日本臨床麻酔学会誌
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36 巻 , 5 号
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症例報告
  • 荒木 寛, 長岡 京子, 本田 涼子
    2016 年 36 巻 5 号 p. 523-527
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    MECP2重複症候群の脳梁離断術における麻酔を経験したので,報告する.症例は5歳の男児で,胎児期から子宮内発育遅延,小頭症を指摘されておりMECP2重複症候群と診断された.3歳時に全身のミオクロニー発作が出現し,抗てんかん薬の内服加療を行ったがコントロール困難であったため,脳梁離断術が行われた.術後,TOFR 70%の時点でスガマデクスを投与したが,TOFR 100%になるまで約10分を要した.抜管後は喉頭浮腫が疑われヒドロコルチゾンを投与した.MECP2重複症候群は非常にまれな疾患ではあるが,筋弛緩の遷延および周術期の気道トラブルに注意する必要がある.

  • 片岡 万紀子, 藤田 靖明, 中田 純, 佐野 逸郎, 芝 朋加, 中島 基晶
    2016 年 36 巻 5 号 p. 528-531
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    Hallermann-Streiff症候群は極めてまれな先天性疾患であり,特有の顔貌を特徴とすることから気道確保困難を呈する代表的疾患とされる.今回,後頚部固定術後で頚部の可動性が制限されているHallermann-Streiff症候群患者の全身麻酔に対して,エアウェイスコープ®と薄型AWSイントロック®を用いて軽度鎮痛・鎮静を伴う意識下挿管を行い,安全に麻酔管理が行えた.

  • 吉松 貴史, 奥村 綾子
    2016 年 36 巻 5 号 p. 532-536
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    成人鼠径ヘルニア修復術に対する麻酔法の中で,傍脊椎ブロックと鎮静の組み合わせで行う麻酔(Paravertebral block併用Monitored Anesthesia Care:PVB+MAC)は,従来の方法と比べ質,副作用の面での有用性が注目されている.成人鼠径ヘルニア修復術を受ける患者8名を対象にPVB+MACでの麻酔管理を行った.プロポフォールによる鎮静下に第10胸椎から第1腰椎レベルの傍脊椎ブロックを4カ所施行した.術中侵害刺激の増加に伴って体動または心拍数の増加をきたした際は,術野での局所浸潤麻酔またはフェンタニルの追加静注を行った.術直後のベッド移動も介助なく行うことができ,術後12時間以内に鎮痛薬を必要としたのは8例中1例であった.ブロックに関連した合併症は1例もなかった.

日本臨床麻酔学会第35回大会 招待講演
  • 門田 幸二
    2016 年 36 巻 5 号 p. 537-543
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    次世代シークエンサ(NGS)は,医療やライフサイエンス分野の諸課題を効率的に解決するための実験機器の一つである.麻酔がもたらす作用メカニズムの解明にも,おそらく利用されているか利用されつつある.例えば,麻酔に伴う重篤な合併症に関連した遺伝子,低酸素や低体温応答関連遺伝子の同定などが考えられる.ほかにも麻酔薬がどの神経細胞中の,どの遺伝子(転写物またはRNA)の発現レベルに,どの程度の投与量で作用するかについても適用可能であろう.本稿では,典型的なビッグデータである大量の塩基配列データ(NGSデータ)を効率的に扱うための取り組みを紹介する.

日本臨床麻酔学会第35回大会 招請講演
  • 竹中 元康
    2016 年 36 巻 5 号 p. 544-549
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    麻酔科学は,外科手術を円滑に行うために登場した医学・医療の一分野であり,疾患,手術操作,薬剤に対する生理的反応をコントロールし患者の安全と快適を目指す領域である.一方,緩和医療学は生命を脅かす疾患に起因した諸問題に直面する患者・家族に早期より関わり,苦痛の予防と苦痛からの解放を図りQuality of lifeの改善を目指す領域である.麻酔科学と緩和医療学,急性期と慢性期,蘇生と看取りなどまったく相いれない領域のように考えられるが,痛みの軽減(鎮痛),鎮静,呼吸循環動態の安定,ストレスの軽減を図るなど実際には共通点も多く認められる.がんの痛みは患者のみならずその家族にとっても重大な関心事であるが,十分とは言えないことも多い.麻酔科医は鎮痛や鎮痛手段に精通しており,疼痛コントロールについて特別なスキルを持ったエキスパートであるため緩和ケアにおいても重要な役割が果たせると考える.今後,わが国においてより良い緩和医療を提供するためには緩和ケアのスペシャリストのみではなくプライマリー緩和ケア医を育成することが重要である.

日本臨床麻酔学会第35回大会 教育講演
  • 石川 晴士
    2016 年 36 巻 5 号 p. 550-557
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    現在,急性腎障害の主な国際的診断基準は3つ存在し,これらに基づく周術期急性腎障害の発生頻度は移植手術後で最も高く,次いで心臓・大血管手術,心臓以外の臓器手術,その他の非心臓手術が続く.急性腎障害のリスクは多岐にわたり,慢性腎臓病,高血圧,末梢血管障害などの併存疾患,造影剤などの術前使用薬物,人工心肺などの手術中の介入,大量出血などの手術中の病態があげられる.周術期における麻酔科医の役割には急性腎障害の予防があり,①血管内容量を適正に保つ,②腎灌流圧を適切に保つ,③腎毒性のある薬物を避けることにまとめられる.乏尿が麻酔中に起こりやすい病態であることを理解し,乏尿に対してはリスクに基づいた対処が必要である.

  • 北村 享之
    2016 年 36 巻 5 号 p. 558-566
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    周術期高血糖は手術予後を増悪させる独立因子である.術前管理や術後管理も糖代謝に大きな影響を及ぼしうるが,術中においては,手術侵襲だけでなく,麻酔管理方法や麻酔薬などのさまざまな因子が糖代謝を大きく変容させる.術中糖代謝管理においては,エネルギー需給バランスを維持し,高血糖が惹起しうる弊害を回避することが重要である.さまざまな因子が術中糖代謝に及ぼす影響の全容が未解明であるため,残念ながら術中血糖値管理指針は未確立のままである.この分野の研究が発展することにより手術予後の改善に寄与しうる術中血糖値管理指針が確立されることを期待したい.

  • 白神 豪太郎
    2016 年 36 巻 5 号 p. 567-575
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    日帰り麻酔では迅速な術後回復が求められる.そのためには周術期有害事象発生が極めて少ないこと,すなわち安全で質が高いことが必須である.日帰り麻酔では施設・要員の能力に応じた患者と手術を選ぶことが最も肝要である.さらに,帰宅前有害事象発生による帰宅遅延や予定外入院を防止すること,帰宅後有害事象発生による再来院・再入院の発生を抑制することが重要である.そのためには,術前評価,患者・介護者への術前教育を含む術前準備,術中・術後ケア,帰宅前教育,帰宅後フォローなどの一貫した標準的管理プロトコール整備が必要不可欠である.麻酔科医はこれらの体制の整備・維持管理の責任者として最もふさわしい.

日本臨床麻酔学会第35回大会 シンポジウム ─術前診察の効率化─
  • 土田 英昭, 佐和 貞治
    2016 年 36 巻 5 号 p. 576
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー
  • 安藤 亜希, 坂本 麗仁, 澤田 真如, 鈴木 利保
    2016 年 36 巻 5 号 p. 577-583
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    当院では中央手術室-外来間を一足制で行き来できる構造的利点を利用し,麻酔科外来で複数の業務を遂行できる対策をとって成果をあげている.本稿では当院の麻酔科外来診察の現状,曜日別の麻酔科外来診察の頻度,診察に要する時間,患者重症度と診察時間の関係について報告し,そこから見えてきた問題点,対策について言及する.

  • 山本 拓巳, 熊澤 昌彦, 山田 裕子, 玉木 久美子, 操 奈美, 飯田 宏樹
    2016 年 36 巻 5 号 p. 584-589
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    入院後から手術までの時間短縮だけでなく,高齢化や併存症に伴う重症例の増加など,麻酔科術前診察の効率性と安全性を両立させる取り組みは必ずしも容易ではない.われわれの施設では,電子カルテを活用した情報共有や標準化を用いることで,入院後に実施する麻酔科術前診察において一定の成果を得ることができた.しかし,術前状態の最適化という点では時間的な制約から限界がある.外来患者に対応した術前管理センターの運用を開始することで,麻酔科医が高リスク患者に対して適切に早期介入する機会を増やすことが期待できる.こうした取り組みによって,術前診察だけでなく周術期管理全体の質の向上を目指していきたい.

  • 石川 真士, 坂本 篤裕
    2016 年 36 巻 5 号 p. 590-592
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    麻酔科術前外来は術前リスクを評価するとともに,患者が麻酔について理解し信頼を深めることを目的としている.術前合併症は周術期トラブルの主要な原因であり,その役割は非常に重要である.しかし,短期間で行わなければならないため,他職種が連携し多角的な視点でアプローチをすることが必要である.当院においては,麻酔科,看護師,薬剤師,各科専門医による術前スクリーニングを行っている.現状では,別個に行われた各種評価を麻酔科医が統合,判断した上で周術期管理を行っている.今後,周術期管理チームとして一つにまとめ,さらに質の高い周術期管理を提供するよう取り組む必要がある.

  • 佐伯 昇
    2016 年 36 巻 5 号 p. 593-598
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    新臨床研修制度において初期研修医が麻酔科研修で習得すべきとされるのは気道確保などの基本的手技とされるが,術前診察については十分な時間を取ることが困難な状況となってきている.しかし,麻酔科上級医に対する意識調査では研修医教育において術前診察の意義は麻酔管理に劣らず重要であると考えていた.また,術前診察患者情報の収集・診察・プレゼンテーションは是非行わせるべきであるが他部署との交渉や責任が発生する麻酔受付や説明・承諾の手続きは行わせるべきではない,と考えていた.現在,術前診察において術前に収集できる患者情報は質・量ともに増大しているが,研修医自らが考え,解決する力を養え,かつ麻酔科への興味を湧かせるような方法が望まれる.

〔第10回日本医学シミュレーション学会 学術集会〕 パネルディスカッション ─次世代JAMSを担う─
  • 駒澤 伸泰, 藤原 俊介, 趙 崇至, 三原 良介, 林 道廣, 南 敏明
    2016 年 36 巻 5 号 p. 599-603
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    シミュレーション教育の質の維持には,①常にコース内容のフィードバックを行い質の改善を行う,②学習目標の明確化,③インストラクターの指導技術の研鑽が重要である.さらに,シミュレーション教育を臨床医学へのテクニカル・ノンテクニカルスキル向上へ応用するには,その伝導者であるインストラクターによる意識付けが必須である.米国心臓協会の主催する救命処置のインストラクターへの必須条件として,コアインストラクターコース受講がある.これはコーチング等の成人教育原理を重視しており,臨床教育においても十分活用できるため,本稿ではインストラクターに求められる20の能力について紹介する.シミュレーション教育を臨床研修に応用し連結するためには指導能力の研鑽は重要と考えられる.

デスフルランの上手な使い方(第3回)
  • 山口 重樹
    2016 年 36 巻 5 号 p. 606-609
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    デスフルランを用いた麻酔管理で遭遇する問題点は,気道刺激に伴う咳嗽,喉頭痙攣,気管支収縮,交感神経刺激による頻脈,高血圧である.そのため,デスフルラン吸入開始時には細心の注意が必要である.デスフルランの吸入濃度が1MACを超えると,気道刺激や交感神経刺激の危険性が高まる.Golden roleと呼ばれる「新鮮ガス総流量×デスフルランの設定濃度」の値が18を超えないようにデスフルラン吸入を設定することが望ましい.デスフルランによる気道刺激,交感神経刺激の予防にオピオイド鎮痛薬の併用が有効である.その他,低流量麻酔の問題点として,麻酔中の気化器再充填,二酸化炭素吸収材の劣化などの問題がある.

  • 横塚 基, 寺嶋 克幸
    2016 年 36 巻 5 号 p. 610-614
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    デスフルランは1.5MAC以上へ急激に濃度を上昇させることにより,一過性の交感神経刺激作用を有することが知られている.しかし,1MAC程度の使用であればそれは問題とならず,他の吸入麻酔薬と同様,安全に麻酔管理が可能である.心臓手術中には胸骨正中切開,心膜切開,大動脈操作時など血圧が上昇しやすい時期がある.疼痛刺激などに対する血行動態の変動に,デスフルランの濃度を高くすることで対処することは,避けるべきである.デスフルランの持つ心筋保護作用は,心筋虚血を起こす可能性が高い心臓手術に有用であり,覚醒が速やかでその質も優れている性質はultra fast-track anesthesiaに活用できる可能性がある.

  • 山口 重樹
    2016 年 36 巻 5 号 p. 615-619
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    整形外科および形成外科手術の麻酔管理においてもデスフルランの使用頻度は高い.他の揮発性吸入麻酔薬同様にデスフルランには鎮痛効果がないため,麻酔維持中はオピオイド鎮痛薬あるいは局所浸潤,区域麻酔の併用が必要である.オピオイド鎮痛薬の併用は術後の嘔気・嘔吐の原因となるため,可能な限り局所浸潤,区域麻酔を併用すべきである.デスフルランが推奨される場面は,術中・術後の神経学的評価が必要な脊椎手術,術後認知機能障害が問題となる高齢者の大腿骨頸部骨折手術などである.小児では,脊椎手術以外の整形外科手術でのデスフルランの有用性は少ない.日帰り手術が可能な形成外科手術においてデスフルランは有用な選択肢である.

  • 横塚 基, 寺嶋 克幸
    2016 年 36 巻 5 号 p. 620-622
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    わが国でも心不全患者が増加の一途をたどっている.われわれは,不全心に対するデスフルランの影響を熟知しておく必要がある.心不全患者は,ポンプ機能の低下に加え,β受容体の感受性低下により,交感神経刺激に対する反応性も低下している.正常心に比べ不全心では,デスフルラン投与により血圧や心拍出量が大きく低下する.一方,デスフルランは不全心に対しても心筋保護効果を持つ可能性がある.デスフルランをはじめとした吸入麻酔薬が有用であるかもしれない.しかし,不全心は循環作動薬や麻酔薬に対する反応が正常心とは大きく異なることに留意し,慎重に麻酔管理するべきである.

  • 小林 求
    2016 年 36 巻 5 号 p. 623-625
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    デスフルランは血液/ガス分配係数が0.45と亜酸化窒素並みに小さく,麻酔の導入,覚醒が速やかである.また生体内代謝率が0.02%と低く,生体内で安定している.これらのことは,術後呼吸不全のリスクが大きい神経・筋疾患患者の麻酔管理において重要なポイントとなる.デスフルランは単独でも筋弛緩作用を持ち,筋弛緩薬の効果を増強することが知られているが,重症筋無力症(MG)患者ではその傾向はより強くなる.しかしMG患者に筋弛緩薬を使用せずに麻酔管理する場合に,覚醒が早く筋弛緩作用のあるデスフルランは,手術を安全に行うためには有効な麻酔薬である.

  • 西澤 秀哉, 中山 英人
    2016 年 36 巻 5 号 p. 626-628
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    頭部外傷患者の麻酔管理は,二次性脳損傷の発症・進展を防ぐために,頭蓋内圧を制御して脳灌流圧を維持することが重要となる.臨床使用濃度におけるデスフルランが頭蓋内圧を大きく変動させることはないが,頭部外傷患者は脳血流自己調節能が破綻している可能性が高いため注意を要する.術後早期に神経学的機能評価を行うことで治療可能な合併症を捕捉できる利点を有することから,デスフルランの速やかな覚醒は有用である.

  • 小林 求
    2016 年 36 巻 5 号 p. 629-631
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/11/05
    ジャーナル フリー

    臓器移植患者に使用する麻酔薬を選択する場合に焦点となるのは,機能が廃絶した臓器に対する麻酔薬の臓器毒性と虚血再灌流障害に対する麻酔薬の臓器保護作用の2点である.臓器毒性という観点からは,デスフルランは低い生体内代謝率のため,ほとんど代謝を受けず生体内で安定であり,肝機能や腎機能への影響は小さいと考えられる.また臓器保護作用としては,デスフルランもセボフルランと同様にプレコンディショニング効果が報告されている.また,デスフルランは血液/ガス分配係数が小さく,覚醒が早いため,臓器を問わず移植術後の早期抜管を目的に使用されることも多い.

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