日本臨床麻酔学会誌
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31 巻, 5 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
日本臨床麻酔学会第29回大会 教育講演
  • 赤松 繁, 橋本 慎介, 飯田 美紀, 小島 明子, 田中 亜季, 福岡 尚和
    2011 年 31 巻 5 号 p. 745-754
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      周術期管理において経食道心エコー法(transesophageal echocardiography:TEE)が頻用されるようになってきたが,心エコー法の基本は経胸壁心エコー法(transthoracic echocardiography:TTE)である.TTEは術前評価からベッドサイドでの診断まで,さまざまな状況で用いられる手技であるが,その最大の特徴は非侵襲的手技であり,ベッドサイドで繰り返し施行することができることである.TTEでは,傍胸骨アプローチ(長軸像,短軸像),心尖部アプローチ(四腔像,五腔像,二腔像,長軸像)などで心腔を描出し,断層心エコー法,ドプラー心エコー法で診断と評価を行う.周術期管理においては,TTEとTEEのコンビネーションで用いることによって,心エコー法の有用性がより高まると考えられる.
日本臨床麻酔学会第30回大会 教育講演
日本臨床麻酔学会第30回大会 シンポジウム ─筋弛緩拮抗の新局面を考える─
日本臨床麻酔学会第30回大会 パネルディスカッション ─医事紛争─
  • 野坂 修一, 中馬 理一郎
    2011 年 31 巻 5 号 p. 798
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
  • 嶋田 文彦
    2011 年 31 巻 5 号 p. 799-806
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      これまで麻酔科領域におけるインフォームドコンセントを得る上での「麻酔説明関連文書」の重要性に着目し,日独の病院間の比較を行ってきた.この経験をもとに,吹田市民病院においても「麻酔説明関連文書」の導入を開始した.導入にあたっては,「麻酔説明文書の事前配布,麻酔前回診と同意書提出の間に時間をおく」など「患者・家族が説明を理解した上で同意できる」よう配慮した.「麻酔が原因と考えられる偶発症発症率の公表」は麻酔同意の拒否につながるかとも懸念したが,むしろ麻酔への理解を深めるのに貢献した.今後の検討課題として,「各麻酔科学会認定病院における偶発症発症率の公表,患者への個別的対応」等があげられる.
  • 松川 正毅
    2011 年 31 巻 5 号 p. 807-812
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      本稿では,不法行為責任(契約責任も含めて)の概説から始めて,医療過誤訴訟の法理論の特徴を明らかにした.「違法性」などの考え方を例にして,不法行為責任の要件の変遷をたどり,過失概念の客観化について述べた.そして,わが国の医療過誤訴訟では,「医療水準論」が重要な役割を果たしつつあることを,判例を題材にして示した.この分野でも,要件の客観化が進んでいることを過失の推定や因果関係の推定理論を例にして記述した.さらに加えて,通説によれば慰謝料請求の対象となる「説明義務違反」による責任について説明した.
  • 横田 美幸, 関 誠, 大島 勉
    2011 年 31 巻 5 号 p. 813-819
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      医療事故が即医事紛争につながるわけではない.医事紛争は,患者・家族と医療関係者との信頼関係の崩壊により発展してきている.麻酔事故の特殊性は,(1)その重大性,(2)密室性,(3)麻酔自体への国民の無理解の3つがある.このため,いったん事故が発生すると,医事紛争(刑事事件や民事事件)になりやすい傾向にある.またペインクリニックでは,結果としての後遺症(神経障害)が問題となることも指摘しておく.本稿では,過去の刑事裁判記録,医事紛争解決事案を調査し,その成り立ちと結果より,今後の医事紛争予防の道標と成るようにすべく考察した.
日本臨床麻酔学会第30回大会 パネルディスカッション ─Context Sensitive Analgesiaに基づく抗凝固療法下の術後疼痛管理(術後から退院まで)─
講座
  • 猪又 孝元
    2011 年 31 巻 5 号 p. 846-853
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      現在の心不全治療は,目に見えて悪い状態からの脱却を目指す「目に見える治療」と,長期予後改善というエビデンスに基づく「目に見えない治療」とに大別される.前者はその場を乗り切る治療であり,後者は固有の質を改善する治療である.心不全は進行性の病態が特徴的であり,先手先手の介入がより大きな利益を生む.最近では,慢性期予後を意識しての急性期介入,すなわち「目に見える治療」の際に「目に見えない治療」を含有できるかの試みがなされつつある.根底に流れるコンセプトは,治療アウトカムをいかに的確かつ具体的に意識できるかという点である.周術期という一種の急性病態に対し,麻酔科医が念頭に置くべき新たな潮流である.
原著論文
  • 長澤 実佳, 佐々木 千晶, 岩平 佳子
    2011 年 31 巻 5 号 p. 854-859
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      乳房切除術後の人工物による乳房再建術は,組織拡張器ティッシュ・エキスパンダー挿入術(以下,EXP挿入術)によりスペース作成後,シリコンインプラント入れ替え術(以下,入れ替え術)を施行する.当院では,これらの手術を年間約400件,日帰り全身麻酔で行っている.実際の麻酔管理を提示し,2007年4~11月に施行された,ASAクラス I ~II患者のEXP挿入術75例,入れ替え術106例について,術後合併症の発生頻度と,麻酔方法別および手術別の術後合併症の頻度差を,患者アンケートにより調べ比較検討した.その結果,創痛が最も多く,嘔気,頭痛,眩暈の順であった.創痛はEXP挿入術で多く,頭痛は入れ替え術で多かった.安全な日帰り麻酔のためには,術後合併症を予測し,予防に最善を尽くし,患者への教育も必要であると思われる.
  • 宇佐美 博子, 一ノ宮 大雅, 松本 周平, 津田 敦, 前川 拓治, 澄川 耕二
    2011 年 31 巻 5 号 p. 860-864
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      生体肝移植患者では肝機能障害に伴う凝固機能障害,門脈圧亢進症のため,手術中に大量出血することがある.今回,生体部分肝移植症例40例を対象とし,周術期ヘモグロビン値(Hb),血小板数,凝固機能検査と術中・術後の出血量,輸血量を後ろ向きに調査した.術中出血量に関しては執刀前のHb,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を含む回帰式が得られ,執刀前のHb,プロトロンビン時間(PT-INR),APTTは術中赤血球輸血量との関連性を示した.術後3日間の赤血球輸血量と終刀時凝固機能検査には相関を認めなかった.執刀前のHb,PT-INR,APTTは,術中出血量と輸血量の指標になると考えられる.
症例報告
  • 藤井 範子, 本間 梨絵, 山本 博俊, 肥川 義雄
    2011 年 31 巻 5 号 p. 865-868
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      下大静脈から右房まで浸潤した原発性肝細胞癌に対する拡大肝外側区域切除および人工心肺下右房内腫瘍塞栓摘出術の麻酔を経験した.症例は74歳,女性,身長147.3cm,体重49.9kg.人工心肺下に右房内腫瘍塞栓摘出術を先に施行すれば肺塞栓の危険性は低下するが,ヘパリン投与下での肝切除による大量出血の危険性が高くなる.そこで胸骨正中切開を最初に行い人工心肺用のカニューレ挿入が即座に可能になるように,上行大動脈・上大静脈にタバコ縫合をかけた後に肝切除を行った.経食道心エコーで腫瘍を観察しながら麻酔管理を行い,合併症なく無事に手術を終了した.
  • 大下 修弘, 堤 保夫, 高田 香, 野村 佳世, 大下 修造, 田中 克哉
    2011 年 31 巻 5 号 p. 869-872
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      全身麻酔で管理した喉頭微細術の翌日に頚部皮下気腫と縦隔気腫が明らかになった症例を経験した.全身麻酔導入後の血行動態は安定していたが,耳鼻科医による複数回の直達喉頭鏡挿入操作に伴って持続する高血圧と頻脈が出現し,麻酔薬のみでの制御が困難となった.ランジオロールとニカルジピンの持続投与開始後も高血圧と頻脈は持続したが,直達喉頭鏡の抜去により血行動態は正常範囲まで低下した.手術翌日より頚部皮下気腫と縦隔気腫の徴候が顕著となり保存的治療にて軽快した.術中の異常高血圧や頻脈の原因として,発症早期の皮下気腫と縦隔気腫の関与が示唆された.
  • 荒井 理歩, 神谷 和男, 三由 治美, 吉田 仁
    2011 年 31 巻 5 号 p. 873-876
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      症例は52歳,男性.大動脈弁置換術後の上行大動脈瘤に対して,大動脈弁再置換術と上行大動脈置換術を施行した.1度目の人工心肺離脱時に大量出血をきたし,人工心肺を再開し止血術を施行した.2度目の離脱時に急激な肺動脈圧の上昇を認め,術中の経食道心エコーで原因となった心房中隔の心内膜下血腫を発見した.術者と協議の結果,再度の人工心肺下で血腫除去術を施行した.その後血行動態は安定し,人工心肺からの離脱も順調で,手術は無事終了した.不安定な血行動態の原因究明に術中経食道心エコーが非常に有用であると考えられた.
  • 川崎 潤, 小島 千佳, 原 さやか, 小山 薫, 宮尾 秀樹, 田中 健一
    2011 年 31 巻 5 号 p. 877-883
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      73歳,男性.心筋梗塞・冠動脈ステント挿入,チクロピジンとアスピリンを内服していた.鼠径ヘルニア手術が予定され,手術15日前より抗血小板薬は中止.5時間前までへパリンが投与された.手術直前に血小板のprocoagulant activityを調べるため,アルガトロバンでトロンビンを抑制した上で,血小板を刺激するmodified-thrombelastographyを行った結果,血小板機能は低下していた.脊髄くも膜下麻酔を避け,全身麻酔を行った.チエノピリジン系薬剤の場合,14日以上の休薬でも血小板機能が低下している症例があると思われ,個々の患者の薬効評価を行うことが望ましい.
  • 福田 浩平, 堤 保夫, 曽我 朋宏, 木下 倫子, 田中 克哉, 大下 修造
    2011 年 31 巻 5 号 p. 884-887
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      コントロール不良の褐色細胞腫を合併した状態で,小脳血管芽腫による著明な頭蓋内圧亢進のため緊急手術が必要となったvon Hippel-Lindau病患者に対する麻酔を経験した.症例は37歳男性.全身麻酔下に,副腎腫瘍切除術,小脳腫瘍切除術の順で手術が行われた.副腎操作時は高用量レミフェンタニル(1.0μg/kg/min)と降圧薬にて,血圧を良好に管理することができた.また褐色細胞腫摘出後に速やかに血圧は正常化し,脳外科手術中も循環動態は安定していた.術前にコントロールされていない褐色細胞腫を合併した患者に対する循環管理において,高用量レミフェンタニルを用いた麻酔管理は一つの選択肢となりうる.
  • 渡邉 栄子, 廣 加奈子, 清水 美恵, 長谷川 隆
    2011 年 31 巻 5 号 p. 888-891
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル フリー
      症例は30歳の女性.妊娠24週時右自然気胸に対して胸腔鏡下ブラ切除術が予定された.麻酔はチオペンタール,フェンタニル,ベクロニウムで導入し,32Fr二腔気管支チューブを挿管した.麻酔維持はセボフルランと硬膜外麻酔で行った.一側肺換気にて呼気終末二酸化炭素分圧は66mmHgまで上昇したが,両側肺換気に戻したところ改善が見られた.術後,自己調節硬膜外鎮痛で0.18%レボブピバカインを6ml/時で持続注入し,疼痛時には3mlのボーラス投与を行った.術後経過は良好で,10日目に退院した.本症例では呼吸管理に難渋したが,両側肺換気に戻したところ二酸化炭素分圧は改善傾向となり,胎児アシドーシスは回避されたと考えられた.
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