日本臨床麻酔学会誌
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33 巻, 4 号
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日本臨床麻酔学会第32回大会 招待講演
日本臨床麻酔学会第32回大会 シンポジウム ─手術室の災害対策─
  • 黒澤 伸
    2013 年 33 巻 4 号 p. 513-515
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
  • 酒井 彰, 鈴木 健二
    2013 年 33 巻 4 号 p. 516-522
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      東日本大震災後,予定手術の開始時期の決定が難しい問題であった.今回,岩手県内16病院へのアンケートにより,緊急手術可能日,予定手術可能日,その理由,被害状況,手術材料などの不足の有無,必要と考えられたことなどについて調査し,大規模災害後の予定手術再開のための必要事項を検討した.回答は11病院より得られた.6病院では緊急手術は早期に可能であったが,予定手術の開始時期は施設間の差が大きかった.ライフラインの復旧さえあれば,緊急手術は早期に再開できる.予定手術再開のためには,ライフラインの復旧,流通の確保,関係者の意識,地域内での連携が重要であり,個々の病院のみならず,行政の対策も必要であると考えられた.
  • 西野 京子
    2013 年 33 巻 4 号 p. 523-530
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      手術中に地震が起きたならば,まず自分,患者,周囲の安全を確保した上で,手術を速やかに終了させ,患者の生命を守らなければならない.しかし,手術室が損壊したり,電気,医療ガス等のライフラインが途絶すると,これが不可能になる.そのためわれわれは平時より地震に強い環境整備を行い,ライフラインのバックアップ体制を整え,災害時のマニュアルを作成し,実際に手術時に地震が起きたことを想定してシミュレーションを行う必要がある.
  • 江島 豊, 黒澤 伸, 外山 裕章, 吾妻 俊弘, 阿部 望
    2013 年 33 巻 4 号 p. 531-538
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      東日本大震災では,耐震性に問題がある病院も存在した.病院が機能するためには,まず建物が地震に耐えられる必要がある.次いで,電気,水道,ガスなどのインフラが途絶しないか,ITや携帯,衛星電話などの情報通信手段の維持,医療ガス,薬剤,医療材料の供給が維持できるかであるが,何よりも肝要なことは医療者自身が働けるかである.さらには,病院においてあらかじめ災害が生じた場合の想定・訓練を行っておく.部署独自の訓練と病院全体の訓練に参加することは非常に重要で,両者に参加することで災害全体が見渡せるようになる.訓練の際は手術部スタッフだけではなく,麻酔科医,外科医と合同で行い,災害マニュアルの読み合わせを行うことも重要である.
  • 佐藤 仁, 川上 裕理, 刈谷 隆之, 後藤 隆久
    2013 年 33 巻 4 号 p. 539-544
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      【背景】横浜市立大学附属病院手術室では,2006年まで,年に1度手術室をクローズして避難訓練を行っていた.これは主に火災を想定し職員の避難に重点を置いた訓練であった.この年,病院の災害対策マニュアル整備をきっかけに,手術室独自の災害対策マニュアル作成が行われた.このマニュアルは実際に機能するのか検証し,その不備を改善する目的で,災害に主眼を置いた訓練が企画された.
      【訓練の実際】[2007年]マニュアルを使用した訓練を行うため,シミュレーショントレーニングの訓練形態を初めて採用した.具体的には机上訓練を用いてマニュアル検証を行った.[2008年]前年の反省点をふまえ改正されたマニュアルを再検証し,アクションカードや災害状況報告書,そのほか災害対策の物品を整理した.[2011年]2009年,2010年は,緊急時のトレーニングをシミュレーショントレーニング法で実施した.この経験を生かし,2011年は再度地震災害をテーマに,新しい訓練法を取り入れた.[2012年]これまでの経験を生かし,もう一つの大学病院である市民総合医療センターにて,この病院の特徴をふまえた災害訓練を行った.
      【訓練の成果と課題】・実際に使用しなければ明らかにできないマニュアルの問題点を改善できた./・多職種の参加者が共通認識を持つことができた./・実際に体験することで効率よく学習でき,実際の震災時もあわてることがないよう物品の面でも精神的な面でも準備を整えられた./・大規模な訓練の実施は時間的にもマンパワーの面でも困難であり,小規模なトレーニングを繰り返し行うことも必要であることが認識された.
      【結語】手術室災害トレーニングを繰り返し行い,効果的であったと思われるが,今後も継続していくために最適なトレーニング法を新たに模索する必要もあると考えられた.
  • 笹野 寛, 有馬 一, 藤田 義人, 伊藤 彰師, 祖父江 和哉
    2013 年 33 巻 4 号 p. 545-549
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      東海地方において,巨大地震が発生する可能性が高いことが知られている.発生時は東海地方以外にも及ぶ広範囲な被害が想定されるために,しばらくは応援が得られず,孤立する可能性が高いことが指摘されている.これに対して,地震発生時の災害対策教育が準備されるべきであるが,十分ではないのが実情である.最近,東日本大震災における集中治療室・手術室などで災害に直面したときの情報を得る機会が多いが,そこから学ぶことができるのは,「想定外の事態を減らすことで,被害を少なくできるかもしれない」ということである.われわれの施設で行っている麻酔科医を含む手術室内のスタッフに対する災害に対する教育を中心に紹介する.
講座
  • 村川 和重, 中野 範, 神原 政仁, 福永 智栄, 恒遠 剛示, 棚田 大輔
    2013 年 33 巻 4 号 p. 550-555
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      痛みに対する薬物療法の中心はオピオイド鎮痛薬で,opioid responsivenessの概念に基づく実施が必要であり,鎮痛作用と副作用のバランスの考慮が薬物療法の全般にわたって重要と考えられる.薬物療法の実施にあたっては,その鎮痛作用に応じた薬剤の選択が必要で,その意味ではWHO三段階除痛ラダーを基にすることが標準的と考えられ,痛みの強さに応じた鎮痛薬の選択を考えると,最初に選択される鎮痛薬は,非オピオイド鎮痛薬となる.非オピオイド鎮痛薬には大きく分けて,acetaminophenと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の2種類があり,作用機序も異なるため,鎮痛作用と副作用の両面を考慮した薬剤の選択が重要で,効果的な痛み治療の実施には,系統的なシステムの構築が必要である.
  • 橋口 さおり
    2013 年 33 巻 4 号 p. 556-562
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      麻酔科医が緩和ケアにかかわる機会が増えているが,治療期における症状緩和,意思決定支援,終末期ケアなど要求されることは多い.疼痛緩和では麻酔の技術が役立つが,苦痛が多岐にわたる状況下ではそれだけでは不十分である.適切な緩和ケアを提供するためには,状況をアセスメントする必要がある.アセスメントには日本語版M. D. Anderson Symptom Inventry(MDASI-J)をもとにしたチェックシートの活用や,Palliative Prognostic Index(PPI)による終末期の予後予測が役に立つ.まずは問題点を整理し,専門家間で共有することが重要である.
  • 木山 秀哉
    2013 年 33 巻 4 号 p. 563-571
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      セボフルラン,デスフルランはフッ素を含むアルキルエーテルで他の揮発性麻酔薬とは異なり,オゾン層を破壊しないが,化学的に安定なため長期間地球大気中に残留し,その温暖化作用を無視できない.環境への放出を最小限に抑える確実な方法は低流量麻酔である.しかし患者の酸素消費量が変動すると低酸素血症を生じるリスクがあり,麻酔薬濃度の迅速な調節が難しいために,これまで低流量麻酔は広く普及するに至っていない.GE Healthcare社の麻酔器Aisysに搭載されたEnd-tidal Control(EtC)は,麻酔科医が設定した呼気終末酸素/揮発性麻酔薬濃度(etO2/etAA)に,できるだけ短時間(140~200秒)で到達,維持するように,ガス流量と酸素/麻酔薬濃度を制御する機能である.etO2をモニターすることで,低酸素血症をきたすことなく新鮮ガス流量(FGF)を0.5L/minの最小値まで減らすことができる.新鮮ガス流量と気化量を同時制御することにより,麻酔薬濃度は迅速に調節される.静脈麻酔薬のTCIが登場当時 “intravenous vaporizer” と表現されたように,EtCを “effect-site target-controlled inhalation” と考えると理解しやすい.
原著論文
症例報告
  • 磯部 直史, 大友 純, 前川 謙悟, 馬場 知子, 片平 和博, 村田 恭啓
    2013 年 33 巻 4 号 p. 578-583
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome(PRES)は,視力障害,痙攣および意識障害などを主症候とし,後頭葉に病変を有する可逆性脳症であり,その発生機序の1つに高血圧による血管原性浮腫があげられる.症例は63歳の女性,49歳時に胸部大動脈瘤手術の既往がある.今回,吻合部仮性瘤に対しオープンステント内挿術と弓部置換術が施行された.術後に全盲を呈し,頭部CTにて両側後頭葉に多発性の低吸収域が認められた.術後1週間で視力は著明に改善し,CTで病変部位が縮小したことからPRESと診断した.周術期PRESの報告はまれであるが,術後に可逆性の視覚異常が発生した場合,本疾患を念頭に置く必要がある.
  • 木下 真央, 影山 京子, 板東 瑞樹, 溝部 俊樹, 橋本 悟, 佐和 貞治
    2013 年 33 巻 4 号 p. 584-588
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      頸髄腫瘍摘出術患者の術前診察において,強度の胸椎前弯による気管および腕頭動脈圧排を認めた.腹臥位手術では気管狭窄悪化による換気困難および腕頭動脈圧迫による脳血流低下の危険性が伴うと考えて,まず全身麻酔下で胸骨部分切除術を計画し,二期的に頸髄腫瘍摘出術を行うこととした.術前に3D-CT画像を作成し,解剖学的位置関係を評価した.麻酔法は自発呼吸下に導入,換気確認後挿管を行い,狭窄部を越えてチューブを留置した.術中は無侵襲脳局所酸素飽和度(rSO2)を用いて脳血流を監視し,合併症なく手術を終えた.159日後に施行した頸髄腫瘍摘出術では気管狭窄や動脈圧排の危険性は除去されており,安全に麻酔管理を行うことが可能であった.
  • 稲垣 泰好, 間宮 敬子, 大友 重明, 黒澤 温, 高畑 治, 岩崎 寛
    2013 年 33 巻 4 号 p. 589-593
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
      プレガバリンが奏功した硬膜穿刺後頭痛の症例を経験したので報告する.症例は57歳の女性で大腸癌に対して大腸切除術が予定された.硬膜外麻酔を施行した際,髄液の流出を認めたため,1椎間頭側から硬膜外麻酔を施行し直し,全身麻酔を導入した.術後,頭高位で悪化する頭痛,嘔吐が出現し硬膜穿刺後頭痛と診断した.フォンダパリヌクスを使用しており,硬膜外自己血パッチは施行できなかった.術後3日目よりプレガバリンの内服を開始して頭痛は改善した.術後8日目にプレガバリンを中断して頭痛が再発したため,内服を再開して鎮痛を得た.硬膜外自己血パッチが禁忌であってもプレガバリンは使用可能であり,保存的治療として推奨できる.
短報
麻酔科医に必要な超音波ガイド手技のポイントと教育(第2回)
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