日本臨床麻酔学会誌
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37 巻 , 4 号
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総説
  • 細井 卓司, 山田 高成, 森崎 浩, 浦上 研一, 楠原 正俊, 玉井 直
    2017 年 37 巻 4 号 p. 407-417
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    術後悪心・嘔吐は,麻酔関連合併症の中で最も頻度が高く,また重篤な病態を惹起する危険性がある.その原因はさまざまな要因が指摘され,また嘔吐に関わる伝達経路も複数存在している.世界的にはこれらのさまざまな伝達経路に対処可能な制吐薬あるいは嘔吐予防薬が開発されているものの,わが国においては保険適用が限定され,高額な制吐薬を術後悪心・嘔吐には処方できない状況にある.今後は術後悪心・嘔吐を併発しやすい患者群をより精度の高い評価法や非侵襲的指標により把握し,効率的に予防することが望まれる.

症例報告
  • 原 鉄人, 平 幸輝, 杉本 健三郎, 竹内 護
    2017 年 37 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    胸背部の刺入物のため仰臥位困難な外傷患者の緊急止血術に際し,エアウェイスコープ®(AWS)を用いて意識下側臥位挿管で全身麻酔を導入した.症例は健康な79歳男性.左胸背部から頭側方向に家庭用包丁が約20cm(推定)刺入され,出血性ショックの状態に対し急速輸液を行いつつ入室した.気胸や心タンポナーデの可能性を考え,右側臥位のまま少量の麻酔薬で鎮静し,意識下挿管した.用手陽圧換気でも呼吸循環動態が変化しないことを確認した上で機械調節呼吸に移行し手術を開始,直視下に包丁を抜去した.受傷26日後に独歩退院した.本症例でAWSによる意識下側臥位挿管は有用であった.

  • 冨田 晶子, 大竹 孝尚, 生津 綾乃, 橋田 和樹, 大目 祐介, 山下 茂樹
    2017 年 37 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    70歳の男性.肝細胞癌に対して,全身麻酔および硬膜外麻酔下に腹腔鏡下肝拡大左葉切除術が施行された.術中,中肝静脈を損傷し圧迫止血操作を行った際に,一時的に収縮期血圧が60mmHgまで低下したが,血管縫合により血行動態は安定し手術を完遂した.手術終了前の体内異物遺残チェックでガーゼの枚数が不足したため胸腹部単純X線撮影を行い,左肺門部にガーゼと思われる線状陰影を認めた.この時点では肺塞栓を疑う症状は認めておらず,カテーテルによる肺動脈内異物除去を行う方針とした.迷入したガーゼは左肺動脈に達していたものの,重篤な転帰に至ることなく,血管内治療と鼠径部小切開手術で摘出し得た.

  • 山脇 緑, 西村 太一, 柘植 江里香, 本山 泰士, 江木 盛時, 溝渕 知司
    2017 年 37 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    薬剤性肝障害の既往のある45歳女性に対し,腹式単純子宮全摘術が予定された.ロピバカインを用いた腹横筋膜面ブロック併用全身麻酔を施行した術後当日から,肝機能異常と凝固障害を認めた.循環不全やウイルスによる肝障害は否定的で,術中使用薬剤対象のリンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test:DLST)でロピバカインが陽性と判定され,薬剤性肝障害が疑われた.ロピバカインでの肝障害の報告は少ないが,アレルギー性や代謝性といった特異体質性では薬剤性肝障害を発症しうる.本症例では,DLSTの結果から今後はロピバカインの使用は避けるべきであると考えられた.

  • 市川 拓, 大橋 麻実, 大野 公美, 芦刈 英理
    2017 年 37 巻 4 号 p. 433-438
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    膀胱自然破裂および術前高K血症・代謝性アシドーシス,腎機能障害をきたし,周術期管理,膀胱修復・ドレナージ手術により軽快した症例を経験した.症例は66歳男性で,膀胱破裂に対し緊急開腹術が予定された.術前検査で高K血症・代謝性アシドーシス,腎機能障害を認めた.8.4%炭酸水素ナトリウム投与,グルコース・インスリン療法により術直前に高K血症を改善し,術中K値の大きな変動はなく手術終了となった.高K血症の原因として,腹腔内へ漏出した尿が腹膜を介して再吸収された逆腹膜透析の状態にあった可能性が高いと考えられた.膀胱破裂では高K血症による致死的不整脈を念頭に置いた周術期管理が必要である.

短報
  • 吉田 翼, 松崎 孝, Lemoto Vika, 鈴木 聡, 賀来 隆治, 森松 博史
    2017 年 37 巻 4 号 p. 439-441
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    生体肝移植術後の疼痛管理に腹横筋膜面ブロック(transversus abdominis plane block:TAPB)を併用した報告は少ない.今回,われわれは生体肝移植術後にTAPBで術後鎮痛を行い,手術室で抜管した症例を経験したので報告する.症例は16歳女性で先天性胆道閉鎖症に対して生体部分肝移植術が施行された.術直後に超音波ガイド下肋骨弓下アプローチで0.2%ロピバカインを左右15mLずつ使用しTAPBを行った.手術室で抜管し,術後12時間までのNRSは3/10以下で推移した.局所麻酔薬中毒や穿刺に伴う合併症は認められなかった.

  • 長谷川 知早, 河野 靖生, 横野 諭
    2017 年 37 巻 4 号 p. 442-445
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    妊娠後期から産褥期における妊婦での生理的変化は大きく,循環血漿量は妊娠前の40~50%も増加する.そこに陣痛に伴う痛み刺激により交感神経系の緊張が亢進すると,循環動態の急激な変化が生じ,心疾患を合併した妊婦では時に破綻することがある.今回重度の僧帽弁閉鎖不全症,肺高血圧症を合併した経産婦の出産に対して,硬膜外麻酔を用いた和痛分娩にて心不全を発症することなく,良好に管理できた.心疾患患者の予後改善により,心疾患合併妊娠は今後増加すると考えられる.妊娠中の水分管理や分娩中の適切な鎮痛補助を行うことで,心疾患合併患者においても安全に妊娠・分娩できる可能性があると考える.

紹介
日本臨床麻酔学会第36回大会 招請講演
  • 渡橋 和政
    2017 年 37 巻 4 号 p. 451-456
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    心臓血管外科では,治療成績向上とともに手術症例の高齢化が進み,個々の症例に応じた個別化治療により確実性,安全性を高める工夫が必要となる.今後期待される『常勝』を達成するには,従来重きを置かれていた『スキル(戦術)』に加え,より高度に洗練された『戦略』が必要となる.安全性,確実性を達成している航空業界で有視界飛行に加えレーダーを用いているのと同様,手術においても外科医の術野情報に加え,経食道心エコー(TEE)の情報が上記の目的に役立つと考える.それには麻酔科医によるTEE習得が必要で,外科医もそれを支援する姿勢が必要である.この「育て合い,助け合う」関係により相乗効果を生むのが,真のチームである.

日本臨床麻酔学会第35回大会 教育講演
  • 内野 博之, 長島 史明, 小林 賢礼, 長倉 知輝, 藤田 陽介, 荻原 幸彦
    2017 年 37 巻 4 号 p. 457-474
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    脳保護の主な目的は,術中・術後に脳の機能を保護することである.日々の臨床では,心肺バイパス手術,頚動脈内膜切除術(CEA),くも膜下出血の脳動脈瘤に対するクリッピング,脳卒中,外傷性脳損傷,心停止後症候群(PCAS)等々の管理に対しての注意を要する.われわれの管理が適切でない場合,患者の予後に悪影響を及ぼすことになる.これらの一次的な病態生理の類似性は,一過性の脳虚血を示すことである.神経集中治療の目的は,初期の病態生理に伴う脳損傷の進行を防ぐことである.急性期の脳保護を行うには,①心肺蘇生の後に早急に脳血流を回復することと②脳障害の進行を防ぐことである.心停止から蘇生される患者治療の主な目標は,心停止後症候群(PCAS)の予防である.現在,院外心停止患者や周産期脳虚血に対する低体温療法が神経学的予後を改善するというエビデンスが得られて来ている.本稿では,神経麻酔および神経集中治療における脳保護に焦点を当てて述べるとともに,麻酔薬の神経保護作用および神経毒性作用のメカニズムについても議論したい.

日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─挿管不可,換気不可! “最終手段”は本当に役立つか?─
  • 浅井 隆
    2017 年 37 巻 4 号 p. 475
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー
  • 上嶋 浩順, 大嶽 浩司
    2017 年 37 巻 4 号 p. 476-479
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    声門上器具(SGD)は,世界各地のどの気道確保ガイドラインを見ても緊急気道確保の重要な気道確保器具としての位置付けは揺るぎない.にもかかわらず,われわれは緊急気道確保を行う状況でSGDを選択することは少ない.「男性」「45歳以上」「短頸」「後屈制限」などSGDを挿入しにくい症例や誤嚥の危険性が高い症例などSGD挿入時の「限界」と,本当にSGD挿入の有効性が気管チューブよりも優れているかが明らかではない「問題点」が,われわれの頭の中に常によぎっていてSGDの使用を躊躇していると考えられている.そして何よりもまだわれわれはSGDのことで知らないことが多い.

  • 浅井 隆
    2017 年 37 巻 4 号 p. 480-484
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    全身麻酔の導入後,気管挿管不可,フェイスマスクを用いた換気不可(いわゆる“挿管不可,換気不可”状態)になった場合の対処として,各国の気道確保ガイドラインは,声門上器具の挿入と換気を試み,それが有効でない場合,“最終手段”として,下気道への観血的なアクセスをすべきとしている.しかし,観血的気道確保法で酸素化ができない場合もあることが判明している.そのため,有効な方法を用いる必要がある.これまでの研究結果を総合すると,外科切開により輪状甲状間膜を同定してから穿刺するのが最も効率がよい,と判明しているため,それができる知識と能力を身に付けておく必要があろう.

  • 水本 一弘
    2017 年 37 巻 4 号 p. 485-489
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    日本麻酔科学会気道管理アルゴリズム(JSA-AMA)でRed zoneで実施すべき手技として輪状甲状膜からの気道確保を提示している.外科的輪状甲状膜切開を本当にするべき状況には,手元に穿刺用キット製品がない場合,キット製品で始めたがガイドワイヤーが進まない場合など極めて限定されるが,皆無ではない.多くの麻酔科医は臨床での実施経験はないと推測されるため,緊急時に実施できるためには,シミュレーション訓練などを通じて技能習熟度を高めておくことが必須である.同時に,計画医療である麻酔では,Red zoneへ至らない戦略を立案,実施することがより重要である.

日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─新生児の麻酔ぜよ!!─
  • 岩崎 達雄, 竹内 護
    2017 年 37 巻 4 号 p. 490
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー
  • 末盛 智彦, 岩崎 達雄, 清水 一好, 金澤 伴幸, 杉本 健太郎, 森松 博史
    2017 年 37 巻 4 号 p. 491-497
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    総肺静脈還流異常症と大血管転位症はともに新生児期に根治的手術が必要となりうる先天性心疾患である.新生児の心臓は構造的,機能的に未熟であるため術後心不全に陥りやすい.加えて総肺静脈還流異常症,大血管転位症の患者は疾患特有の血行動態により左心不全や肺高血圧のリスクが高く注意が必要である.両疾患の新生児期の根治的手術を成功に導くためには,前負荷,後負荷,心筋収縮力,心拍数を適切に調節し限られた心機能を無理なく発揮できる環境を作ることが重要である.

  • 香川 哲郎
    2017 年 37 巻 4 号 p. 498-504
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    食道閉鎖症は新生児早期に手術の適応となる先天性疾患である.その85%を占めるC型における麻酔上の問題点は,気管食道瘻(TEF)があることによる肺の換気不良および胃へのガス流入が最も重要であり,それに加えて低出生体重や心疾患を含めた合併奇形への対応があげられる.気管チューブの位置異常により換気不良から低酸素に陥る可能性があり,TEFの位置,太さおよび気管チューブ先端との関係を気管支ファイバースコープで確認する.TEFの結紮までに換気を保ち胃へのガス流入を防ぐために低い気道内圧での換気,気管チューブ先端の位置調整,フォガティーカテーテルのTEF内への挿入などが行われる.

麻酔科医が知っておくべき感染症の知識(第1回)
  • 山元 佳, 大曲 貴夫
    2017 年 37 巻 4 号 p. 506-512
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    新興感染症とは,過去20年以内に増加したか今後増加の恐れがある感染症とされるが,1970年代以降に発見された感染症が包含されて議論されることが多い.重症熱性血小板減少症候群のように国内で発見された感染症もあるが,主な新興感染症は輸入感染症としての側面を持っている.新興感染症以外のマラリアやデング熱などの輸入感染症に関しても,海外からの旅行者の増加により考慮する場面も増えてくることが予測される.本稿では新興感染症を含めた代表的な輸入感染症について,その感染経路や臨床像などを解説した.

  • 千酌 浩樹
    2017 年 37 巻 4 号 p. 513-531
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    感染症診療は感染臓器を特定し,原因微生物を推定することから始まる.そしてこのことで,最適の治療薬の選択が可能となる.また治療経過中においても,常にこの評価の繰り返しを行うことが求められる.全科の患者を対象とする麻酔科医は,多様な感染症に遭遇する可能性があるが,各領域の感染症を理解するためには,それがどのような機序で起こるのか,どのような特徴があるのかを把握することが重要である.この観点から,日常よく遭遇する各科領域の感染症について,原因微生物がどのように侵入し感染症を起こすのか,また診断や治療に関連する注意点は何かを中心に解説する.

  • 志馬 伸朗
    2017 年 37 巻 4 号 p. 532-540
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    集中治療患者の多くは易感染性であり,生体防御機構を破綻させる侵襲的処置やデバイスに関連した感染症を生じやすい.頻度の高いものに,人工呼吸器関連肺炎,尿道留置カテーテル関連尿路感染症,血管留置カテーテル関連血流感染症がある.それぞれに予防策を講じるとともに,発症時には適切に早期診断し治療することが重要である.最も重要な予防策はデバイスの早期抜去である.診断は適切な膿性検体のグラム染色と培養検査に基づく.重症例では頻度の高い原因菌を想定し経験的に治療を開始するが,3日後に再評価を行い可能ならde-escalationする.クロストリジウム・ディフィシル感染症の発症には,抗菌薬の使用が密接に関連している.

  • 原賀 勇壮, 平田 和彦, 山浦 健
    2017 年 37 巻 4 号 p. 541-546
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    ペインクリニック領域の感染症についてまとめた.対象疾患は硬膜外カテーテル留置後あるいは硬膜外ブロック後の硬膜外膿瘍,脊髄くも膜下腔カテーテルポート留置後髄膜炎,神経ブロック後の感染症とした.各疾患の頻度と発生要因,起因菌と感染メカニズム,症状・診断・治療ごとに記載した.機能的予後のみならず,生命予後に直結する場合もあるので迅速な初期対応が必要である.具体的には神経学的診察,画像検査,培養検体採取,感染症内科医および外科医との連携までの一連の初期対応が必要である.ペインクリニック領域の臨床に携わる医師は,これらの病態の知識は必須であると思われる.

  • 鈴木 潤, 森澤 雄司
    2017 年 37 巻 4 号 p. 547-551
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/08/26
    ジャーナル フリー

    手術部位感染(surgical site infection:SSI)は,すべての手術に関連して最も予防するべき医療関連感染の一つである.SSIを予防するためには,肥満の防止,禁煙と糖尿病のコントロールを十分つけた上で,前日に抗菌石鹸を用いたシャワーを行うことや,術前の十分な手指衛生,周術期抗菌薬を胸骨切開120分前に確実に開始して血中濃度が十分な状態で手術を開始することも大切である.術中は,十分な酸素投与と低体温防止に留意し,長時間の手術や出血量が多い手術では抗菌薬の適正な追加を行うことも重要である.SSIを減少させるためには,術中管理や周術期管理を行う麻酔科医の貢献への期待は大きい.

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