1961年から1974年まで経験した210例の早期胃癌のうち, 直視下採取細胞診を施行した99例と進行胃癌10例を対象とした.
採取法別細胞診成績は, 直視下洗浄法は, 84.0%, 直視下生検塗抹法では87.5%であり, 総合成績では86.9%の陽性率であった.
肉眼形態別の成績では, 陥凹型のものが隆起型よりも高い陽性率であった.
早期胃癌細胞は, 隆起型の長径10.0±0.34μ (M±S.E.), 短径8.0±0.28μであり, 陥凹型の長径11.5±0.55μ, 短径9.1±0.68μに比べて小さい傾向であった. 隆起型の長径, 短径とも, 進行胃癌の長径15.2±0.93μ, 短径12.3±0.70μに比べ小型であった (それぞれP<0.01, P<0.001). 陥凹型の長径, 短径とも進行胃癌の長径, 短径と比べ小型であった (いずれもP<0.01). 深達度別では, m, sm間には有意差はみられなかった.
早期胃癌の隆起型, 陥凹型について, 細胞径, 核径, 核内構造, 核小体, 悪性印環細胞の出現頻度, 細胞の形, について比較検討すると, 両者間に有意の差を見い出し得た.
微小胃癌, 多発早期胃癌, 局在の必ずしもはっきりしない病変, Hb型早期胃癌に, 洗浄細胞診は有力な診断方法である.
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