日本臨床麻酔学会誌
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原著論文
症例報告
日本臨床麻酔学会第44回大会 教育講演
  • 川口 昌彦
    2025 年45 巻5 号 p. 444-450
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    超高齢化社会においては術後せん妄や認知機能低下なども含め,脳外科手術だけでなくすべての手術における術後生活機能の維持が重要視されている.方策として,術中神経モニタリングの他,術後早期回復プログラム(early recovery after surgery:ERAS)が注目されている.術中神経モニタリングでは,運動誘発電位,視覚誘発電位,球海綿体反射などさまざまな方法が用いられている.ERASでは,術前からのプレハビリテーション,術後嘔気嘔吐対策,頭皮ブロックを用いた疼痛管理など,複合的なアプローチが必要である.ERASの実施による入院期間の短縮や,頭皮ブロックの施行による術後疼痛の軽減・麻薬使用量の減少などが報告されている.

  • 大越 有一
    2025 年45 巻5 号 p. 451-457
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    Modified thoracoabdominal nerves block through the perichondrial approach(M-TAPA)は腹部の広範な鎮痛を得る手段として報告された.しかし解剖学的観点からは,脊髄神経の腹部外側皮枝領域の鎮痛が得られるとは考えにくい.この疑問に対し,われわれはM-TAPA面に隣接した新たな構造space between the endothoracic fascia, diaphragm, and costodiaphragmatic recess(SEDIC)を発見した.また,SEDIC腔への局所麻酔薬投与は広範な鎮痛効果をもたらし,これをre-modified TAPA(RM-TAPA)と名付けた.

日本臨床麻酔学会第44回大会 シンポジウム ─小児気道確保困難への挑戦─
  • 橘 一也, 鈴木 康之
    2025 年45 巻5 号 p. 458
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
  • 野中 崇広
    2025 年45 巻5 号 p. 459-466
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    小児症例は全体として困難気道の頻度が低いとされるが,新生児・乳児では成人と同等かそれ以上のリスクがあり,一度直面すると重篤な合併症を引き起こす可能性が高い.最近のガイドラインでは,導入開始から気道確保までの絶え間ない酸素供給,適切な麻酔深度の維持,3回以内での気道確保を目指すことが強く推奨されており,導入計画を立てるための柱となる.適切な器具の選択,換気手技の確立,代替手段の準備を徹底することで,気道確保の成功率を高め,合併症のリスクを低減できる.普段の診療から適切な評価と準備,導入を繰り返すことが小児困難気道管理への備えとして重要と考えられる.

  • 濱場 啓史
    2025 年45 巻5 号 p. 467-472
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    困難気道に対する気道確保の選択肢として自発呼吸下の気管挿管がある.小児に対しては,自発呼吸を残しつつも十分に意識を消失させる必要があり,さらに気道操作に耐えうる麻酔深度に調整するためには,慎重な麻酔計画と麻酔方法の工夫を要する.麻酔前の適切な評価により困難気道を予測し,処置に伴う合併症を最小限とすること,プランB/Cを準備することが重要である.そして実際の管理は,使い慣れた静脈麻酔薬の持続投与を中心として慎重に目標の鎮静レベルに到達させることで自発呼吸を温存し,局所麻酔薬の併用により気道操作時の刺激低減や不動化の一助とする.さらに継続した酸素投与により安定した状態で手技を行うことができる.

  • 齋藤 朋之
    2025 年45 巻5 号 p. 473-478
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    無呼吸酸素化とは,自発呼吸もしくは機械による換気が行われない無呼吸時に絶え間ない酸素投与を行う方法である.小児の気管挿管時の無呼吸酸素化は,無呼吸による酸素飽和度の低下を遅らせるのみならず,初回の気管挿管成功率が有意に上昇することや,気管挿管時の血行動態の安定に寄与するなど生理学的困難気道においてもその有用性が示唆されている.米国麻酔科学会困難気道管理ガイドラインや欧州麻酔集中治療学会とBritish Journal of Anaesthesia誌の合同ガイドラインでもその使用が推奨されている.本稿では,小児の気道管理における無呼吸酸素化の役割について,いくつかのエビデンスを示し,知見を深めたい.

  • 一柳 彰吾
    2025 年45 巻5 号 p. 479-482
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    困難気道症例の気道管理情報は,次回以降の麻酔管理において重要な役割を果たす.しかし,現行の「文字のみによる記録」は客観性や正確性に課題がある.これを補完するために,われわれの施設では広角カメラと録画機能付きビデオ喉頭鏡を併用して,患者の気道管理情報を包括的に動画記録する取り組みを行っている.動画記録は記録の客観性と正確性の向上に寄与し,ビデオフィードバックや教育面においても効果的である.一方で,技術的課題や法的問題も存在し,それらの克服が求められる.本稿では,近い将来必ず訪れるであろう「気道管理全録時代」への第一歩として,メリット・デメリットを概説していく.

日本臨床麻酔学会第44回大会 シンポジウム ─痛みの臨床と基礎─
  • 長谷川 麻衣子, 天谷 文昌
    2025 年45 巻5 号 p. 483
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
  • 星野 林太郎, 大橋 宣子, 馬場 洋
    2025 年45 巻5 号 p. 484-492
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    レミマゾラムは脳のγ-アミノ酪酸(GABA)受容体に作用し鎮静効果を示すが,GABA受容体は痛覚伝導路の脊髄後角にも多く発現しており,脊髄において鎮痛効果を示す可能性がある.本研究では,レミマゾラムの脊髄における作用を検討した.炎症性疼痛モデルラットに脊髄くも膜下投与を行い,痛み閾値の改善を認めた.さらに,脊髄後角でのin vitroパッチクランプ実験では,レミマゾラムが抑制性シナプス後電流(IPSC)の頻度を増加させ,減衰時間を延長することが明らかになった.以上から,レミマゾラムは脊髄後角のGABA受容体を介して抑制性作用を増強し,鎮痛効果を発揮することが示された.

  • 荻野 祐一
    2025 年45 巻5 号 p. 493-499
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    マクロレベルでの脳科学研究により,痛みは単なる末梢からの感覚入力ではなく,脳で生じる複雑な感情体験であることが明らかになった.ここでは,非侵襲的な脳画像技術を用いた研究により解明された痛みの感情的側面と,脳の適応性を活用した新たな治療アプローチについて概説する.特に注目すべきは,これまで「心因性」と診断されてきた病態が「痛覚変調性疼痛」として再定義され,脳機能の変調に基づく疾患として理解されるようになった点である.患者が痛みと共に生きるための「治癒への好循環」という概念も提案し,脳科学知見を臨床現場に活かす.

  • 若泉 謙太, 田中 智里, 眞島 裕樹, 高岡 早紀, 河手 森彦, 篠原 佑太
    2025 年45 巻5 号 p. 500-506
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    健康寿命や生産性に大きな影響を与える慢性痛は,個人の問題だけでなく,社会的な要因が重症化や慢性化に関連している.今回,日本全国の52,353名(20歳から64歳,平均年齢42.7歳,女性の比率49.9%)に対して実施したインターネットによる大規模疫学調査のデータを利用し,痛みの有症率や心理社会的リスク因子の分布を検討した結果,中等度以上の慢性痛の有症率は19.1%であった.しかし,都道府県別では中等度以上の慢性痛の有症率に最大で8.3%の差があり,さらに各都道府県のストレスや気分状態が有症率に影響していることが明らかになった(p<0.001).慢性痛対策として地域レベルの社会的支援の必要性が示唆された.

日本臨床麻酔学会第44回大会 シンポジウム ─緩和医療に関わる麻酔科医同士で生と死を考える─
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