含めたリアルタイムでの心機能や心室内容量の評価が可能である. 従来, 左心室容量の評価に肺動脈カテーテルが利用されていたが, その解析や治療方法の選択にばらつきが多いため, 近年, IOTEEが心臓大血管麻酔管理における血行動態モニターとして日常的に利用されるようになった. さらに, IOTEEの情報を心臓外科医と共有することで, 体外循環離脱時の薬剤の適切な選択や麻酔管理の戦略に応用することも可能である. IOTEEは比較的安全な機器ではあるが, 適切に使用することがIOTEEに関連する合併症の防止には肝要である. IOTEEの技術や知識を効率的に蓄積し, 実践できるようなトレーニングシステムを構築し, 客観的な評価を通して, 心臓外科医や集中治療医とこれらの情報を共有すれば, 循環器疾患に対する包括的な理解とともに, 心臓大血管手術患者に対する周術期管理の質をさらに向上させることができると考えられる.
日本臨床麻酔学会第28回大会 シンポジウム—緩和医療への麻酔科医の取り組みと実践—
講座
  • 堀田 訓久, 瀬尾 憲正
    2009 年 29 巻 5 号 p. 620-626
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      近年, フォンダパリヌクスやエノキサパリンといった周術期肺血栓塞栓症予防のための抗凝固薬が承認され, 硬膜外麻酔による出血性合併症のリスクが改めて注目されている. これからの術後鎮痛は, 硬膜外麻酔だけでなくさまざまな鎮痛法が必要となる. 手術部位が片側の四肢手術や胸部外科手術の場合, 末梢神経ブロックは非手術側の神経遮断を生じさせず, 脊髄レベルにおける神経障害リスクを回避できる. 過去の報告でも, 下肢手術や呼吸器外科手術において, 末梢神経ブロックは硬膜外麻酔と鎮痛効果に差がないことが明らかになっている. 一方, 開腹手術における末梢神経ブロックの報告もあるが, 硬膜外麻酔と比較するだけのデータがないのが現状である.
原著論文
  • 小瀧 正年
    2009 年 29 巻 5 号 p. 627-634
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      ラリンジアルマスクプロシール (PLMA) 使用時, 一見換気が正常でも内視鏡で位置不適, サイズ不適や側面カフの気道内めくれ込み (カフめくれ) が時にみられる. そこで, 444症例 (男246/女198) にPLMAを使用し内視鏡で撮影した像をもとに位置不適, サイズ不適, およびカフめくれを分類し頻度を調べた. またカフめくれでは換気不全の可能性を推定した. 位置不適は75例 (17%) で深めが浅めの2倍だった. サイズ不適は94例 (21%) で男性に多く, 小さめが大きめの7倍だった. カフめくれは59例 (13%) で男性に多く, 換気不全の可能性ありは21例 (5%) だった. PLMAでの位置不適, サイズ不適やカフめくれは予想外に多く起きており, 安全な気道管理には内視鏡検査のルーチン化が必要である.
症例報告
  • 佐藤 正義, 五十嵐 あゆ子, 天笠 澄夫, 長瀬 輝顕
    2009 年 29 巻 5 号 p. 635-638
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      エアトラック®を用いた挿管で口腔内裂傷を起こした1例を経験した. 挿管を行ったのはエアトラック®の使用経験が20例以上ある麻酔科指導医であった. 挿管操作は円滑であったにもかかわらず, 右口蓋弓の裂傷は長さ3cm, 深さ1cmに及び縫合が必要であった. エアトラック®のブレード先端部分に丸みがなく鋭利であることが原因と考えたが, 2008年1月現在, 製造元ではブレードの仕様変更の予定はない. 当院では当面の安全対策として, シリコン製のカバーを先端部分に装着し先端部分を鈍にして使用している. また, エアトラック®の挿入方法についても再検討し, 推奨されている正中挿入法を遵守するよう心がけている.
  • 大河 晴生, 山田 直人, 鈴木 翼, 加藤 幸恵, 木村 丘, 松井 秀明
    2009 年 29 巻 5 号 p. 639-641
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      喉頭横隔膜症とは, 喉頭に先天性または後天性の膜様組織が形成される疾患である. 今回われわれは術前に特記すべき上気道症状を呈さず, 気管挿管時に偶然発見された喉頭横隔膜症を経験したので報告する. 患者は60歳, 男性. 慢性副鼻腔炎に対し全身麻酔下での両側上顎洞篩骨洞根本術が予定された. 気管チューブ挿入時, 声門下に抵抗があったためラリンジアルマスク挿入下に気管支鏡検査を施行したところ, 喉頭に膜様物が確認された. 患者は1997年に他院にて直腸癌の手術を施行されており, このときの麻酔記録上特記事項はなかったことから後天性の喉頭横隔膜症が疑われた. 同疾患は無症状の患者がいるため, 気管挿管時には注意が必要である.
  • 次田 佳代, 上田 雅史, 安田 善一, 田畑 麻里, 信川 泰成, 重見 研司
    2009 年 29 巻 5 号 p. 642-647
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      上下顎後方移動術の術後に低酸素血症を伴う上気道閉塞が生じ, 経鼻エアウェイ挿入により対処できたが, 陰圧性肺水腫 (negative pressure pulmonary edema: NPPE) を発症し術後人工呼吸管理が必要となった症例を経験した. 上下顎後方移動術の術後は, 解剖学的に上気道の狭小化と手術操作に伴う粘膜浮腫により上気道狭窄や閉塞が生じる可能性がある. そのため, 術前に上気道の評価を行い, 抜管時には経鼻エアウェイを挿入しておくなどの対策を考慮する必要があると考えられた.
紹介
  • 嶋 武, 高橋 徹, 千葉 聡子, 白鳥 隆明
    2009 年 29 巻 5 号 p. 648-651
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      4時間を超える股関節・下肢手術51症例を対象に, 脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔 (脊硬麻) +持続静脈麻酔 (静麻) の有効性を検討した. 大部分の症例で脊髄くも膜下麻酔に2%リドカイン加テトラカイン+エピネフリン, 硬膜外麻酔にロピバカイン, 静麻にプロポフォールを使用した. 硬膜外追加時間は平均2時間57分で, 2回追加していた. 術中の平均収縮期血圧は98mmHgで, 変動はほとんど認められなかった. 4時間を超す長時間手術にも脊硬麻+静麻で安全かつ確実で安定した循環状態を確保できると思われた.
  • 岩元 辰篤, 高杉 嘉弘, 大内 謙太郎, 箔本 陽子, 湯浅 あかね, 古賀 義久
    2009 年 29 巻 5 号 p. 652-656
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
      経鼻挿管は経口挿管に比較して習熟度を要し, チューブの声門への誘導に技術的困難を伴う. 今回, 携帯型ビデオ硬性挿管用喉頭鏡エアウェイスコープ®の専用喉頭鏡イントロックのガイド溝形状を経鼻挿管に適応できるように改良し, 臨床に応用した. 鼻腔から咽頭に下行した気管チューブはイントロックのガイド溝下面の粘膜面と一致する切り欠き部分からガイド溝に進入し, 先端が声門方向に誘導され, LCDモニター上で気管チューブ先端を確認しながら声門を通過させることが可能であった. LCDモニターによる声門付近の拡大視野はdifficult airwayや喉頭の解剖学的異常を有する患者においても, 容易な気管挿管と愛護的挿管操作を可能とする.
[日本医学シミュレーション学会] 症例報告
ロピバカインの上手な使い方(第2回)
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