日本臨床麻酔学会誌
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37 巻, 1 号
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原著論文
  • 市川 順子, 西山 圭子, 小高 光晴, 小森 万希子
    2017 年37 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    過去3年間の麻酔科関連のインシデント・アクシデント報告を分析した.さらに,患者に重大な障害が発生したアクシデントにつき,SHELLモデルに基づいて要因分析を行った.麻酔科関連の事故の報告内容は,与薬9件,硬膜外麻酔関連9件,手技8件,輸血5件,術中急変4件,挿管やチューブトラブル4件,体位3件,消毒1件,その他10件であった.この要因の多くは当事者やその周囲の医療関係者による人的要因であり,その一部がハードウェアや環境,ソフトウェア要因と重複していた.人的要因には,思い込み,指示確認不足,緊急事態における時間的圧迫により手順遵守を怠った,コミュニケーション不足,不十分な知識や技術,経験などがあった.

  • 稲田 拓治
    2017 年37 巻1 号 p. 6-10
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    手術の高齢化とともに増加している術後せん妄は,合併症の発生や予後,術後認知機能障害と関連する.今回,チームによる早期離床を目標とした術後せん妄予防プログラムを作成した.内容は周術期ストレス軽減,術後回復促進のための要点を集約した.主治医,病棟スタッフ,患者とその家族にプログラムの趣旨を説明して,理解と協力を求めた.70歳以上の整形外科患者を対象にして,せん妄レベルを0〜3の4段階で評価し,手術前後の推移をプログラム導入前後で比較した.導入後,重症のスコア3に達した症例数は有意に減少した.このプログラムの啓蒙は有用であると示唆された.

症例報告
短報
  • 緒方 裕一, 堀下 貴文, 土山 玲子, 川崎 貴士
    2017 年37 巻1 号 p. 25-28
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    食道癌術後の胃管気管瘻を有する67歳の男性に対して,経口的に硬性鏡を用いたYステントの挿入が予定された.術式により,手術中は気管チューブを抜去するため,PCPS併用にて全身麻酔を行う計画を立てた.脊髄くも膜下麻酔下に右大腿動静脈にPCPSの送・脱血管を挿入し,麻酔導入後,経口挿管を行い麻酔維持した.術野より右主気管支に気管チューブを挿入し,右片肺換気にて経口的にYステントを留置した.留置中,右手指のSpO2が94%まで低下した.経口再挿管を行い,人工呼吸を開始後,右手SpO2も100%に戻り,PCPSから離脱し覚醒後抜管した.脊髄くも膜下麻酔と術野挿管による人工呼吸管理を用いて,PCPS補助下に安全な麻酔管理を行うことができた.

  • 重松ロカテッリ 万里恵, 河野 崇, 山中 大樹, 立岩 浩規, 北岡 智子, 横山 正尚
    2017 年37 巻1 号 p. 29-32
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    鎮痛薬の有効性はプラセボ・ノセボ効果の影響を強く受ける.特に,鎮痛薬への期待と不安は,それらの発現に重要と考えられる.今回,臨床実習前の医学生を対象として新規に説明を受けた鎮痛薬の期待と不安の関係についてアンケートを用いた予備調査を行った.医学部4年生(108名)に対し,弱オピオイド鎮痛薬のトラマドールの説明を通常臨床と同様に行った.その後,トラマドールの鎮痛効果への期待と副作用の不安について11段階で評価した.その結果,トラマドールの鎮痛効果への期待度と副作用の不安度には有意な正の相関が見られた(Spearmanの順位相関係数:0.392).鎮痛薬のプラセボ効果を最大限にして,ノセボ効果を最小限にすることは医療従事者にとって永遠の課題といえるが,その達成のため今後もさらなる検討が必要と考えられる.

  • 堀井 靖彦, 河野 靖生, 横野 諭
    2017 年37 巻1 号 p. 33-36
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    症例は31歳の女性.低置胎盤に対し帝王切開術が予定され,硬膜外麻酔併用脊髄くも膜下麻酔にて麻酔管理した.手術翌日に頭高位に伴い激しい後頭部痛が出現し,硬膜穿刺後頭痛(PDPH)と診断した.安静臥床,非ステロイド性抗炎症薬,輸液負荷,硬膜外生理食塩水持続注入はいずれも無効であった.そこで,カフェインを経静脈投与したところ,頭痛は劇的に軽減し,歩行も可能となった.その後,徐々に投与量を漸減し,最終的に投与を中止したが頭痛の再燃はなく,問題なく退院した.帝王切開術後のPDPHの薬物療法として,カフェインは母子に対して安全に投与でき,治療薬の選択肢の一つとなる可能性が示唆された.

紹介
日本臨床麻酔学会第35回大会 教育講演
  • 西部 伸一
    2017 年37 巻1 号 p. 41-48
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    成人の先天性心疾患患者が増加している.麻酔科医が診療する機会も増加しており,先天性心疾患を専門としない麻酔科医にも,整形外科や一般外科などの非心臓手術の麻酔や,成人施設でも普及してきたカテーテルによる心房中隔欠損孔閉鎖術の周術期管理に対する知識が求められる.非心臓手術の麻酔にあたっては,成人先天性心疾患特有の心不全,不整脈,肺高血圧,チアノーゼによる臓器障害に注意すると同時に,高血圧,動脈硬化,糖尿病などが病態へ与える影響を評価することが大切である.高齢者の心房中隔欠損孔カテーテル閉鎖術においては,術前から存在する内因性の左室拡張障害による閉鎖後の急性左心不全に配慮が必要である.

  • 濱田 宏
    2017 年37 巻1 号 p. 49-57
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    近年,周術期抗凝固の普及などに伴い,硬膜外鎮痛が使いにくい状況が多くなってきている.一方で患者自己調節鎮痛(PCA)を用いたオピオイドの全身投与は硬膜外鎮痛の代替手段として使用頻度が増加しているものと思われるが,副作用の発生が懸念される.このような状況の中で末梢神経ブロックが急速に普及しており,さらに非オピオイド鎮痛薬や鎮痛補助薬を積極的に使用するなど,作用機序の異なる鎮痛手段を組み合わせた多様性鎮痛(multimodal analgesia)が注目されている.本稿では最近の術後痛管理の動向を解説し,さらに安全で効率的な術後痛管理としてチーム医療に基づいた術後痛管理システムを紹介する.

日本臨床麻酔学会第35回大会 シンポジウム ─手術室における医療安全─
  • 近江 明文, 西脇 公俊
    2017 年37 巻1 号 p. 58
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー
  • 西脇 公俊
    2017 年37 巻1 号 p. 59-66
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    近年手術技術の進歩と周術期全身管理の発展により,より多くの手術が世界中で行われるようになってきた.そこで世界保健機関(WHO)は手術関連の死亡・合併症を減らす目的でWHO Guidelines for Safe Surgery 2009を発表した.本稿では同ガイドラインを概説し,それに対する日本での取り組み,その遵守を含めた欧州麻酔科学会を中心とした麻酔科学分野における患者安全のためのヘルシンキ宣言とその批准の広がりについて述べ,世界における手術に関する患者安全の潮流について概説した.

  • 近江 明文
    2017 年37 巻1 号 p. 67-75
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    当院では2012年度より,WHO「手術安全チェックリスト(CL)」を導入した.今回,導入前後のインシデント件数の年次推移,アンケート調査によるCLの総合評価,CL運用上の問題点と対策について検討した.その結果,①有害事象は導入後に一桁に減少,②ネバーイベント件数は導入後3年間でゼロ件,などの結果が得られた.CLの総合評価では,導入2年後の肯定的評価が全職種で高かった.また,運用上の問題点として,①3フェーズすべてを行うべきか,②タイムアウトの形骸化,③緊急時にもタイムアウトを施行すべきか,などが抽出された.当CLは手術患者安全のためのツールとして有用であり,医療安全の文化を醸成する一手段として期待される.

  • 山浦 健
    2017 年37 巻1 号 p. 76-80
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    「WHO安全な手術のためのガイドライン2009」により,チェックリストの重要性が認識され,各施設に合うように少しずつ改変を加えながら多くの病院で採用されるに至った.チェックリストの導入は,チーム全体で見過ごされやすい些細な問題の認識,複雑なプロセスにおいて最低限期待されている手順の明確化,何よりもチームワークが高まることによる基本的な成果基準の高度化などに役立つことが明らかになっている.一方,チェックリストを導入しても,チェックリストの運用等に問題があるためにチェックリストそのものが形骸化する可能性があり,麻酔・手術に伴うインシデントはゼロにすることはできない.

  • 合谷木 徹
    2017 年37 巻1 号 p. 81-87
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    東日本大震災などの大災害をきっかけとして,各施設の防災に対する機運が高まり,対策が講じられている.しかし,いくら対策を議論していても実際の運用時に戸惑っていては,その対策が有効であるとは言いがたい.手術室での災害時には自身の身の安全を守ることはもちろんだが,手術を受けている患者を蔑ろにすべきではない.麻酔科医は,手術室での事態を掌握し適切に対応する舵取りを担っている.単独の手術室のみならず複数の手術室すべてのリーダーシップを取る必要がある.このため,手術室特有の構造とともに災害時に講ずべき対策を理解する必要がある.災害時には手術室全体のリーダー(インチャージ)は,医療機器の損傷具合などの各部屋の状況を掌握し,病院からの指示を受け,適切な判断の下に手術室全体の指示を出す.災害状況との兼ね合いで,現在進行中の手術を継続あるいは中断すべきかの判断を個々の状況に応じて下すように関連各所と連携を取る必要がある.緊急時に適切に対応するためには,災害対策マニュアルに従って,日々の訓練を行うことが重要であり,緊急時の対処は,対応の不足や混乱などがないようアクションカードに従うべきである.「手術医療の実践ガイドライン(改訂版)」に記載された事項を抜粋して解説していく.

  • 渡邊 正志, 寺田 享志, 中澤 恵子, 内藤 智子
    2017 年37 巻1 号 p. 88-96
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    多職種チーム医療を推進する目的で,TeamSTEPPS®研修を2010年7月より院内の医療安全チームとともに行ってきた.医療現場でのCRM研修も行われるようになり,そのツールと戦略はスタッフに浸透しつつある.しかし,変革を望まないスタッフがいまだ多い.変革の影に個々のスタッフの仕事への関わり方を見直す変革も隠れており,変革は停滞しているのが現状である.Amy C. EdmondsonのTeaming(チーミング)は,率直に意見を言う,試みる,協働する,省察する中で,仕事の現場をチームが学び合う現場とすることにより,徐々に個々のモチベーションに変化を加えていくものである.人前ではしゃべらない,自分を馬鹿だと思われたくない,という対人リスクがある中で,リーダー自身がチームメンバーが自由に意見を言ったり,質問をしたりできる現場にしていくことが最初のステップである.チームメンバーによるチームを活性化する声や態度も大切で,チームの中でメンバーみんなが学び合っていくことが望ましい.Teamingにより停滞しかけているTeamSTEPPSの歩みをステップアップするものとなるようにこれをうまく取り入れて,TeamSTEPPSの輝かしいOUTCOMEを手に入れたい.

日本臨床麻酔学会第35回大会 シンポジウム ─周術期管理チーム看護師の業務内容を考える─
〔日本医学シミュレーション学会〕第11回日本医学シミュレーション学会 シンポジウム ─伝える力をみがく─
  • 森本 康裕
    2017 年37 巻1 号 p. 116-120
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    プレゼンテーションでは,限られた時間内にできるだけ多くの情報を聴衆の記憶にとどめることが重要である.ずばり「ポイントを絞って文字数を減らせ」が本稿の主張である.一般演題を想定すると,まず「はじめに」「対象と方法」「結果」「考察」「結語」といった定型的な流れがある.まずは形に沿って必要な情報を書き出す.次に,内容をよく吟味して重複した表現など内容を簡潔にしていく.できるだけ短い単語を組み合わせて模式的に表現したい.その上で,図にできる部分はできるだけ図で表現する.グラフや表も単にデータを入れるだけでなく,より見やすいように設定を細かく修正することが重要である.最後の作り込みで伝わり方が大きく異なってくることを強調しておきたい.

  • 鈴木 昭広
    2017 年37 巻1 号 p. 121-124
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    学会テーマである「伝える力をみがく」のシンポジウムにおいて,演者の考えるプレゼンテーションのあり方を紹介した.プレゼンで最も重要なのは時間管理である.時間オーバーを避けるには,プレゼンテーションを台本が読める学芸会ととらえる.台本となるスライドを聴衆と共有しながら進められるので,スライドを入念に準備することで,自分も説明しやすく,聴衆も理解しやすくなるのではないだろうか.

  • 讃岐 美智義
    2017 年37 巻1 号 p. 125-130
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    プレゼンテーションには必ず目的がある.その目的のためには,少なくとも最後まで聴衆の気持ちを引きつけておく必要がある.スライド作成だけに力を入れるのではなく,どのように話を構成するか,どのように場の状況に合わせて展開するか,どのように反応を得るのかが鍵を握っている.伝えることには必ず目的があり,それが達成できたかどうかというのは日常会話と同じである.ただ,プレゼンテーションがそれと異なるのは,“伝える状況”に対応する必要があるというだけである.

  • 上嶋 浩順
    2017 年37 巻1 号 p. 131-135
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    「伝えるプレゼンテーションに必要な要素は?」と聞かれると「プレゼンテーションがうまい先生を見てください」と答えてしまいそうだが,それでは答えにはならない(つまり伝えるプレゼンテーションになっていない).「伝える」には,「話す」「書く」「聞く」などの行為すべてを含む.まさに「伝える」行為は「コミュニケーション」行為と同じである.あなたの周りの「コミュニケーション」がうまい先生は,きっと「プレゼンテーション」もうまい先生に違いない.「プレゼンテーション」がうまい先生は,「伝える力を培う」「相手を惹きつける」「わかりやすく伝える」の3要素が備わっている.これが私の考える伝えるプレゼンテーションに必要な3つの要素である.

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