日本臨床麻酔学会誌
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30 巻 , 2 号
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日本臨床麻酔学会第28回大会 教育講演
  • 国沢 卓之
    2010 年 30 巻 2 号 p. 181-189
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      決定された薬物の投与量と意図する効果が大きくかけ離れるときは, 薬物の効果を, 薬物動態 (PK: pharmacokinetics) と薬力学 (PD: pharmacodynamics) に分けて考える必要がある. 特にデクスメデトミジン (DEX) は, このような機会に遭遇することが多いため, PK/PDを理解する必要がある. DEXの交感神経抑制, 鎮静, 鎮痛などの作用は, それぞれの用量反応関係が存在するが, 血圧に関しては直接末梢血管収縮作用と相まって効果の発現が複雑になる. DEXの分布容積は比較的大きく, 代謝クリアランスは大きくないため, 作用時間の短い薬物ではない. DEXのもつさまざまな利点を利用するために, 生じる可能性のある不都合を防ぐためのPKの知識が必要となる. DEXのPK/PDを理解し, 臓器保護効果の報告が増えてきておりさらなる有効性が期待されているDEXを安全に利用することが必要である.
日本臨床麻酔学会第28回大会 パネルディスカッション—周術期肺血栓塞栓症予防における抗凝固療法—
講座
  • 原 直樹
    2010 年 30 巻 2 号 p. 216-223
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      当院では, 人工呼吸時の鎮静マニュアルを作成し, 個々の症例に適した鎮静が行えるようにプロポフォールとデクスメデトミジン (DEX) それぞれ単独の, あるいは両薬剤併用による鎮静法を示し, それに従うことで良好な結果を得ている. 現段階では保険適応外使用となるDEX術中使用にはさまざまな有用性が報告されているが, DEXを全身麻酔下に使用する場合には麻酔薬との相互作用に注意が必要である. 術中神経モニタリングの一つである運動誘発電位は麻酔薬や鎮静薬で抑制を受けやすく, DEX投与によって運動誘発電位が抑制を受ける場合がある. また, DEX術中投与によって術後早期の鎮痛効果が得られ, DEXが術後痛緩和に寄与することが示唆された.
  • 月山 淑
    2010 年 30 巻 2 号 p. 224-230
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      がん患者と家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上のために, 身体的苦痛であるがん性疼痛を緩和することは医療従事者にとって最も重要な役割である. がん性疼痛治療のゴールドスタンダードは1986年に提唱されたWHO方式がん疼痛治療法であり, 薬物療法によって80~90%の疼痛は緩和される. 疼痛の強さに応じた鎮痛薬, 疼痛の原因に応じた鎮痛薬を使用し, 副作用対策をきちんと行うことにより, 経口医療用麻薬は病期や療養場所を選ぶことなく患者自己調節鎮痛法 (PCA) で十分な疼痛コントロールを図ることができる薬剤である.
原著論文
  • 西山 芳憲
    2010 年 30 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      セボフルラン麻酔による下腹部手術におけるレミフェンタニルの投与量の差が平均血圧 (MAP) , 心拍数 (HR) およびelectroencephalographic bispectral index (BIS) に及ぼす影響を検討した. 27名の子宮全摘術中の患者を対象とし, 麻酔をセボフルラン1%とレミフェンタニル持続投与 (L群: 0.25, M群: 0.625, H群: 1.0μg/kg/min) で行った. L群と比べてM群, H群のMAPとHRは有意に低かった. M群とH群の間ではそれらに有意差はなかった. 収縮期血圧, HRの最低値は78mmHg, 48/minであった. BISは3群間に有意差を認めなかった. レミフェンタニルは0.25~1.0μg/kg/minの間でおおむね安全に使用できたが, MAP, HRおよびBISからみて, 投与量は0.625μg/kg/minまででよいと考えられた.
  • 門井 雄司, 堀内 辰男, 内田 慎也, 齋藤 繁, 佐藤 淳, 高橋 健一郎
    2010 年 30 巻 2 号 p. 237-246
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      麻酔覚醒時における短時間作用性β1阻害剤ランジオロールの血行動態に対する効果を高血圧合併の有無による相違について高齢者ならびに中年者で検討した. 整形外科ならびに産婦人科手術が予定され, 高血圧を合併した高齢者 (70歳以上) 25人と中年者 (50歳以下) 25人, 高血圧を有さない高齢者25人と中年者25人, を対象とした. 手術が終了し麻酔薬投与をすべて中止した時点で, 筋弛緩薬のリバース投与前にランジオロールを0.125mg/kg/minで1分間投与後に0.04mg/kg/minで抜管まで投与した. 心拍数と血圧はランジオロール投与直前から投与終了までは1分ごとに, 投与終了後からは5分ごとに終了30分まで記録した. コントロールとして高血圧のない中年者9人と高齢者10人に対して同様に検討した. さらに高血圧合併中年者8人と高齢者8人に対してランジオロールの投与量を変更した研究も追加検討した. 麻酔覚醒時におけるランジオロール投与は, 高血圧のない中年者では心拍数を変動させなかったが高血圧のない高齢者では心拍数を減少させた. 一方, 高血圧合併中年者では心拍数を増加させ, 高血圧合併高齢者では心拍数を変動させなかった. ランジオロール投与を増減させて高血圧合併中年者と高血圧のない高齢者に投与したところ, 麻酔覚醒時における心拍数を安定させることができた. 今回の研究から麻酔覚醒時におけるランジオロールの変時性効果は高血圧合併中年者では減弱することがわかった. 麻酔科医は年齢や高血圧の有無などの因子を考慮して麻酔覚醒時のランジオロール変時性効果を考える必要がある.
  • 松本 浩一, 三溝 慎次, 鳥飼 亜利寿, 荒木 和邦, 光岡 正浩, 中島 幹夫
    2010 年 30 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      当院で行われた気管内手術33例の麻酔管理の検討を行った. 全身麻酔で行い, 呼吸管理はLMA Fastrach™による気道確保と自発呼吸の温存を第一選択とした. 麻酔薬は静脈麻酔薬を使用し, 適宜吸入麻酔薬を併用した. 全例, 気管内チューブ, ミニトラック II ™, HFJV対応人工呼吸器を準備し, PCPSをすぐに使用できるようにして手術を行った. 硬性鏡挿入時は胸郭の動きなどで自発呼吸を注意深く観察し, 焼灼操作時には引火による気道熱傷を防止するために吸入酸素濃度を40%程度まで下げた. SpO2が低下する場合には, 手技を中断して換気を行った. 32例では特に問題なく終了したが, 1例で空気塞栓を合併した.
症例報告
短報
  • 日比野 阿礼, 稲田 眞治, 新井 奈々, 小嶋 高志, 寺澤 篤, 高須 宏江
    2010 年 30 巻 2 号 p. 272-275
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      チョウセンアサガオはベラドンナアルカロイドを含み, 誤食により中毒を起こす. 今回キノコ中毒との鑑別に苦慮したチョウセンアサガオ中毒を経験した. キノコ入りのうどんを食べ全身倦怠感・発語困難を認めた夫婦が当院へ救急搬送された. JCS1-1-R, 瞳孔散大, 頻脈を認め, キノコ中毒の疑いで入院した. 摂取9時間後より症状は軽快したが焼けつくような口渇感を訴えた. 後日キノコはしいたけであると鑑定された. 再調査で, うどんには「ごぼう」も入っており, それがチョウセンアサガオの根であったことが判明した. 抗コリン症状を呈する食中毒患者を診察した際にはチョウセンアサガオ中毒を考慮する必要がある.
[日本医学シミュレーション学会]原著論文
  • 駒澤 伸泰, 上農 喜朗
    2010 年 30 巻 2 号 p. 278-282
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      胸骨圧迫を中断することなく, 迅速かつ安全に気管挿管することは蘇生率を向上させる可能性がある. 当院麻酔科初期臨床研修医18名を対象とし, 気道管理訓練用マネキンシミュレータを用いて, マッキントッシュ型喉頭鏡 (McL) とエアウェイスコープ® (AWS) による気管挿管所要時間 (挿管時間) と成功率に対する胸骨圧迫施行の影響を検討した. McLを用いた胸骨圧迫中の挿管時間は, 非胸骨圧迫時に比して有意に延長していたが (14.9±4.0秒vs 22.7±6.5秒, P<0.01) , AWSでは延長しなかった (13.3±3.8秒vs14.5±3.4秒) . 胸骨圧迫中の気管挿管成功率はMcL群が55.5% (18例中10例) であったがAWS群は100%であった. AWSを用いたとき, チューブと声門の相対的な位置が胸骨圧迫時も変化しないことから, 正確な挿管が可能と考えられた. 胸骨圧迫中の気管挿管デバイスとしてAWSは有効な可能性がある.
第9回エピドラスコピー研究会
  • 伊達 久, 滝口 規子, 渡邉 秀和, 千葉 知史
    2010 年 30 巻 2 号 p. 284-290
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      エピドラスコピーは, 平成21 (2009) 年現在, 先進医療 (硬膜外腔内視鏡による難治性腰下肢痛の治療) に指定され, その適応は「腰椎椎間板ヘルニア, 腰部脊椎管狭窄症又は腰椎手術の実施後の腰下肢痛 (保存治療に抵抗性のものに限る. ) に係るものに限る. 」となっている. 具体的には, 仙骨硬膜外造影で癒着がみられ, 神経根ブロックで効果がみられる場合に有効であることが多い. 腰椎椎間板ヘルニアの場合は, 神経ブロックや経皮的髄核摘出術, 椎間板加圧などが無効な場合に適応となる. 腰部脊柱管狭窄症の場合は, 神経根型もしくは神経根型の要素が多い混合型が適応となる. 腰椎術後の腰下肢痛 (FBSS) の場合は, 神経ブロックが無効な場合に効果がみられることが多い.
  • 竹島 直純, 高谷 純司, 奥田 健太郎, 野口 隆之
    2010 年 30 巻 2 号 p. 291-296
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      エピドラスコピーの麻酔は局所麻酔を主体に行うが, 鎮痛・鎮静が必要になる. ビデオガイドカテーテル内に挿入した外径0.9mmの硬膜外腔内視鏡をイントロデューサー内に挿入し, 先端の位置をX線透視で確認し, さらに硬膜外腔の状態をビデオモニターで観察しながらビデオガイドカテーテルを進め, 脂肪等の脆弱な組織を先端で剥離する. 根症状のある患者にはradiculoplasty (開窓術) を追加する. 癒着剥離終了後硬膜外腔造影を行い, 硬膜外腔の拡がりを確認できれば局所麻酔薬とステロイドの混合液を注入する. 硬膜外カテーテルを仙骨裂孔から頭側に, または癒着剥離部位より頭側の腰部から尾側の硬膜外腔へ挿入し, 局所麻酔薬とステロイドの注入を行うと治療効果が高まる.
  • 上野 博司, 深澤 圭太, 原田 秋穂, 細川 豊史
    2010 年 30 巻 2 号 p. 297-303
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      エピドラスコピーの合併症は, 手技に起因するもの, 使用薬剤に起因するもの, 感染によるものに分類される. そのなかでも癒着剥離時の生理食塩水の急速・大量投与が原因で脳脊髄液圧が上昇することによる頭痛, 頚部痛, 痙攣, 視機能障害等の重篤な合併症が最も多く報告されている. 局所麻酔薬や造影剤によるアレルギー反応, 偶発的な血管内注入やくも膜下注入による合併症にも注意が必要である. また, 感染についても十分に留意し, 術中の清潔操作や術後の創部汚染防止などの感染予防策を行うことも重要である. エピドラスコピーの安全性を高めるためには, 合併症・偶発症についての知識とその対応策・予防策についての理解が不可欠である.
  • 五十嵐 孝, 鈴木 英雄, 村井 邦彦, 古宮 かおり, 平林 由広, 瀬尾 憲正
    2010 年 30 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      エピドラスコピー, 硬膜外腔内視鏡は難治性の腰下肢痛を有する患者に対する診断法および治療法の一つである. 本法の特長は, (1)侵襲度の低い方法であること, (2)硬膜外腔の肉眼的観察所見が得られること, (3)直視下の灌流, 洗浄, 癒着剥離が行えること, (4)病変部位への確実な薬剤投与が期待できること, (5)本法施行後の硬膜外ブロックの十分な広がりが期待できることである. この方法は, わが国をはじめ米国, 英国, 独国, 豪州, 韓国などで広く行われ, 椎間板ヘルニア, 脊柱管狭窄症, 腰椎手術後症候群などにおける有用性が報告され, 難治性腰下肢痛に対する診断治療法の一つとして重要な位置を占めている. 今後, 有効性や安全性に関する詳細な検討, 内視鏡手技の向上, 周辺機器の開発, 先進医療や保険診療の適応などによって, エピドラスコピーのさらなる発展が期待できる.
  • 平良 豊, 比嘉 康敏, 加治佐 淳一
    2010 年 30 巻 2 号 p. 310-314
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      われわれは2002年から2008年までの間に, 慢性の腰痛, 下肢痛患者137例のエピドラスコピーを行った. これらの症例を効果と合併症についてレトロスペクティブに調べた. エピドラスコピーを受けた患者の62%で有意な痛みの軽減がみられた. 術後合併症として, 4例の大腿前面の知覚障害, 2例の下肢筋力低下, 2例の遷延性の頭痛を経験したが, これらはすべて3週間以内に消失した. 網膜出血やくも膜下出血などの重篤な合併症は経験していない. これらの結果に加え, これまでの経験で培ったエピドラスコピーのコツと要点として, 適応, 硬膜外腔造影, 手術時の体位, 麻酔法, 手術手技について述べたい.
  • 幸田 真理子, 水野 幸一, 内木 亮介, 小林 徳行, 山田 光輝, 坂本 篤裕
    2010 年 30 巻 2 号 p. 315-319
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      自治医科大学の五十嵐によって現在の形態の硬膜外内視鏡 (エピドラスコピー) がわが国に紹介されて約10年が経過した. われわれも現在まで試行錯誤を繰り返し, さらに症例を経験することにより治療成績の向上を目指して自分たちなりの手順や手技を作り上げ, ある程度満足のいく結果が得られるようになってきた. 当施設におけるエピドラスコピーの手技, 術後管理など初期の頃と変遷したものを述べてみたい.
  • 伊達 久, 滝口 規子, 千葉 知史, 渡邉 秀和
    2010 年 30 巻 2 号 p. 320-324
    発行日: 2010/03/15
    公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
      エピドラスコピーは, 多くの施設で自費診療となり, 症例数も限られている. 手技的には確立されたものがあるが, 細部に至っては医療機関ごとに多少の差異がみられる. 仙骨裂孔穿刺時の困難症例に関しては, 14G硬膜外針などを利用すれば, 穿刺できることが多い. また, シースに関しても専用のものだけではなく, 心臓カテーテル用の汎用シースを用いると, めくれかえるなどのトラブル時にも対応しやすい. 術中に使用する生理食塩水に関しては, 当院では比較的大量を用いているが, 注入により剥離も容易になることが多く, radiculoplastyなどを行うときも容易に行いやすくなる. 注意するのは, 注入量ではなく, 注入圧と思われる.
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