34歳の男子, 15年来 (19歳のときから) 三叉神経痛として鎮痛剤, カルバマゼピンなど投与されていたが, 次第に内服量を増さねばならないようになって来た. 偶々, 77歳の父が三叉神経痛に悩んで来院したので, 神経ブロックを行ない治癒せしめえた. そうして紹介されて来た患者 (三男) を診察し, これ迄漫然と鎮痛剤の投与をうけていたことに対して疑問をいだき精査した.
CTなど画像診断の結果, 類上皮腫が疑われた. 開頭の結果は術前診断で予測されたとおりであったが, 腫瘍はすでに大きくなって視束交叉の下をかいくぐり他側に及んでいた. 別出は完全には行なえず, 術後感染症, 髄液瘻をおこした.
本症例は, 若年者における三叉神経痛の原因が探究されずに長年月を経過し, 根治手術の機会を失って了ったものである. 疼痛緩和のみで足れりとせず, 反省されねばならない.
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