日本臨床麻酔学会誌
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31 巻 , 4 号
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日本臨床麻酔学会第29回大会 教育講演
  • 江木 盛時
    2011 年 31 巻 4 号 p. 551-559
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      重症患者は,インスリン抵抗性の増大により高血糖を生じる.2008年版のSurviving Sepsis Campaign guidelinesでは,この急性期高血糖を150mg/dL以下にコントロールするよう提言している.しかし,集中治療患者の血糖降下療法を検討する無作為化比較試験のうち,最も大規模な研究であるNICE-SUGAR trialは,強化インスリン療法が患者死亡率を増加させることを示した.今後,新たな知見が加わるまでは,144~180mg/dLを目標とする“安全な血糖管理”が推奨されるようになると考えられる.
  • 濱口 眞輔
    2011 年 31 巻 4 号 p. 560-569
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      痛みの評価は診断と治療効果の判定に不可欠であり,科学的信頼性と妥当性を有する方法が理想的である.また,患者が痛みを複数の医師に同様に伝えられ,医師も主観によらずに患者の状態を把握できる方法でなくてはならない.評価法としては言語や数字,視覚スケールによるものが簡便であり.疼痛外来などで頻用されている.そのほかには痛覚伝導系刺激やサーモグラフィなどの機器を用いた評価法,画像診断による評価法がある.痛みは患者の持つ内的経験であるため主観的評価となりやすく,外部からの客観的評価は非常に困難である.したがって,主観的評価法と客観的評価法を正しく理解して施行し,機器による評価では機器の特性を十分に理解して施行する必要がある.
  • 田中 義文
    2011 年 31 巻 4 号 p. 570-579
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      体表心電図はアイントーベン(Einthoven),ウイルソン(Wilson)の発見したベクトル手法で説明される記述が多い.しかし,この考えに固執するとST変化やT波の異常を説明できない.本稿は,心電図測定の基本原理に戻って,心内膜側細胞内電位と心外膜側細胞内電位との電位差が各種の異常心電図をもたらすことを解説する.
  • 横田 美幸, 関 誠, 大島 勉
    2011 年 31 巻 4 号 p. 580-587
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      MAC(Monitored Anesthesia Care)は,侵襲的医療行為のあらゆる状況で適応となる.MACの本質は,診断や治療に伴う医療行為で生じてくる患者の生理学的変化(血圧変動や呼吸抑制などを含む生体維持機能)や医学的問題の麻酔科学的評価や管理である.このためには鎮痛薬や鎮静薬の投与を行うが,MACを実施する医師は,必要となればすぐに全身麻酔に移行する準備や能力が必要であることは言うまでもない.このような能力のない医師が実施すれば危険であることは明白である.したがってその技術度は,全身麻酔に準じていると考えられる.日本においてもMACの重要性については異論のないところである.したがってMACに関して共通の認識を形成し,侵襲的医療行為におけるMACの必要性を患者・国民に啓発していく必要がある.
日本臨床麻酔学会第30回大会 特別講演
  • 前田 光哉
    2011 年 31 巻 4 号 p. 588-593
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      麻酔医療は,手術の前の患者診察から始まり,手術中の呼吸管理,循環管理,疼痛管理,そして手術後の患者の呼吸,血圧,心拍数の安定や意識の回復の確認といった,一連の重要な医療行為を指していると認識している.麻酔医療を担う医師は,手術のために麻酔をかけるだけでは終わらず,手術の前後にわたって患者が安全かつ快適に手術が受けられるよう日々研鑽を積み,努力しておられることと推察する.本稿では,日本麻酔科学会が「麻酔科医不足への対応策」としてあげた,地域圏内での麻酔業務の提携,麻酔業務における役割分担の明確化,卒後臨床研修における麻酔科の必修化など,麻酔医療の現状,課題,今後について述べる.
日本臨床麻酔学会第30回大会 シンポジウム ─非がん性慢性疼痛に対するオピオイド使用─患者選択・評価・モニタリングをどのようにおこなうか?─ ─
日本臨床麻酔学会第30回大会 パネルディスカッション ─各国の医療事情─
  • 河内 正治
    2011 年 31 巻 4 号 p. 620-628
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      本セッションでは「各国の医療事情」というテーマで,海外での医療経験を有する麻酔科医と中国の医師を招いて行われた.しかし日本人の多くが医療行為に携わっている欧米諸国からの報告ではなく,中国,東南アジア,中東といった,むしろ日本人医師としては比較的なじみの薄い,しかし近隣の諸国における活動報告であった.こういった諸国での医療活動は欧米における活動とは異なり,医療行為に参加し共同で治療行為に当たることが多い点が特徴である.したがって活動の方法や内容は多岐にわたる.本稿では異なった医療連携の方法として,厚生労働科学研究費によるベトナムでの研究活動とベトナムの医療事情について述べた.
  • 鈴木 隆雄
    2011 年 31 巻 4 号 p. 629-636
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      イラク,アフガニスタンともに紛争地であるが,医療事情は大きく異なる.イラクは1991年から2004年まで国連の経済制裁下に置かれていたが,人的資源では自立再生可能な範囲にあり,2003年のイラク戦争後の経済回復で医療機器が充実し医療事情も驚くほど向上している.アフガニスタンは1979年のソ連軍侵攻以来,現在に至るまで経済が麻痺し,社会的インフラも大きく破壊されたため自立再生に向けた人的資源も不十分である.
      両国とも紛争地のため戦傷外科麻酔が行われる.戦傷外科麻酔は麻酔の基本についてだけでなく,術後管理,栄養管理等の周辺領域においても原点を考えさせられる分野である.
日本臨床麻酔学会第30回大会 特別企画 ─若い麻酔科医に聞かせたい私の失敗学─
  • 藤森 貢
    2011 年 31 巻 4 号 p. 637-640
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      「勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし」という名言のごとく,医療における失敗もその誘因が考えられる.失敗というものは(1)知識不足,(2)技術力不足,(3)手順,ルール違反(手抜き),(4)偶発(多因子が重なる)によるといわれている.事故防止の取り組みとしてAnaesthetists’ non-technical skills(ANTS)の重要性が提唱されている.これはパイロットに対するNOTECHS systemと同様で,麻酔学の知識や技術以外に重要な因子として(A)職務遂行能力,(B)チームワーク,(C)状況判断,(D)決断力などを評価するというものである.成功からは得るものは少ないが失敗からは多くを学ぶことができる.筆者の半世紀にわたる臨床麻酔の中で経験した失敗例も記し,前車の轍を踏まないための一助としたい.
  • 土肥 修司, 飯田 美紀
    2011 年 31 巻 4 号 p. 641-649
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      臨床麻酔は,手術侵襲という激しいストレスから生体を保護し,臓器機能異常を治療・修復することを目的としている.そこには,知識と技術と経験が必須である.患者の生命を第一とする姿勢には麻酔科医としていささかの揺るぎもなく,患者中心であることと,外科医に最良の手術環境を提供するという視点には迷いもなかった.だが,過去の約40年間,私は心配性の麻酔科医で,「患者の惨事の原因となる事故を起こさないよういつも心配しながら麻酔をかけて」いたように思う.それにもかかわらず,ここに紹介した3例はいずれも大事に至らなかったけれども,落ち度があり,それ故に一時は深く落ち込み,私自身は重大な教訓を得た.医療事故につながる失敗が起こる背景には,(1)知識不足,(2)技術力不足,(3)経験不足,(4)手順,ルール違反,(5)偶発,が関係するものの,多くは何かしらの,(4)手順,ルール違反(手抜き)が背景にあったのである.
講座
  • 稲垣 喜三, 山崎 和雅, 大槻 明広, 持田 晋輔, 船越 多恵, 坂本 成司
    2011 年 31 巻 4 号 p. 650-659
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      外科的侵襲で生じる疼痛は,脊髄を介して視床下部に働いて下行性の神経内分泌反応を活性化するとともに交感神経系も活性化し,心血管反応や血液凝固能,代謝機能を亢進させ,免疫機能を低下させる.外科的侵襲による組織障害は炎症反応を助長し,炎症性サイトカインの産生による発痛の増強とさらなる神経内分泌反応の活性化をもたらす.的確な鎮痛手段は,神経幹への侵害情報の入力を減弱あるいは遮断することで,神経内分泌反応を正常化させる.インスリンは,インスリン受容体発現細胞中のAktを活性化して細胞内恒常性を維持するとともに,脂肪組織や骨格筋タンパクの分解を抑制する.鎮痛は,術中の恒常性維持に対して,重要な役割を担っている.
  • 白石 義人
    2011 年 31 巻 4 号 p. 660-668
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      パルスオキシメータは現在,世界中の手術室やICUで必須の患者モニターとなっている.しかしながら従来のパルスオキシメータ(2波長)では異常ヘモグロビンの検出ができず,その異常ヘモグロビンの存在下では正しい酸素飽和度も測定できなかった.現時点でパルスオキシメータ改良の方向性は二つある.第一は,低灌流,体動あるいは小児に対しての信号検出における鋭敏性と正確性の追求である.第二に(多波長)パルスオキシメータにより,異常ヘモグロビンや正常ヘモグロビンの測定が可能となった(例えばCOヘモグロビン,メトヘモグロビンや総ヘモグロビンなど).近い将来,無侵襲の多波長パルスオキシメータを用いて,大量出血や低容量などの迅速な診断が実現可能であろう.一方,無侵襲の多機能(多波長)パルスオキシメータから波形解析により得られる新しいパラメーター(灌流指標PI:Perfusion Indexや脈波変動指標PVI:Pleth Variability Index)は有用である.PIは末梢循環を反映するだろう.PVIは動脈圧波形から得られるパラメーター(1回拍出量変動SVV:Stroke Volume Variation)と同様に輸液反応性の判断指標として有望である.結論として,大量出血や低容量に対しての治療や診断的価値は,無侵襲でリアルタイム測定可能な多波長パルスオキシメータを用いることにより周術期患者管理において適応が拡大する可能性が示唆された.
原著論文
  • 吉川 範子, 平川 公美子, 堀田 有沙, 中本 あい, 大平 直子, 立川 茂樹
    2011 年 31 巻 4 号 p. 669-677
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      薬剤溶出ステント(DES)留置の既往がある予定非心臓手術を受けた39症例で,抗血小板薬の内服状況,入院中の心血管合併症,出血に関する合併症を後ろ向きに調査した.2009年に,手術室委員会(委員会)でDES留置患者に関する周術期管理に注意を促したが,その前後について比較検討した.抗血小板薬の休薬がなかった症例は39例中8例(委員会前20例中2例,後19例中6例)で,委員会後増加した.14日以上休薬されていた症例が4例あったが,いずれも術前に出血があり内服を中止していた.全症例で周術期の心血管合併症や術中大量出血は認めなかったが,1例で術後出血を認めた.DES留置症例に対して手術を行う場合は,主治医,麻酔科医に加えて循環器内科医とともに最適な治療方針を議論すべきである.
  • 内田 慎也, 荻野 祐一, 齋藤 繁
    2011 年 31 巻 4 号 p. 678-684
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      本邦においてエアウェイスコープ®(AWS)は画期的な気道挿管用具として急速に普及しつつある.われわれは,AWSの有用性を調べるため,(1)Macintosh型喉頭鏡とAWSによる声帯視野の比較,(2)Macintosh型喉頭鏡とAWS使用時の挿管時間および易習熟性の比較,(3)術前に挿管困難症が予測し得なかった症例(挿管困難症例)において,AWSをMacintosh型喉頭鏡に続く第2選択として使用したときの有用性の3点の評価を行った.その結果,AWSはMacintosh型喉頭鏡に比して経験回数に比例した有意な挿管時間の短縮が見られ,Macintosh型喉頭鏡で気管内挿管に難渋する症例でも容易であった.群馬大学医学部附属病院の1年間における全身麻酔症例4,198例中,手術前に挿管困難症が予測できず,かつMacintosh型喉頭鏡で挿管できなかった挿管困難症例(挿管困難遭遇症例)は37例(遭遇率0.881%)であり,その全例においてAWSを用いた挿管に成功した(3例はfiberscopeもしくはガムエラスティックブジーを併用).結論として,AWSは比較的容易に習得が可能で,挿管困難症例遭遇時に有用であることが示唆された.
症例報告
  • 平井 絢子, 住谷 昌彦, 冨岡 俊也, 関山 裕詩, 山田 芳嗣
    2011 年 31 巻 4 号 p. 685-688
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      混合性結合組織病(MCTD)の経過中に生じた脊髄炎により脊髄損傷後疼痛に類似した難治性の神経障害性疼痛を呈した患者に対して,ガバペンチンを400mg/日から開始し2週間で2,000mg/日まで短期間に漸増することによりVAS(0-100mm)は70/100から30/100に低下した.疼痛の重症度評価にはVAS以外にNeuropathic Pain Symptom Inventory(NPSI)日本語版も用い,治療前後で38から15に低下した.ガバペンチンを極短期間に漸増することで神経障害性疼痛の治療期間を飛躍的に短縮することができ,NPSIはVASの推移とも並行し,神経障害性疼痛のより詳細な重症度評価に有用と考えられる.
  • 小寺 厚志, 上妻 精二, 宮崎 直樹, 瀧 賢一郎, 江崎 公明
    2011 年 31 巻 4 号 p. 689-695
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      57歳,男性.9年前より糖尿病に対してインスリン加療中であったが,今回,下腿の腫脹と意識障害にて救急搬送された.搬送時の意識状態はJapan Coma ScaleでII-30,血圧は73/31mmHg,血糖値は1,196mg/dl,尿中ケトン体は陽性であった.右下腿壊疽を合併しており,重症の糖尿病性ケトアシドーシスと診断し,緊急の大腿切断術が施行された.麻酔は自発呼吸下のケタミン,フェンタニル,プロポフォールによる静脈麻酔で管理した.その周術期管理において,(1)麻酔管理方法,(2)重度アシドーシスの補正,(3)手術侵襲に対する痛覚の評価,(4)意識障害と術後の痙攣重積発作,(5)術後の繰り返す心静止や難治性不整脈に苦慮したが,集学的治療により軽快し良好な結果を得た.
  • 三好 寛二, 中村 隆治, 楠 真二, 濱田 宏, 河本 昌志
    2011 年 31 巻 4 号 p. 696-699
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)の治療として胸腺摘出術を受け,10ヵ月後に転移性胸腺腫で再手術を要した症例を経験した.1度目の手術の際は術後に呼吸補助は不要と予測したが実際には呼吸補助を要し,2度目の手術の際は術後に呼吸補助は必要と予測したが実際には呼吸補助を要さなかった.本症例の術後呼吸補助の要否を決定した要因は,手術侵襲が最も大きいと考えた.MG合併症例は術前状態の評価に加え,術式を含めた手術侵襲も考慮し術後の呼吸管理計画を立案する必要がある.
  • 長井 友紀子, 西山 由希子, 樋口 恭子, 牛尾 将洋, 伊地智 和子, 田中 修
    2011 年 31 巻 4 号 p. 700-706
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      症例は67歳,女性.入院15日前に右足関節外顆骨折を受傷し,下肢ギプス包帯固定をされていた.盲腸癌に対する手術目的にて当院外科に入院,回盲部切除術を施行した.その際の静脈血栓塞栓症(VTE)予防処置として,左下肢のみに間欠的空気圧迫を行った.術後2日目の離床後初回歩行時に呼吸苦が出現し,心肺停止状態となった.心肺蘇生を行いPCPS導入の上行った肺血管造影で左右肺動脈の閉塞を認め,急性肺血栓塞栓症(APTE)と診断し,カテーテルによる血栓除去を行った.術後5日目にPCPS離脱,後遺症をきたすことなく回復した.下肢ギプス固定された患者は周術期にVTE発生のリスクが高いことを十分認識し,適切な治療や予防策を行う必要がある.
紹介
  • 志田 恭子, 平手 博之, 薊 隆文, 笹野 寛, 祖父江 和哉
    2011 年 31 巻 4 号 p. 707-713
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
      名古屋市立大学病院麻酔科では2009年3月より,麻酔中の危機的状況に対する初期対応を簡潔に記した「名市大麻酔パニックカード」を作成し,麻酔器に取り付けて安全対策を行っている.設置8ヵ月後に,麻酔科医26名,手術室看護師44名に対し,有用性についてのアンケート調査を行い評価した.パニックカードを実際に使用した危機的状況に陥る例は非常に少なく,現時点での有用性を判断するのは難しかったが,アンケート結果からはカードがあることで安心感を持てるなどの感想を得られた.安心して麻酔業務を行えるという点で有用であり,偶発症に関する啓発の効果も含め,麻酔の安全性向上に貢献できていると考える.
[日本医学シミュレーション学会] 原著論文
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