日本臨床麻酔学会誌
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30 巻 , 7 号
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日本臨床麻酔学会第29回大会 教育講演
  • 宮尾 秀樹
    2010 年 30 巻 7 号 p. 917-924
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      麻酔中の輸液は血管内輸液,間質への輸液,細胞内への輸液の3本立てで考える.細胞外液製剤はブドウ糖以外の糖を浸透圧調整のため含んでいる製剤が容量効果と利尿効果をもっているので使いやすい.ヒドロキシエチルスターチ(HES)は血管内輸液として適切である.膠質浸透圧は測定膜,内皮細胞臓器特異性,病態を考慮する必要がある.HESには抗炎症作用があり,末梢循環を維持することができる.6% HES70は腎や止血凝固への影響は最も少ない.輸液のモニターとして尿量が臨床的である.圧モニターとしてのCVPより経食道心エコー下の容量負荷を重視した考え方がある.混合静脈血酸素飽和度や乳酸値は輸液を含めた周術期管理の総合的なモニターとして重要である.
  • 水野 樹
    2010 年 30 巻 7 号 p. 925-930
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      自己血回収装置を用いた術中回収式自己血輸血は,同種血輸血による感染症の伝播や免疫反応,血液型不適合輸血などの合併症の回避目的に,心臓血管外科手術のほか,大量出血の際の整形外科や婦人科手術などで施行されている.産科手術における術中回収式自己血輸血では,羊水中の胎児由来の成分の混入による羊水塞栓症が危惧されている.しかし,帝王切開において白血球除去フィルターを用いた濾過による回収式自己血輸血では胎児由来の成分は除去され,これまで臨床的に羊水塞栓症の報告例はない.産科手術における大量出血に対して,白血球除去フィルターを用いた濾過による術中回収式自己血輸血は救命治療の一手段として期待される.
  • 磯野 史朗, 飯寄 奈保
    2010 年 30 巻 7 号 p. 931-941
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      睡眠時無呼吸は非常に頻度の高い疾患であり,睡眠時無呼吸が診断されていない術前患者も多く存在する.睡眠時無呼吸患者では周術期に重篤な合併症を起こしやすいことが明らかとなっており,すべての麻酔科医はこの疾患について少なくとも基本的知識を有するべきである.この論文では,睡眠時無呼吸の臨床的特徴,治療方法,病態生理について最新の知見を述べ,千葉大学医学部附属病院において行っている周術期気道管理方法について解説する.
日本臨床麻酔学会第29回大会 シンポジウム ─神経ブロック 超音波ガイドの現状と今後の領域─
日本臨床麻酔学会第29回大会 シンポジウム ─周術期静脈血栓塞栓症に対する薬物的予防法─
  • 瀬尾 憲正, 小林 隆夫
    2010 年 30 巻 7 号 p. 986
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
  • 小林 隆夫
    2010 年 30 巻 7 号 p. 987-995
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      静脈血栓塞栓症(VTE)はわが国においては発症頻度が少ないと考えられていたが,生活習慣の欧米化や高齢化社会の到来などの理由により,近年その発症数は急激に増加している.欧米から20年以上遅れて,2004年2月にわが国でもようやく日本麻酔科学会など複数の団体が参画してVTEの予防ガイドラインが策定され,さらに同年4月から「肺血栓塞栓症予防管理料」が新設されるに至った.VTE予防薬は未分画ヘパリンとワルファリンしかわが国では保険適用されていなかったため,予防ガイドラインではこの2剤が推奨されたが,これら薬剤の至適投与量はきちんとした臨床治験に基づいたものではない.しかし,整形外科下肢手術と腹部外科領域悪性腫瘍に対して選択的Xa阻害薬であるフォンダパリヌクスと低分子量ヘパリンであるエノキサパリンの臨床治験が行われた結果,2007年から2009年にかけてわが国ではじめて日本人のエビデンスに基づいた予防薬剤が,VTEの発現リスクの高い下肢整形外科手術施行患者および腹部手術施行患者に対して認可・発売された.そのほかに経口トロンビン阻害薬や経口Xa阻害薬も臨床治験が行われており,将来は認可されるものと思われる.日本麻酔科学会の調査結果から理学的予防法の限界,抗凝固療法の積極的導入の有用性が示唆されているため,今まさにわが国の予防ガイドラインは改訂の時期に来たといえる.今後は適切な抗凝固療法の導入によりさらなるVTEの減少が期待される.ただし,抗凝固薬には出血の副作用も報告されているので,リスクとベネフィットを十分に勘案したうえで使用を決定し,投与中の出血の評価および止血対策にも心がけていただきたい.
  • 黒岩 政之
    2010 年 30 巻 7 号 p. 996-1001
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      周術期の静脈血栓塞栓症(VTE)に対する予防は普及しつつあるが,その次なるステップとして,薬物予防は重要な位置づけにある.日本麻酔科学会の調査報告から検討すると,抗凝固薬による予防は,周術期肺血栓塞栓症(PTE)死亡率を低下させる可能性が高い.一方で抗凝固薬使用時には,出血性合併症を十分に念頭におく必要があり,したがって硬膜外麻酔との併用における脊髄硬膜外血腫の問題も含め,管理プロトコールを設定する必要がある.
  • 冨士 武史
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1002-1007
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      日本整形外科学会は2008年に予防ガイドラインの整形外科部分を改訂し,高リスク手術での予防にはエノキサパリン(EXP)とフォンダパリヌクス(FPX)を含んだ薬物的予防法を機械的予防法とともに推奨した.人工股関節・人工膝関節全置換術,股関節骨折手術ではEXPとFPXが使用可能であるが,外傷症例では,合併損傷部位からの出血リスクもあり,一律に薬物的予防法を適応できない.どの予防法を行っても静脈血栓塞栓症(VTE)をゼロにはできないし,予防法のリスクも存在する.医療にリスクはつきものであるが,患者や世間はこれを認識しない.日常診療で十分な説明を行うことは大きな労力を伴うが,インフォームドコンセントを取ることが整形外科医の唯一の自衛手段と考えられる.
  • 左近 賢人, 池田 正孝
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1008-1013
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      最近の5年間に静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)に対する理学的予防法は広く普及した.しかし,周術期肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の死亡率は依然高く,薬物的予防の重要性が明らかとなってきた.このような状況下,整形外科とともに腹部外科領域においても低分子量ヘパリンであるエノキサパリンやフォンダパリヌクスが保険適用となり,欧米と同様のVTEに対する薬物的予防が可能となった.わが国の臨床治験ではエノキサパリン,フォンダパリヌクスともにベンチマークとした間欠的空気圧迫法(IPC)より出血性合併症を多く認めることなく,低いVTEの発症頻度を認めている.わが国における両薬剤の治験成績を中心に,これら腹部外科領域の現状を概説する.
講座
  • 高橋 正裕, 西村 絢, 木本 勝大, 寺田 雄紀, 井上 美鳳, 古家 仁
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1014-1022
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      Patient-controlled epidural analgesia(PCEA)による術後鎮痛を行う際,専用の注入器が必要となるが,電動式注入器は初期投資やランニングコストがかかるので,多くの病院では採用しにくい.それに対してディスポーザブル注入器は初期投資やメンテナンス費用がかからないので,多くの病院で採用されている.ディスポーザブル注入器の性能は電動式注入器と比較して劣ると言わざるを得ないが,運用次第で電動式に勝るとも劣らない術後鎮痛を提供することができる.本稿では,奈良県立医科大学附属病院で行っている,0.2%ロピバカインとフェンタニルをディスポーザブル注入器で注入するPCEAについて,その薬剤選択や運用上の工夫を紹介する.
  • 新井 丈郎, 奥田 泰久
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1023-1028
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      新たに開発されたパーカースパイラル気管チューブを挿管症例45症例で使用した.使用症例は外科系全般,挿管施行者は後期研修医から指導医までと幅広く設定した.約75%の挿管施行者において使いやすいという感想が得られた.パーカースパイラル気管チューブは従来のチューブに比べて先端部にその特徴があり,挿管操作はもとより,気管支ファイバーやエアウェイスコープとの併用や経鼻挿管に適していると思われた.
  • 稲垣 喜三, 森山 直樹, 舩木 一美, 青木 亜紀, 仲宗根 正人, 則武 あや
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1029-1036
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      手術侵襲が神経内分泌反応や血液凝固能,代謝を亢進させ,免疫能を低下させることはよく知られている.これらの過剰な反応が術中の高血糖や乏尿を惹起し,術後の創感染の危険性を増大させている.これらの反応を抑制するには術中の鎮痛が重要で,硬膜外麻酔はその大きな役割を担っている.レミフェンタニルも硬膜外麻酔と同様に強い鎮痛作用を有している.これらの鎮痛法を用いると,術中の鎮静薬の必要量を低下させるだけでなく,神経内分泌反応や代謝の亢進を抑制し,免疫能の低下を防止する.硬膜外麻酔とレミフェンタニルの鎮痛程度は,手術部位と手術術式を選択すれば同等の力価を有すると考えられる.
原著論文
症例報告
  • 小寺 厚志, 瀧 賢一郎, 上妻 精二, 宮崎 直樹, 橋本 正博, 江崎 公明
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1043-1049
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      症例は49歳,女性.幼少時にEhlers-Danlos syndrome(以下,EDS)と診断されていた.2年前に右閉鎖孔ヘルニアに対して全身麻酔下に緊急手術が施行され,今回,再発性右閉鎖孔ヘルニアによるイレウスに対して全身麻酔下に緊急手術が再び施行された.この2回の周術期管理で,(1)麻酔導入時の静脈の破綻,(2)挿管困難に対する気道の確保,(3)術中の出血を助長しうる血圧上昇への対応と鎮痛薬の選択,(4)慢性症状の術後における悪化などのさまざまな合併症や問題点を経験した.過去に提案されているEDS患者の周術期管理における注意事項を参考に,合併症や問題点に対する対策を考察した.
  • 伊藤 裕之, 槇田 浩史
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1050-1053
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      72歳,女性.閉塞性動脈硬化症に対しバイパス術を施行した既往があるが,心不全治療の入院中にグラフトが閉塞し緊急手術となった.重度の3枝病変を合併しており,ワルファリンとシロスタゾールを当日まで内服していた.周術期の血行動態の変動や術後の人工呼吸管理を避けるため膝窩アプローチによる坐骨神経ブロックで管理した.手術中からヘパリンを使用したが局所の血腫形成や感染はみられなかった.緊急手術のため抗凝固療法を術前に中止できない症例だったが,合併症を起こすことなく安全な麻酔管理を行い得た.超音波ガイド下坐骨神経ブロックは下肢急性動脈閉塞症手術を受ける患者において有用な麻酔方法である.
  • 納富 三津子, 原 朋子, 佐々木 由紀子, 宮崎 嘉也, 足立 健彦
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1054-1058
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      結核後遺症で,声門直下から気管分岐部に瘢痕性気管狭窄をきたした症例のバルーン拡張,ステント留置術の麻酔を経験した.高度かつ広範囲に狭窄があり,バルーン拡張時に長時間の無換気が予想されたため,ガス交換手段として体外循環を選択した.デクスメデトミジンで鎮静し,自発呼吸下に右大腿動静脈送脱血の経皮的心肺補助(PCPS)を開始し,全身麻酔を導入した.体外循環下でバルーン拡張術を施行後,狭窄部位に気管挿管し,PCPSを離脱した.後日,気管の浮腫が軽減したのちに,ステント留置術をデクスメデトミジン鎮静下,局所麻酔併用で施行した.著明な狭窄で換気困難が予測された症例に対し,体外循環を用いて安全な麻酔管理を行うことができた.
  • 丹羽 英智, 西村 雅之, 木村 太, 吉田 仁, 工藤 隆司, 廣田 和美
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1059-1064
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      Treacher Collins症候群は,特有の顔貌から気管挿管を含めた気道確保が困難とされている.今回,挿管困難が予想された本症候群患児の麻酔において想定外のマスク換気困難を経験した.症例:7歳,女児,右耳漏孔摘出術を予定.睡眠時nasal continuous positive airway pressureを使用していたが,補助換気は可能と考えた.全身麻酔導入後,まず,自発呼吸下でラリンジアルマスクエアウェイプロシール®(PLMA)を用いて気道を確保し,次にPLMAを通し気管挿管を行う予定とした.しかし,セボフルランによる急速導入を行ったところ,補助換気すら困難となった.麻酔科医2人でなんとか換気を続け得たことから低酸素血症を認めずに気道確保に成功したが,本方法には議論の余地があると思われた.
第16回日本麻酔・医事法制(リスクマネジメント)研究会
  • 小松 秀樹
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1067-1075
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      1999年の横浜市立大学病院事件と都立広尾病院事件をきっかけに,日本の医療は混迷状態に陥った.医療の質・安全戦略会議で,自律について,理念を重視する立場と,実情を重視する立場の意見の違いが明確になり,論争があった.この対立構造は,最近10年間の医療をめぐるさまざまな論争に共通するものだった.大野病院事件では,裁判所は,予見可能性,結果回避可能性を認めたうえでの結果回避義務の有無を,実情からの帰納で判断しようとする態度を鮮明にした.この判決でボールが医療界に投げ返された.医療の安定的発展のためには,日本医師会を,利益団体から,質の高い医療の安定的供給を目的とする真の自律団体に改編する必要がある.
  • 岩瀬 博太郎
    2010 年 30 巻 7 号 p. 1076-1079
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
      日本においては,法医学をはじめ,法と医のインターフェース的な役割を担う領域が軽視されてきた.医療関連死にかかわるさまざまな問題も,そうしたことと無関係とはいえないだろう.医師が司法の介入でストレスを感じる場合,その対策としては,司法を排除する方法以外にも,司法の暴走を抑止し,適正な司法の実現に協力するという方策もありうる.現在,医師だけでなく,司法もミスを犯す存在であることは周知の事実となりつつあり,さまざまな司法制度改革も始まっている.そのなかで,医師,法曹ともに,法と医のインターフェース的役割の在り方を見つめなおし,適正な司法を実現するためには,医学鑑定がどうあるべきかなどを検討してもよいだろう.
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