日本臨床細胞学会雑誌
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22 巻, 3 号
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  • 電顕的亜分類と捺印細胞像
    中川 仁, 藤原 睦憲, 田久保 海誉, 土屋 真一, 高山 昇二郎, 松井 武寿, 山田 邦雄, 加賀谷 晃
    1983 年 22 巻 3 号 p. 509-520
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肺癌の分化型腺癌30例全例の電顕像に注目し, 微細構造からみた細胞亜型分類と捺印細胞を対応させ, 細胞像よりみた腺癌亜型分類の可能性を追求した. 肺腺癌は, その細胞亜型別では, 細気支無線毛上皮型 (クララ型), 杯細胞型, 肺胞II型細胞型, 気管支腺型, および混合型に分けられた.
    捺印細胞像を腺癌の亜分類別に検討した結果, クララ型では細胞の結合性は強く, 乳頭状または腺腔形成像が主体であり, 細胞質は青緑好色でドーム状を呈し, 核異型は症例により若干の差があった. 杯細胞型では, 細胞の結合性は強く, 豊かな淡緑色の細胞質を有し核異型は乏しく, ときおり細胞質内に小空胞を認めた. 肺胞II型細胞型では, 細胞の結合性は比較的疎で, 細胞数個のClusterを形成することが多く, 細胞質は乏しく緑好性を呈していた. 気管支腺細胞型では, 細胞の結合性が強くシート状に出現することが多く, 細胞は類円形で核異型は乏しく, しばしば細胞質内に空胞を認めた. 混合型では, 由来細胞により多彩なClusterおよび細胞像を認めた.
    杯細胞型, 気管支腺型では細胞質内に粘液空胞を有していた. クララ型, 肺胞H型細胞型では, 厚い細胞質を有していたが, 粘液空胞は認められなかった.
    腺癌亜分類推定では, 配列, 結合傾向に加えて, 細胞質の詳細な観察が必要である. さらにPAS染色, Alcian Blue染色およびShorr染色などを行えば, 亜型推定がより的確になると思われた.
  • 藤岡 浩, 本間 敏明, 内田 義之, 長谷川 鎮雄
    1983 年 22 巻 3 号 p. 521-526
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳酸脱水素酵素 (以下LDH) は細胞内に非特異的に存在し, 細胞の腫瘍化に伴い増強し, 特にM分画の増加がみられる.われわれは肺癌症例の喀痰中に出現する癌細胞を中心にLDH染色を行い血清LDH, LDHアイソザイムについて検討した.染色は, 乳酸を基質として, ニトロブルーテトラゾリウムを還元し, 不溶性の色素ジホルマザンとして沈着させ, さらに尿素の最終濃度2.6Mになるように染色液に加えたもので失活の程度を観察した.LDH染色を行うと, 正常例でも, 喀痰中にジホルマザン顆粒陽性の細胞が存在する.これらに尿素阻害試験を行うと, ほとんど抵抗性を示した.肺癌症例では, 肺癌細胞中にジホルマザン顆粒陽性細胞が高頻度にみられるが, これらは尿素阻害試験に抵抗性を示さず, 嫌気性代謝によってLDHのM分画が増加している可能性を示唆した.喀痰細胞診の正常細胞と肺癌細胞の識別に際して, LDH-M分画が利用できる可能性が得られた.
  • 田中 卓二, 藤井 雅彦, 加藤 一夫, 西川 秋佳, 武内 康雄, 角田 耕造, 三輪 和子, 高橋 正宜
    1983 年 22 巻 3 号 p. 527-532
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肺癌手術切除材料を用いて腫瘍組織中のLDHアイソザイムパターンを検索し, 尿素阻害試験を併用したLDH染色を行い, 正常肺組織との差異および腫瘍の組織型との関連性を比較検討した.
    その結果, 正常肺組織 (19例) のLDHアイソザイムは, 3分画にピークを有し, M/H比は1.0以下を示した.腫瘍組織では, 扁平上皮癌 (26例), 腺癌 (34例), 大細胞癌 (13例) は4分画にピークを有するほぼ同様のパターンを示した.小細胞癌は3分画にピークを有するが, 正常肺組織と比較すると1, 2分画の占める割合が低かった.腫瘍の大多数はM/H比が1.0以下を示した.
    LDH染色では, 正常肺組織は尿素阻害試験においても染色性の低下がみられなかったのに対し, 腫瘍では小細胞癌を除き, 多くの場合尿素阻害試験で染色性の低下がみられた.換言すると, LDH-M分画に対する細胞化学染色は, 細胞抽出液のLDHアイソザイムパターンと相関性を示し, 細胞診断上有用であることが示唆された.
  • 上皮内癌と微小浸潤癌の細胞像を中心に
    阿部 庄作, 大崎 饒, 永井 達夫, 常田 育宏, 川上 義和, 遠藤 隆志, 荒川 三紀雄
    1983 年 22 巻 3 号 p. 533-538
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    手術による摘出標本の病理組織学的検索により確診した肺門部早期扁平上皮癌のうち, 術前, 気管支鏡下病巣直接擦過法により検索しうるに十分の細胞が得られている上皮内癌2例, 微小浸潤癌4例の細胞形態学的所見を検討し, あわせて, その病理組織像と対比した.
    上皮内癌細胞は比較的小型で細胞, 核とも大小不同が少なく, 核形も類円形が多く, 核クロマチンは細顆粒状が主体で不均一性がみられず, ほぼ一様のパターンを示した.微小浸潤癌細胞は細胞, 核ともに大小不同がみられ, 核形も類円, 楕円と一様でなかった.核クロマチンは細顆粒状と粗顆粒状が混在し, 不均一なパターンを示した, これらの所見は病理組織でみられる細胞形態像とほぼ同様の所見であった.微小浸潤癌細胞は癌細胞と判断することに困難さはなかったが上皮内癌細胞は非常に異型性に乏しく, 癌細胞と判定するのに容易でなかった.上皮内癌細胞の判定は細胞診上慎重な観察が要求される.
  • 松村 公人, 堀江 昌平, 嶋田 晃一郎, 長井 千輔, 山田 喬, 佐藤 豊彦, 鈴木 容子, 沢田 勤也
    1983 年 22 巻 3 号 p. 539-544
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    迅速細胞診は手技が簡便で即診断が可能なことから特に末梢小型肺癌の擦過細胞診の成績向上を目的として全麻気管支鏡検査に導入し, 次の結果を得た.
    1.原発性肺癌95例のうち84例に陽性, 88.4%の陽性率を得た.
    2.この成績向上は, 肺癌切除例を対象に気管支鏡所見からみると末梢型無所見例が16.4%, 発生部位からは末梢発生例で18.3%, 腫瘍大きさでは末梢型3cm以下で14%とおのおの陽性率が増加し, 迅速細胞診が気管支鏡無所見の末梢小型肺癌の診断向上に期待通り有効であることが判明した.
    3.末梢小型肺癌は, X線TV透視下にフレキシブル気管支鏡をしてもその病巣擦過には技術上の熟練を要し, 迅速細胞診が技術ミスによるfalse negativeの防止に貢献した結果と思われる.
    4.迅速細胞診に応用されたShorr染色は, 癌細胞の判定の上でも組織型推定の上でも何ら支障を認めなかった.
  • 筒井 康子, 陣内 城司, 篠原 典夫
    1983 年 22 巻 3 号 p. 545-553
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    四肢軟部腫瘍のなかで最も頻度の高いとされる悪性線維性組織球腫 (以下MFHと略) の細胞形態を臨床診断の一助とする目的で観察した.なお一部骨原発MFHについてもあわせて検討した.
    昭和52年から56年の問に細胞診を行った骨腫瘍44例, 軟部腫瘍30例のうち, 軟部原発MFH6例, 骨原発3例について軟部吸引, また手術時の捺印標本を作製し, Papanicolaou, Giemsaおよび特殊染色としてPAS, 酸フォスファターゼ, アルカリフオスファターゼ染色を行った.
    細胞形態の特徴は線維芽細胞様細胞, 組織球様細胞, その中間を思わせる細胞が出現する.線維芽細胞様細胞の核は10ないし20μ前後である.全体的に核は小型で, 核形は類円形, 楕円形, 紡錘形でN/C比は中等度ないし大で核小体は0.1ないし3μと小さく, クロマチンは細顆粒状ないし細網状, クロマチン分布も均一で核中心性, 細胞質は有尾状を示し核縁肥厚も少ない.一方, 組織球様細胞の核形は楕円形ないし不整形, N/C比は中等度ないし大で20ないし70μの核を有する細胞は著明な大小不同を伴う.クロマチンは粗網状で分布は不均等, 核縁肥厚を示し, 15ないし30μの著明な核小体を有するbizarreな単核, 多核巨細胞もみられる.特殊染色は酸フォスファターゼ染色は全症例が陽性を示し, PAS染色で症例によって一部陽性を示すものもあり, アルカリフォスファターゼ染色も症例によってごく一部に陽性を示した.これらの細胞所見と臨床像を十分に参考にすれば, 治療方針に役立つ診断を下し得るとの結果を得た.
  • 鈴木 眞喜子, 佐藤 裕美子, 長谷 とみよ, 小室 邦子, 武田 鉄太郎, 松田 堯, 高橋 優, 斉藤 博之, 中村 克宏
    1983 年 22 巻 3 号 p. 554-558
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    嚢胞内乳頭癌2例, 異型乳頭腫4例, 乳頭腫5例を対象として, H-E染色病理組織標本上の細胞所見を検討した.参考として, 切除材料擦過塗抹標本上のPapanicolaou染色細胞と比較した.
    H-E染色病理組織標本の検討では, 核長径平均は, 乳頭癌が9.28μm, 異型乳頭腫が8.66μm, 乳頭腫が8.25μmであったが, 癌, 非癌ともに15μm以上の大型核は検出されず, 核の大きさだけで両者を鑑別するのは困難であった.
    1μm以上の核小体検出率は, 乳頭癌では67%, 82%であったが, 非癌では80%以上のものはなく, ほとんどが60%以下であった.2μm以上の大型核小体も, 癌例ではすべて20%以上の検出率であったが, 非癌例では大多数が10%に満たなかった.
    切除材料擦過塗抹標本のPapanicolaou染色細胞をH-E染色病理組織標本と比較すると, 核はやや大型で, 核小体検出率も高い傾向があったが, 乳頭癌, 異型乳頭腫, 乳頭腫それぞれの細胞像の性格はよく対応する結果であった.
  • 藤井 雅彦, 加藤 一夫, 田中 卓二, 大林 太, 武内 康雄, 高橋 正宜
    1983 年 22 巻 3 号 p. 559-566
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    手術材料のimprint smearを用いて, 螢光顕微測光法により51例の脳腫瘍の核DNA量を測定した.
    星状膠細胞腫や稀突起膠細胞腫では, 軽度に分布幅の拡大を示すものの正常大脳組織と同様diploid patternを呈した. 髄膜腫や神経鞘腫も同様に2C域にmodeを有するdiploid patternを示したが, 神経鞘腫ではしばしば8C域を越える核DNA量を有する細胞がみられた.
    異型星状膠細胞腫, 膠芽細胞腫は転移性腺癌と同様に, 2C域の細胞減少, polyploid, aneuploidの細胞の増加が顕著で, 8C域を越えて分布する細胞が多数認められた. 髄芽細胞腫においても2C域の細胞の減少, 4C域以上の細胞の増加が目立ったが, 8C域を越える細胞の割合は極めて少なく, 細胞の分布幅は他の悪性腫瘍に比較すると狭いことが認められた.
  • 捺印細胞とin vitro細胞との比較検討
    太田 博明, 野沢 志朗, ツォクロ ウイジャヤ, 新井 宏治, 塚崎 克己, 宇田川 康博, 栗原 操寿
    1983 年 22 巻 3 号 p. 567-577
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    外陰部の尿道口附近に原発した色素形成性悪性黒色腫の原発病巣と転移リンパ節の捺印標本および転移リンパ節より樹立した培養株細胞 (GAK) の細胞所見を解析し, あわせて文献的考察を行った.
    剥離細胞学的所見として, 腫瘍細胞内には多量のメラニン顆粒が認められ, ときに樹枝状の細胞質突起が認められた. また核はやや偏在傾向を示し, 核内には空胞および著明に増大した核小体が認められた.
    また, in vitroでの黒色腫培養細胞には, 多稜形細胞と紡錘形細胞が混在し, 両者に樹枝状突起が容易に観察された.細胞質のメラニン顆粒はPapanicolaou染色で茶褐色, メラニン顆粒およびその前駆物質はMasson染色で黒褐色, メラニン生成酵素であるtyrosinaseはdopa反応にて灰黒色に染まった.
    培養細胞の電顕的観察では, 相接する細胞間にはdesmosomeなどの典型的な細胞間結合はみられなかった. また細胞診上の特徴的所見である核内空胞は電顕で“intranuclear cytoplasmic invagination”として観察された.
  • とくに背景に出現する細胞像の特徴について
    鈴木 光明, 大和田 倫孝, 玉田 太朗
    1983 年 22 巻 3 号 p. 578-585
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    自験例の子宮体癌34例 (細胞学的検討対象は30例) の腟, 頸部細胞診標本を対象に, 核濃縮指数 (KPI), 成熟指数 (MI), 組織球の出現頻度, 正常子宮内膜腺細胞の出現頻度, 腫瘍性背景の有無につき検討した. その結果,
    1) 体癌例ではコントロールに比べ, 高エストロゲン環境を示す症例が多く, KPIが20%以上を示すものが半数近くを占め, MIも右方移動の傾向を示した. とくに閉経後11年以上の症例でコントロールとの差が顕著であった.
    2) 組織球の出現頻度については, 浸潤著明なものが20%にみられ, 中等度症例を加えると半数に認められた.
    3) 子宮内膜腺細胞クラスタの出現が比較的目立ったものは12%(閉経後症例に限る) であった.
    4) 顕著な腫瘍性背景の認められたものは10%であった.
    腟, 頸部細胞診で悪性細胞が同定されない場合でも, 以上のような所見-とくに閉経後にもかかわらず, 高エストロゲン環境が示唆されるとき-が認められた場合には体癌の可能性を考慮に入れ, 精査対象とすべきであり, これによって本来頸癌検診の目的で行われている腟, 頸部細胞診からも体癌の検出率の増加が期待される.
  • キューレットスタンプ法との比較
    長谷川 寿彦, 秋葉 隆三, 西野 るり子, 高野 純一, 和泉 滋, 筒井 章夫, 栗原 操寿, 鈴木 キクエ
    1983 年 22 巻 3 号 p. 586-593
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内腔擦過細胞採取器具のエンドサイト (以下End.) とキューレットスタンプ (以下Cur.) による187例の細胞像を比較し, 細胞採取器具として有用性を検討した.(1) 標本背景を清と赤血球その他で汚れたものに分け, 清はEnd.98 (52.4%), Cur.101 (54.0%) であった.(2) 細胞数を無, 少数, 中等度, 多数としてEnd.6 (3.2%), 78 (41.7%), 78 (41.7%), 25 (13.4%), Cur.6 (3.2%), 83 (44.4%), 76 (40.6%), 22 (11.8%), でEnd.=Cur.147 (78.6%), End.>Cur.23 (12.3%), End.<CUr.17 (9.1%) であった.(3) 細胞標本の良し悪しは診断不能, 診断可能, 良好標本としてEnd.9 (4.8%), 116 (62.0%), 62 (33.1%), Cur.8 (4.3%), 119 (63.6%), 60 (32.1%) でEnd.=Cur.156 (83.4%), End.>Cur.16 (8.5%), End.<Cur.15 (8.0%) であった.(4) 細胞診診断は陰性, 疑陽性, 陽性としてEnd.153 (86.0%), 9 (5.1%), 16 (9.0%), Cur.152 (84.9%), 11 (6.1%), 16 (9.0%) であった.(5) 内膜増殖症と内膜癌は17例ずつあり, 前者は陰性12 (70.6%), 疑陽性5 (29.4%), 後者は疑陽性1 (5.9%), 陽性16 (94.1%) であった.End.とCur.の差は細胞像の比較では認められなかった.End.は操作時に疼痛の少ないこと, Cur.は細胞採取と同時に組織も採取できることが利点であった.
  • その細胞像の解析とそれによる鑑別診断
    池田 正典, 福田 真樹, 伊藤 耕造, 手島 研作, 野田 起一郎
    1983 年 22 巻 3 号 p. 594-603
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣癌の的確な早期診断法はいまだ確立されていない.今回, 中間群9例を含む卵巣癌69例について, 細胞診による卵巣癌の早期診断の可能性について検討した.すなわち, それぞれの症例につき子宮頸部擦過物, 子宮腔吸引物, 腹水, 腫瘍割面捺印材料を用い, Papanicolaou染色, PAS染色, AIcian-blue染色, Mucicarmine染色にて細胞像の検索を行い, 組織像と比較検討した.その結果,(1) 子宮頸部擦過および子宮体内膜吸引スメア中に直接悪性細胞を証明し得た症例は40.6%であったが, 異型内膜細胞の出現, 閉経以後のestrogen ffect, 腹水細胞診の所見などを指標に加え総合的に判定すると, 69例中49例, 70.1%が細胞診所見によりcheck upされた (2) 腹水中の卵巣癌細胞の細胞化学的所見と組織化学的所見とを比較検討した結果, PAS, Alcianblue, Mucicarmine染色所見は細胞診による腫瘍の同定および中皮細胞, 食細胞との鑑別に重要であった.(3) 諸種の卵巣癌のうち漿液性嚢胞腺癌, ムチン性嚢胞腺癌, 未分化胚細胞腫, 類中腎癌については, その形態学的特徴, 細胞化学的特徴などから細胞診による組織型の同定が多くの場合可能であり, 胎児性癌も特異な細胞所見を示した.
  • 酵素抗体法および酵素細胞化学による観察
    野沢 志朗, 蔡 篤仁, 小島 雅彦, 鄭 成輝, 新井 宏治, ツォクロ ウィジャヤ, 宇田川 康博, 太田 博明, 栗原 操寿, 小松 ...
    1983 年 22 巻 3 号 p. 604-614
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌由来SKG-IIIa株細胞を用いて, alkaline phosphatase (ALP) の酵素蛋白および酵素活性を形態学的に観察した.
    1.満期産胎盤由来粗精製ALPで免疫した家兎抗血清よりProtein A-Sepharose CL-4BcolumnでIgGを得, これにhorseradish peroxidase (HRPO) を標識し, Sephadex G-200により得たHRPO標識家兎抗後期胎盤型ALP IgGを用いて酵素抗体直接法を行った.さらに, この結果を熱処理を併用した酵素細胞化学による結果と比較検討した.
    2.SKG-IIIa細胞には後期胎盤型ALPの活性および蛋白が存在した.遺伝子発現に関与するといわれているsodium butyrateを添加すると, 後期胎盤型ALPを有する細胞は減少し, その代わりに, 熱感受性ALPを持つ細胞が増加した.同様な作用を有するprednisolone添加では, 後期胎盤型ALPを有する細胞が少しく増加した.
    3.電顕的組織化学によりALP活性は細胞膜ばかりでなく, 蛋白合成に関与するroughendoplasmic reticulumやGolgi装置などにも認められた.
    4.以上の事実よりSKG-IIIa細胞には少なくともALP isoenzymeの二つの遺伝子が存在し, ALP酵素蛋白は, 蛋白合成のcentraldogmaに従って作られることが形態学的に示唆された.
  • 藤井 雅彦, 大林 太, 加藤 一夫, 高橋 正宜, 山田 弘, 坂井 昇
    1983 年 22 巻 3 号 p. 615-621
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    手術材料の塗抹細胞標本を用いて, 4例の頭蓋内germ cell tumorの細胞学的検索を行った.germinoma (症例1, 2) では, 核小体が明瞭でクロマチンに富み中心に位置する大型円形核と明るい胞体からなる大型細胞の集団を認めた.yolk sac tumor (症例3) では立方状ないし多角形の大型腫瘍細胞が孤立性ないし集合性にみられた.胞体は豊富で淡緑色に染まり, 核は類円形で核縁は肥厚し, 大型で明瞭な核小体が1-3個みられた.酵素抗体法によるα-fetoproteinの検索にて, 細胞内外に大小の陽性顆粒が認められた.teratoma (症例4) では間葉系由来の紡錘形細胞, 繊毛円柱上皮細胞, 扁平上皮細胞が主体をなしたが, 腫大した核とレース状の胞体を有する大型細胞も少数認められた.顕微螢光測光法による核DNA量の検索において, germinomaは2例ともtriploid patternのヒストグラムを, teratomaはdiploid pattemのヒストグラムを呈した.yolksac tumorではpolyploid, aneuploidの細胞の増加が顕著で, 極めて悪性な生物学的態度を示唆するpatternが認められた.
  • 長瀬 静江, 中西 功夫, 谷本 一夫, 川岸 徳子, 久冨 元治, 松原 藤継
    1983 年 22 巻 3 号 p. 622-627
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺に発生した粘表皮癌の穿刺吸引および捺印細胞診所見, 病理組織所見ならびに電顕所見を記載した.患者は44歳女性, 前頸部の腫瘤と頸部リンパ節の腫脹を主訴に来院した.穿刺吸引細胞診では少数の平面的配列をとる扁平上皮系異型細胞集団が認められ, 扁平上皮癌が疑われた.甲状腺癌とそのリンパ節転移の診断のもとに甲状腺亜全摘術と頸部リンパ節廓清術が行われた.腫瘍は7×5×3cm大で, 甲状腺の右葉および峡部を占居する充実性灰白色の腫瘍であった.腫瘍の捺印細胞診では, 裸核状の異型細胞, 角化を示す異型細胞や, 平面的に配列するintermediate cellの集団が認められた.角化細胞や粘液染色陽性の細胞がintermediate cellの細胞群のなかに同定されたので粘表皮癌と診断された.組織学的には典型的な粘表皮癌であった.電顕的検索では, 多数のトノフィラメントをもつ扁平上皮細胞, 分泌顆粒と微絨毛を備えた粘液分泌細胞と, これらの細胞間に介在するintermediate cellが同定された.唾液腺には腫瘍は認められなかったので甲状腺原発性粘表皮癌と考えられた.
  • 伊藤 秀克, 塩崎 久弥, 松陰 宏
    1983 年 22 巻 3 号 p. 628-632
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性で胸痛と呼吸困難で来院し, 胸水を指摘されて入院した.胸水細胞診と胸膜生検によりPleuritis carcinornatosaと診断されたが, その後呼吸不全により死亡し, 剖検により胸膜のmalignant mesothelioma (diffuse, mixedtype) と診断された.
    胸水細胞の塗抹標本はPapanicolaou染色, Giemsa染色, PAS染色, Alcian blue染色, Toluidineblue染色, Mucicarmine染色, Hyaluronidase消化試験などが施された.その結果, 中皮腫細胞は,(1) マリモ状の集塊をつくる,(2) 核は細胞の中央にある,(3) 細胞質に粘液空胞をもたない,(4) N/C比は大きくない,(5) 核小体は比較的小さいなどの特徴があり,(6) PAS染色で細胞辺縁部が顆粒状に染まる,(7) Mucicarmine染色は陰性である,(8) Hyaluronidase消化試験で染色性低下があるなどの所見が認められた.
  • 岡本 忠, 難波 美津雄, 東 宗徳, 武藤 邦彦, 池口 祥一, 信田 重光, 佐藤 豊彦, 山田 喬
    1983 年 22 巻 3 号 p. 633-637
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本症例 (65歳, 男) は, 肝吸虫症と肝硬変および肝細胞性肝癌とが合併した症例であった.術前のERCP洗浄細胞診, 超音波吸引細胞診より, 肝吸虫卵, および肝癌細胞が検出され, 術前より肝吸虫症と肝癌との関連などに示唆が得られた.術後剖検まで追跡し, 得られた細胞診所見の裏付けと病理組織所見より, 推論と考察を加えた.
  • 木村 章彦, 平岡 裕, 工藤 浩史, 飯塚 保夫, 古賀 成昌
    1983 年 22 巻 3 号 p. 638-641
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    直腸の粘膜下腫瘍例に対し, 術前の穿刺吸引細胞診により平滑筋肉腫と診断したので, その細胞所見を中心に述べ, さらに消化管の粘膜下腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の有用性についても述べた.穿刺吸引細胞診は肛門鏡にて直視下に施行した.細胞所見では, 辺縁が比較的明瞭で中央に核が位置する紡錘形細胞, 大小不同が著明で類円形の細胞, および裸核状となった細胞を孤立散在性に, 一部では集合性に認めた.異型性の強いものでは, 核膜の陥入・切れ込みも認めた.クロマチン分布は, 粗から密までさまざまであった.切除標本捺印細胞診でも, ほぼ同様の所見が得られた.
    消化管粘膜下腫瘍の質的診断を行うには, 目的とする細胞の確実な採取が望まれるが, 腫瘍が正常粘膜で覆われている場合には, 通常の生検鉗子にて粘膜下層から固有筋層に至るまでの十分な組織片の採取は困難で, 組織診はもとより, 生検材料の捺印細胞診にてもその診断は不可能なことが多く, このような場合には, 穿刺吸引法による細胞診が有用と考えられる.
  • 西川 秋佳, 杉江 茂幸, 青木 久枝, 堤美 穂子, 高橋 正宜, 下中 恵美子, 藤広 茂, 栗山 学
    1983 年 22 巻 3 号 p. 642-646
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膀胱原発のparagangliomaは非常にまれな腫瘍で, 血尿・高血圧・排尿時発作を特徴的症状とするが, 血尿を示すにもかかわらず, 自然排尿中に腫瘍細胞の剥離を認めたとの報告例は, これまでみられない.今回われわれは, 血尿中に腫瘍細胞を確認し得た膀胱paragangliomaの第1例目を経験したので, 細胞所見について検討し, 文献的考察を加え報告した.
    症例は肉眼的血尿を主訴とする21歳の女性で, 自然排尿における細胞診にて, 比較的小型であるが, 濃染性の肥大核と辺縁不明瞭な細胞質を有する異型細胞が孤立性にあるいは集塊として認められた.膀胱部分切除術が施行され, 腫瘍は病理組織学的にクロム親性反応陽性を示すparagangliomaであった.
  • 南雲 サチ子, 曾根 啓子, 松田 実
    1983 年 22 巻 3 号 p. 647-650
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    30歳女性の乳腺腫瘤に対し, 穿刺細胞診を行い, 硬癌を疑ったが, 組織学的には悪性葉状嚢胞肉腫であった1例を経験したので, その細胞所見について報告する.
    腫瘤穿刺により得られた材料には, 赤血球を背景にところどころに上皮細胞集団とその周囲に裸核状の細胞を散在性に認め, 一部に紡錘形の細胞が結合性の乏しい集団として少数認められた.上皮細胞集団では, 大小不同の少ない細胞が密に結合し, 核は円形で, 核縁円滑, クロマチンは顆粒状を呈していた.散在性に出現している裸核状の細胞では, 核形不整が著明で, クロマチンは増量し核小体も著明であった.結合性の乏しい集団では, 細胞境界が不明瞭で, 核形不整があり, クロマチンの増量した紡錘形の核をもつ細胞が不規則な配列を示していた.
    本症例では, 細胞塗抹量の少ないこと, 裸核状の核形不整を示す細胞が多かったことから, 硬癌を疑ったが, 細胞の結合性が乏しいこと, 紡錘形の細胞の出現に注意すれば, 細胞診による本腫瘍の診断も可能であろうと考えられた.
  • 堀内 文男, 武田 敏, 安良岡 勇, 計良 恵治, 畠山 良紀
    1983 年 22 巻 3 号 p. 651-656
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    66歳女性の恥丘部に発生した隆起性腫瘤で, 摘出時, 腫瘤の割面より捺印標本を作製し, その細胞像を, 光顕および電顕的に分析した.パパニコロ標本では, 腫瘍細胞は, 全体に孤立性に出現している.型は類円形-不整型が主体をなし, 大小不同性を示している.大型細胞は, すべてが多核形成で, 多核細胞の出現頻度の高いことが一つの特徴である.細胞質は, ほとんどが, ライトグリーン好性でなかに空胞所見を示すものも散見された.単核, 多核ともに核は一側に偏在するものが多く, 特に多核のものは, 大組織球に類似している.核質は全体に少し粗く, 不均等分布を呈している.核縁の肥厚は少ないが, 不整が目立つ.裸核状の小型紡錘型核も散見されるが, 細胞質は明瞭でない.核小体はしばしば認められるが小さい.核内には, 空腔所見 (封入体様構造) が高頻度に出現し, 注目された.その大きさと, 分布をみると,-4μm, 16%, 5-9μm, 45%, 10-14μm, 37%, 15-19μm, 2%と, 大小不同を示している.型は不整形は少なく, ほとんどが類円型で, その辺縁も, シャープである.細胞化学的には, 腫瘍細胞はAlkaline phosphatase活性が, 強陽性所見を示した.
  • 白井 英一郎, 林 茂, 石井 厚子, 宮沢 明子
    1983 年 22 巻 3 号 p. 657-661
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近われわれは, cervical adenocarcinomaの1例を経験したが, 本例は, 腺癌確定診断5年10ヵ月前に本院を受診しており, 当時の細胞診でパパニコロー変法クラスIの判定を受けていることがわかった.そこでこの細胞診標本を改めて詳細に検索したところ, 1箇所に腺細胞由来の異型細胞と思われる細胞群を発見した.そこで, この当時の細胞診所見を考察するとともに, 腺癌確定診断時の細胞診所見とを比較し, 若干の考察を行ったので, ここに報告する.
  • 74歳の細胞診で発見された稀有な1例
    山際 裕史, 川原 重治, 伊藤 房郎
    1983 年 22 巻 3 号 p. 662-665
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    絨毛上皮腫は妊娠後, 胞状奇胎や破壊性胞状奇胎に続発するのがふつうで, 妊娠後1年以内に発病するものが多いが, 10年以上を経て発病するものも3%くらいあるとされる.一方, 閉経後の高齢者で絨毛上皮腫がみられるものがまれにあるが, 70歳をこえてみられる例はごくわずかで, これらの例では異所的絨毛上皮腫が多い (肺, 胃など).
    われわれは74歳の女性で, 妊娠, 分娩後56年, 閉経後32年を経て性器出血を訴え, 細胞診で悪性所見が得られたため, 子宮および同附属器切除を行い, 右卵管に絨毛上皮腫を見い出した稀有な症例を経験したので, 若干の考察を加えて報告した.
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