日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
20 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 特にその細胞像と組織所見の関連について
    木村 憲三, 佐々木 秀敏, 手島 研作, 服部 浩, 池田 正典, 堀井 高久, 野田 起一郎
    1981 年 20 巻 2 号 p. 185-192
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    初期頸癌の細胞像と組織像を対比検討し, 次の結論を得た.
    1) 微小浸潤癌の細胞像は, 深層型悪性細胞の他に中表層型悪性細胞が出現し, また, 悪性細胞 相互に多彩性が認められ, さらに, 小数ながらbizarre cell, cellular detritusが出現する.
    2) 細胞診上出現するcellular detritusは, 組織像にみられるnecrotic substanceやparakeratosisと相関性がある.
    3) 細胞診上中表層型悪性細胞が出現していた症例のなかには, 組織学的に分化傾向を示さないが, 表層から離れてfocal differentiationを有するものがあり, スクレーパーによりかなり深部の細胞を擦過採取してくることが示唆された.
    4) 油浸観察の結果, 微小浸潤癌では, 粗顆粒状不均等分布クロマチンおよび核縁の全周にわたる不整所見が出現し, 悪性細胞のうち2μ以上の核小体が10%以上, インディアナインク状クロマチン10%以上, 核縁の一部不整のものが25%以上にみられた. このことは高倍率観察所見を加味することによって, 微小浸潤癌の細胞学的診断の精度をより向上させうることを示している.
  • 細胞採取法, 採取時期による差異について
    塚原 和夫
    1981 年 20 巻 2 号 p. 193-202
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    IUD使用患者141名の内膜スミアを挿入前, 挿入後, 抜去後にIUD付着内膜タッチ, 吸引, およびブラッシュ法を用いてそれぞれの細胞像を比較検討した。
    出現した細胞は多核巨細胞, Psammoma body内膜修復様細胞と異型腺型細胞の4種類がみられた.前2者は挿入前と抜去後ではほとんどみられず, 挿入後と抜去時に特徴的にみられた. 細胞採取法のちがいではIUDタッチ法により多核巨細胞, Psammoma body, 内膜修復様細胞, 異型腺型細胞がそれぞれ72.4%, 26.3%, 32.8%, 20.7%出現し, 吸引とブラッシュ法ではそれぞれ23.2%, 18.7%, 32.1%, 18.4%であって, それらの問に差がみられた.
    月経周期を前, 中, 後半に分けて4種類の細胞の推移をみたが, 特徴的所見はみられなかった.IUD装着年数と細胞像との関連では, 長期間挿入例の一部のものを除き著明な所見は得られなかった.
    一部の長期装着婦人で子宮内膜組織像に内膜増殖症を示した症例があり, 長期にIUDを使用した場合には内膜の組織学的検査はそのneoplasticchangeを知る上にぜひ行うべきである.
  • Cytodiagnosis of Uterine Leiomyosarcoma through Specific Stainings and Electron Microscopy
    Isamu ISHIWATA, Chieko ISHIWATA, Takashi TSUKADA, Fumio SHIBATA, Masay ...
    1981 年 20 巻 2 号 p. 203-213
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    子宮肉腫は複雑な形態をとることから, いかなる肉腫かを同定することは細胞診, 組織診においてきわめて困難な場合が多い.そこでわれわれは筋由来悪性腫瘍の組織診断の際, よく用いられる, 燐タングステン酸ヘマトキシリン (PTAH), ファンギーソン (VG), マロリーアザン染色を細胞診に応用し, 細胞診レベルにおける平滑筋肉腫の同定の可能性を検討した. 予備実験として子宮筋腫のため摘出された標本 (5症例) より子宮内膜, 子宮筋層, 子宮膣部の各組織と, 人工妊娠中絶によって得た胎児 (5症例) の大腿部筋組織を10%ホルマリンで固定後, パラフィン包埋し, 4~6μmに薄切後, H-E, PTAH, VG, アザン染色を試み, 各組織の染色性を調べるとともに, 子宮体内膜, 子宮頸内膜, 子宮膣部扁平上皮を同一ガラス面に捺引塗抹し, さらに横絞筋組織を捺引した後, 95%エタノールで固定後, Pap. 染色標本を作成するとともに, 10%ホルマリンで固定後, 特殊染色を試み, 細胞診レベルにおける各細胞の染色性を検討した. 組織細胞診レベルにおいても平滑筋, 横絞筋の筋線維はPTAHで深青色~紫色, VGで黄色, アザンで紅色に染色され, 扁平上皮, 腺上皮にみられる張原線維とは区別することができた. さらにわれわれは肉眼的に悪性と思われる腫瘍 (5症例) より得た細胞診標本にPap. 染色の他に上記の特染を試みた. 非上皮系悪性細胞と思われる細胞は, 細胞質にPTAHで染色, VGで黄色, アザンで紅色に染まる細胞質内線維を有することから平滑筋肉腫細胞と同定された. またスライドガラスに塗抹された細胞の透過型電顕標本を作成したところ一部の細胞に細胞内細線維がみられ, これは細胞の長軸に平行に走り, 所々に電子密度の高い斑紋 (dense patch) を形成し, 直径80~100Åであることから平滑筋線維と同定された. これら5症例の腫瘍は光顕, 電顕とも組織学的に分化型の平滑筋肉腫であった. このように未分化肉腫は別として, 平滑筋線維の発達した分化型平滑筋肉腫においては従来のPap. 染色の他に上記の特殊染色を施せば細胞診レベルで病変を推定することがある程度可能と思われる.
  • 松隈 孝則, 佐藤 伸子, 石田 禮載, 天神 美夫, 千綿 教夫, 杉下 匡
    1981 年 20 巻 2 号 p. 214-220
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    当科において昭和53年の1年間に採取した細胞診検体は19, 412例であり, このうちciass IIIaの判定を得たのは175例であった. これらの組織学的背景は良性から上皮内癌に至るまで種々である. 今回わたくしどもは組織診によりmild dysplasiaと確認された群20例 (MD群とする) と, chronic cervicitis等の良性病変しか確認できなかった群20例 (non-MD群) との標本を再検討し, 細胞分化度, 細胞質所見, 核形, 核内クロマチン像に関して分類し, その形態学的特異点について比較検討した.
    さらにMD群, non-MD群について各症例ごとに, 数回のclass IIIa判定を得た標本をすべて通して検討し, その細胞形態学的傾向を研究した. その結果は次のごとくである。
    1. 頻回に“class IIIa”の判定が下される場合には, dysplasiaの存在を強く疑い, 逆に1回きりの判定の場合にはdysplasiaの可能性はうすい.
    2. 異常細胞が多数出現する場合には核所見に注目し, 特にN/C比大, 円形腫大かつクロマチン顆粒状多染を示す異常細胞の割合が全異常細胞中30%以上を占める場合にはdysplasiaの存在を疑い, 逆に5%以下の場合にはdyspiasiaの可能性はうすい.
    3. mild dysplasiaは一般に標本上の異常細胞数が少ないため判定困難な場合が多いが, 上記所見 (1., 2.) のほかに, follow up中に出現した異常細胞を動的にとらえ異常細胞数の総和を一連の流れとし, われわれのパターン認識方式としてとらえることにより, MD群とnon-MD群との識別がかなり可能となる.
    われわれが細胞診においてdysplasiaの存在を確認できるか否かは悩むところであるが, 今回得た結果により, 今後さらに細胞診判定基準において役立つならば幸いである.
  • 土田 正祐, 杉田 道夫, 五十嵐 優子, 杉下 匡, 天神 美夫, 久保田 浩一
    1981 年 20 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌の放射線感受性の有無に対する解明の足掛りとして, 照射早期における細胞診にて悪性細胞の分化度, 小型癌細胞, 細胞質内空胞, 封入細胞について検討を行った.
    研究対象は当院において放射線治療のみを行った子宮頸部扁平上皮癌患者で, 5年成績の明らかな生存11例, 局所再発3例の計14例であり, 次の結果を得た.
    1) 1, 500rad照射時の悪性細胞の分化度指数において, 照射前と比し右方移動を示した症例は14例中6例であったが, 予後および組織型における特徴は認められなかった.
    2) 500rad照射時における小型癌細胞の反応においても, 予後および組織型における統一的傾向は認められなかった.
    3) 細胞質内空胞のうち, 特にmultivacuolatetypeに注目したところ, 生存群に出現数が多く, 照射初期より出現するものは予後のよい傾向があった.
    4) 封入細胞は生存群に出現が多く, 予後判定の一助になることがわかった.
  • 渡辺 秀子, 風呂田 晃, 宮川 定吉, 野田 定, 岸上 義彦
    1981 年 20 巻 2 号 p. 226-230
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    みどり健康管理センターでは, 昭和47年11月より自己採取法による子宮癌検診を行っているが, 今回, 昭和51年8月から昭和54年6月までに受診した10, 357人について追跡調査を行った.
    一次検診での診断結果はPC I・II-9, 876人 (95.3%), PC II再-222人 (2.1%), PC III-239人 (2.3%), PC IV-16人 (0.2%), PC V-4人 (0.1%) で, 要精検者は481人 (4.7%) であった.
    要精検者のうち, 最終診断を確認できたものは386人 (80.2%) で, そのうち癌は30人 (7.8%) で異型上皮は16人 (4.1%) であった.
    また, 最終診断で癌と診断された30人のうち, 上皮内癌は22人 (73.3%) で, 浸潤癌のうち扁平上皮癌は7人 (23.3%), 腺癌は1人 (3.3%) であった.
  • 沢田 勤也, 福間 誠吾, 関 保雄, 田中 文隆, 石田 逸郎, 池田 栄雄, 田中 昇
    1981 年 20 巻 2 号 p. 231-239
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    日本人に発生頻度の高い細気管支肺胞上皮領域の腺癌について腫瘍の捺印塗抹標本から細胞形態を検討し, 臨床細胞学に貢献しようということが本研究の目的である. 53症例について高分化型 (A群, 25例), 中分化型 (B群, 7例), 低分化型 (C群, 6例), さらに肺胞上皮型 (D群, 12例), 印環細胞型 (E群, 3例) から得られた細胞について配列, 形からはD群, E群に多形性が著しく低く, 核の折れ曲り所見はA, B, C群の順に高頻度にみられ, D, E群には多くの症例にみられなかった。核クロマチン量はD群で乏しい. 粘液多糖類染色の態度についてPAS染色は91%の陽性率で顆粒状型が多く, D, E群は全例陽性であり, AIcian-Blue染色は70%の陽性率で細胞表面型が多い傾向が認められた。計量的に細胞をみると, 細胞面積ではC群のみ広い面積を示していたものの各群を通じて顕著な差異はなかった. 核面積は, C群は広く, D群では狭く, E群は著しく狭小であった. N/C比はD群で小で, E群で著しく小であることが明らかとなった. 限定された末梢領域からも種々の特徴を備えた腺癌細胞が認められ, またD群, E群のごとき異型性の低い例は細胞診上慎重な観察が要求される.
  • 中尾 清, 西 国広, 園田 文孝, 戸上 七郎, 篠原 利光
    1981 年 20 巻 2 号 p. 240-246
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Saccomanno変法のブレンダーとして, DREMEL社製の装置に別途製作したスクリューつきシャフトを接続したものを紹介した. 操作や消毒が簡単なので喀痰の集検に役立つ. このブレンダーを用い, 同一検体につき10,000rpm (LG) と21,000rpm (HG) の2群にわけて細胞所見を比較した. 観察の対象は肺癌23例 (扁平上皮癌12, 腺癌8, 小細胞癌3) である. 単個の扁平上皮化生細胞数は肺癌の組織型と関連性はないが, 扁平上皮癌には高度の異型化生細胞が著しく多くみられた. 攪拌回転数を半減しても扁平上皮化生細胞のclusterの分散に影響はみられない. LGとHGの問で有意差を示したものは次の3項目である. (1) 扁平上皮癌はHGで密集しやすい. (2) 腺癌では疎結合がHGに多く, 密集を保つものはLGに多い. (3) 変性細胞はHGに多い. 有意差はないが小細胞癌でもHGで密集の傾向が強い. 以上から攪拌回転数について21,000rpmにこだわらず, 細胞形態に最も影響の少ない攪拌法を検討してみたい.
  • 中西 功夫, 勝田 省吾, 島村 正喜, 谷本 一夫
    1981 年 20 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    自然尿細胞診で腫瘍細胞が検出された腎盂移行上皮癌 (Grade III) を報告し, あわせて最近経験した上部尿路移行上皮癌17症例を校閲し尿細胞診と組織診における腫瘍細胞の異型度や正診に与える因子について検討した. 異型度の高い移行上皮癌においては尿細胞診で比較的容易に腫瘍細胞は検出されたが異型度の低い乳頭状癌においては陽性率は低かった. 細胞診における腫瘍細胞の異型度は比較的よく組織診における細胞異型度を反映しているのが知られた.
  • 飯塚 保夫, 鎌迫 陽, 喜安 佳人, 工藤 浩史, 古賀 成昌
    1981 年 20 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸にて, 各種減黄措置がなされた計25例の患者に対し, これら減黄瘻 (主としてPTCD) より, 胆汁細胞診および同減黄瘻の洗浄細胞診を施行し, おもに原疾患との関係よりその成績を検討した. その結果, 胆管癌では12例中9例 (75%), 膵癌5例中1例 (20%), 胆嚢癌4例中2例 (50%) に癌細胞を認めたが, 胃癌再発例, 後腹膜腫瘍例では悪性細胞を認めなかった. 胆汁採取方法別成績では, PTCD胆汁細胞診では14例中8例に, PTCD洗浄細胞診では9例中4例に癌細胞を認めたが胆管内Tチューブ洗浄, 胆嚢外瘻胆汁細胞診にては癌細胞を認めなかった. 細胞診の回数と成績と関係では, 1回目で癌細胞を認めた症例は12例中7例, 2回目以降に認めた症例は12例中5例であった. 減黄瘻先端と病巣との位置関係からみた成績は, 病巣に比較的近い例では, 17例中9例に, 比較的遠い例では6例中3例に癌細胞を認めた.
  • 特にその細胞像について
    船本 康申, 浅本 仁, 楠木 秀和, 溝 暁, 伊藤 剛, 古田 睦広, 小泉 欣也, 西脇 洸一, 安冨 徹
    1981 年 20 巻 2 号 p. 258-267
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    6例のimmunoblastic sarcoma (IBS) について, その臨床病理, 特に細胞形態学的特徴について述べた.
    6例中3例はB細胞型, 2例はT細胞型, 1例はタイプ不明であったが, B細胞型の3例中2例は血清IgGの著明な上昇を認め, これら3例の腫瘍細胞の細胞質には, 螢光抗体法によりIgGが特異的に証明された. また, 血清IgGの高い2例には2核, 多核細胞を多く認め, T細胞型2例中1例には血清IgMの異常な低値を認めた.
    IBSの構成細胞を腫瘍組織の捺印標本で観察すると, T細胞型とB細胞型とは細胞形態学的に類似しているが, T細胞型はB細胞型に比べて多くの細胞が核形の立体的不規則構造をなすのが最も異なる点であった.
    IBSの構成細胞は, T細胞型, B細胞型ともにHodgkin病における特異細胞に酷似し, 2核細胞はmirror image様, 多核巨細胞はReed Sternberg細胞様であった.
    各caseにおける腫瘍細胞の核分裂指数 (MI) は全体に他のlymphomaより高く, 2核, 多核巨細胞を多く含むcaseでは特に高値を示した. また, MI2.0以上の4例はすべて発症から5ヵ月以内に死亡しており, 他の2例は1年以上生存し, MIも2.0より低値を示した.
  • 安田 允, 乾 裕昭, 芳岡 三伊, 落合 和彦, 徳留 省悟, 吉川 充, 森本 紀, 松信 堯, 寺島 芳輝
    1981 年 20 巻 2 号 p. 268-274
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    腹水を伴った卵巣進行癌に対し, 制癌剤を投与したのち, 腹水を経時的に採取し, 腫瘍細胞の形態的変化を観察, 制癌剤の効果判定に腹水細胞診が指標となりうるか否かを検討した.
    制癌剤の投与により腫瘍細胞に著しい変化を示した症例では腫瘍の縮小や腹水の減少など, 一時的にせよ臨床症状の改善が認められた.
    そのおもなる細胞診所見は
    1) 標本背景細胞の減少
    2) 腫瘍細胞数の著しい減少
    3) 細胞質の異染性 (特に重染色性) と空胞化
    4) 核のび慢性腫大と核内空胞および核破砕像
    などであった.
    われわれは腹水細胞診を利用した, 制癌剤の治療効果判定の指標として上記所見が認められた場合, 制癌剤が有効であると判定した.
  • 加藤 敬三, 関本 昭治, 三瓶 のり子, 紺野 恵子
    1981 年 20 巻 2 号 p. 275-280
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    3年間にわたり太田リングを挿入していた32歳の婦人の右下腹部に手拳大の充実性腫瘤を触知し手術を行ったところ, 右卵巣に発生した腫瘤でありその細胞組織学的検討を加えた.腫瘤のタッチスメアでは全体に炎症性細胞が多数出現し, かなり異型性を有する細胞が存在した.核クロマチンは細顯粒状のものが多かったが, 無構造の濃縮核を有するbizarrな細胞の出現を認め悪性細胞との鑑別が必要であったが, 黒褐色のmassを中心として褐色ないし黒色の粗大な穎粒が存在するいわゆるsulphur granuleが認められ, 放線菌症と診断された.同様の所見が, 除去された太田リングのタッチスメアよりも発見された.摘出腫瘤の組織学的所見では, 明らかな肉芽腫を思わせる組織像を呈していた.すなわちsulphur granuleを中心に多数の炎症性細胞が存在し, 膿瘍を形成し, その周囲をマクロファージ, 結合組織形質細胞がとり囲んだ像を示した.この膿瘍, およびIUDに付着した分泌物の細菌学的検索を行ったところ, 明らかな嫌気性菌を認め, 同定の結果actinomyces israeliが検出された.わが国においては卵巣放線菌症はまれであり報告する.
  • 竜 良方, 久保田 浩一, 岩崎 秀昭, 森川 真一, 河西 十九三, 武田 敏, 高見沢 裕吉
    1981 年 20 巻 2 号 p. 281-287
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    子宮体部横紋筋肉腫の1症例についてその臨床経過, 細胞診所見, 各種特殊染色を用いた病理組織学的所見, および組織レベルの細胞核DNA量の測定を行い比較検討した.
    1) 本症例は術前に細胞診, 組織診によって肉腫と診断し, 術後, 摘出物の検索によって中胚葉性混合腫瘍のうち, 横紋筋肉腫成分のみからなるきわめてまれな症例と確認された.
    2) 細胞診では壊死性背景のなかに, 大小不同の著しく, 核膜の著明な紡錘型から卵円形の非上皮性悪性腫瘍由来の細胞を強く示唆する悪性細胞が認められた.
    3) H-E染色では横紋筋肉腫細胞と横紋筋芽細胞とみられる2種類の細胞を認めた.またVG, MA, PAS染色などの特殊染色より, 横紋を有する細胞, PAS陽性細胞などが確認できた.
    4) 組織レベルのDNA定量では, 2倍体から12倍体に及ぶ, 漸減性の大きなモードがヒストグラム上に認められ, DNA量からも, 横紋筋肉腫細胞の多形性が裏付けられた.
  • 柴 光年, 大岩 孝司, 鎗田 努, 岡本 達也, 仲田 勲生, 山口 豊
    1981 年 20 巻 2 号 p. 288-292
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    胸部疾患における経皮的針生検細胞診は, その診断的価値が高く評価され広く普及してきた. しかし一方で合併症についてもいくつかの間題が提起され, なかでも腫瘍の穿刺に伴う転移の促進あるいは腫瘍細胞の播種は重要である. 今回, 23歳の男性で右前縦隔に発生した腫瘍に対して本法を施行し, 約1ヵ月後に前胸部穿刺部に一致して腫瘍細胞の胸壁への浸潤を認めた1例を経験したので報告する. 播種をきたす要因としては腫瘍の悪性度, 腫瘍の存在する解剖学的条件, 穿刺針の太さおよび手技上の問題があげられる. 特に縦隔腫瘍に対しての経皮的なアプローチは胸膜というバリアーがないということが, 肺内病変に比し本合併症発生の大きな誘因になった可能性が大きい. また穿刺針の太さおよび手技上の問題についても言及した.
    悪性腫瘍の場合, 術前に確定診断をつけることの重要性は論をまたず, その意味で本法は今後とも積極的に試みる方法と考える. しかし本合併症の存在はその発生頻度が低いとはいえ, 臨床的にはきわめて重要である. したがって本法施行にあたってはその適応は慎重でなければならず, 診断確定後には可及的速やかに治療を開始できるよう施行時期についての配慮も合併症軽減のため必要である.
  • 方山 揚誠, 松本 一仁, 木村 正方, 町田 純一郎
    1981 年 20 巻 2 号 p. 293-299
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    胃癌術後患者の頸部リンパ節穿刺吸引細胞診にて甲状腺癌転移を推定し, その後のリンパ節生検, 甲状腺右葉切除術にて甲状腺癌転移とその原発巣を確認した重複癌の1例を報告した. 症例は72歳男性で2年前から右頸部リンパ節腫張に気づいていた. 胃癌はポリープ状で粘膜に限局した乳頭腺癌で, 廓清されたリンパ節に転移はなかった. そこで頸部リンパ節腫張は胃癌と無関係の可能性が考えられた. 穿刺吸引は千葉大1外科式吸引ピストルを用い, 吸引量は約2mlで血性であった. 吸引量の多いこと, 多数の泡沫細胞の存在, 比較的異型性に乏しい腫瘍細胞集団と腫瘍細胞にみられる核内封入体様構造が細胞所見の特徴であった. 胃癌細胞は組織学的に核異型が強く, 核小体も数が多かった. しかし核内封入体様構造はみられなかった. 細胞診を施行した頸部リンパ節は組織学的に乳頭状ないし濾胞状構造を示す甲状腺癌転移で, 大濾胞状の部分には多数の泡沫細胞がみられた. 甲状腺原発巣は乳頭癌と診断された。リンパ節吸引細胞診で転移癌の原発推定は困難なことが多いが, 特に重複癌が疑われる時は, すでになされている組織検査所見と比較検討することが大切であることを述べた.
  • 1981 年 20 巻 2 号 p. 329-454
    発行日: 1981年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
feedback
Top