日本臨床麻酔学会誌
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31 巻, 2 号
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日本臨床麻酔学会第29回大会 教育講演
  • 飯田 宏樹
    2011 年 31 巻 2 号 p. 193-201
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      麻酔科医は周術期の脊髄障害発生・増悪を防ぐ役割を担っている.脊椎手術では術中脊髄機能障害を防ぐために運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)モニタリングやwake-up test(WT)が施行される.MEPは薬物によって抑制され,一方WTは意思疎通の難しい患者にとって困難である.MEPとWTの両立を図る工夫に関して,当院の脊椎手術時のアルゴリズムを示す.また,大血管手術においては,薬理学的脊髄保護に加えて,短時間の先行する非致死的な虚血に引き続いて起こる虚血に対して抵抗性(虚血耐性)を示すプレコンディショニングと呼ばれる現象を脊髄保護の領域でも臨床へと導入することが期待されている.ここでは麻酔科医が臨床上で脊髄保護に関与できる可能性について言及する.
  • 嶋 武
    2011 年 31 巻 2 号 p. 202-208
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      X線透視下硬膜外腔穿刺の利点は直視下に穿刺できるため,安全・確実な穿刺が可能となる点であり,肥満者,穿刺困難例,脊椎異常例が主な対象である.本稿では,機械の準備から透視下に穿刺し,カテーテルを挿入するまでを概説し,上手に行うコツを説明した.硬膜外腔に少量の造影薬が注入されると,陰影は頭側,尾側に縦に長く伸びる.この点をふまえ,カテーテルの走行とカテーテルの先端の位置および少量の造影薬の拡がりにより,椎間孔からの逸脱や血管内・くも膜下腔・硬膜下腔迷入,硬膜外腔外挿入でのそれぞれの特徴的な造影所見を概説した.
日本臨床麻酔学会第29回大会 シンポジウム ─麻酔記録装置の現状と近未来─
  • 讃岐 美智義, 重見 研司
    2011 年 31 巻 2 号 p. 209
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
  • 三条 芳光, 上田 朋範, 森田 耕司, 白石 義人, 風間 富栄
    2011 年 31 巻 2 号 p. 210-220
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      自動麻酔記録装置の用語は,現在ではAIMS(麻酔情報システム)に収束している.AIMSについて,各種文献,著者らの経験,メーカーアンケートをもとに述べた.大学病院での普及率は急拡大し70%程度(米国10%程度)が見込まれる.用途としては麻酔,看護,人工心肺,請求,手術管理などで,手術部門システムとしても機能する例が多く,(OR+A)IMS=ORAIMSが実情である.新機能としては術中薬物動態シミュレーション機能が注目されている.浜松医科大学が舞台となったJSA麻酔台帳ベースの高機能拡張版JSA/AE開発では,AIMSの発展史上,よい試金石となる,先端型のORAIMSが実現した.
  • 讃岐 美智義
    2011 年 31 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      現在の自動麻酔記録システムは術中だけの記録にとどまらず,麻酔管理に関連するさまざまな情報を統合して管理するため,麻酔情報管理システムAnesthesia Information Management System(AIMS)と呼称されるようになった.AIMSが,いわゆる電子カルテシステムと一線を画するためには,麻酔科医を補助し,麻酔の安全性に寄与できるシステムに成長する必要がある.そのためには得意分野・不得意分野をしっかり認識して実現可能な範囲を見定める必要がある.
  • 片山 勝之
    2011 年 31 巻 2 号 p. 226-234
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      メタビジョンシステム®はイスラエルのiMDソフト社が開発し,フクダ電子が日本における総代理店として販売する電子記録システムで,主に手術室,ICUでの使用を念頭に開発されてきた.その特徴として,ユーザー自身による広範囲な作り込みが可能で,システムエンジニアの力量に左右されてきた従来のオーダーメイド電子記録と一線を画している.当院では,2007年に救命救急病棟,ICU,手術室を新築・増築するにあたって手術室12室,ICU12床,ER初療室4床,ER病棟19床の全47床にメタビジョンシステムを導入し,よりよい患者管理のために記録やオーダリングの完全電子化を目指して整備を進めている.
  • 内田 整
    2011 年 31 巻 2 号 p. 235-241
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      現在の自動麻酔記録システムは,麻酔管理に関連する情報を統合的に管理する麻酔情報管理システム(anesthesia information management system:AIMS)であり,多くの施設で実用化されるようになってきた.最新のAIMSはユーザーの要求をおおむね満足する性能に到達しているが,今後,さらなる進化が期待される部分もある.操作や入力に使用するマンマシンインターフェイスの開発,バイタルサインの表示形式や画面の構成に代表される表示系の検討,保存された大量の情報を診療や研究に利用する手法の開発などが未来に託されたテーマである.AIMSの新しい機能として,波形や画像を含めた麻酔中の情報の一元管理や薬物動態シミュレーションによる生体内濃度の表示などが実装されつつある.
日本臨床麻酔学会第29回大会 シンポジウム ─がん疼痛ケア─より良い鎮痛と全人的ケアを目指して─今,麻酔科医に望まれること,できること─
  • 長櫓 巧, 細川 豊史
    2011 年 31 巻 2 号 p. 242
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
  • 池垣 淳一
    2011 年 31 巻 2 号 p. 243-249
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      近年緩和ケアについての関心が急速に高まってきているなかで,麻酔科医に対する期待は大きい.麻酔科医はこれまでにもさまざまな形で緩和ケアに貢献してきたが,がん性疼痛に対して行う神経ブロックは手術麻酔を主に担当する麻酔科医にとっては必ずしも馴染みのある業務ではない.持続くも膜下鎮痛法は本邦ではあまり普及していないが,手技的にはさほど困難でなく,難治性のがん性疼痛に有効であるため,われわれは2001年より行ってきた.倫理委員会の承認や,管理の工夫,地域との連携が必要であったが,患者25名中7名は在宅療養が可能になり,職場復帰できた症例もあった.全人的ケアとは「患者の全苦痛」に対するサポートにより通常の生活に近づけることで,ことに疼痛コントロールは重要であるといわれている.持続くも膜下鎮痛法は優れた鎮痛方法で,地域において実施することは全人的ケアとしての意義があると思われる.
  • 上野 博司, 細川 豊史
    2011 年 31 巻 2 号 p. 250-257
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      近年,がん緩和ケアの重要性が認識されるようになり,研修医や医学生のなかにも緩和ケアに興味を示す人たちが増えつつある.緩和ケアを志すなら麻酔科医になることが近道である.なぜなら,麻酔科医は外科的侵襲から患者を防御するために,局所麻酔を駆使した鎮痛法や患者に苦痛を感じさせないための鎮静法を身につけており,こうした技術は緩和ケアを行ううえで大きな利点となるからである.また,緩和ケアはその性質上,肉体的にも精神的にも重圧のかかる仕事であり,燃え尽き症候群(Burnout Syndrome)の発症防止も重要課題である.麻酔科医の特性をうまく利用してストレスを回避し,緩和ケアチーム全体で燃え尽き症候群発症の防止策を講じることが必要である.
日本臨床麻酔学会第29回大会 パネルディスカッション ─術後鎮痛の上手な選び方,使い方─
  • 齊藤 洋司, 山本 健
    2011 年 31 巻 2 号 p. 258
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
  • 横山 正尚
    2011 年 31 巻 2 号 p. 259-267
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      術後鎮痛法の違いが,術後合併症の頻度や早期離床に影響するといわれている.また,術後の血栓・塞栓予防のために抗凝固療法が一般化されてきた今日では,ベネフィットとリスクのバランスの中で,いかなる術後鎮痛法を選択するかは周術期管理で最も重要なタスクと考えられる.安全性や確実性からIV-PCAによる術後鎮痛の症例は今後増加すると考えられる.本稿ではモルヒネとフェンタニルによるIV-PCAを例にとり,基本的な投与計画法を概説し,副作用および,その対処法につき言及する.
  • 豊田 浩作
    2011 年 31 巻 2 号 p. 268-274
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      硬膜外麻酔は強力な鎮痛効果や術後合併症軽減など他の鎮痛法に比して依然多くの利点を有しており,また術後癌再発の抑制効果も注目されている.近年における超音波ガイド下末梢神経ブロックの技術向上やIV-PCA機器の普及に伴い術後鎮痛の選択肢は拡大しているが,硬膜外鎮痛を他の鎮痛法と組み合わせることにより,各鎮痛法の利点を引き出しかつ欠点を補完する,質の高い術後管理が期待できるであろう.一方,きわめてまれではあるが硬膜外血腫などの重篤な合併症の可能性を有するため,術後に抗血栓薬を使用する症例では,硬膜外麻酔の適応に関する慎重な選択と術後観察による予防および迅速な対処が求められる.
講座
  • 山本 達郎, 大塚 賀子, 問端 朋
    2011 年 31 巻 2 号 p. 275-281
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      レボブピバカインは,ブピバカインの2つの光学異性体のうちS体のみを製剤化したものである.レボブピバカインの特徴は,ブピバカインに比べて心毒性・中枢神経毒性などが弱い点である.さらにブピバカインより運動神経に対する効果が弱く,術後痛管理に適した局所麻酔薬である.ロピバカインと比べて力価は高く,ロピバカインより低濃度で同等以上の効果が得られている.われわれの施設で胸部手術後の術後痛に対して0.2%ロピバカインと0.25%レボブピバカインを使用して比較検討したが,鎮痛効果は同等であり運動神経ブロックなどの副作用も出なかった.レボブピバカインは術後痛管理に有用な薬物であると考えられる.
  • 小出 康弘, 岡村 健太, 伊藤 英基
    2011 年 31 巻 2 号 p. 282-291
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      短時間作用型β遮断薬は周術期の心拍数管理に有用な薬剤であり,適応となる病態は多岐にわたる.使用に際してはその薬物動態,患者の適応病態別の使用法を考慮して安全を確保しながら使用する必要がある.適切な時期に適切な用量を使用する工夫が求められるであろう.軽度の心筋虚血時に使用して虚血を改善させて重篤な心筋虚血イベントに発展させないこと,または心室細動に伴う心筋障害を抑えることができる.心房細動によって生じる心不全や脳塞栓は周術期管理上の大きな問題であるが,短時間作用型β遮断薬を用いてレートコントロールや除細動を行い,循環動態を維持すれば,心不全や脳梗塞の予防につながるであろう.
原著論文
  • 三由 治美, 吉田 仁, 神谷 和男, 松浦 康荘, 荒井 理歩, 武部 真理子
    2011 年 31 巻 2 号 p. 292-297
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      手術患者の術前絶飲食時間の差が全身麻酔下における1回拍出量変化量(SVV)に与える影響についてフロートラックセンサーTMを用いて測定し,検討した.午前手術症例(A群)と午後手術症例(P群)の各10例で検討した.両群の絶飲食時間の差は4時間であった.SVVはA群15.4±6.5%,P群18.5±6.9%と高値を示し,両群ともに循環血液量不足を示唆する状態であった.しかしながら,SVV,血圧,心拍数,CVP,CO,CI,SVRはすべて,両群間に差は認めなかった.術前10時間および14時間の絶飲食状態ではSVV高値を認めたが,4時間という絶飲食時間の差は,このSVVに差を及ぼすほどではなかった.
  • 野中 崇広, 藤本 昌史, 大友 純, 前川 謙悟, 馬場 知子
    2011 年 31 巻 2 号 p. 298-304
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      心臓血管手術1,212例でサーベイランスを施行し,深層手術部位感染に関与する因子を検討した.深層手術部位感染は37例(3.1%)に発生し,起炎菌として,メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌が70%の症例から検出された.危険因子は男性,糖尿病,腎機能障害,末梢血管障害で,術後在院日数は非感染群と比較して長かった(80±45 vs. 22±13日).さらにNational Nosocomial Infection Surveillance risk indexのT時間(心臓血管手術では5時間)を超える症例が84%を占め,冠動脈バイパス手術において両側内胸動脈使用が67%と高率であった.周術期の血糖コントロールに加え,動脈硬化進行例では手術時間を短縮し,両側内胸動脈の使用を避けることが感染予防につながると考えられた.
症例報告
〔日本医学シミュレーション学会〕原著論文
  • 小濱 華子, 駒澤 伸泰, 植木 隆介, 三馬 葵, 中川 雅史, 上農 喜朗
    2011 年 31 巻 2 号 p. 320-326
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      米国心臓協会(AHA)の二次救命処置ガイドラインでは,ラリンジアルマスク(LMA)は気管挿管の代替デバイスである.ディスポーザブルタイプのLMAであるLMA Supreme®(以下SUPREME)とLMA Softseal®(以下SOFTSEAL)の,床上での心肺蘇生(以下,床上蘇生と略す)における有効性を,気道管理トレーナー®を用いてバッグマスクと比較検討した.当院麻酔科初期臨床研修医21名を対象とし,SUPREMEとSOFTSEALと下顎挙上によるバッグマスク換気(バッグマスク)における,初回換気成功率,換気までの時間,換気時の気道内圧,胃膨満の頻度について測定した.初回換気成功率は,SUPREMEおよびバッグマスクは90.5%であったが,SOFTSEALは66.7%であった.SUPREMEはSOFTSEALに比して有効な換気開始までの時間は有意に短縮していた(P<0.05).換気時最高気道内圧は,SUPREMEとバッグマスクはSOFTSEALに比して有意に高かった(P<0.05).胃膨満の頻度は,SUPREMEはバッグマスクに比して有意に低かった(P<0.05).マネキンを用いたシミュレーションから,SUPREMEは救命処置における換気デバイスの一つとして有効な可能性がある.
第21回日本臨床モニター学会(第1回)
  • 久保田 博南
    2011 年 31 巻 2 号 p. 328-333
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      心電図のモニタリングを中心とした生体情報モニターは,急性期の患者を対象として進展してきた.途中から,パルスオキシメトリーやカプノメトリーの機能が追加され,また,対象となる患者は一般病棟や在宅への広がりもみられる.普及の要因の一つにワイヤレス化があげられ,使用者側にも容易に利用できる利点がある.一方で,主要パラメーターである血圧の測定に関しては依然として難題があり,真の血圧モニタリングが可能な装置の出現が望まれる.
  • 諏訪 邦夫
    2011 年 31 巻 2 号 p. 334-340
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      本稿では仕事を小さいコンポーネントに分け,目次ファイルからファイルリンクでコンポーネントファイルに連携する手法を述べる.
      論文を書く場合,休暇をとって一気に仕上げるのは難しく,日常の15分か30分の細切れ時間に小分けした部分を仕上げ,それを組み合わせるのが合理的である.論文は30ほどのコンポーネントからなり,細切れ時間ごとに1つ仕上げれば,30回の細切れ時間で完成する.
      仕事全体を見通した構成ファイルを作り,対応するコンポーネントとファイルリンクでつなぐ.これで,構成を意識しながら個々のファイルにアクセスできて細切れ時間を有効に使える.
      「仕事を小分けにし,目次を作り,ファイルリンクでつなぐ」は,仕事をスムーズに進める秘訣である.
  • 山田 徳洪
    2011 年 31 巻 2 号 p. 341-346
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      スワンガンツカテーテルはベッドサイドで簡単にCO,SvO2,PCWP,CVPがモニタリングできる多機能なカテーテルである.ハイリスク患者において,スワンガンツカテーテルによる循環動態への介入は予後を改善させずに,合併症のリスクを増大させる危険性があることが指摘されている.しかし,肺高血圧症,心原性ショック,両心不全の診断・治療ツールとして現在でも推奨されており,ハイリスク患者の輸液管理においても病態を選択すれば,今後も重要なモニタリングとして輝き続けるであろう.そのためには安全な穿刺方法と正確な知識の獲得を目的としたトレーニングを普及させることが重要である.
  • 田中 克明
    2011 年 31 巻 2 号 p. 347-352
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      灌流指標Perfusion Index(PI)とはマシモ社のパルスオキシメータRadical-7TMで計測可能な末梢灌流の定量的な指標であり,脈波変動指標Pleth Variability Index(PVI)とはPIの呼吸性変動をもととした循環血液量の動的指標である.従来の動的指標は侵襲的で測定が煩雑であったが,PVIは非侵襲的で測定が簡便であり,実用性が期待されている.一方で痛みや呼吸状態,測定部位の違いなどにより,PI・PVIの測定値は大きく影響される.今後,基礎的・臨床的データの蓄積が進めば,PI・PVIのモニタリングは麻酔中の血行動態の最適化に大きく寄与するものと考えられる.
  • 田上 隆
    2011 年 31 巻 2 号 p. 353-358
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      経肺熱希釈法により肺血管外水分量と肺血管透過性係数が測定可能である.肺血管外水分量は,肺水腫の程度・重症度を表わす指標として有用である.ヒト剖検例での妥当性も証明され,統計学的に根拠のある正常値も決定した.さまざまな重症症例での予後との関連が報告され,治療評価項目にも取り入れられている.一方,肺血管透過性係数は,心原性肺水腫と非心原性肺水腫の鑑別・診断に有用であり,治療指針決定や実際の輸液管理に大きなインパクトを与える.輸液管理を考えるうえで,欠かすことのできないこの2つのパラメーターに関して,臨床的意義,妥当性,将来の展望を概説する.
  • 飯島 毅彦
    2011 年 31 巻 2 号 p. 359-363
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/02
    ジャーナル フリー
      これまで輸液療法は計算により行われてきたが,計算に則り晶質液を使用することが大量投与につながり,合併症の原因となっている.循環血液量(BV)を実測すると十分な輸液をしてもBVは保たれないこともあり,晶質液のBVへの効果は一過性であることがわかる.SVV(stroke volume variation)やSV(stroke volume)を応用したgoal-directed fluid therapyは実際に血漿増量効果を確かめながら,個々の症例に合わせた輸液管理ができるとして注目されている.適切なアルゴリズムに従い,血漿増量効果を確かめると膠質液の投与量が増加し,晶質液の使用が減少することが示されている.輸液反応性の指標を適切に使用することが重要であり,晶質液の大量投与を防ぐことにより輸液による合併症を減らすことが期待される.
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