日本臨床麻酔学会誌
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38 巻 , 3 号
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原著論文
  • 星 拓男, 宮川 尚美
    2018 年 38 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    近年日本麻酔科学会がICD制度協議会に加盟し,手術部位感染(SSI)予防に関する複数のガイドラインが発表されるなど,感染予防に関しての麻酔科医の注目が高まった.SSIは予防が極めて重要で,抗菌薬投与はその大きな部分を占める.ガイドラインではセファゾリン(CEZ)は80kg以上の患者は2g投与が推奨されているが,当院では一律1g投与しかしていなかった.その状況下で,サーベイランスに登録した術式に対してSSIの発生率に対する体重,出血量,手術時間などに関して検討した.その結果,体重が多いほどSSIは増加するが,その閾値ははっきりとはせず,多変量解析の結果,手術時間,出血量もまたSSIの有意な因子であった.

症例報告
  • 関川 綾乃, 高木 俊一, 磯崎 健一
    2018 年 38 巻 3 号 p. 291-295
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    病的肥満患者に対する意識下挿管を同一症例で短期間に3回経験した.57歳,男性.身長173cm,体重150kg,BMI 50kg/m2.左上腕骨骨折に対し観血的骨接合術を予定した.マスク換気困難・挿管困難が予想され,意識下挿管を選択した.鎮静薬投与後,局所麻酔薬を散布しMcGRATH(McG)で気管挿管を試みたが,声門の同定に難渋し約30分かかった.33日後,右大腿骨骨折に対し観血的骨接合術を予定した.エアウェイスコープ(AWS)による声門の同定は容易で,約10分で挿管できた.初回手術から42日後,両上腕骨骨折に対する観血的骨接合術を予定した.AWSによる声門の同定は容易で,約15分で挿管できた.AWSは病的肥満患者の意識下挿管に有用である可能性が示唆された.

短報
紹介
  • 中野 祥子, 中平 淳子, 澤井 俊幸, 尾野 直美, 南 敏明
    2018 年 38 巻 3 号 p. 304-309
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    気道刺激性の強いデスフルランの使用が,抜管後の呼吸に与える影響を調査するため,全身麻酔で経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行する患者を対象として前向き観察研究を行った.術前と全身麻酔における抜管後に,オッシレーション波の周波数が5Hzの呼吸抵抗(R5),20Hzの呼吸抵抗(R20)を測定し,セボフルラン群18症例とデスフルラン群14症例で比較した.術前の各測定項目には,2群間で有意差はなかった.いずれの群でも抜管後に,R5値およびR20値は有意に上昇した.抜管後のR5値およびR20値は2群間に有意差はなかった.揮発性吸入麻酔薬の違いによって,全身麻酔前後の呼吸抵抗に差異はないことが示唆された.

  • 梅﨑 健司, 猪股 伸一
    2018 年 38 巻 3 号 p. 310-314
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    ダブルルーメンチューブの位置確認や開口障害のある患者に対する挿管時に気管支鏡を使うことがある.しかし,気管支鏡のモニターは高額であり,準備にも手間を要する.また,モニターへの接続コードにより動きを制限されることがある.われわれはビデオ喉頭鏡のようにモニターが手元にあれば操作が容易になると考え,スマートフォンを気管支鏡に取り付けるデバイス(i-NTER LENSTM)と専用のアプリケーション(ENDO SCOPETM)をマイクロネット株式会社と共同開発した.これにより機動性が向上し,解像度の高い画像の撮影が可能になった.またこれらの特長を活かすことで救急・災害医療分野への拡張性も有する.

日本臨床麻酔学会第36回大会 招請講演
  • 西山 成
    2018 年 38 巻 3 号 p. 315-321
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    われわれは腎臓病の病態メカニズムを解析することによって得た実験的POC(proof of concept)に基づき,新しい診断・治療法の開発を目指している.例えば,腎臓の生理的機能やさまざまな病態メカニズムの解明を目的として多光子レーザー顕微鏡・生体バイオイメージングシステムを国内で初めて導入し,得られた実験的POCに基づいて新しい治療法やバイオマーカーの開発に取り組んでいる.さらに最近,腎性貧血に対する新しい治療法として,ヒトiPS細胞からのエリスロポエチン産生細胞樹立に成功した.この細胞は,今後開発が進むエリスロポエチンに関連する薬剤の作用機序POCを得ることができる唯一のツールとなると考えている.今回は,これら多面的な腎臓に関連する基礎研究を紹介する.

日本臨床麻酔学会第36回大会 教育講演
  • 今町 憲貴
    2018 年 38 巻 3 号 p. 322-329
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    痒みは掻きたいという欲望を生じる感覚である.痒みにはヒスタミン受容体を介するものだけではなく,プロテイナーゼ活性化受容体やMas関連G蛋白質共役受容体を介する非ヒスタミン依存性の痒みが存在する.オピオイドにより生じる痒みは麻酔科医にとって最も身近な痒みであろう.残念ながらオピオイドによる痒みは発生率が高いにもかかわらず,標準的な治療や予防法がないのが現状である.最近,オピオイドによる痒みの機序の一部がガストリン放出ペプチド受容体を介することにより生じることが明らかとなってきた.さまざまな薬剤を用いたオピオイドによる痒みに対する臨床研究が行われており,今後の痒みの研究が発展することを期待したい.

日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─オピオイド鎮痛薬の光と影:適正使用を考える─
  • 佐藤 史弥, 廣瀬 宗孝
    2018 年 38 巻 3 号 p. 330-334
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    近年,欧米を中心にオピオイド使用量は増加し続けているが,日本においても例外ではない.高齢化に伴うがんサバイバーの増加により,慢性非がん性疼痛を抱えたがん患者が増加し,オピオイドの使用の判断が難しくなる症例も多くみられる.慢性非がん性疼痛で適応のあるオピオイドも増えてきているが,どのように使用すればよいだろうか.臨床の場において,多くのペインクリニシャンが乱用や嗜癖につながるケースを経験し始めているが,実際どの程度のリスクがあり,どのようなことに注意すればよいだろうか.日本におけるオピオイド使用と乱用・嗜癖の現状について整理する.

  • 境 徹也
    2018 年 38 巻 3 号 p. 335-340
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    慢性痛にオピオイド鎮痛薬はある程度有効だが,依存/嗜癖は大きな問題である.特に強オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては,患者選択,治療契約,厳重な管理が重要となる.今回,慢性痛患者に対するフェンタニル貼付剤(FP)の鎮痛効果と依存/嗜癖について検証した.1年以上継続投与された患者12名において,痛みの程度は投与前に比べて有意に低下していた.1人でオピオイド依存/嗜癖が疑われた.しかし,FP開始前に厳密な契約関係を結んでいたことで,FP投与中に生じたオピオイド関連異常行動は,契約内容の再提示で抑制することができた.

  • 白石 義人
    2018 年 38 巻 3 号 p. 341-345
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    日本における薬物依存や乱用による事件が社会的問題となっている中で,われわれ医療者(麻酔科医)は患者を薬物依存に陥らせないようにすべきことはもちろんである.しかし自分自身が薬物依存に陥ってしまうことは,医療者の社会的信用を失墜し,医療倫理にも反する.残念ながら日本においては処罰(刑事罰,行政処分)という概念が先行して,薬物依存に対する予防・啓発活動,治療システムの構築,さらには社会復帰という各段階を支援し実施する体制は現状では極めて貧弱であると言わざるを得ない.日本における薬物依存の現状や医療者の薬物依存に対する日本麻酔科学会のこれまでの取り組みを概説する.今後とも医療者の薬物依存の存在と危険性を医療者の共通認識とするために継続的に情報を発信していきたい.

日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─徹底検証JRCガイドライン─
  • 相引 眞幸, 坂本 哲也
    2018 年 38 巻 3 号 p. 346
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
  • 若松 弘也, 山田 健介, 勝田 哲史, 白源 清貴, 松本 聡, 松本 美志也
    2018 年 38 巻 3 号 p. 347-353
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    2015年10月に発表されたJRC蘇生ガイドライン2015における一次救命処置の推奨は次の通りである.胸骨圧迫のテンポは,100〜120回/分を推奨する.胸骨圧迫の深さは,6cmを超える過剰な圧迫を避けつつ,約5cmの深さで行うことを推奨する.CPR中の胸骨圧迫の中断は最小限とし,胸骨圧迫比率をできるだけ高くして,少なくとも60%とすることを提案する.心停止の疑いのある人の近くにいる,意思がありCPRを実施できる人に,ソーシャルメディアなどのテクノロジーを用いて情報提供することを提案する.JRC蘇生ガイドライン2015で強調されている胸骨圧迫の重要性は,ガイドライン2005,2010から引き継がれている.

  • 相引 眞幸, 大下 宗亮, 安念 優, 森山 直紀, 中林 ゆき, 竹葉 淳
    2018 年 38 巻 3 号 p. 354-357
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    JRC蘇生ガイドライン2015は,GRADEを用い評価・作成されたCoSTR(科学的レビュー集)を基に作成されている.以下に概要を述べる.1. 用手的CPRの代替として自動機械的CPRを,他方ECPRは従来のCPRに反応しない条件付きで使用する.2. アドレナリンはnon-shockable rhythmの院外心停止では,できるだけ早期に投与する.3. ROSC後,低酸素症を回避する.しかし,酸素状態がSpO2等で確認できるまでは100%酸素を投与する.4. 院外心停止で,調律にかかわらずROSC後意味のある反応がない場合は,体温管理療法を行う.また,院内心停止例で,調律にかかわらず,ROSC後意味のある反応がない場合は,体温管理療法を行う.その場合32~36℃の間で一定した体温レベルを短くとも24時間維持する.復温後も高体温を避ける.5. 特に低体温療法施行例では,ROSC後72時間以降に予後評価を行う.6. 自己心拍再開し,その後死へ至る場合,臓器提供の可能性を評価する.

  • 瀬尾 宏美
    2018 年 38 巻 3 号 p. 358-363
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    JRC蘇生ガイドライン2015の急性冠症候群(ACS)を概説する.診断では病院到着前12誘導心電図を推奨し,除外診断では高感度トロポニン2回測定法のみの判断は推奨しない.低酸素血症のない患者への酸素のルーチン投与は差し控えるよう提案し,プライマリーPCIを施行するSTEMI患者へのADP受容体拮抗薬と未分画ヘパリンの投与は病院収容前後のどちらでもよいと提案する.STEMI患者はプライマリーPCIが可能な病院に収容するよう推奨する.発症からの時間とプライマリーPCI施行までの時間による血栓溶解療法の選択を提案する.STEMIによる心停止が疑われる患者が自己心拍再開した場合の緊急CAGを推奨する.

  • 黒田 泰弘
    2018 年 38 巻 3 号 p. 364-372
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー

    てんかん重積状態,特に非痙攣性てんかん重積状態において,てんかん発作の管理,持続脳波モニタリングが重要である.脳梗塞超急性期における血栓溶解療法のtime windowが発症後4.5時間まで延長された.脳梗塞超急性期において,条件を満たした場合に,rt-PA投与に加えてステント型血栓回収機器を用いた再開通療法が勧められる.一過性神経発作(TNA)例においては椎骨脳底動脈系脳梗塞の発症リスクに注意する.敗血症関連脳症は,感染による全身性反応の結果として生じたびまん性脳機能障害で,昏睡もしくはせん妄を呈する.重症熱中症では,呼吸・循環を含む全身管理とともに体内冷却を併用し,ICU管理を行うことが望ましい.

日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─術後の高次脳機能合併症 ─麻酔科医として知っておきたいこと──
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