日本臨床麻酔学会誌
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34 巻, 2 号
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日本臨床麻酔学会第32回大会 招請講演
  • 岩崎 達雄, 戸田 雄一郎, 清水 一好, 金澤 伴幸, 森松 博史, 森田 潔
    2014 年 34 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      先天性心疾患で最もその生理が成人と異なり管理が困難な症例は,並列循環を伴う単心室症である.これらの患児は,まず第一期姑息術を受けるが,術後にも並列循環が残存するため周術期管理ではこの並列循環の管理が大切になる.理想的な並列循環を達成するために動脈血酸素飽和度のみならず体静脈血酸素飽和度をモニタリングして循環動態を正確に把握する.また体静脈血酸素飽和度は患児の予後予測,目標指向型治療の指標としても有用である.体・肺血流のバランスをとるために心拍出量,体・肺血管抵抗を調節するが,第一期姑息術後では体血管抵抗を調節する方がより効果的で,積極的な後負荷軽減療法は並列循環を安定させ,術後合併症を低減する.
日本臨床麻酔学会第32回大会 シンポジウム ─術後鎮痛のこれから─
  • 白神 豪太郎
    2014 年 34 巻 2 号 p. 177
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
  • 小杉 志都子, 森崎 浩
    2014 年 34 巻 2 号 p. 178-184
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      術後痛が手術の回復や合併症に及ぼす影響は,多くの臨床研究で明らかになっており,「術後に痛いのは当たり前」という時代から,「術後の痛みは積極的に取り除く」というように,医療従事者の意識と取り組みは,ここ20年で大きく変化してきた.その中で,Patient-Controlled Analgesia(PCA)の普及は大きな意味を持つ.PCAポンプの導入・運営にあたっては,安全かつ効果的な術後痛管理を行う上で,各部門の医療従事者が正しい知識を持ち,協力していくことが必要不可欠である.PCAの基本知識を再考し,PCAによる術後鎮痛のこれからを考える.
  • 佐倉 伸一, 原 かおる
    2014 年 34 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      硬膜外鎮痛法はこれまで何十年もの間,多くの種類の大侵襲手術の術中あるいは術後痛管理のために使用されてきたが,外科手術の低侵襲化,予防的抗凝固療法の普及,末梢神経ブロックなどの代替療法の開発などとともにその使用頻度が減少しているように見える.しかし,最近のメタ分析や大きな無作為コントロール研究によれば,周術期における胸部硬膜外鎮痛法の使用は胸部外科手術,開腹術を受ける患者やハイリスクの患者に有利であるとされている.したがって,硬膜外鎮痛法は周術期痛管理においてまだ重要な役割を有している.
  • 藤原 祥裕
    2014 年 34 巻 2 号 p. 192-197
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      超音波ガイド下技術の発達によって術後鎮痛に末梢神経ブロックが広く用いられるようになった.末梢神経ブロックは従来用いられてきた鎮痛手段である硬膜外麻酔やオピオイドの欠点を補うことができる.末梢神経ブロックの利点を最大活用するためにはカテーテルを用いた持続ブロックを行うことと,他の鎮痛手段を組み合わせてマルチモーダル鎮痛を行うことが重要であると考える.
  • 堀田 訓久, 井上 荘一郎, 平 幸輝, 佐多 奈歩, 玉井 謙次, 竹内 護
    2014 年 34 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      開腹手術において,効果的な術後鎮痛は早期回復の促進に寄与する.持続創部浸潤麻酔(CWI)は手術創部にカテーテルを留置して,局所麻酔薬を持続投与する鎮痛法であり,開腹手術の術後鎮痛法としても報告されている.CWIは手技が容易で,出血性合併症のリスクが低く,患者の適応が広いといった利点がある.したがって,止血凝固異常で硬膜外麻酔が施行できないようなケースにおいても,実施できることが多い.開腹手術の術後鎮痛としてCWIを用いる場合,内臓痛には他の方法で対処する必要があり,multimodalな鎮痛戦略が必要である.われわれは,婦人科の下腹部開腹手術を受ける患者に対してCWIを行い,良好な鎮痛効果を得ている.
  • 武田 敏宏, 白神 豪太郎
    2014 年 34 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      現在,術後鎮痛の主流は多様式鎮痛法である.多様式鎮痛法とは,種々の鎮痛様式を併用することによって,鎮痛効果の向上と各々の鎮痛様式の副作用の低減を図るものである.多様式鎮痛法の基礎的鎮痛様式は「局所/区域麻酔法+非オピオイド鎮痛薬」であり,この基礎的鎮痛様式で鎮痛不十分の場合に必要最小限のオピオイド鎮痛薬を付加する.したがって,多様式鎮痛法を安全かつ有効に行うためには,局所麻酔薬に加えて非オピオイド鎮痛薬について熟知することが重要である.また,近年では非オピオイド鎮痛薬には,オピオイド関連副作用発症低減による術後短期予後改善効果のみならず,術後慢性痛移行抑制・抗腫瘍作用など中・長期予後改善効果も期待されている.
紹介
  • 松田 光正, 伊藤 健二, 西山 純一, 鈴木 利保
    2014 年 34 巻 2 号 p. 210-213
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      以前当院では,手術に用いた電池式人工血管燃灼器具(カーテリー®)を医療用廃棄物として他の危険物とともに手術室内の医療用廃棄箱にそのまま破棄していた.今回廃棄箱内で他の廃棄物によってカーテリー®のスイッチが偶然に入り通電状態となったため小火(ぼや)が発生した事例を経験した.当時室内は無人で煙が充満したが,臭いに気づいたスタッフが直ちに消火したため小火にとどまった.手術室内は酸素の配管や,燃焼作用のある薬剤が存在するため火災発生の環境は整っている.電池式焼灼器は廃棄の際チップ部分を切断し,キャップをして処分することとなっている.その方法が遵守されなかったことが今回の小火発生の原因であると考えられた.
〔日本医学シミュレーション学会〕 総説
〔日本医学シミュレーション学会〕第8回日本医学シミュレーション学会 シンポジウム ─シミュレーションセンターの現状と課題─
〔日本医学シミュレーション学会〕第8回日本医学シミュレーション学会 教育講演
  • 駒澤 伸泰, 上農 喜朗
    2014 年 34 巻 2 号 p. 252-258
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      米国麻酔科学会は,2002年に「非麻酔科医のための鎮静・鎮痛薬投与に関する診療ガイドライン(ASA-SED)」を改訂した.ASA-SEDは鎮静を,反応性や呼吸・循環状態によって,軽い鎮静から,中等度鎮静,深い鎮静,全身麻酔までの連続した4段階に定義した.ガイドラインは下記の6点,すなわち,(1)術前患者評価:術前合併症,気道評価,絶飲食時間の設定,(2)患者モニタリング:酸素化のモニタリング,呼名に対する反応評価,心電図,カプノグラム,(3)鎮静担当者の確保とその訓練:鎮静担当者の集中と一次救命処置,二次救命処置等の緊急時対応,(4)緊急用機材の準備と薬剤投与:蘇生用薬剤,陽圧換気・気道管理器具,静脈路確保,(5)薬剤投与方法の原則:鎮静薬と鎮痛薬の相互作用,拮抗薬の準備,用量滴定,(6)回復期のケア:退室基準・退院基準策定の重要性,を強調している.さらに,ASA-SEDは一貫して鎮静が目標レベルより深くなった場合の準備と対応が必須であるとしている.
〔日本医学シミュレーション学会〕第8回日本医学シミュレーション学会 パネルディスカッション ─セデーショントレーニングコースの各領域への普及を考える─
  • 讃岐 拓郎, 杉岡 伸悟, 小谷 順一郎, 瀬尾 憲司, 駒澤 伸泰, 安宅 一晃
    2014 年 34 巻 2 号 p. 259-263
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      鎮静に関するトレーニングは,麻酔を専門としない歯科医師に対し,米国では広く門戸を開き卒後教育として活発に行われているが,本邦では歯科麻酔科医を除いて十分とはいえない.そこで日本医学シミュレーション学会が2010年より行っていたセデーショントレーニングコースをもとに,歯科医師を対象としたコースを開発した.そして本コースの教育効果を検討した結果,十分な教育効果が得られ,かつ満足度が高かった.しかし,受講2ヵ月後の理解は受講前と比べ上昇しているものの,有意な差がなかった.したがって中・長期的な教育効果を維持するためのプログラムの改良が必要であると考えられた.
  • 上嶋 浩順, 森本 康裕, 安宅 一晃, 駒澤 伸泰, 有山 淳, 北村 晶
    2014 年 34 巻 2 号 p. 264-268
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      セデーショントレーニングコースは,非麻酔科医を含めた安全なセデーションと緊急時対応の普及を目指し,医療安全に貢献することを目的としたコースである.現在までに麻酔科医をはじめ,消化器内科医や循環器内科医,歯科医,研修医,看護師等さまざまな職種の方に受講していただいた.ただし,受講生の専門分野や職種はさまざまであり,各専門領域のコースの必要性が高まってきており,実際歯科医・歯科衛生士を対象とした歯科コースが成功を収めている.麻酔科医領域に関しては,ここ数年の間に超音波装置と神経刺激装置の機能向上,神経ブロックのワークショップの普及が進み,超音波ガイド下末梢神経ブロック(US-PNB)が頻回に行われるようになった.US-PNBは全身麻酔中での有用な周術期鎮痛法であると同時に全身麻酔を避けたい症例においても有効な鎮痛方法である.今回「麻酔科領域(US-PNB)に対するセデーションコース」の開発と課題について考察した.「末梢神経ブロックにおける損害賠償申し立てデータベース」では,大きく神経ブロックにおける合併症と呼吸・循環管理に関する合併症の二つに分類され,本コースを行う意義は高いと思われるが,神経ブロックによる術中管理の複雑さや鎮静のタイミング,MACとの違いがないことなど多くの問題点があり,現段階ではコース開催は難しいと思われた.
  • 植木 隆介, 堀田 牧代, 駒澤 伸泰, 河野 幸一, 藤本 陽子, 上農 喜朗
    2014 年 34 巻 2 号 p. 269-274
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      米国麻酔科学会(ASA)「非麻酔科医のための鎮静・鎮痛薬投与に関する診療ガイドライン」(以下ASA-SED)では,中等度以上の鎮静で鎮静監視者の立ち合いを推奨している.医師だけでなく鎮静下の処置検査に従事するメディカルスタッフも鎮静・鎮痛に関する共通の概念と知識・言語を持つ必要がある.今回われわれは手術室看護師を含めたセデーションコースを開催した.手術室の看護師が,ガイドラインの遵守や過鎮静時の上気道閉塞のリスク,用手的気道確保手技,各種鎮静関連薬剤の作用などの知識に加え,トラブル時には早期に人を集めて対応するシミュレーショントレーニングを行うことは,鎮静の安全な実施につながることが期待される.今後,本コースのさらなる改良,充実を目指したい.
  • 野村 岳志
    2014 年 34 巻 2 号 p. 275-280
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      医療の国際化が進む中,当院は2012年10月に国際的な医療機能評価JCI(Joint Commission International)サーベイを受審し,認定を受けた.審査は1,000を超える項目で,病院の種々の指針がどのように実践・評価・見直されているかを多職種にわたる病院スタッフへのインタビューまた患者トレースにより評価される.このたび評価分野の一つ,Anesthesia and Surgical Care(ASC)部門を担当し,種々の文章作成,実践指導等を行った.最も日本の医療の現状と異なるのは,鎮静を全身麻酔の一部として考えている点である.特に中等度鎮静から高度鎮静での患者管理を行うには,病院内での業務権限が必要となる.医療者は鎮静講習受講後,鎮静を行う権限が与えられる.JCIの鎮静部門は医療安全において日本の方向性を示す基準となると考えるため,その内容を紹介する.
  • 駒澤 伸泰, 藤原 俊介, 植木 隆介, 上嶋 浩順, 安宅 一晃, 上農 喜朗
    2014 年 34 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      医学シミュレーション学会セデーショントレーニングコース(SED実践セミナー)は各領域における鎮静の医療安全向上を目的として開発された.鎮静の医療安全向上に関しては,各診療科の鎮静に関する疑問点を明らかにすることが第一であり,SED実践セミナー受講前に施行した自由回答形式のアンケートを紹介する.さらに,各領域における鎮静の問題点抽出のための1例として消化器内視鏡室で施行したコースについて報告する.鎮静に関する医療安全を向上させるには個人の鎮静に対する正しい理解と危機認識のみならず,病院全体でのシステム構築等も重要である.麻酔科医が各診療科やコメディカルとともに「安全な鎮静を考える」ことが,各領域そして院内全体へのシステム構築,そして,鎮静安全管理の向上につながると思われる.
〔エピドラスコピー研究会〕第13回エピドラスコピー研究会 特別講演
  • 岩渕 真澄
    2014 年 34 巻 2 号 p. 288-295
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
      脊椎疾患の診断において,画像検査は問診や身体所見から推察される疾患や病態を確認する手段である.現在の画像機器のほとんどが身体から取り出した情報をコンピューターによってデジタル化処理し画像へと再構築しているため,その過程においてさまざまなノイズやアーチファクトが入り込む危険性があることに留意する.また,再構築された画像を過剰評価してしまうという危険性を常に有していることに留意する.単純X線像は脊椎の配列や,不安定性を見るのに適している.X線CTは骨や骨化巣の描出に適している.MRIは軟部組織の描出に適している.X線CTとMRIは相補的であるため,両者をうまく組み合わせることで正確な診断につながることが多い.
〔エピドラスコピー研究会〕第13回エピドラスコピー研究会 基調講演
〔エピドラスコピー研究会〕第13回エピドラスコピー研究会 最近の話題
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