日本臨床麻酔学会誌
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40 巻, 5 号
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原著論文
  • 長嶺 嘉通, 村山 裕美, 大木 浩
    2020 年 40 巻 5 号 p. 441-448
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    近年麻酔科医不足が深刻な問題となっている.それに対し,特定行為研修制度等により周術期チーム医療がさらに推進された.今回われわれは周術期業務の質の向上を目的として,鹿児島県域麻酔科関連20施設の麻酔科部長を対象に周術期業務に関する「現状」と「今後の期待」についてアンケートを行った.その結果,周術期業務の47%において麻酔科医以外のメディカルスタッフへの業務移譲が期待されていた.麻酔行為の補助を行う看護師の育成と普及には時間がかかる.そのためまずは一般看護師やメディカルクラークでも実施可能と考えられる術前・術後の管理業務から,タスクシフティングを促進すべきである.

症例報告
紹介
  • 川西 秀明, 惠川 淳二, 小西 康司, 萱島 道徳, 川口 昌彦
    2020 年 40 巻 5 号 p. 490-496
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    高齢者人口の増加や医療技術の向上により,手術が可能な患者は増加すると見込まれ,今後はさらなる医療の質・安全性が求められ,多職種で周術期の情報の共有・連携を取り,業務を行う必要がある.当院では2010年より日本で初めて臨床工学技士が麻酔科医師の指示に基づき周術期管理(麻酔アシスタント)業務を行う臨床工学技士が発足した.発足当初は2名で始まったが,その効果が病院から認められ,現在11名の臨床工学技士が麻酔アシスタントとして働いている.本稿では,当院の麻酔アシスタント業務を行うスタッフの育成・教育,麻酔アシスタント業務の内容,現状から今後の展望について報告する.

日本臨床麻酔学会第39回大会 教育講演
  • 溝田 敏幸
    2020 年 40 巻 5 号 p. 497-502
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    手術を受けるほとんどの患者は循環血液量と電解質バランスを維持するために輸液療法を受ける.周術期輸液量の不足は組織の低灌流を介して主要臓器の障害を起こし,一方で過剰輸液は組織の浮腫や消化管機能回復遅延を起こすと考えられている.したがって,周術期合併症を予防し患者回復を促進するためには過不足のない最適な量の輸液を投与することが重要である.周術期輸液量最適化のために用いられる指標の一つとして輸液反応性を予測する動的指標があるが,輸液反応性だけでは輸液の最終的な目的である組織灌流の維持は評価できず,特に周術期合併症リスクの高い患者や手術では動的指標に加えて組織灌流の指標に基づいた輸液・循環管理が望ましい.

日本臨床麻酔学会第39回大会 シンポジウム ─術後早期リハビリテーション─
日本臨床麻酔学会第39回大会 シンポジウム ─周術期管理における循環補助法─
  • 原 哲也, 川人 伸次
    2020 年 40 巻 5 号 p. 515
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー
  • 江木 盛時
    2020 年 40 巻 5 号 p. 516-519
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    周術期患者の循環管理を考慮する際に,まず行うべきことは,疼痛刺激のコントロールである.疼痛が十分にコントロールされ循環血液量の適正化が行われた後も循環動態が不安定な周術期患者ではカテコラミンの使用が必要となる.周術期患者におけるショックに対してはノルアドレナリンが第一選択薬として推奨されている.また,周術期患者では,心機能低下が生じうることに留意する必要がある.循環動態が不安定な患者,特に輸液に反応の乏しい患者では,経胸壁心エコーを用いて心機能の確認を行う必要がある.心機能低下症例でノルアドレナリンの反応が乏しい患者では,ドブタミンやPDEⅢ阻害薬の使用を検討する.

  • 田中 裕之
    2020 年 40 巻 5 号 p. 520-526
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    肺高血圧症(PH)を伴う患者の周術期循環管理では,血管拡張薬で肺循環に特異的なものはないので,体血圧を維持するために昇圧薬を併用する頻度が高くなる.麻酔薬との相互作用も考慮しなければならない.右心不全の回避のため,前負荷の適正化,洞調律の維持が重要で,手術の侵襲度に応じたモニタを選択する必要がある.ドブタミンやホスホジエステラーゼ3阻害薬が第一選択となるが,低血圧を伴う場合はドパミンやノルアドレナリン,バソプレシンが適応になる.新生児遷延性肺高血圧症や心臓手術後のPHには肺血管に選択性の高い一酸化窒素吸入療法が適応となる.ハイリスク症例では肺高血圧症センターなどでの集学的チームアプローチが必要である.

  • 金 徹
    2020 年 40 巻 5 号 p. 527-534
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    大動脈内バルーンパンピングは,「心周期に合わせて大動脈内に留置したバルーンが膨張と収縮を繰り返す」という単純な作動のみの,比較的容易な手技で安全に施行できる補助循環である.その作動は“diastolic augmentation”と“systolic unloading”という用語で表現される.急性冠症候群などのために心機能が低下した症例に対して冠動脈などの主要動脈の血流増加と心仕事量の低下を得ることが大動脈内バルーンパンピング元来の目的であり,最終目標は心機能の維持と改善である.重篤な合併症の危険性はあるがその頻度は低く,安全な装置である.本稿では日本臨床麻酔学会第39回大会の講演に新しい知見を若干加え,大動脈内バルーンパンピングの基本的な事項について概説する.

  • 伊藤 明日香
    2020 年 40 巻 5 号 p. 535-540
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)は,遠心ポンプと体外膜型人工肺で構成される人工心肺装置である.静脈から血液を脱血して人工肺で酸素化し,ポンプで動脈に送血する呼吸循環補助装置で,強力な流量補助が可能である.PCPSの適応は,他の一般的な治療法で維持困難な急性循環不全や心肺停止状態であるが,導入後の救命率は全体平均で30~45%程度である.合併症に血栓塞栓症,下肢虚血,刺入部出血などがある.PCPS駆動中の中心静脈穿刺時におけるガイドワイヤー吸い込み事例も報告されており,注意が必要である.

日本臨床麻酔学会第39回大会 シンポジウム ─看護師特定行為と周術期管理チーム─
  • 落合 亮一, 稲田 英一
    2020 年 40 巻 5 号 p. 541
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー
  • 廣瀬 宗孝
    2020 年 40 巻 5 号 p. 542-546
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    周術期特定行為研修パッケージ(Education & Training Package of Advanced Perioperative Nurse Practices)は,厚労省による特定行為研修制度の中の8つの特定行為を含む.日本麻酔科学会が施行するこのパッケージの受講者は,すべての講義,演習,実習,OSCEを自施設で受講することが可能である.修了者は日本麻酔科学会の5年ごとの更新プログラムを受けることができる予定である.

  • 石橋 まゆみ
    2020 年 40 巻 5 号 p. 547-553
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    わが国の少子高齢化による人口構造の変化に伴い,厚生労働省は医療提供体制改革として「医師の働き方改革」に取り組み,看護師の特定行為研修制度を策定した.さらに周術期管理を領域別に分類し研修制度のパッケージ化を制定した.麻酔科領域では「術中麻酔管理特定行為研修」制度を導入した.特定看護師による術中麻酔管理の導入にあたり,周術期医療の現状の課題について,病院管理者・看護管理者の視点で考察する.「特定看護師導入目的と導入のメリット」,「患者の安全管理体制」,「看護師の勤務配置」,「特定看護師の資質および研修受講者の推薦基準」などを明文化する必要がある.麻酔科医師が行うべき術中麻酔管理を特定看護師にタスクシフトする場合,周術期管理チーム医療が安全で安心して本来の役割を発揮できる体制が必要となる.麻酔科医師のタスクシフトを特定看護師の協働により有効的なものにするために考察をしたい.

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