日本臨床麻酔学会誌
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原著論文
  • 市川 順子, 福田 友樹, 向山 瑤子, 小高 桂子, 小高 光晴, 小森 万希子
    2023 年 43 巻 7 号 p. 471-477
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    当院の予定手術の患者に2カ月間,術前に禁煙に関するアンケート調査を行った.716人の患者にアンケート用紙を配布し,回収できた367人(51.3%)のうちの喫煙者は30人(8.2%)であった.喫煙者のうち術前に禁煙した者は12人(40%)であった.侵襲の大きい手術ほど術前禁煙するといった傾向はなく,術前喫煙者にニコチン依存度が高いわけでもなかった.禁煙理由に禁煙指導を挙げた者はおらず,術前禁煙者で禁煙指導を受けた割合は25%と術前喫煙者と有意差がない一方,87%の外科医は禁煙指導をしたと回答しており,指導内容が不十分であったゆえに生じた結果と推測する.外科医の禁煙外来の認知度の向上も望まれる.

症例報告
コラム
日本臨床麻酔学会第42回大会 シンポジウム ─化学療法による副作用への挑戦─
日本臨床麻酔学会第42回大会 シンポジウム ─2022年改訂版 非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドラインと,それに伴う臨床麻酔の課題について─
日本臨床麻酔学会第42回大会 特別シンポジウム ─連載─
  • 牧野 洋, 土手 健太郎, David Wilkinson, 佐和 貞治
    2023 年 43 巻 7 号 p. 522-527
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    2022年は京都府立医科大学の源となる京都療病院が開院した明治5年から150周年の節目に当たる.同年に開催された日本臨床麻酔学会において,療病院の初代外国人医師・教師として医療の近代化に貢献したFerdinand Adalbert Junker von Langegg(Junker)を顕彰する講演会が開催された.本稿は講演内容を再構成したものであり,明治維新期に近代国家建設のために雇用された“お雇い外国人医師”の中で,唯一の麻酔科医であったJunkerと,彼が1867年に開発し,後世まで改良が重ねられ使用され続けた麻酔器Junker’s inhalerについて顕彰する.

    3回連載の第1回として,江戸末期から明治初期における日本の医学の西洋化の動き,そしてヨンケルが初代外国人医師・教師として京都療病院に招聘されるまでを述べる.

〔日本医学シミュレーション学会〕第17回日本医学シミュレーション学会学術集会 シンポジウム ─ニライカナイのシミュレーション教育─
  • 水本 一弘
    2023 年 43 巻 7 号 p. 530-534
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    DAM委員会活動を振り返り,課題を抽出する.2004年から2021年3月までに127回のDAM実践セミナーを各地で開催した.1番目の課題は,インストラクションの質向上と標準化である.認定規約に則り,インストラクターを育成してきたが,インストラクションの不均一化が生じ,その対策に成人教育手法に関する講習受講を導入したが,その効果は未確認である.2番目の課題は,多様化する受講生への対応である.受講者背景や実際の診療現場に基づく講習内容,教材の改変が必要である.3番目の課題は,セミナーの成果評価である.成果検証に基づく改善策構築は不十分である.これらの課題への対応が急務である.

  • 木村 哲朗
    2023 年 43 巻 7 号 p. 535-540
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    日本医学シミュレーション学会は,安全な気道管理の普及のために,2004年から困難気道管理(Difficult Airway Management:DAM)セミナーを運営している.その後の約20年間で,気道管理器具や麻酔薬の発展,ガイドラインの整備により気道管理の安全性は向上したが,気道の危機的状況の発生はゼロには至っていない.DAMの需要は手術室外にも広がり,DAMトレーニングはこれからも求められ続けると予想される.変化する受講生の要望に対して,教育効果と運営効率の両立を目指すDAMシミュレーション教育へ,柔軟なアップデートが求められる.

  • 森 英明, 二階 哲朗
    2023 年 43 巻 7 号 p. 541-545
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    はるか先の理想郷であるニライカナイのシミュレーション教育ではどれだけのhigh fidelity=高忠実なシミュレーション教育が可能であろうか.日本医学シミュレーション学会に所属するHFS(High Fidelity Simulation)委員会では循環管理を学ぶ場として医療現場を忠実に再現した心臓麻酔シミュレーションセミナーの開発にチャレンジしたい.私たちは高機能患者シミュレータを用いた心血管・薬理学的パラメータの活用や,人工呼吸器や経食道心エコーシミュレータといった既存の教育ツールを効果的に使用し,また手術室の臨場感の再現のために仮想現実(VR)といった新たなシミュレーション技術を取り入れることで,ニライカナイのシミュレーション教育が展開できることを期待している.

  • 松島 久雄, 徳嶺 譲芳, 湯浅 晴之
    2023 年 43 巻 7 号 p. 546-549
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    CVC委員会は安全な中心静脈穿刺を普及させ,CVCによる合併症の発生を減らすことを目的に活動をしてきた.セミナーの開催や教材の共有など,CVCの医療安全に大きく貢献している.しかしながら合併症の発生に関する成果は十分とは言えず,活動の転換期を迎えている.これからは今までのセミナーに加えて末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)のセミナーも開催し,セミナーではアウトカム基盤型教育を取り入れることが求められている.安全な技術を確実に習得する機会を提供することが委員会としての成果につながっていく.

  • 太田 隆嗣
    2023 年 43 巻 7 号 p. 550-554
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    近年,われわれ医療者を取り巻く環境は大きく変化を遂げつつあり,「医師の働き方改革」と「医療の質と安全性」は特に注力されている.研修医の時間外労働は段階的とはいえ大きく制限されるようになり,これからの研修医や若手医師の修練はシミュレーション教育を中心としたものへ移行していくと想定される.獲得された知識と技術を臨床現場で実践することで,制限の多い時間内であっても人材の育成を効率よく行うことが可能となる.学会組織は各所で開催されるセミナーの質と安全性を保障する立ち位置が今後は求められることになるだろう.教育の質と量を担保し,継続性のある安全な教育と実践という課題をわれわれは乗り越えていかなくてはならない.

  • 羽場 政法, 駒澤 伸泰, 助永 親彦, 植木 隆介, 古谷 健太, 鈴木 智文
    2023 年 43 巻 7 号 p. 555-559
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    日本医学シミュレーション学会(Japanese Association for Medical Simulation: JAMS)SED委員会は米国麻酔科学会鎮静ガイドラインを基に,鎮静医療安全構築を目的とした「鎮静実践セミナー」を開催している.今回COVID-19の影響下でも行えるWeb会議システムを利用した遠隔シミュレーションによる鎮静実践セミナー(SED Online)を開発した.教育は社会のニーズに合わせその形態を変化させるべきである.ニューノーマルの教育においては,シミュレーション医療教育のサステナビリティー堅持,そして迅速に対応するためにも,教育法に関する多様な交流や研鑽が必要である.

第29回日本麻酔・医事法制(リスクマネジメント)研究会 教育講演
  • 中村 京太
    2023 年 43 巻 7 号 p. 562-565
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    安全の考え方は,技術の時代から人的要因(ヒューマンファクター)の時代を経て安全マネジメントの時代へと変遷してきた.複雑適応系で説明される医療システムの安全マネジメントとして,レジリエンス・エンジニアリングの応用であるSafety-IIが注目されている.医療は,限られたリソースで動的に変動する状況に対して柔軟で適応的に対応し,圧倒的に多くの業務で目的としたアウトカムを達成している.そうした日常の成功から学び先行的に安全を創るため,Safety-IIの実装にむけた研究が進められている.Safety-IIはSafety-Iに代わるものではない.これからの安全管理はSafety-IとSafety-IIを相互に補完的なものと捉え,バランスよく活用した管理が求められている.

  • 秋田 真志
    2023 年 43 巻 7 号 p. 566-572
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    通説として医学界に受け入れられてきた揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome :SBS),虐待性頭部外傷(Abusive Head Trauma :AHT)をめぐる仮説(SBS/AHT仮説)に基づく医師の意見を根拠に,日本でも養育者による虐待が疑われ,親子分離や刑事訴追が行われてきた.しかし,近時,それらの訴追において無罪判決が相次いでいる.その背景には,SBS/AHT仮説の医学的根拠が揺らいでいる上,検察側医師の誤った診断があると考えられる.医学界として,誤った親子分離や冤罪の深刻さを踏まえて,SBS/AHT仮説にするゼロベースでの検証が求められている.

第29回日本麻酔・医事法制(リスクマネジメント)研究会
  • 飯干 泰彦, 木内 淳子, 江原 一雅
    2023 年 43 巻 7 号 p. 573-578
    発行日: 2023/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    医療事故調査・支援センターは,医療現場の安全確保と医療事故の再発防止を目的に2015年に設立された.医療事故が発生した医療機関では院内調査が行われ,報告書がセンターに提出される.医療機関または遺族からの依頼でセンター調査も行われ,2021年までに医療機関および遺族へ調査依頼のあった174件中94件(54%)の報告がなされた.センター調査では病院等の管理者に説明や資料提出が求められ,結果は管理者および遺族に報告され,医師法21条同様に情報が訴訟に用いられる可能性がある.司法解剖鑑定書は公判開廷前に公にできないため,死因に関する基本的結果を長期間知り得ず,センター調査の遅れに繋がる.

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