日本臨床細胞学会雑誌
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22 巻, 1 号
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  • 岸上 義彦, 野田 定, 森下 哲雄
    1983 年 22 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Feulgen反応で染色した腟smearを自動screeningする装置, Auto-Cyto-Screenerを開発した. 本装置は, color TV cameraを検出器とし, 核の大きさと濃度の計測によって癌細胞を弁別する. したがって, 本装置で計測する標本は, 塗抹面上で全細胞が完全に分散し, かつ, 均等に分布しなければならない. すでに, このような塗抹標本の作製方法を何回か報告したが, いまだ完全ではない. 今回, この方法について下記の2点を検討し, 改良できたので報告する.
    1) slide glass面にpoly-L-lysine coatingを施すことにより, 塗抹面からの細胞剥落を強力に防止することができた. しかも, poly-L-lysine coatingは塗抹面からの細胞剥落防止のみならず, 塗抹面上における細胞分布の均一性保持にも有効であることが判明した.
    2) 子宮頸癌例のsmearを1層静置沈殿法で処理し, 好中球などを除去することにより, smear中の総扁平上皮細胞数は軽度減少する. しかし, 総扁平上皮細胞数に対する癌細胞の比率は, controlと変わらないか, あるいは上昇する. したがって, 1層静置沈殿法による処理が自動screeningの際のfalse negativeの原因となる可能性はほとんどないと考えられる.
  • 杉田 道夫, 室谷 哲弥, 杉下 匡, 天神 美夫, 岡田 久, 田中 耕平, 本間 滋
    1983 年 22 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    癌性腹膜炎を合併した卵巣および卵管癌につき, cisplatin, adriamycin, endoxan, 5-FU, による多剤併用療法を施行し, その治療前後の腹水細胞診およびFCMによる核DNAパターンの変化と臨床効果を比較検討し, 次の結論を得た.
    1) 治療効果の弱い症例では, DNAパターン・腹水細胞診とも変化はなかった.
    2) 腹水細胞診では, 治療効果として, 核の腫大, 細胞質内空胞, 多核化現象, 核破壊などの所見が認められた.
    3) 核DNAパターンでは, 治療効果として, 4C以上の高倍体の増加, 4Cピークの低下が認められた.
    4) 2C部分 (G0 or G1) は, 今回の化学療法ではほとんど感受性がないと考えられる.
    5) 今後さらに化学療法の効果判定およびfollow-upの1法として, 腹水細胞診・FCMが応用されよう.
  • 岩田 正晴, 佐々木 寛, 坪井 透
    1983 年 22 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腺癌細胞は扁平上皮癌細胞に比し核小体が著明であることに注目し, Flow-cytometry (Bio/physics型) を用い, 核をDNA, 核小体をRNAとしDNA/IRNAの比で現すことにより, FMF上の腺癌細胞の特徴を把握するとともに扁平上皮癌との鑑別を行ってみた.
    すなわち, Acrigine Orangeを用い細胞内DNAとRNAの同時螢光染色を行うのであるが, これにはまず核のdouble strand RNAをsingle strandにするためのdenaturingが必要であり, このためEhrlich腹水癌細胞を用い基礎的に検討を行った.
    その結果, Traganosの方法は未固定の状態ではdenaturingは可能であるが, 臨床材料によるアルコール固定の場合には不向きで, これはリン酸緩衝液で2回洗浄することによりdenaturingが可能となり, FMF上DNA, RNAとも満足のいくpatternを示した. そこで腺癌と扁平上皮癌の培養細胞を用いRNA denaturingによるFMF解析を行ったところ, 腺癌ではX軸 (Red: RNA) 側に, 扁平上皮癌ではY軸 (Green: DNA) 側に細胞の分散が認められ, また人子宮頸部腺癌と扁平上皮癌細胞との比較においてもほぼ同様の傾向を観察し得たことより, FMFによる両者の鑑別は可能であると思われた.
  • 武田 鉄太郎, 岩井 あつ子, 入間川 久栄, 阿部 英見, 伊藤 圭子, 石岡 国春, 東岩井 久
    1983 年 22 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    昭和52年5月以来, 昭和56年11月までに52,018例の乳腺集検を実施した. 検査方法は触診を中心とし, 乳頭分泌物細胞診は一次スクリーニングに, 穿刺吸引細胞診は二次スクリーニングに組み込まれた. 分泌物細胞診施行は9,085例, 受検者総数の17.5%, 穿刺細胞診施行は288例, 0.6%であった. 分泌物細胞診は癌と乳頭腫の拾い上げを重視し, 異型細胞, 乳管上皮細胞大集塊, 赤血球の検出を異常所見とした. 異常所見の認められたのは283例, 3.1%であった. 5年間に111例の乳癌が発見された. そのうち分泌物細胞診は12例 (陽性4例, 陰性8例), 穿刺細胞診は28例 (陽性46例, 癌を否定できず7例, 陰性5例) に施行された. 癌111例中, 触診をはじめとしてほかの検査法では良性と診断されたが, 細胞診でチェックされたものが11例あった. そのうちわけは細胞診で癌とされたもの7例 (穿刺細胞診6例, 分泌物細胞診1例), 癌を疑ったもの4例 (全例穿刺細胞診) であった.
  • 山田 章吾, 武田 鉄太郎, 甘糟 仁, 新沢 陽英, 高相 和彦, 松田 堯, 山形 淳, 斉藤 博之, 佐藤 裕美子, 長谷 とみよ, ...
    1983 年 22 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳癌由来の体腔液貯留14例を対象として, 体腔液中に癌細胞を検出してから死亡するまでの期間と細胞所見を検討した. 10例は7ヵ月以内に死亡した. 59.5ヵ月例, 50.5ヵ月例, 30ヵ月現在生存例, 27ヵ月例の4長期生存例があった. この4長期生存例は, 乳癌手術後体腔液貯留までの期間も, それぞれ172ヵ月, 55ヵ月, 24ヵ月, 19ヵ月と比較的に長く, 癌の進行速度のゆるやかなことを推測させた. 長期生存例の体腔液中癌細胞は, 大型で, 細胞質に富み, 細胞質内空胞形成もみられ, 大集塊を形成する傾向が強いなど, 乳腺原発短期生存例, 他臓器原発体腔液貯留例とは異なった所見を呈した. このような特徴的な細胞像は, 乳癌由来の体腔液貯留例の予後推測に有用と考えられた.
  • 佐竹 立成, 夏目 園子, 平野 みえ, 原 一夫
    1983 年 22 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胆道に癌があり, PTCDによる胆汁細胞診が行われた46症例を対象に, 腫瘍細胞の形態と背景となるPTC像, 組織像および陽性率を調査し, これらの相関の有無について検討した.
    1. PTC像で狭窄および断裂を示す胆道系腫瘍の診断方法として, PTCDによる胆汁細胞診は極めて有効であり, 腫瘍の明らかな46例中44例, 96%に癌細胞が認められた.
    2. 胆汁細胞診標本中に認められる腫瘍細胞は, 100個以上の結合集団としてみられ, 乳頭状の配列を示すことが多い. この場合組織型は高分化腺癌であることが多い. このほか印環型癌細胞として認められる頻度も高いが, この場合の組織型は一定していない.
    3. 胆管原発と転移腫瘍の問, および手術可能と不可能癌との間に陽性率の差はみられなかった. 組織像, PTC像と陽性率との相関も得られなかった.
  • 垣花 昌彦, 岩田 正一朗, 浦崎 政浩, 野原 きくえ, 福島 範子, 山田 喬
    1983 年 22 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腱鞘巨細胞腫Giant cell tumor of tendon sheathは手指に生ずる腫瘤のうち2番目に頻度の高い疾患であり, 良性ではあるが, 完全な摘出を行わないと再発が必至であるので術前の正確な診断が必要である. われわれは5例 (うち1例は再発し再手術を施行) の腱鞘巨細胞腫に穿刺吸引細胞診を施行し, かつ手術時の標本よりstamp標本を作成し, その剥離細胞像について検討を行った.
    腱鞘巨細胞腫の剥離細胞像は, 組織球様細胞, 線維芽細胞様細胞, 泡沫細胞, 多核巨細胞からなる多彩な細胞像を示し, 背影には, リンパ球, 好中球, 赤血球, 膠原線維などがみられる.
    次に, 腱鞘巨細胞腫の剥離細胞像と, 手, 指, 足, 趾などに生ずる主要な皮下軟部組織内腫瘤の剥離細胞像との比較検討を行い, その鑑別点につき述べた.
  • 上原 茂樹, 土岐 利彦, 丹野 ひで子, 及川 和子, 星合 昊, 矢嶋 聰, 鈴木 雅洲, 堀内 俊孝
    1983 年 22 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    ヒト卵巣immature teratoma由来細胞を培養し, その性状について検討を加え, 以下の結果を得た.
    1) 昭和57年1月6日, 17歳の患者の手術時摘出病巣より材料を得て初代培養に供した.
    2) 初代培養, 継代培養を通して細胞の増殖は順調で, 現在6代目に至っている.
    3) 原病巣はneuroglia様組織とneuroepithelium様組織によってその大部分が占められる.
    4) 培養下にある細胞のうち未分化と推測されるのはneuroglia様組織由来のもので, そのcolony上に形成される細胞塊はin vitroでの分化能をもち, Plastic dishに付着後外周より線維芽様細胞, 神経様細胞の発生をみる.
    5) 細胞塊の超微形態観察では, junction, microvilli, filament, 分泌顆粒などをもたない未分化な細胞によって形成されていることがわかったが, 細胞の種類は複数であることが推測された.
    6) 細胞塊を形成する細胞は, ほかの培養細胞と比べて細胞診上のいわゆる悪性基準を満たすものが多かった.
  • 佐橋 徹, 篠塚 孝男, 黒島 義男, 杉原 義信, 篠原 正樹, 藤井 明和, 林 茂興, 清水 一男, 赤塚 由子
    1983 年 22 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌集団検診で要精検となった検診者を中心に, 綿棒擦過法による細胞診標本を詳細に再検し, 細胞診と組織診不一致症例につき集検と精検との受診間隔および術後標本再構築像との関連を検討し, 以下の結果を得た. 検索対象は, 高度異形成上皮23例, 上皮内癌30例, 微小浸潤癌 (Ia期癌) 20例の計73例である.
    1. 狙い組織診と最終組織診断の一致率は, 高度異形成上皮では95.7%(22/23), 上皮内癌73.3%(22/30), 微小浸潤癌 (Ia期癌) 45.0%(9/20) であった.
    2. 細胞診不一致例の集検と精検との受診間隔の検討で, 受診間隔の極端に短い症例では2週間以上の受診間隔を有する症例に比して正診率が低下したが, 受診間隔が長期であっても正診が得られなかった症例も存在した.
    3. 細胞診不一致例を術後摘出物再構築像より検討してみると, 組織学的変化の環状の広がりが頸部8~16分割亜連続切片標本で, 3/8以上の症例の細胞診正診率は, 高度異形成上皮85, 7%, 上皮内癌100%, 微小浸潤癌 (Ia期癌) 77.7%であったが, 2/8以下の症例の正診率は高度異形成上皮68.8%, 上皮内癌68.8%, 微小浸潤癌 (la期癌) 54.5%と著しく低下し, 病変の狭少な症例ほど, 細胞診で正診を得にくいという傾向が認められた.
    4. 今回の研究で, 細胞診誤判定の原因が明確でない症例も存在した.
  • 佐々木 寛, 佐々木 貴子, 北村 隆, 光永 忍, 株本 和美, 岩田 正晴, 五十嵐 優子, 植草 正
    1983 年 22 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    淋菌とHeLa S3細胞の混合培養を行い, 淋菌による細胞学的変化を基礎的に観察するとともに, 淋菌感染による腟細胞診の特徴および細胞診による淋疾の推定診断の可能性につき検討を行った.
    まずReLa S3培養細胞では培養時間の経過とともにその変化は漸次著明となり, その主体は細胞質の融解ならびに破壊であるが, 染色性の変化は明らかでなく核の変化もほとんど認められない.
    また細胞に付着した双球菌が観察され, 腟細胞診においても淋菌の存在を認めうることが示唆された.
    次に腟細胞診の所見であるが, 培養HeLa S3細胞の所見と同様に細胞に付着した双球菌を認め, とくに白血球内に貪食された像が観察された. 上皮細胞の変化も細胞質の変化が主体で細胞質内空胞ならびに好酸性変化, 核周囲Halo細胞質融解~ 破壊が特徴的で, 核クロマチンの増加, 核縁肥厚など核の変化は認められなかった.
    また一般にmetaplastic cellの増加傾向が認められたが, 高度の炎症例ではMetaplastic Cellと判定するのに困難であった.
    以上のことより腟細胞診において淋疾を診断しうる可能性があると思われ, また本疾患の存在により癌診断におけるFalse Positiveを生ずる可能性はないものと思われる.
  • 松田 実, 成瀬 靖悦, 曾根 啓子
    1983 年 22 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    64歳男性の右足関節外側部に発生した血管周皮腫に対して, 穿刺細胞診を施行したのでその細胞所見を報告する.
    腫瘍細胞は, 不規則重積性を示す大きな集団あるいは平面的な配列を示す小集団を形成し, 集団のまわりには多数の孤立散在性の腫瘍細胞が認められた. 大きな集団のあるものでは, ときどき集団の中に円形の空間がみられ, 空間をとりかこんで多数の腫瘍細胞が重積していたが, 空間に面した辺縁には細長く扁平な血管内皮細胞と思われる細胞がみられた. 集団を構成する細胞は, 細胞質は淡くその辺縁は不明瞭で, 円ないし類円形の核を有し, 核縁は薄く円滑, クロマチンは細顆粒状で核内に均等に分布し, 小さい核小体が1-2個認められた. 小集団を形成する細胞は, 細胞質が比較的豊富でその境界は明瞭であり, 紡錘形核を有するものがみられた.
    われわれは初め悪性と診断し得なかったが, 細胞採取量の豊富なこと, 細胞の形の多様性, 円形核と紡錘形核の混在, クロマチンの増量, 小さいが著明な核小体の出現などから悪性非上皮性腫瘍細胞を考慮すべきであったと考えられた. しかし正確な診断のためには外科的生検が必要であろう.
  • 舟橋 正範, 山岸 要範, 舟橋 供爾子, 柳田 隆正, 金子 千之, 社本 幹博, 笠原 正男, 田嶋 基男
    1983 年 22 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は5歳の女児で, 腹部痛を主訴として来院し, CT検査などにより左後腹膜腫瘍が疑われ, 手術時に13×11×6cm大の嚢胞を左後腹膜に認めた. 腫瘤は周囲組織との剥離が容易であり, 真に悪性であるか否かの判定が困難であったため, その内容液の術中細胞診を行いganglioneuroblastomaと診断した. その細胞像と電顕像について検討し, さらに術中細胞診の重要性についても検討した.
    腫瘍細胞は大型と小型の2種類がみられ, 大型細胞の直径は約300μ に達し, 核も25μを越す大きなものが認められ, 核小体は大きく, 好酸性で1-数個みられた. 一部には, 神経系細胞由来を思わせるロゼット様配列もみられた.
    一般に嚢胞を形成する腫瘍は良性であることが多いが, 本症例のごとく悪性腫瘍の場合もあり, 術中細胞診を行うことは診断をより確かなものとし, 術式や治療方法の確定に大きな役割を果たすといえる.
  • 吉原 渡, 古林 芳範, 水本 和代, 津崎 和子, 虎頭 廉
    1983 年 22 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    右季肋部腫瘤の穿刺細胞診により腺扁平上皮癌と診断し, 剖検により十二指腸乳頭上部原発であることが判明したまれな1例を経験した. 細胞所見はtwo toned colourからオレンジに好染するものが大部分で, 核形は類円形のものが多く, クロマチンはインディアインク様のもの, 細顆粒状のものがほとんどであった. このような扁平上皮癌細胞に混って, 少数であるが, 細胞質が淡明で, 円柱状をなし, 核小体明瞭な腺癌細胞も認められたので, 腺扁平上皮癌と診断した. 剖検にて十二指腸乳頭上部に径10cmの潰瘍形成型の腫瘍があり, 胃前庭部, 肝床部, 胆嚢壁, 横行結腸へ直接浸潤していた. 組織学的には角化傾向および細胞間橋を認める扁平上皮癌のところが多く, 一部に管腔形成および粘液産生などの腺癌の像を示すところがあり, 最終的に腺扁平上皮癌と診断した.
    十二指腸癌は比較的まれな疾患であり, 組織学的には大部分が腺癌と考えられ, 扁平上皮癌の性格をもつ症例の報告はこれまでに文献上3例の報告をみるにすぎない.
  • Toshio TANAKA, Keiko NISHIOKA, Itsuko MURAKAMI, Yasuko OGURA, Yumiko M ...
    1983 年 22 巻 1 号 p. 85-94
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    3例の上顎洞原発の悪性黒色腫を報告した. 洞壁を穿刺し洞内を生理的食塩水で洗浄して得られた液の細胞診的検索の結果, 多数の黒色腫細胞と同時にメラニン色素を含有する喰細胞を確認し得た. これらの症例は黒色腫の診断のもとに, 術前に, 免疫療法を含めてその治療方針について慎重に対処することができた. 黒色腫の細胞診上の診断規準を概略し, 同時に, 悪性腫瘍の早期発見のためのみならず, 術後の腫瘍の再発の管理のためにも, 耳鼻科領域における細胞診の有用性を強調した.
  • 宮脇 義隆, 岡村 信介, 寺井 普, 前田 隆義, 植木 実, 黒川 彰
    1983 年 22 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近, 比較的まれな子宮腫瘍であるEndolymphphatic stromal myosis (ESM) の1例を経験したので, その細胞像所見を中心に病理形態的検索を行い, 文献的にも考察を試みた.
    症例は45歳, 主婦. 過多月経, 腰痛を主訴として来院, 子宮腺筋症と診断したが, 性器出血がホルモン療法に対して難治性であったため, 単純子宮全摘術を施行した. その摘出子宮には底部後面に栂指頭大の淡黄色調のポリープ状腫瘤がみられ, その黄色調は肥厚した筋層に及んでいた. 組織学的所見では子宮内膜間質細胞に類似する小型の腫瘍細胞が筋層およびリンパ管へ浸潤増殖しており, その腫瘍組織中のmitosisの数は少数であった.
    術直後のimprintによる細胞像では, 腫瘍細胞が不定型の集塊を形成し, 細胞境界は不明瞭で, 細胞形態は多様性を示した. 細胞質は中等量でライトグリーンに淡く染まり, 核は卵円形ないし長卵円形で異型性が少なく, 核縁は円滑で肥厚を認めなかった. 核クロマチンは細顆粒状で, 核小体あるいはカリオゾームが数個存在した.
    以上の摘出標本, 組織像, 細胞像の各所見は, すでに報告されている本腫瘍の特徴にほぼ一致するものであった.
  • 鍵田 美栄子, 土井 幹雄, 鈴木 恵子, 小形 岳三郎, 北川 龍一, 根本 良介, 根本 慎一
    1983 年 22 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    60歳女性, 膣壁よりの穿刺吸引細胞診によって胚細胞もしくは胎児性の起源を推定したmesonephroidcarcinornaの1例を経験し, 細胞像を中心に報告した. 腫瘍は膣と尿道の問に存在し, 臨床的に尿道周囲膿瘍を疑われていた. 細胞像は乳頭状の集塊もしくは孤立散在性のhobnail typecellがほとんどであった. 細胞質内に多量のグリコーゲンと少量の脂肪を含む点が特徴的と思われた. また, 腫瘍に連続して立方上皮におおわれた嚢胞がみられ, Gartner管嚢胞の構造に類似していた. この点で, 腫瘍が胎児性遺残嚢胞 (ウォルフ管またはミューラー管由来) から発生したことが推察された.
  • 特にその剥離細胞像について
    服部 浩, 堀井 高久, 池田 正典, 手島 研作, 野田 起一郎
    1983 年 22 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮体内膜に原発する扁平上皮癌は, 極めてまれな疾患であり, その診断には一定のcriteriaを満たす必要がある. 多彩な細胞像を呈し, 術前の診断に困惑したが, 術後の詳細な検索により, 子宮体部扁平上皮癌と最終判断された症例についてその細胞像, 組織像の解析を試み, その組織発生について老察を加えた.
  • 中村 厚志, 小林 克己, 山口 潤, 伊藤 哲夫
    1983 年 22 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部の擦過細胞診標本にみられる悪性細胞は, 頸部の扁平上皮癌細胞が大部分を占め, 次いで頸部, 体部の腺癌細胞がみられ, 転移性癌細胞が出現することは極めてまれである
    今回, われわれは出血の高度な頸管擦過標本に核異型の著しい多角形の異型細胞が密に結合した大小の不整形な細胞集団の出現を認め腺癌細胞と考えた. しかし, 子宮原発の腺癌細胞所見と比較すると, 強い結合性を持つ大型の細胞集団が多くみられること, 細胞径, 核径もやや大型で, 印環細胞の出現頻度も高いことなどにより転移性腺癌と診断した.
    臨床的および組織学的検索から, 昭和47年に左乳癌として手術された既往歴があり, その子宮体部転移と診断された.
    細胞診所見および組織学的所見を対比させ, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 日野 侃, 土岐 政嗣, 小沢 尚男子, 川上 ろく, 桜井 勇, 森 吉臣, 瀬木 和子, 根本 充弘, 田中 昇
    1983 年 22 巻 1 号 p. 117-124
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    子宮中胚葉性混合腫瘍は比較的まれであり, 診断が困難である.
    不正出血と下腹部痛を主訴とした53歳閉経婦人の子宮体部中胚葉性混合腫瘍の1例を報告した. 本症例の腫瘍は組織学的に癌成分と肉腫成分両者により構成されていた. 前者は高度分化型腺癌が主成分であり, 後者は同所性成分として内膜間質肉腫, および異所性成分としては横紋筋肉腫により成り立っていた. 術前, 内膜生検による組織像では非上皮性成分のみで癌と肉腫の共存を示す所見は得られなかったが, 細胞診所見では, 内膜間質肉腫由来と考えられる非上皮性悪性細胞が, 腺癌を疑わせる上皮性悪性細胞とともに存在していた.
  • 覚道 健一, 植松 邦夫, 竹村 正, 畑 秀子, 栗山 典幸, 津田 晃孝, 雨宮 武彦, 吉田 泰子
    1983 年 22 巻 1 号 p. 125-127
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜原発腺扁平上皮癌の1手術例の捺印細胞診を検討し報告する. 腺型, 扁平上皮型悪性細胞を多数認めるなかに, 細胞質封入体を認めた. 封入体は, パパニコロウ染色でオレンジGに淡染し, PAS染色ではほとんどが陰性であった. 文献を検索した範囲では, 子宮内膜腺扁平上皮癌に類似の封入体を認めた報告は認められなかった.
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