日本臨床麻酔学会誌
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35 巻 , 1 号
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総説
  • 土肥 修司
    2015 年 35 巻 1 号 p. 001-014
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      エーテル麻酔の成功から約170年,著者の経験は後半の一時にすぎないが,この40年間に,麻酔の理解も安全性も飛躍的に向上した.麻酔薬による意識,記憶,疼痛,運動機能への抑制効果は一様ではなく,おのおの薬の薬理特性によって異なる.麻酔の主要な構成要素である「無意識と無記憶」状態は,麻酔薬が視床を中心とした脳神経系ネットワークの統合を抑制して,環境との連絡が断たれたときに生じると理解されている.麻酔状態では自然睡眠中と異なり,記憶形成過程の増強はないが,「無意識なのか」「記憶の形成中なのか」を確実に検出できるモニターはない.本論文では,研究の歴史的流れを通して麻酔中の意識と記憶に関しての簡潔な総説を試みた.
原著論文
  • 荒木 寛, 西岡 健治, 荒木 博子, 趙 成三, 原 哲也, 澄川 耕二
    2015 年 35 巻 1 号 p. 015-020
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      気管チューブ(ETT)をカフの上部に付けられた黒線の遠位端(声門マーカー)を指標に固定した場合の気管支挿管の発生頻度を,成人全身麻酔症例で後ろ向きに検討した.胸部X線写真で,気管支挿管は全体の1.4%(4/283人)に認めた.また,女性で有意に気管支挿管のリスクが高かった.この結果に関し,別の患者群のCT上の気管の長さ,使用したETTの先端から声門マーカーまでの距離(DM)をそれぞれ計測し検証した.声門マーカーをETT固定の目安にする際は,ETTの太さだけでなくDMを考慮してサイズの選択を行う必要がある.
症例報告
  • 高松 渥子, 柴田 伊津子, 吉富 修, 前川 拓治, 趙 成三, 原 哲也
    2015 年 35 巻 1 号 p. 021-026
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      虚血性心疾患の既往のない患者の縦隔腫瘍摘出術中に心電図上ST上昇から心室頻拍・心室細動をきたしたが,冠拡張薬等の投与により回復し,後遺症なく経過した.術中・術後の心電図変化および術後の心エコー図(検査)所見より,心停止の原因として手術操作による循環変動に続く冠動脈攣縮を疑った.非心臓手術における冠攣縮の多くは虚血性心疾患の既往がない症例に発症し,その誘因として手術および麻酔のストレスが関与するとされている.冠動脈攣縮の危険因子では喫煙が突出している.本症例は術中の術操作による循環変動に加えて,冠動脈攣縮を起こしやすい患者背景があり,禁煙も不十分であったことが冠動脈攣縮の誘因となったと推察される.
  • 山田 忠則, 粕谷 由子
    2015 年 35 巻 1 号 p. 027-031
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      症例は41歳の男性,頚椎後縦靭帯骨化症,同後弯変形に対し,椎弓形成術および後方固定術が予定された.手術終了後抜管したが,2時間後呼吸不全を発症し再挿管の上,人工呼吸器管理を施行した.両上肢に第5頚椎(C5)麻痺の症状と両側横隔膜の拳上が確認され,C5麻痺に伴う横隔神経麻痺で呼吸不全が生じたと考えられた.その後,呼吸状態は徐々に改善し,術後15日目に人工呼吸器から離脱した.以前より頚椎手術後の合併症としての呼吸不全は報告がある.C5麻痺は脊椎外科分野でも未解決の合併症とされるが,呼吸不全に至る報告は少なく,まれな症例と考えられた.頚椎除圧術術後の呼吸不全の原因として,このような例もあると知っておくことは重要と思われた.
  • 佐藤 威仁, 横山 成典, 大高 公成
    2015 年 35 巻 1 号 p. 032-035
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      全身麻酔後5日目に気管挿管が原因と考えられる披裂軟骨前方脱臼を経験した.症例は77歳の女性.胃幽門前庭部腫瘍に対し全身麻酔下に開腹での幽門側胃切除術が予定された.麻酔導入,気管挿管は円滑であり,また術中明らかな気管チューブのトラブルは認められず,抜管後も患者からの嗄声の訴え,他覚的症状も認められなかった.しかしながら,術後5日目に嗄声が判明し披裂軟骨前方脱臼と診断され保存的治療で自然整復された.術後回診では,披裂軟骨脱臼の可能性も念頭に入れ,気息性嗄声の有無を慎重に診察しなければ見逃す場合があり,注意が必要であると考えられる.
  • 山口 聡, 大野 義一郎
    2015 年 35 巻 1 号 p. 036-040
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      101歳の超高齢女性が持病である骨粗鬆症と変形性腰椎症による腰痛の増悪の診断で入院し,その3日後に腰部の腫瘤と腸閉塞症状を呈した.CT所見において後腹壁からの腸管の脱出を認め,腰ヘルニアと診断され緊急開腹術が施行された.手術所見は特発性上腰ヘルニアであり,腸管壊死や腹膜炎は認めずに修復され,再発も認めず術後腰痛も消失した.腰ヘルニアは腰背部腹壁の脆弱部位から発症するまれな疾患であるが,腰痛や腰部腫瘤といった非典型的な症状によりしばしば診断が遅延する.高齢女性に多く,ヘルニア内容が腸管の場合は腸閉塞や腸管壊死,腹膜炎から緊急開腹術となる可能性が高く,麻酔科医としても念頭に入れておくべき疾患と思われる.
日本臨床麻酔学会第33回大会 招請講演
  • 小竹 良文, 篠田 重男, 牧 裕一, 豊田 大介
    2015 年 35 巻 1 号 p. 041-047
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      従来の輸液管理は血圧,尿量を指標とした晶質液主体のliberal fluid strategyと要約できる.従来はこの方法で大きな問題点を生じることなく管理し得ていると考えられてきたが,高齢者を含む高リスク患者,あるいは低リスク症例でも術後回復を促進する観点からはさらなる改善が求められている.高リスク患者に対しては低侵襲血行動態モニターを活用し,膠質液投与によって血管内容量を維持する輸液最適化の有用性が報告され,一方,術後回復力強化の観点からは晶質液の投与制限の有用性が報告されている.したがって今後の方向性としては,両者の特徴を包括する目標指向型輸液管理に注目が集まっている.
日本臨床麻酔学会第33回大会 シンポジウム ─チームで取り組む周術期の感染対策─
  • 祖父江 和哉, 廣瀬 宗孝
    2015 年 35 巻 1 号 p. 048
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
  • 若杉 健弘, 吉川 貴己, 長 晴彦, 伊藤 宏之, 中村 敦, 竹山 廣光
    2015 年 35 巻 1 号 p. 049-055
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      手術部位感染は発症の予防が重要である.手術部位感染予防のための対策は,術前・術中・術後の一連の周術期において多項目にわたって存在するが,予防的抗菌薬の適正使用は特に重要な対策項目の一つである.予防的抗菌薬はただ投与すればよいわけではなく,適正に使用されないと手術部位感染の予防に寄与しないばかりか耐性菌の増加などの問題を生じさせる.術式に応じた予防的抗菌薬の選択,1回投与量,投与開始時期,再投与のタイミング,術後投与期間を,施設ごとの状況を勘案してマニュアル化することが望ましい.
  • 岩崎 創史
    2015 年 35 巻 1 号 p. 056-060
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      麻酔科医師が周術期の感染の観点から術前・術中に取り組むことができる禁煙,体温管理,麻酔法の選択について概説する.術前喫煙は,創部感染および呼吸器感染を増加させる.手術中の低体温が創部感染に負の影響を与えうる.さらに麻酔法・麻酔薬の違いにより創部感染に多寡が生じる可能性がある.
  • 井谷 基, 岩山 幸子, 繁田 絵実, 池田 慈子
    2015 年 35 巻 1 号 p. 061-066
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      手術室の空気清浄度を保つことにより周術期感染を減少させるエビデンスは確立されており,その空調は厳密に管理されている.手術室内では,術野に対する飛沫感染,接触感染を予防するために手術着,マスク,キャップ等を着用している.さらに手術室内の空気清浄度を恒常的に維持するために(1)高性能フィルタを通した換気を行い,(2)垂直層流を保ち,(3)塵埃数減少のために在室者数を,(4)陽圧維持のためにドアの開閉回数を制限している.しかし高度な設備によるシステムも,手術室の在室者が一人でも不適切な行動を行えば容易に破綻する.高水準の環境が保てるよう麻酔科医をはじめ,外科医・看護師が共通の理解を持って手術室環境の維持に努める必要がある.
  • 新改 法子, 下薗 崇宏
    2015 年 35 巻 1 号 p. 067-072
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      手術部位感染(SSI)は医療関連感染の20%を占める深刻な術後合併症の一つであり,その予防は重要である.SSIは術中の細菌汚染が原因となるため手術に関与するスタッフの果たす役割は大きいが,SSIが起こりにくいように術前から術後における感染予防対策も重要である.そのため医師や看護師,臨床工学技士,臨床検査技師,薬剤師などが協働してSSIの発生予防や早期発見,悪化防止に努める必要がある.その中で感染管理看護師(ICN)はSSIサーベイランスを通じて問題点を明確化し,周術期を通して多部門,多職種と協働してSSI予防策が実践できる体制を調整すること,そして予防策実践後の評価と新たな改善策導入というPDCAサイクルを回すことが役割と考える.
日本臨床麻酔学会第33回大会 シンポジウム ─デクスメデトミジンの手術麻酔への応用─
日本臨床麻酔学会第33回大会 専門医が伝えるプロの技 ─人工呼吸管理─
  • 氏家 良人
    2015 年 35 巻 1 号 p. 088
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
  • 内山 昭則
    2015 年 35 巻 1 号 p. 089-097
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      重症患者における人工呼吸法のこれまでの歴史的な進歩の一つは自発呼吸努力と人工呼吸器をうまく同調させることであった.自発呼吸努力との同調性がよい人工呼吸モードの発展は患者の快適性を改善し,人工呼吸器と自発呼吸の不同調による肺合併症の発生を減少させてきた.人工呼吸器の発展によって人工呼吸中の鎮静薬の使用量を減らせたことは集中治療を必要とする患者の予後の改善につながっている.このように重症の急性呼吸不全での換気モードの選択と換気条件の設定は自発呼吸の温存法や自発呼吸努力との同調性に重点が置かれてきた.しかし,近年,重症ARDSの発症早期に48時間筋弛緩薬投与下に人工呼吸を行うと予後を改善する可能性が示唆された.急性呼吸不全患者における筋弛緩薬の使用が見直されており,自発呼吸努力自体にも肺傷害の発生と関連がある可能性が検討されている.われわれのグループでも動物実験で肺傷害の程度によっては自発呼吸努力の調整も必要である可能性を示した.人工呼吸モードの選択や人工呼吸設定時に自発呼吸努力をどのように扱うべきかを中心に考えてみたい.
  • 布宮 伸
    2015 年 35 巻 1 号 p. 098-105
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      人工呼吸中は患者を深く眠らせておこう,という考えはすでに過去の迷信である.鎮静は必要に応じて最小限にとどめることが重要で,不必要な鎮静は患者予後を悪化させる.さらに,鎮静の前に必ず疼痛対策を徹底することも重要であり,疼痛対策が適切であれば,人工呼吸中の患者でも鎮静なしで管理できる.最終的には「せん妄予防対策なくして人工呼吸管理を成功に導くことはできない」という考えが重要であり,その集大成である「ABCDEバンドル」を常に念頭に置くことが求められる.
  • 大塚 将秀
    2015 年 35 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      人工呼吸を必要とする病態には,呼吸中枢障害・換気メカニクス障害・酸素化障害・上気道障害がある.呼吸中枢障害の場合は調節換気を必要とし,酸素化障害には高い呼気終末陽圧が有効である.換気メカニクス障害の場合は,プレッシャーサポートを中心とした自発呼吸温存モードが適応である.補助は必要最低限に設定し,サポート圧を高い圧からゆっくり下げる必要はない.必要以上にサポート圧を下げて呼吸筋に負荷をかけてはならない.サポート圧を下げる速度は一般に遅すぎる傾向にある.人工呼吸を必要とする病態が改善したら,人工呼吸を一時中断して離脱の可否を判断する自発呼吸テストが人工呼吸期間の短縮に有用である.
講座
  • 萬 知子
    2015 年 35 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      中心静脈カテーテル関連血流感染(CRBSI)は防ぎえる合併症である.Pronovostはチェックリストを用いた5つの予防策バンドルを徹底し,集中治療室のCRBSIを激減させた.CRBSIを防ぐということは,防ぎえる死を防ぐことに繋がる.そのエビデンスを臨床現場に導入(Translating research into practice)させるためには,部署単位での多職種チームによるその部署に即した安全対策(Comprehensive unit-based safety program)を構築する文化の醸成が必要である.またCRBSI予防効果を測るための感染サーベイランスも重要である.
日本麻酔・医事法制(リスクマネジメント)研究会 症例報告
  • 木内 淳子, 安本 和正, 後藤 隆久, 野坂 修一, 小林 功武
    2015 年 35 巻 1 号 p. 120-127
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      平成20(2008)年に麻酔科医が後期研修医の指導のため手術室不在時,麻酔器の蛇管が外れたことに起因する事故が発生した.院内調査委員会では蛇管が外れた原因は特定できず,アラーム音は外科医などには聞こえなかったとした.担当麻酔科医は,ガイドライン(指針)の記載内容を根拠に刑事訴追された.裁判官は,(1)蛇管が外れた原因は手術室にいた人の行為が原因と推測する,(2)手術室にいた人にアラーム音が聞こえなかったことには疑問の余地が少なからずある,(3)指針は学会としての目標を示すもので,遵守すべき業務上の注意義務とは言えない,として無罪を言い渡した.ガイドラインは,刑事訴訟においても,医療水準を示す資料の1つであるとされた.
〔日本臨床モニター学会〕第25回日本臨床モニター学会 教育講演
  • 坂口 嘉郎
    2015 年 35 巻 1 号 p. 130-137
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      カプノグラフィーは,換気のリアルタイムモニターとして有用である.さらに,カプノグラムの波形分析および動脈血-呼気終末炭酸ガス分圧の関係から換気量の妥当性や,換気血流不均衡,死腔換気などの病態を評価することが可能である.量カプノグラムでは死腔量を解剖学的死腔と肺胞死腔に分けて算出できる.非気管挿管患者にカプノグラフィーを換気モニターとして用いる場合は,低換気に伴うカプノグラムの異常パターンを正しく判別する必要がある.
  • 田中 義文
    2015 年 35 巻 1 号 p. 138-145
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      体表心電図は心室筋の興奮ベクトルで解釈するものではなく,心内膜側細胞外電位から心外膜側細胞外電位の引き算により成り立つという純粋な電気現象で解釈すべきである.そのような観点に立つと,教科書に記述されていない早期再分極症候群,冠動脈攣縮,そして心停止直前に散見される心室筋活動電位のような強度のST上昇波形も素直に理解できる.
  • 成松 宏人
    2015 年 35 巻 1 号 p. 146-151
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
      世界に発信できる臨床研究数は日本においては欧米先進諸国に比べ少なく,残念ながら,日本は臨床研究後進国であることがしばしば指摘されている.臨床研究の目的の一つは基礎研究の成果を臨床的実用化に結びつけることである.よって,臨床研究の停滞は,日本での研究成果であるにもかかわらず,実用化の恩恵を日本国民が受けるのが遅れるという結果にもつながることが危惧されている.よって,臨床研究の活性化は医学のみならず社会的にも重要な課題となっている.臨床研究をその中心として担うのは現場の医療者である.しかし,医学教育にて臨床研究を遂行するための能力を身につけるためのトレーニングの機会は圧倒的に不足しているのが現状である.そこで,本稿では臨床研究を進めるために必要なエッセンスである(1)研究デザインの知識,(2)臨床試験で必要な研究倫理の知識,(3)臨床研究に必要な統計について紹介・解説した.臨床研究を行うための基礎的素養を備えた臨床医が増えることで,今後の現場の臨床医による臨床研究の活性化を期待している.
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