日本臨床麻酔学会誌
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33 巻, 1 号
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日本臨床麻酔学会第31回大会 招待講演
  • 大田 健
    2013 年 33 巻 1 号 p. 001-009
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      わが国の成人喘息の治療の基盤となるガイドライン,JGL2009について概説した.その要点は以下の6つに集約される.(1)成人喘息は治癒しないことを前提に,喘息のコントロール良好の維持を目標とする.(2)長期管理の段階的薬物療法は,治療の強弱を基にした4段階の治療ステップによる.(3)長期管理薬の中心は吸入ステロイドで,全治療ステップで使用が推奨される.(4)無治療の患者では重症度を判定し,該当する治療ステップを選択する.(5)治療中の患者では,コントロール良好かどうかを判定して治療を調整する.(6)喘息死ゼロ達成の鍵となる高齢者喘息についても慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療が提示されている.
日本臨床麻酔学会第31回大会 シンポジウム ─麻酔管理と長期予後─
  • 工藤 一大, 加藤 正人
    2013 年 33 巻 1 号 p. 010
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
  • 工藤 一大
    2013 年 33 巻 1 号 p. 011-016
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      麻酔法,鎮痛薬,鎮痛方法などの違いによって,がん手術後のがん転移,再発率が異なる可能性があると報告されている.ここでは,麻酔・鎮痛方法と乳がん,前立腺がん,大腸がん,卵巣がんなどの手術後の長期的な転移・再発,生存率についての論文を紹介する.紹介した12論文中有意差が認められたのは5編,有意差なしが7編であった.ほとんどの研究は後ろ向き研究であり,中には症例数の少ないものもある.今後の前向きランダム化された大規模研究の成果が早く複数出てくるのが期待される.
  • 北村 享之
    2013 年 33 巻 1 号 p. 017-024
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      高血糖は手術予後増悪因子として認識されているが,周術期糖代謝管理指針はいまだ確立されていない.周術期におけるエネルギー需給バランス維持の重要性は自明であり,生体が利用できるエネルギー源の中で糖質の利用効率が最も高いことから,糖代謝管理が周術期に果たす役割は大きいと考えられる.周術期にはさまざまな因子が糖代謝を修飾する:栄養状態,絶食処置など(術前因子),手術侵襲,麻酔管理方法,代謝条件など(術中因子),炎症,栄養管理方法など(術後因子).これらが複雑な関連性をもって糖代謝を修飾するが,その機序は未解明の部分が多い.今後の研究により周術期糖代謝の解明が進み,手術予後改善に貢献しうる糖代謝管理指針が確立されることが望まれる.
  • 中嶋 康文
    2013 年 33 巻 1 号 p. 025-031
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      周術期軽度低体温により,周術期の罹患率の上昇,医療コストの増大をもたらすことが1990年代後半から主要医学雑誌で数多く報告された.一方で最近は,低体温の臨床的適用と患者アウトカムを検討した治療的低体温の研究報告が数多く見られる.また,集中治療領域では重症患者の発熱管理が問題となるが,解熱すべきかいまだに一定の見解を得ない.体温管理の残された臨床研究課題として,(1)1時間以内の短時間手術を含む再分布性低体温予防のための術前からの積極的な保温と患者予後について,(2)治療的低体温の適応と方法,(3)重症発熱患者の体温管理方法,(4)周術期(特に術前,術後)の非侵襲的中枢温測定方法の開発等があげられる.
日本臨床麻酔学会第31回大会 シンポジウム ─新たな神経障害痛の治療戦略─
  • 山本 達郎, 比嘉 和夫
    2013 年 33 巻 1 号 p. 032
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
  • 飯田 宏樹, 松本 茂美
    2013 年 33 巻 1 号 p. 033-040
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      多くの神経障害性疼痛のガイドラインにおいて,デュロキセチン(DLX)は第1あるいは第2選択薬に分類され,重要な位置を占め,本邦でも唯一疼痛疾患に保険適応が認められている抗うつ薬である.米国では,神経障害性疼痛に加えて,慢性腰痛等の運動器疼痛にも適応が認められている.DLXは副作用が少なく,忍容性が高い薬剤である.鎮静作用が強くなく,体重増加作用が明らかでないことから,他の鎮痛薬(プレガバリン,オピオイド等)との併用薬としても使いやすい特徴を有する.鎮痛作用の中心は直接的な鎮痛効果であり,抗うつ作用を介しての間接的な作用は弱い.併せて当科での使用状況を適応疾患・副作用を含めて概説したい.
  • 川井 康嗣
    2013 年 33 巻 1 号 p. 041-050
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      トラマドールは世界で広く使用されているオピオイド鎮痛薬で,わが国では中等度~高度のがん性疼痛と術後痛の適応で注射剤が,また非がん性慢性疼痛と抜歯後疼痛の適応で経口剤(アセトアミノフェン配合剤)が用いられている.主な作用機序はμオピオイド受容体への作用と,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用である.トラマドールはがん性疼痛管理においては,世界保健機関(WHO)の三段階除痛ラダーの第2段階に属する弱オピオイドとして位置づけられている.モルヒネをはじめとする強オピオイドと比較すると,副作用が軽微で依存性が少なく,麻薬および向精神薬の指定がないなど,比較的安全性が高く使用しやすいのが特長である.近年は非がん性慢性疼痛に対して有効かつ安全に投与することに注目が集まっている.
  • 平田 和彦, 比嘉 和夫, 廣田 一紀, 若崎 るみ枝, 柴田 志保, 仁田原 慶一
    2013 年 33 巻 1 号 p. 051-055
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      神経障害痛の薬物治療には複数のガイドラインがあるが,三環系抗うつ薬は第一選択薬の一つである.神経障害痛を軽減することが確立している三環系抗うつ薬はアミトリプチリンとノルトリプチリンである.しかし,三環系抗うつ薬の普及は十分ではない.三環系抗うつ薬が十分量内服されていない神経障害痛の患者では,まず三環系抗うつ薬を漸増することが必要である.アミトリプチリンとノルトリプチリンの内服は10~20mg/日から開始し,十分痛みが軽減するか,副作用で増量が困難になるまで増量する.服用量が多くなっても眠前1回の内服とする.
  • 佐伯 茂, 水谷 仁, 小川 節郎
    2013 年 33 巻 1 号 p. 056-063
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      非がん性神経障害痛に医療用麻薬が使われるようになってきた.日本ペインクリニック学会による「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン」では医療用麻薬は第三選択薬に分類されている.保険上はがん性痛にのみ適応が認められなかったフェンタニル貼付薬も,非がん性神経障害痛への使用が認められるようになり,医療用麻薬の使用頻度は増加することが予測される.オキシコドン,モルヒネ,フェンタニルなども製剤によっては非がん性神経障害痛への適応がわが国では認められていないものもあるが,海外ではその有用性が報告されている.医療用麻薬を処方する際には乱用の危険性をスクリーニングすることを考慮するべきで,投与中は十分なフォローアップが必要である.一方,医療用麻薬使用患者が海外旅行を希望する場合がある.医療用麻薬を携帯して海外渡航する際の手続きについて医療用麻薬を処方する医師は知っておく必要があると考える.
講座
  • 高木 俊一
    2013 年 33 巻 1 号 p. 064-069
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      「効かない?」スガマデクスは,残存筋弛緩の問題が起こる.一方,「効きすぎる?」スガマデクスは,再挿管時に問題となる.残存筋弛緩はスガマデクスを使用しても起こりうることであり,特に高齢者や,スガマデクスがロクロニウムに対して相対的に過少投与される場合,そしてセボフルラン麻酔時には残存筋弛緩の可能性を考慮すべきである.また,再挿管時には先に投与されているスガマデクスとこれから投与するロクロニウムとのバランスを考慮することが必須であるが,ショックや腎不全などによってロクロニウムの効果発現が遅れる場合がある.
原著論文
症例報告
〔日本医学シミュレーション学会〕第7回日本医学シミュレーション学会 基調講演
  • 太城 力良
    2013 年 33 巻 1 号 p. 112-116
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      シミュレーション関連機器の購入実績を調べ教育研修費に占める割合を算出した.過去12年間の教育研修費は,総額16.7億円でその年次ごとの変動は少なかった.この期間中のシミュレーション機器の購入総額は1.77億円(10.6%)であった(私学助成金による支払分を含む).その中では蘇生関連シミュレータの占める割合が最も高く,次いで,内視鏡・腹腔鏡手術・縫合関連のシミュレータが続いた.蘇生関連シミュレータの購入部署は,卒後研修センター,救命救急センター,麻酔科,小児科,医療安全管理室などと多岐にわたっていた.シミュレータ機器の管理は,各部署に任せられ全体像を誰も把握していなかったため,データベース化と一元化を図り,機器管理者の専任化の必要性を感じた.これらを支える教育病院の経営基盤の安定を保証できる診療報酬の改定が望まれる.
〔日本医学シミュレーション学会〕第7回日本医学シミュレーション学会 教育講演
〔日本医学シミュレーション学会〕第7回日本医学シミュレーション学会 シンポジウム ─病院内に発生しうる患者に起因しない緊急事態─
  • 野村 岳志
    2013 年 33 巻 1 号 p. 124-125
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
  • 島田 二郎, 田勢 長一郎, 塚田 泰彦, 長谷川 有史, 池上 之浩, 飯田 裕司
    2013 年 33 巻 1 号 p. 126-130
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      東日本大震災において,福島県立医科大学附属病院は基幹災害拠点病院として,そして原子力災害発生後は二次被ばく医療機関として,待ったなしの対応を迫られた.その中で実践に則したシミュレーションは大いに役立った.しかしながら今回の災害は,想像を絶する災害であり,多くの面で想定を超えたものであった.想定を超えるから災害が起こるのであって,いかに準備しようとも,完全な対応は不可能と思える.起こってしまったときに,いかに迅速に的確な対応をとれるかが,被害を最小限に抑える鍵であり,その鍵をかたどるのは個人の力ではとうてい及ばず,人の和の力である.そして,人の和を結集する鍵は調整であり,その調整を学ぶ場が望まれる.
  • 植木 隆介, 駒澤 伸泰, 岡野 紫, 多田羅 恒雄, 上農 喜朗
    2013 年 33 巻 1 号 p. 131-136
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      手術室での火災対策は病院の危機管理体制上,重要な課題の一つである.手術室は,火災発生に必要な3つの要因,発火源,酸素,可燃物がそろっており,火災発生が起こりやすいことを十分認識する必要がある.全身麻酔下で手術中の患者を迅速に移動させることは難しいため,日頃からスタッフ全員が火災について危機管理意識を持ち防止に努める必要がある.また,万一火災が発生した場合でも初期徴候を見逃さず早期発見し,初期消火することが重要である.また,火災を想定した防災訓練により停電や酸素供給停止,避難の方法,指揮系統を確認することは必要で災害対策の基本となる.
  • 藤本 陽子
    2013 年 33 巻 1 号 p. 137-141
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      災害医療において,災害拠点病院でもある大学病院では日常業務に加え,災害による多発外傷患者に対する救命処置,緊急手術への迅速な対応が求められる.当院が2005年に経験したJR福知山線脱線事故を振り返り,手術室看護師管理者の視点から,災害医療における問題点を再検討した.2008年に出された日本手術医学会の手術医療の実践ガイドラインにおいて,列車事故に対する項目も記載されたが,この事故の教訓も含まれている.問題点としては,緊急手術が必要な外傷患者の人数や緊急度などの情報が刻々と変化することが挙げられる.したがって,トリアージ,初期治療を行っている救命救急センターとの綿密な連絡体制や外科系各科との連携,協力が重要であると考えられた.
  • 安江 雄一, 濱部 奈穂, 日生下 由紀, 園田 俊二, 香河 清和, 谷上 博信
    2013 年 33 巻 1 号 p. 142-147
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      当院では2010年12月,業務中に突然の停電を経験した.自家発電設備は問題なく機能したが,停電発生後約1時間,原因特定や復旧のめどがまったく立たない状態であった.その間,患者搬送のエレベーターが使用できず,術後患者の管理に問題となった.この経験から,復旧のめどを含めた情報収集が重要であり,自家発電装置の性能や備蓄燃料は病院ごとにばらばらで場合によっては停電中の業務に支障が出うること,各機器の電源種別を決めておかないと思わぬ機器が動かず困る可能性があること,自家発電に切り替わるときに数十秒の停電となるため再起動が必要となる機器があり,その際実際に適切に操作できること,これらを平時より確認し,手順化しておくことが重要と思われた.
〔日本臨床モニター学会〕第23回日本臨床モニター学会 シンポジウム ─術後呼吸合併症と呼吸モニタリング─
  • 横田 美幸, 森野 良蔵, 関 誠, 大島 勉
    2013 年 33 巻 1 号 p. 150-155
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      麻酔科医にとって医療安全を確保することは,最も基本的,かつ重要な役割の一つである.第三次偶発症例調査の粗集計結果は以下のとおりである.(1)危機的偶発症による死亡率(術後30日以内)は,全体で5.56/1万症例,(2)麻酔管理が原因となっている偶発症による死亡率は0.10/1万症例,(3)死亡率は全体的に減少傾向にある.CCP(Closed Claims Project;医事紛争解決事案症例調査)も,気道トラブル,誤薬・過量などの薬剤投与に関するものなどが原因であったことが報告されている.最近では気道確保に関するデバイスなどの開発により気管挿管も比較的安全に実施できるようになったが,それでも誤嚥や気道閉塞などの気道管理に関するインシデント・アクシデントは避けることができない.特に術後の気道・呼吸のモニターおよび呼吸管理の重要性を指摘し注意を喚起した.
  • 鈴木 孝浩, 葛西 美貴, 山本 悠介, 野本 聡美, 見市 光寿, 小川 節郎
    2013 年 33 巻 1 号 p. 156-160
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
      深呼吸ができない,手を強く握れないといった明らかな筋弛緩状態が見逃されることはまれであろう.臨床上問題なのは認識されにくい軽度(四連反応比0.7~0.9)の残存筋弛緩であり,これにより抜管後に上気道閉塞が生じ得る.残存筋弛緩による呼吸抑制を確実に回避するには,筋弛緩状態を測定し,それに見合った至適量のスガマデクスを投与すること,最終的に四連反応比の回復を確認することが重要となる.
掲載論文の取り消しについて
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