日本臨床麻酔学会誌
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原著論文
  • 坂本 悠巨, 下村 俊行, 葛本 直哉, 岩田 正人, 沖田 寿一, 山仲 貴之
    2019 年 39 巻 5 号 p. 499-503
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    深頚部膿瘍は,頚部腫脹,嚥下困難,開口障害をきたし,炎症が縦隔に及ぶと生命に関わる重篤な救急疾患である.抗菌薬投与に加え,早期に全身麻酔下での膿瘍の切開排膿が必要となる場合も多いが,気道確保の際は事前に気道の状態を評価し,導入には十分注意する必要がある.2017年8月から2018年4月の期間に成人6症例(男性2例,女性4例)の深頚部膿瘍切開排膿術の全身麻酔を経験した.開口障害,上気道狭窄のため3例は意識下に経鼻挿管,1例は意識下に経口挿管,2例は全身麻酔下に経口挿管を行った.6症例の結果を開口障害と上気道狭窄の有無に着目し当院でのフローチャートを作成した.

症例報告
  • 大辻 真理, 藤田 基, 水口 市子, 八木 雄史, 金田 浩太郎, 鶴田 良介
    2019 年 39 巻 5 号 p. 504-509
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    症例は20歳女性,発熱と倦怠感を認め近医を受診し,汎血球減少,肝・腎機能障害,DICを認めたため,当院に転院となった.来院時検査でEpstein-Barr virus(EBV)感染を認め,HLH-2004ガイドラインの診断基準を満たしたことから,第4病日にEBV関連血球貪食性リンパ組織球症と診断した.血漿交換と持続的血液透析濾過を導入し,高用量メチルプレドニゾロン投与を開始するも病状改善なく,HLH-2004ガイドラインに沿ってエトポシドを第8病日に投与したところ,全身状態は改善した.本症例ではHLH-2004ガイドラインに沿ったエトポシドの迅速な投与が奏功し,後遺症なく救命することができた.

  • 成谷 俊輝, 郷 律子, 郷 正憲, 湊 文昭, 若松 成知, 加藤 道久
    2019 年 39 巻 5 号 p. 510-515
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    80歳,女性.血栓閉鎖型スタンフォードB型大動脈解離に対して上行全弓部置換術の後,二期的に胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)を計画した.脊髄梗塞のリスクが高く,脳脊髄液ドレナージ(CSFD)を挿入し,全身麻酔下にTEVARを行った.透明だった脳脊髄液がヘパリン投与後に一時淡血性となった.術後2日目にCSFDを抜去した.その際の凝固能は正常範囲内であったが血小板数は4.8万/μLであった.同日深夜から腰痛,下肢痛が出現し,術後4日目に対麻痺が生じた.MRIで馬尾を圧排する血腫を認めたため,緊急で椎弓切除術が施行された.血腫は硬膜下に認められた.手術後,対麻痺は軽快した.

  • 小幡 由美, 天野 江里子, 浜辺 宏介, 坂本 三樹, 舘田 武志, 井上 莊一郎
    2019 年 39 巻 5 号 p. 516-523
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    大動脈弁狭窄症(AS)患者では,大動脈弁置換術(AVR)後も,肥大心筋による左室流出路狭窄(LVOTO)や左室内腔狭小化による収縮期僧帽弁前方運動(SAM)が残存する症例がある.ASによる肥大心筋を認めた症例において,AVRに加え,症例1ではMorrow手術,症例2では,乳頭筋束切除をした.Morrow手術と乳頭筋束切除の必要性については,明確な基準がないため,術前経胸壁心エコーの左室流出路の流速と術中経食道心エコーの肥大心筋の所見から,LVOTOとSAMの可能性を予測し,外科医と協議して術式を判断することが重要である.

紹介
日本臨床麻酔学会第38回大会 教育講演
日本臨床麻酔学会第38回大会 シンポジウム ─一般手術における輸血削減への取り組み─周術期のPatient Blood Managementを考える──
  • 香取 信之, 溝部 俊樹
    2019 年 39 巻 5 号 p. 550
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー
  • 山浦 健
    2019 年 39 巻 5 号 p. 551-554
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    輸血の安全性は高まったにもかかわらず,免疫反応や輸血関連循環過負荷などの重篤な輸血関連合併症の問題は残っている他,予後にも影響を与える.Patient Blood Management(PBM)は,同種血輸血を可能な限り回避するためのプログラムである.PBMでは術前は貧血,鉄欠乏や抗血栓療法の有無を評価し,貧血の補正と止血凝固能を最適化する.術中は手術時期の決定,術式の選択や麻酔管理方法,自己血回収装置などを通して出血量と輸血量の軽減に努める.術後は体温管理も含めて出血量の軽減に努め,出血量のモニタリングを行い,必要に応じた酸素投与や適正な薬物介入を行う.同種血輸血を行う場合でもevidenceに基づいた輸血製剤の選択,および最小限の投与量を心がけることが重要となる.

  • 北山 眞任, 齋藤 淳一, 廣田 和美
    2019 年 39 巻 5 号 p. 555-562
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    自己血輸血は同種血輸血に伴う感染症・免疫性副作用を回避しうる最も良質な輸血療法である.希釈式自己血輸血(hemodilutional autologous blood transfusion;以下HAT)は貯血式や回収式に比べ術前の準備を要さず血小板・凝固機能が維持され,悪性腫瘍・感染症例でも施行可能な利点を有し,さらに3つの方法を組み合わせることにより輸血回避の幅が増加する.当院では1990年代以降,麻酔科が中心となり積極的にHATを施行し,出血量2,000g以下の87%以上,2,000~3,000gの出血でも40%前後で同種血輸血が回避されている.近年,同種血輸血は安全性が劇的に向上している一方,大量輸血による輸血関連急性肺障害はいまだ致死率が高く,腫瘍免疫低下による再発予後への影響は否定されていない.今後,手術の低侵襲化や止血環境の向上に伴い,輸血治療もHATを含む自己血輸血が患者の予後を改善する大きな役割を担うと予想される.

  • 木倉 睦人, 浦岡 雅博, 西野 淳子
    2019 年 39 巻 5 号 p. 563-571
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    今世紀に入って血液粘弾性検査でフィブリン重合が測定され,フィブリノゲン補充療法が重要視されている.日本の抗線溶療法は世界で輸血節減に貢献している.心臓血管手術において輸血アルゴリズムによる輸血節減の報告は多いが,一般手術ではまだ少ない.一般手術での新鮮凍結血漿の必要性は出血量よりもフィブリノゲンの低下に依存する.われわれは,出血量からフィブリノゲンの低下を予測し,トリガー値(130mg/dL)付近で新鮮凍結血漿の開始量を層別化している.緊急時はドライヘマト法(5分)によるフィブリノゲンの測定が有用である.症例報告や観察調査を通して臨床に還元しながら輸血節減につなげていくことが今後の課題である.

日本臨床麻酔学会第38回大会 シンポジウム ─日本の近代麻酔の夜明けと麻酔科医の社会的地位─
  • 武田 純三, 齋藤 繁
    2019 年 39 巻 5 号 p. 572
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー
  • 横田 美幸, 平島 潤子, 大里 彰二郎, 見市 光寿, 風戸 拓也
    2019 年 39 巻 5 号 p. 573-585
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    麻酔科の診療報酬の変遷を俯瞰し,麻酔科医の立ち位置を考察した.麻酔科医は,その活躍や国民からの期待に沿って評価されている.麻酔料の基本,全身麻酔料(L008)の1986年を1として,2002年では1.74と大きく増加している.最近の麻酔科への逆風は,一部の麻酔科医師の不適切な行動にあるのかもしれない.この逆風の結果,麻酔料の基本部分は1.74から1.71に下げられ,それは他の部分に配分された.麻酔科の領域は広く,麻酔科医の責任は重い.この期待に応えるためには,安全性を確保した上での効率化,すなわち麻酔科医の行うべき範囲と他に任せることを明確にすることであり,そのことが調和のとれたチーム医療へと帰結していく.それを成し得たチームが,今後の変革に対応することができるであろう.

  • 松木 明知
    2019 年 39 巻 5 号 p. 586-591
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    日本の麻酔科医の社会的地位について歴史的に論じた.1960年に麻酔科が特殊標榜科として認められた.麻酔科標榜医の資格は適当な指導者の下で2年間の訓練を受ける必要がある.このために日本麻酔学会は1962年には麻酔科標榜医を認定するために麻酔指導医認定制度を作った.わが国の医学界で最初の専門医制度であった.この制度によって麻酔科医の医学界における地位は向上したが,社会における認知度は依然として低いと言わざるを得ない.学会としても麻酔科医の情報を社会に向けて発信する必要がある.

  • 外 須美夫
    2019 年 39 巻 5 号 p. 592-596
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    各科麻酔のレベルは標準化されにくく,麻酔法や麻酔知識もアップデートされているとは言いがたい.チーム医療の推進や医療安全の確保も不十分になりやすい.しかし,各科麻酔を解消するほどのマンパワーの量的確保ができない現状では,少なくとも質的確保を目指す努力が必要である.そのためのトレーニングや学びの場の提供,安全確保のための支援や緊急事態への即応的援助が麻酔科医の社会的地位の向上にもつながるだろう.一方で麻酔科医以外の各科医師が余剰的に麻酔を自らの収入の具に使っているような現実があるとしたら,それに対しては,学会レベルあるいは国レベルでの制度的規制を含め,なんらかの方法で対処することが求められる.

  • 今村 聡
    2019 年 39 巻 5 号 p. 597-601
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    少子・超高齢社会を迎えるわが国は,社会保障の持続可能性を高めていかなければならない.そのためには,医療側においても,プロフェッショナルオートノミーの下,公立・公的病院と民間病院の役割分担,かかりつけ医機能の推進,医療費の適正化,健康寿命の延伸策等の改革を推進していく必要がある.そうした状況下,麻酔科医にも高度な自律性がより求められている.いわゆる「派遣麻酔」の紹介料等の源泉は社会保障財源である.学会による取り組みも進められているが,国民や医療界からの信頼の確保と持続可能な社会保障の実現のためには,麻酔科医自身が自浄能力を持つことが重要であり,それが麻酔科医の社会的地位の向上の必要条件である.

日本臨床麻酔学会第38回大会 Pros & Cons ─周術期におけるプロポフォールとPRIS ~小児に使用してはいけない~─
講座
  • 照井 克生
    2019 年 39 巻 5 号 p. 620-625
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    硬膜外無痛分娩による母体死亡が複数発生したことを受けて,安全な硬膜外無痛分娩提供体制の構築が求められている.母体死亡事例の解析からは,局所麻酔薬中毒と,くも膜下誤注入による全脊髄くも膜下麻酔が原因として明らかとなった.安全に硬膜外無痛分娩を行うためには,蘇生用器具の準備,試験注入と少量分割注入,開始後30分間の観察とその後の定期観察,継続したモニタリングが重要である.分娩中に硬膜外カテーテルが血管内やくも膜下腔に迷入する可能性を常に念頭に置き,痛みの出現や下肢運動神経遮断の増強,放散痛の出現に注意を払い,迅速に対処することが安全な硬膜外無痛分娩の提供に欠かせない.

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