全身性硬化症の麻酔管理に関する報告は, 少ない. 本疾患では, 全身麻酔に関しては, 呼吸障害, 心血管障害, 皮膚症状, 局所麻酔に関しては, 局所麻酔薬の作用時間の延長などの問題点がある. 今回, 我々は, パラノイアを伴った全身性硬化症患者の胃癌手術の麻酔管理を経験した. 本症例においては, 特に拘束性呼吸障害が問題となり, 術中の血液ガス所見に注意を払った. さらに皮膚症状としての開口障害に関しては, 術前日にあらかじめ診察し, 気管内挿管操作に支障はなかった. 局麻薬の作用については, 硬膜外麻酔において作用時間が特に延長しているという印象は受けなかった. 持続硬膜外麻酔と全身麻酔 (酸素, 笑気, ジアゼパム, パンクロニウム) を併用してほぼ満足すべき麻薬管理を行うことができた. 本症の麻酔管理に関する問題点に関して一般的考察を加えた.
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