日本臨床麻酔学会誌
Online ISSN : 1349-9149
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最新号
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原著論文
  • 市川 順子, 二瓶 春菜, 西山 圭子, 小高 光晴, 小森 万希子
    2018 年 38 巻 4 号 p. 421-425
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    緊急手術の際の説明と同意に関して,当院における実態を調査した.2017年3月に施行した緊急手術につき,麻酔科医にアンケート聴取を行った.27例の緊急手術が施行され,全例,麻酔科医による説明と同意を得ていた.意識レベルが低下,鎮静状態,認知症などがある場合を除いて,本人に説明し同意を得ていた.説明場所は手術室の入口が7例(25.9%)であり,説明に要した時間は3分から30分と時間的な差異があった.説明内容は,挿管済みの重症例では麻酔中に起こりうる合併症や全身麻酔の副作用の説明に重点を置き,手術室で挿管する症例においては,最終飲食に関する情報の聴取,誤嚥の危険性を強調しており,その内容の多くが判例に準じていた.

症例報告
  • 小寺 厚志, 相方 靖史
    2018 年 38 巻 4 号 p. 426-433
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    認知症を認めず,日常生活の動作能力も保たれていた100歳以上の3症例の全身麻酔を経験した.症例1:100歳の女性.Ⅱ度の大動脈弁逆流症を認め,左大腿骨頚部骨折に対して骨接合術を施行した.症例2:101歳の女性.Ⅱ度の大動脈弁逆流症を認め,上行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した.症例3:102歳の男性.ペースメーカ挿入中であり,左大腿骨頚部骨折に対して骨接合術を施行した.いずれも術中の不安定な血行動態に苦慮したが,術後経過は良好であった.超高齢者では,術前合併症,認知機能,日常活動性を評価した上で麻酔方法を計画し,術中の循環動態と術後の生活の質の維持に留意することが肝要である.

  • 末竹 荘八郎, 渡邊 至
    2018 年 38 巻 4 号 p. 434-437
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    アドレナリンは手術において,止血による術野確保を目的として,広く使用されている.しかし,不整脈や一過性の頻脈,高血圧,肺水腫,心筋症をきたすなど,さまざまな合併症が報告されている.今回,甲状腺手術において,間欠的な希釈アドレナリン液の術野散布および浸透ガーゼを用いた圧迫止血が行われた症例において,術中の循環動態およびアドレナリンの血中濃度の推移を測定した.術野での局所散布使用であっても,循環動態の変化に比較して,アドレナリンの血中濃度は高度にかつ持続的に上昇していることが確認された.血流が豊富な術野でのアドレナリン使用は,組織内への注入がなくても容易に血中に移行するため注意を要すると思われた.

  • 織田 寛子, 辛島 裕士, 牧 盾, 山本 美佐紀, 白水 和宏, 外 須美夫
    2018 年 38 巻 4 号 p. 438-443
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    57歳,女性.側臥位での開頭腫瘍摘出術が施行された.手術終了後体位変換時に急性肺血栓塞栓症を発症した.当初,呼気終末二酸化炭素分圧(EtCO2)の低下に気がつかずに対応が遅れたが,その後の経食道心エコー(transesophageal echocardiography:TEE)検査で確定診断となり,循環維持のためECMO(extra-corporeal membrane oxygenation)を導入した.しかし,脱血管を大腿静脈から右房に挿入する際に下大静脈内の血栓を同時に右心系に進展させ,循環虚脱となった.また,ECMO開始とともに脱血管内に血栓が観察され,緊急停止せざるを得ないという事態も生じた.最終的にはECMOにより血行動態は安定し救命しえた.これらの過程においてTEEは原因究明および治療方針決定に有用であった.

  • 土山 景子, 角谷 哲也, 川股 知之
    2018 年 38 巻 4 号 p. 444-448
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    抗精神病薬内服中に悪性症候群を合併した重症統合失調症患者に対する修正型電気痙攣療法(modified electroconvulsive therapy:m-ECT)の周術期管理を経験した.症例は61歳の男性で,重症の統合失調症と診断され当院精神科に入院となった.入院後,悪性症候群を合併し,薬物治療継続困難となったため,ミダゾラムとデクスメデトミジンを用いて持続鎮静し,3回のm-ECTが予定された.麻酔はプロポフォールで導入し,ロクロニウムで筋弛緩を得た後に経鼻挿管し,通電した.m-ECT後は,気管挿管のまま持続鎮静しICU管理を行った.3回目のm-ECT終了2日後に,覚醒させ抜管した.抜管後,症状は改善し,合併症なく退院となった.

  • 田原 康次郎, 白水 和宏, 門田 英輝, 島内 司, 辛島 裕士, 外 須美夫
    2018 年 38 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    症例は35歳,男性.上肢の挙上制限を認める腋窩部位病変に対して側臥位+患側上肢挙上肢位での手術が行われた.術直後より,患側上肢の運動・感覚異常を訴え,MRI所見より腕神経叢損傷と診断された.原因として手術中の長時間にわたる肩関節の過外転肢位による神経圧迫および血流障害をきたしたことが考えられた.術操作に伴い許容範囲を超える肢位の変化が生じる可能性がある症例では,神経損傷の可能性を念頭に置き,術中に定期的に体位を調整する等の術前計画を作成するなどチームでの対策が求められる.

  • 西本 久子, 大橋 雅彦, 齊藤 岳児, 土井 松幸, 中島 芳樹
    2018 年 38 巻 4 号 p. 454-458
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    自殺企図で市販のカフェイン含有薬の多量服薬による急性カフェイン中毒の症例を経験した.症例は,18歳,男性.急性カフェイン中毒の全身管理目的にICUに入室した.症状として発作性上室性頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia:PSVT),不穏,高血糖,高乳酸血症,低カリウム血症,多尿を呈していた.ICUでは人工呼吸管理と活性炭投与などの対症療法を行った.不整脈は薬物療法によって制御でき血液透析は施行しなかった.不穏が強くデクスメデトミジンを主体とした鎮静下で人工呼吸管理を行ったが,第4病日に人工呼吸器を離脱した.第5病日にICUを退室した.

短報
コラム
日本臨床麻酔学会第37回大会 教育講演
日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─超音波ガイド下神経ブロックの進歩─過去・現在・未来──
日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─これからの術中輸液・輸血管理─
  • 小竹 良文
    2018 年 38 巻 4 号 p. 495
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー
  • 末廣 浩一
    2018 年 38 巻 4 号 p. 496-503
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    中等度リスクの症例は手術数全体の40%程度を占めると推定されている.これらの症例ではハイリスクなものと比較して重症合併症は少ないものの,約30%に何らかの術後合併症が生じていることが報告されている.Goal-directed therapy(GDT)は術後合併症を軽減し,予後を改善する可能性が示唆されているが,GDTの適用率は本邦においても低いのが現状である.本邦におけるGDTの低施行率の理由としては,GDTのエビデンスレベル,GDTプロトコールの複雑さや多様性などの問題点が挙げられる.本稿ではGDTプロトコールを中心に低侵襲血行動態モニターを使用した輸液管理について考察し,GDTプロトコールの問題点を解決する可能性がある自動輸液負荷システムについて概説を行う.

  • 佐野 文昭, 仙頭 佳起, 平手 博之, 祖父江 和哉
    2018 年 38 巻 4 号 p. 504-510
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    血液弾性粘稠度検査は,ベッドサイドでほぼリアルタイムに血液凝固機能を評価できる.血液弾性粘稠度検査を用いることで,心臓外科手術や肝移植手術において輸血量を減少させることが知られている.濃縮フィブリノゲン製剤は,本邦では後天的低フィブリノゲン血症には適応がないが,文献では濃縮フィブリノゲン製剤の使用で血液製剤の使用量低下,治療コスト削減,予後改善が報告されている.当院では倫理委員会の認可のもと,大量出血時の低フィブリノゲン血症に対し濃縮フィブリノゲン製剤を使用し,一定の成果を得ている.本稿では自験例を含め,周術期の凝固系管理を考える.

日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─最新臨床研究レビューから読み解く次世代の周術期管理─
特集:産科麻酔(第1回)
  • 稲垣 喜三, 齊藤 洋司
    2018 年 38 巻 4 号 p. 532
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー
  • 田中 宏和
    2018 年 38 巻 4 号 p. 533-537
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    妊娠時は週数に応じたさまざまな生理的変化をきたす.血液学的な変化は顕著で,妊娠後期にピークとなる血液量の増加,凝固系の機能亢進と線溶系の抑制が起こる.血液量の増加に伴い心機能は亢進し,循環血液量の増加によって腎機能も亢進する.また呼吸機能は子宮の増大に伴い横隔膜の運動は制限されるが,横隔膜挙上による機能的残気量の減少によって亢進し,酸・塩基平衡にも影響を与える.妊娠による内分泌環境の変化による糖や脂質代謝の変化も特異的である.さらに増大した子宮と内分泌環境の変化は,消化器系,尿路系,骨格系にも影響を及ぼす.それぞれが,妊娠に適応し分娩に対応できるように,合目的的な変化となっている.

  • 和田 誠司
    2018 年 38 巻 4 号 p. 538-541
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    胎児期の各器官の生理学的特徴は成人とは異なる.特に胎児-胎盤循環を有し,生後の変化に対応可能にできる循環器系のシステムを有している.また,胎盤から生成されるホルモンの影響を受ける.腎臓はその役割を胎盤に依存する割合が大きく,呼吸器系,消化器系は胎内では実際の機能を使用していないが生後の機能開始に備えている.

  • 川瀬 小百合, 橘 一也
    2018 年 38 巻 4 号 p. 542-547
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    妊娠すると母体には生理学的変化が生じるが,それは母体に投与した薬物の代謝にも変化をもたらす.また妊娠中,母体に投与した薬剤は胎盤を経由して胎児に届き,胎児奇形や児の出生後の呼吸抑制や神経障害などを生じる可能性を有する.しかし,妊娠中の薬物治療や非産科手術の麻酔,胎児治療,分娩時の麻酔などで母体に薬剤を投与する機会は少なくない.そのため母体の生理学的変化による薬物動態の変化や,胎盤通過性,麻酔関連薬物の母体・胎児への影響を理解する必要がある.

  • 佐藤 正規, 鈴木 康之
    2018 年 38 巻 4 号 p. 548-555
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    妊娠早期からの出生前診断の進歩に伴い,子宮内で胎児の治療を行う胎児治療が発展してきた.胎児治療は新しい医療であるが,わが国でも多くの施設で行われており,内科的治療から侵襲度の高い外科的治療まで幅広い.麻酔科医は母児双方に適切な麻酔を提供することが求められる.術式に限らず,母体や胎児の生理を理解した上で,個々の症例に対応した麻酔法を選択することが重要である.麻酔管理上は子宮胎盤循環の維持,子宮弛緩,最適な術野,胎児循環モニタリングに重点を置き,かつ母児へのリスクは最小限とする管理を目指す.Ex-utero intrapartum treatment(EXIT)では,多くの診療科と医療スタッフとの協力体制を構築し,適切なチーム医療の提供が求められる.

  • 岡原 祥子, 角倉 弘行
    2018 年 38 巻 4 号 p. 556-561
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    麻酔科医は,手術室での麻酔を通して全身管理には長けているが,無痛分娩の安全性を担保するためには,それに加えて周産期医学の深い理解が不可欠である.また,一緒に働く産科医や助産師との円滑なコミュニケーションも重要なポイントとなる.わが国では無痛分娩はいまだ広く普及していないが,そのニーズは年々高まっている.本稿では無痛分娩の具体的な方法についても紹介するが,無痛分娩を実践する際には無痛分娩を実践している施設での産科麻酔の研修を済ませてから実施することが強く求められる.

  • 仲宗根 正人, 稲垣 喜三
    2018 年 38 巻 4 号 p. 562-565
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    わが国では,妊婦のおよそ5人に1人が帝王切開により出産している.健常妊婦の帝王切開の麻酔法は,日本では脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)を選択する施設が多い.しかし,術後抗凝固療法を行う症例が増え,脊髄くも膜下麻酔単独を第一選択とする施設は増えると予測される.脊髄くも膜下麻酔ではモルヒネによる術後遷延性呼吸抑制に注意が必要である.また,高頻度で術後にかゆみを訴えるため,それに対する配慮が求められる.NICEによる緊急度分類カテゴリー1の超緊急帝王切開では,手術決定から児娩出まで,30分以内よりもさらに短時間での娩出が推奨されている.妊婦の全身麻酔は挿管困難や誤嚥性肺炎など致命的なリスクが高くなるため,気道管理は特に注意が必要である.

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