日本臨床麻酔学会誌
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37 巻, 3 号
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原著論文
  • 興梠 雅代, 谷川 義則, 上村 裕平, 平川 奈緒美, 坂口 嘉郎
    2017 年 37 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    硬膜外穿刺に伴う合併症のうち,感染症は診断・治療が遅れると重篤な神経障害を生じることがある.われわれは1993年から2013年に硬膜外穿刺後に生じた硬膜外膿瘍12例の発症時期,治療,予後を後ろ向きに検討した.症状発現が穿刺から3週以上経過していた症例が3例あり,それらの症例では病期が進行していた.治療は全例に抗菌薬投与が行われた.4例に外科的治療を施行し,うち2例は麻痺が残存した.穿刺から長期間経過後に症状が顕在化する場合,症状発現時には病期が進行している可能性があるため,硬膜外穿刺後に発熱や背部痛を認める場合には,穿刺の時期にかかわらず硬膜外膿瘍を念頭に置いて診断,治療にあたる必要がある.

  • 加藤 正太郎, 合谷木 徹, 岩澤 さあや, 堀口 剛, 西川 俊昭, 三浦 昌朋
    2017 年 37 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    手術患者入れ替え時間の短縮は手術件数増加の重要な要因となる.秋田大学医学部附属病院では2009年より薬剤師1名が手術室に専従し,麻酔薬調製および麻薬管理を行ってきた.今回われわれは,過去に行った7診療科の患者入れ替え時間を調査し薬剤師専従開始前後で比較した.その結果,専従開始後の患者入れ替え時間は専従開始前と比較して中央値13.0分間有意に短縮し,診療科別の検討でもすべてにおいて時間が短縮した.薬剤師が麻酔科医に代わって麻酔薬調製および麻薬管理をすることで患者入れ替え時間の短縮に繋がり,手術件数の向上に貢献できると考えられる.

症例報告
  • 佐野 もえ, 裏辻 悠子, 秋山 沙織, 河上 寿和子, 伊福 弥生, 入江 潤
    2017 年 37 巻 3 号 p. 301-304
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    先天性第XIII因子欠乏症を合併する52歳の男性に対する頚椎手術の周術期管理を経験した.第XIII因子測定に1日以上要するため,術前より十分な因子を補充し,因子活性値を100%以上に増加させ,術中は因子を補充せず,出血傾向を引き起こさずに手術を終えられた.しかし後日得られた術中の因子活性値は予測以上に低下していた.術中の慎重な観察と因子補充の準備など,因子活性値低下の可能性も念頭に置いた周到な麻酔管理が必要である.

  • 上田 聡子, 栗山 圭輔, 向江 美智子, 北川 忠司, 鳴尾 匡史, 大下 修造
    2017 年 37 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    術前の痛みの有無が術後痛に与える影響を,IV-PCA(intravenous patient-controlled analgesia)のボーラス投与回数により後方視的に検討した.症例は2015年4月から12月までに福岡徳洲会病院で行われた開腹手術51例とした.術当日の術前の痛みの状態をカルテから判断し,有痛群(26例)と無痛群(25例)に分けた.術後はIV-PCAによる鎮痛を行い,PCA終了までのボーラス投与回数を集計した.【結果】ボーラス投与回数は,有痛群で6±6回,無痛群で10±8回で,有痛群で有意に減少していた(P=0.02).有痛群はすべて緊急手術であった.【結語】有痛群では,無痛群に比較して術後の鎮痛薬の必要量が減少していた.術後鎮痛薬の必要量の減少には,術前の痛みが緊急手術を要する急性痛であることが影響した可能性が考えられた.

  • 多羅尾 健太郎, 清水 太郎, 飯田 健太郎, 孫 慶淑
    2017 年 37 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    心不全に伴い,腸管粘膜の機能の再構築,環境の悪化により,BT(bacterial translocation)を起こす症例がある可能性が指摘されている.われわれは今回,大動脈弁狭窄に伴ううっ血性心不全において,BTを合併したと考えられる1症例を経験したため報告する.症例は83歳の男性,高度大動脈弁狭窄にて急性心不全を発症し,急性心不全治療後に,抗菌薬に反応する原因不明の発熱と急性腎障害を繰り返した.感染源が特定できず,心機能低下自体がBTの原因になっていると判断し,緊急で大動脈弁置換術が行われた.その後病態は改善し独歩退院に至った.このような症例での治療方針は難しいが,本症例では原疾患である大動脈弁狭窄症に対する準緊急手術が,救命の一助となった.

  • 岡本 さくら, 宗宮 奈美恵, 横山 幸代, 水谷 吉宏, 富田 彰
    2017 年 37 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,手術不能例として経過観察中に急速な気道狭窄をきたし,緊急気管ステント留置術となった1例の麻酔管理を経験した.症例は71歳男性.上行大動脈瘤による重度の気道狭窄に対し,シリコンYステント留置が予定された.手術開始前に,大腿動静脈よりPCPSをスタンバイし,瘤破裂のリスクを軽減するため,動脈瘤にコイル塞栓を行った.コイル塞栓後に全身麻酔導入し,硬性鏡によるステント挿入術が施行された.術中は一時的にPCPSを使用した.各科の連携により,安全に麻酔管理を行うことができたが,約1カ月後に喀血のため死亡された.予後の限られた症例に対してどこまでの医療行為を行うかは,過剰医療とならないよう十分検討すべきである.

  • 江田 佐江子, 今町 憲貴, 美根 智子, 齊藤 洋司
    2017 年 37 巻 3 号 p. 323-326
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    抗てんかん薬は非脱分極性筋弛緩薬(NDMRs)の作用を短くすることが知られている.抗てんかん薬の中でも,カルバマゼピンやフェニトイン以外の抗てんかん薬が筋弛緩に及ぼす影響についての報告は少なく,近年バルプロ酸ナトリウム(VPA)もロクロニウム(Rb)の作用時間に影響を及ぼすとの報告がなされた.今回,若年性ミオクロニーてんかんを合併し,VPA内服中の19歳の女性患者において,Rb追加投与間隔が平均22分とRbの作用時間が短縮したと考えられた症例を経験した.本症例のようにVPA内服中の患者では,NDMRsの作用時間が短縮している可能性を考え,より厳重な筋弛緩モニター下で,適切に管理する必要がある.

短報
日本臨床麻酔学会第35回大会 教育講演
  • 金 徹
    2017 年 37 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    2012年,日本麻酔科学会から術前絶飲食ガイドラインが公表された.本邦の複数施設による共同研究などの研究データに基づき作成され,その内容は欧米のガイドラインと比較して同等のものとなっている.術前絶飲食の目的の一つは麻酔導入時の誤嚥予防である.したがって実際の経口摂取後の胃内容量を確認することによりガイドラインの妥当性を評価することができるので,ガイドライン公表後に行われた経口摂取後の胃内容量を評価した研究を参考にその妥当性を検証した.これらの研究からわかることは,現在のガイドラインでは安全性が十分に担保されていること,術前の経口摂取制限をさらに緩められる可能性があることである.

  • 仙頭 佳起
    2017 年 37 巻 3 号 p. 337-345
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    周術期管理において,術後患者の全身状態を安定化させるPostanesthesia Care Unit (PACU)が果たしうる役割を再考した.PACUに期待される機能は,術後安全性の向上,患者満足度の向上,手術室の効率的運用への寄与であり,その効果を検証することが求められている.本邦ではPACUを運営する施設が16.1%と少ないが,運営しない施設の60.0%でその必要性を感じており,場所や人員の確保に関する対策が求められると同時に日本に合った形のPACUについても検討すべきである.PACU運営の実際や効果検証の進捗に触れながら,今後の展望について解説した.

日本臨床麻酔学会第36回大会 教育講演
  • 廣田 和美
    2017 年 37 巻 3 号 p. 346-353
    発行日: 2017/05/15
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    献血者が感染直後のウイルス量が少ないウインドウ期だと,B,C型肝炎ウイルスやエイズウイルスが混入した献血血液が検査をすり抜け輸血され,受血者が感染している実態がある.また輸血により溶血性副作用,アナフィラキシー,TRALI,GVHD等の有害事象も生じうる.このためわれわれは,同種血輸血を避けるべく希釈式自己血輸血(HAT)を推進している.解析の結果,HATに伴う昇圧薬を要する血圧低下は6%であり,非心臓手術患者でのHATによる輸血回避率(退院時)は,出血量2,000g未満で94%,2,000g以上で約40%と,HATは安全で有効であることがわかった.ただし,高齢者や冠動脈疾患患者では慎重な施行が求められる.

日本臨床麻酔学会第35回大会 シンポジウム ─がん疼痛に対する薬物療法(鎮痛薬・医療用麻薬・鎮痛補助薬) ─現状とピットフォール──
日本臨床麻酔学会第35回大会 シンポジウム ─麻酔科医ができるSSI 予防─
日本臨床麻酔学会第35回大会 シンポジウム ─慢性痛患者の治療と周術期管理・最近の話題─
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