日本臨床細胞学会雑誌
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22 巻, 4 号
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  • 杉森 甫, 原之園 邦子, 佐藤 晶子, 藤 幸子, 高尾 みつ江, 樋口 千鶴子, 手柴 美佐枝, 小森 恵子, 柏村 正道
    1983 年 22 巻 4 号 p. 691-695
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    福岡県対ガン協会では, 昭和51~55年に204,186名の頸癌検診を行った.これより扁平上皮癌166例, 上皮内癌102例, 腺癌4例, 体部腺癌1例を発見したが, 上皮内癌を含む頸癌発見率は初診者群で0.24%, 再診群で0.09%であった.年齢別にみると, 初診群では高齢者における発見率が高いが, 再診群では必ずしもこの傾向はなく, 高齢者の集検受診は自覚症状が全くない人ばかりではないことを推測させた.
    再診癌患者130例について過去の受診歴を調べると, 1回受診57例, 2回受診31例, 3回受診18例, 4回以上受診24例であった.このうち, 26例 (20%) は過去に細胞診異常を示しており, 二次精検に問題があったと考えられる.癌発見直前回の陰性スメアを再検すると, 扁平上皮癌で30例中7例, 上皮内癌で21例中7例に異常細胞が発見された.これより, われわれの検査室における誤陰性率は9.8~12.5%と推定された.前回受診との間隔が4年以上あくと上皮内癌が浸潤癌に比して極めて少なくなり, 早期発見の実はあげられないと考えられた.またclassIII例の追跡が重要であることが示された.
  • 加藤 良樹, 上坊 敏子, 蔵本 博行
    1983 年 22 巻 4 号 p. 696-702
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    原発性卵巣癌症例57例の子宮腔内吸引細胞診について検討し以下の結果を得た.
    1) 施行率は57例中47例, 82.5%であった.
    2) 陽性率は47例中13例, 27.7%であった.8例は子宮腔内吸引細胞診のみ陽性で, 他の5例は膣部・頸管細胞診でも陽性であった.
    3) 腹水細胞診陽性17例中7例, 41.2%は, 子宮腔内吸引法でも陽性であった.逆に吸引法陽性13例中腹水陽性は11例である.
    4) 吸引細胞診に現れやすい組織型は漿液性および低分化腺癌であった.
    5) 腹水中の細胞との比較では, 核径で子宮腔内吸引細胞診の方が大きい傾向を示した.
    6) 子宮体癌症例との比較では, 背景がきれいで, 出血や壊死物質の出現頻度が低く, その核径は大なる傾向を示した.
    本法が卵巣癌の有力な形態診断法であり, その診断に当たってまず行ってみるべきことを指摘したい.
  • 佐久間 達朗, 秋葉 隆三, 西野 るり子, 和泉 滋, 長谷川 寿彦, 筒井 章夫, 栗原 操寿
    1983 年 22 巻 4 号 p. 703-710
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    閉経後婦人の細胞診では良性, 悪性の判定の困難な細胞が出現することがしばしぼ経験される.閉経後婦人1,638名のうち, コルポスコピー, 組織診に異常がなく細胞診のみに異型細胞を認めた症例を1年間追跡し, 細胞診に見合う組織的裏付けの得られなかった54例を選定し, 細胞診過評価例として検討した.54例の内訳はクラスIIIa44例, クラスIIIb3例, クラスIVおよびV7例である.
    1) クラス分類別の過評価の発生率は, クラスIIIa65例中44例 (67.7%), クラスIIIb48例中3例 (6.3%), クラスIVおよびV75例中7例 (9.3%) であり, 全体としては1,638例中54例 (3.3%) であった.
    2) ホルモン細胞診による内分泌背景が高度な萎縮像になるほど, 過評価例の増加する傾向が認められた.
    3) 過評価例の細胞像は, 曇りガラス状クロマチンの腫大核を有する扁平上皮細胞と, 濃染核を有する頸内膜細胞が多く, そのほかにはinspissated mucus, tissue repair, parakeratosis, Koilocytosisであった.
    4) 過評価例の再検討により, 18例 (33.3%) は陰性としてもよい細胞像であったが, 36例 (66.7%) は高齢者の細胞診では避け得ない過評価例と考えられた.
  • 婦人科細胞診の成績向上のために
    岩崎 統, 鈴村 博一, 平田 守男, 増淵 一正
    1983 年 22 巻 4 号 p. 711-719
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    婦人科細胞診の精度向上のため癌研婦人科における細胞診偽陰性例, 偽陽性例について検討を加えた
    0期を含む頸癌1,525例中偽陰性は55例 (3.6%) でうち80%は0期癌であった.
    偽陽性は外来患者約53,000例中クラスIIIa216例, IIIb34例, IV18例, V9例の計277例で0.5%を占め, 同時期の癌を含めた陽性例1,747例中15.9%を占めている.
    偽陰性については, 病巣が小範囲の場合, また膣内操作後1ヵ月以内の再採取例に多くみられ, 細胞診再検査の時期を考慮する必要を認めた
    偽陽性については真の細胞診偽陽性の場合と細胞診は真の陽性で組織診が偽陰性の場合とを明確にしなければならない.初期病変の場合外来組織診のみでは的確な病巣を切除することが困難な場合があり, 当科では0期癌のうち約12%の組織診陰性がみられ, これらは円錐切除により確定診断された
    外来組織診は必ずコルポスコピー下での狙い切除をすべきで, さらに疑わしい場合は円錐切除により確定する必要がある.さらに, 細胞診陽性, 組織診陰性例については長期間にわたるフォローアップが重要である
  • 根本 裕樹, 岡島 弘幸, 鈴木 忠雄, 松岡 規男, 飯田 萬一, 早淵 洋子, 田村 猛, 高橋 亨正
    1983 年 22 巻 4 号 p. 720-725
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1976年1月以降7年間に神奈川県立成人病センターで行った体癌80例の吸引細胞診について次の結果を得た.
    1) 上記症例の細胞診結果は, クラスV60例, クラスIV10例, クラスIII6例, クラスII3例, クラスI1例で, クラスIII以上は76例95.0%であった.
    2) 中性白血球の平均核径をスケールとして用いることを提案した.これに比べると, 正常内膜細胞の核径は0.8~1.0倍, 体癌は1.0~1.2~1.5倍のものが大多数を占め, 2倍を越えるものもある.増殖症では0.8~1.2倍のものが多く2.0倍を超えるものは少ない.
    3) 体癌スメアの背景は壊死性成分を示すことが多いが, このなかから変性した癌細胞を検出することが, 診断上重要である.
    4) 核クロマチン所見単独では癌を区別する特徴に乏しい.また核小体は重要であるとはいえ, すべての細胞に必ずみられるとは限らない.集塊のモード, 背景所見, 核径を総合して判定する必要がある.
  • Osamu TANEDA
    1983 年 22 巻 4 号 p. 726-738
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    実験対象に子宮内膜分化型腺癌の初代培養細胞を用い, 細胞増殖と細胞表層荷電密度との関係を, 細胞電気泳動度をパラメーターとして検討した.
    また, 同調培養細胞セル・サイクル各期における荷電密度の変化, これに及ぼすステロイドホルモン, 抗癌剤などの影響を検討した.
    1) セル・サイクルと荷電密度との関連: 分裂期で荷電密度は, 著明に増加する.
    2) 培養メヂウム添加ステロイドホルモンの影響: 細胞増殖ならびに荷電密度はestrogen添加時増加し, progesterone添加時減少した.testosteroneはprogesteroneと類似傾向を示した.
    3) セル・サイクル各期におけるステロイドホルモンの影響: estrogenは, 荷電密度をDNA合成期において著しく高め, progestefoneは, おもにG1期において荷電密度を低下させる.testosteroneは, セル・サイクルのいずれにおいても, 荷電密度を低下させ, cortisolは, 荷電密度に対して, 影響を認めなかった.
    4) 抗癌剤の作用: neocarzinostatinがG2期で, actinomycin-DがS期で, それぞれ荷電密度を低下させることを認めた.
    5) 子宮内膜癌細胞の特異性: 対照肺癌培養細胞の荷電密度に及ぼすステロイドホルモンの影響は, 内膜癌細胞のような特異的変化は, 認められなかった.
    以上のことより, 臨床上, 細胞表層荷電密度を, 測定することにより, 細胞増殖状態を知りうる, 可能性があると考えられる
    また従来の子宮内膜癌治療法において, ひとつの指標となる可能性があると考えられる.
  • 三比 和美, 藤原 睦憲, 戸谷 恵美子, 畠山 重春, 沢森 ちさと
    1983 年 22 巻 4 号 p. 739-743
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    昭和53年12月より昭和56年11月まで埼玉県立がんセンターで施行された骨髄生検は102例で, この時同時に捺印細胞診を施行し, その診断能力について, のちほど報告されてくる骨髄組織報告結果と対比し検討してみた.組織診断の陽性は102例中25例あり, これら陽性例の全例が捺印細胞診も陽性であった.しかしながら, 1例において薬剤誘発性顆粒球減少症を捺印細胞診および組織診いずれも急性白血病と誤診したケースがあった.これに対して, 偽陽性は73例の組織診陰性例中捺印細胞診陽性が4例 (5.5%) 存在し, いずれも非ホジキンリンパ腫症例であった.以上, 骨髄の捺印細胞診は診断が迅速で, なおかつ優れた診断能力を発揮するところから, 急を要する治療方針の決定には大いに利用すべき検査法と思われた.
  • 特に腺癌細胞と組織球との鑑別について
    小林 晏, 馬場 哲郎, 坂井 邦彦
    1983 年 22 巻 4 号 p. 744-752
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    体腔液細胞診において腺癌細胞を組織球と鑑別するため, エステラーゼ染色を行いその有用性を認めた
    1. 組織球では, 多数の茶褐色の顆粒が胞体内に密にみられたが, フッ化ソーダによる阻害試験を行うと完全に阻害され消失した.一方, 腺癌細胞と中皮細胞では通常陽性顆粒を全く認めないか, 時に認めても数えられる程度 (約30個) で容易に組織球と鑑別できた.しかもこれらの少数の顆粒はフッ化ソーダにより全く阻害されなかった.
    2. フッ化ソーダで阻害される褐色顆粒を有する細胞の数は, ラテックス粒子 (墨粒) 貪食細胞の数と一致するか幾分少ない.これは異物を胞体内に取り込む能力を持つ細胞でも, その幼若性やライソゾーム顆粒の崩壊によってエステラーゼ酵素を保有しない細胞もあると考えられた.
    3. これらの細胞は走査型電顕像では特有の膜状のひだからなる表面構造を示し, 透過型では多数の長い微絨毛と胞体内に多数のライソゾーム顆粒を保有していた.
    4. 解剖材料を用いていろいろな臓器の捺印標本を同様の方法で染めると, 扁平上皮, 移行上皮, 腎尿細管上皮, 肝細胞などにおいて, 多くてもわずかの陽性顆粒しかみられず, しかもフッ化ソーダで阻害されなかった.
    以上のことから非特異性エステラーゼ染色のそのフッ化ソーダ阻害試験の併用は, 組織球に極めて特異的な染色法であり, 体腔液中の腺癌細胞のみならず, 肝細胞癌, 扁平上皮癌, 移行上皮癌, 悪性中皮腫など他の悪性細胞との鑑別に有効であると考えられる.
  • 特に確診困難例を中心に
    工藤 浩史, 平岡 裕, 木村 章彦, 鎌迫 陽, 飯塚 保夫
    1983 年 22 巻 4 号 p. 753-760
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近5年間に167例の乳腺疾患に対して穿刺吸引細胞診を施行したので, その成績と確診困難例に対する細胞学的検討を行い, 報告した。これらの症例の内訳は悪性疾患40例, 臨床的, 細胞学的あるいは組織学的に良性とされた症例127例である.
    悪性疾患に対する成績をみると初回検査で78%, 再検で88%の正診率を得た.組織型別成績では硬癌の正診率が79%とほかの組織型のものより低かった.腫瘍の大きさと正診率の問には相関関係はみられなかった.
    良性疾患についてみると組織学的診断がなされたものは127例中8例であった.この8例中5例が細胞診では悪性あるいは悪性疑と診断されていた.
    retrospectiveな検討によっても確診困難と思われた症例が良性疾患で2例, 悪性疾患で2例みられた.これらの細胞像を核径, 核小体数核小体の大きさなどについて比較したが, 穿刺吸引細胞像においては良性・悪性両疾患群の問に有為の差はみられなかった.しかし, 良性・悪性の鑑別点をあげると細胞の散在性と大小不同性の2点が指標になるとの所見を得た.
  • 腺癌細胞の細胞形態と手術予後
    南雲 サチ子, 宝来 威, 松田 実, 建石 竜平
    1983 年 22 巻 4 号 p. 761-768
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肺腺癌の手術予後を予測する目的で, 細胞診での腺癌細胞の形態学的特徴と, 手術予後との関連について検討した.
    原発性肺腺癌の治癒切除例で, 2年以内の遠隔転移による再発死亡例8例 (早期再発群) と, 5年以上の長期生存例10例 (予後良好群) について, 術前に直接病巣採取により得られた腺癌細胞の形態を観察した.
    早期再発群には, 核が大きく, 類円形で, N/C大, クロマチンは顆粒状で核内に密に均等分布し, 核小体は大きく数個認める腺癌細胞が多く出現した. 他方, 予後良好群では, 核は小さく, N/C小, 核はおれまがり状を呈し, クロマチンは疎で不均等に分布し, 核小体は1個で小さい腺癌細胞が出現した.
    早期再発群に多く出現した細胞を悪性度の高い腺癌細胞, 予後良好群に多く出現した細胞を悪性度の低い腺癌細胞とした. これらの細胞の出現率から, 85例の腺癌症例について悪性度判定を行い予後を予測したところ, 手術切除成績, 術後生存率は, 悪性度段階と相関した.
  • 坂本 穆彦, 木原 和徳, 鷲塚 誠, 河合 恒雄, 平田 守男, 都竹 正文, 原島 三郎
    1983 年 22 巻 4 号 p. 769-774
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    前立腺穿刺吸引細胞診と針生検が同時に施行された61例につき, 細胞像・組織像の対比を行い, 以下の結果を得た.
    細胞診材料はFranzén吸引生検器具により経直腸的に, 組織診材料はSilvermann生検針により経会陰的に採取された.
    生検組織診では, 腺癌21例, 非癌40例であり, 細胞診では陽性13例, 疑陽性4例, 陰性44例であった.両者の間の診断不一致の頻度は13.1%(8/61) であった.細胞診陽性例の正診率は100%(13/13), 陰性例の正診率は84.0%(37/44) であった.
    組織学的分化度と細胞診を対比させると, 高分化腺癌8例中, 陽性3例, 疑陽性1例, 陰性4例, 低分化腺癌8例中, 陽性6例, 陰性2例であった.高分化腺癌に偽陰性が多い傾向がうかがわれた.
    全症例における細胞診, 組織診の一致率は86.9%(53/61) であり, 以上の結果は前立腺癌診断法としての穿刺吸引細胞診の有用性を支持する.
  • 山岸 紀美江, 渡部 庸一, 日吾 雅宜, 上井 良夫, 纐纈 博, 田嶋 基男
    1983 年 22 巻 4 号 p. 775-779
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    パパニコロ染色過程におこる癌細胞の混淆について, その源となった検体と被害を受けた検体とを観察し若干の知見を得, 有効な予防法を工夫したので報告する.
    1. 癌細胞を染色過程中に剥離しやすい検体は頻度の高い順に, 体腔液, 尿, 腟脂膏, 肺針穿刺などであった.
    2. 癌細胞が染色過程中にほかの検体から付着しやすい検体は頻度の高い順に喀痰, 尿, 腟脂膏, 胸水, 気管支洗浄液であった.
    3. 固定, 染色終了後に使用した液を濾過するとすべての液から剥離した細胞が認められた.
    4. 固定, 染色液の上層, 中層に浮遊している剥離した細胞がほかの標本に付着しやすい.
    5. ほかの検体から付着した癌細胞の形態は, 癌の原発巣, 組織型にかかわらず, ほぼ類似していた.すなわち核細胞質比の大きい, 円~類円型の直径15μ内外の細胞が多かった.
    6. 混淆の防止には固定液槽の個別化, 細胞接着剤の利用, スプレー固定の利用, 染色籠の改良, 染色順序の考慮などが有効であった.
    7. 混淆した細胞の同定には同日の陽性例を同一人が通覧して行う必要がある.
  • マルチウェル・スクリーニング法と映画法による分析
    小松原 利文, 信田 重光
    1983 年 22 巻 4 号 p. 780-791
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    三種類のヒト培養癌細胞 (HeLa, 乳癌: HBC4, HBC5) に対する抗癌剤の影響が濃度や温度により, いかに変化するかをマルチウェル・スクリーニング法と映画法を用い, 定量的, 経時的に検討した.その目的は, 温熱化学療法の理論的基礎を確立し, 臨床への応用を企図するものである.
    温度は, 25, 37, 43℃ に分け, 抗癌剤は, ADR, 5FU, MMC, NCSを使用した.
    この実験によりつぎのような結果を得た.
    (1) 培養癌細胞の種類により, 温度感受性に相違がみられた.
    (2) 抗癌剤の種類により, 温熱化学療法剤としての効果に相違がみられ, 温熱との併用効果が最も優れていたのはADRであった.
    ADRはRNA合成阻害を主体とするのに対し, 他剤はDNA合成阻害を主体とする.温熱療法はRNA合成阻害を主体とすると考えられている.すなわちADRと温熱療法は阻害点が一致するため, 温熱化学療法により, 両者が相乗的に働き, 細胞に著しい核酸合成阻害作用をもたらしたと推察した.
    われわれが開発した方法は, 操作が簡単な上, この方法を用いれば, 悪性腫瘍の術後補助療法および手術不可能な患者に対し, より効果的な温熱化学療法剤の選択が可能である.
  • Crush法による細胞診断
    畠 栄, 山元 しのぶ, 福屋 宗, 日浦 研哉, 津嘉山 朝達, 調 輝男, 中川 定明
    1983 年 22 巻 4 号 p. 792-800
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1971年から1982年までの12年間に経験した脳神経腫瘍のうち, crush細胞診を併用して診断された原発性脳腫瘍74例について検討した。
    Crush細胞診は, 術中迅速診断を求めて送られてくる外科標本から簡単に細胞診用の標本が作製でき, 凍結標本に比べて短時間で明瞭な細胞像が得られるため, 脳神経系腫瘍の診断に凍結切片標本と併用して用いることが有用であると伴断した.
  • 清宮 和之
    1983 年 22 巻 4 号 p. 801-812
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    通常細胞診に使用されている95%エタノール固定-Papanicolaou染色標本, ドライヤー冷風乾燥-May-Giemsa染色標本にみられる細胞の超微構造の保存状態を, 染色前, 染色後に分けて, 標準的電顕標本作製の走査電顕像, 透過電顕像と比較検討した.材料はヒト胃腺癌由来の樹立細胞株 (MKN-45株) を用い, 対照群 (I群) は, 走査電顕用としてはGlutaraldehyde単独固定を, 透過電顕用としてはGlutaraldehyde・オスミウム酸二重固定を行った.
    Papanicolaou群 (II群), May-Giemsa群 (III群) とも走査電顕用には, 無染色 (a群)・染色後 (b群) のアルコールによる脱水終了後, 透過電顕用としては, 浸水処理終了以後は, 対照群と同様に標準的な電顕用の処理・操作を行った.
    IIa群では, 細胞外観はほぼ保存されているが, 細胞突起, 細胞内小器官などは構造を殆ど留めず, 細胞質および核内に空隙形成が目立った.これらの変化はIIb群ではより高度であった.
    IIIa群では, 細胞は扁平化するが, 単位膜の保存がよく, 核および細胞質の超微形態はII群に比しよく保存されていた.IIIb群では細胞全体の電子密度が増し, 微細構造は不鮮明であった.
  • 小川 雅利, 鈴木 光明, 玉田 太朗
    1983 年 22 巻 4 号 p. 813-818
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    われわれは, 自治医科大学病院開院以来8年間に4例の原発性卵管癌を経験した.このうち卵巣癌との重複癌の1例を除いた3症例について, その細胞所見をretrospectiveに検討した.その結果,
    1) 細胞の短径/長径比は, 0.89, 0.94, 0.95, といずれも1に近い値を示し, また核のそれは, 0.81, 0.75, 0.95であった.
    2) クラスタについては, いずれの症例も腺房状配列が最も多数を占め, 一方, 樹枝状配列は, ほとんど認められなかった.
    3) 核小体は通常1個で小型のものが多く, 2.5μ 以上の大型核小体はまれであった.
    4) 細胞診上psammoma bodyが多数認められた卵管癌症例を経験した.
    以上の結果から, 卵管癌では円形もしくは丈の低い細胞が主体を占めることが示唆された.また.クラスタの出現様式などの点で, 若干の特徴が認められた.
  • 宗岡 煕, 柏村 正道, 塚本 直樹, 斉藤 俊章
    1983 年 22 巻 4 号 p. 819-822
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    26歳の時, 胞状奇胎にて子宮内容除去術を受けその後順調な経過であったが, 29歳の時, 妊娠31週にて右乳房の腫瘤に気づき, その穿刺細胞診で絨毛癌と診断された症例について報告する.細胞学的には2種類の異型性の強いcytotrophoblastとsyncytiotrophoblastがみられ絨毛癌を強く疑った.組織学的にも壊死性の背景に2種類の異型trophoblastがみられ絨毛癌と診断された.その後妊娠34週で帝王切開術が行われた.胎盤は, 正常の外観を有していたが71箇所の亜連続切片にて11箇所に非連続性の絨毛癌の小病巣が認められた.帝王切開7日目に肺転移巣が認められ19日目に脳転移による出血にて死亡した.
  • 手術後に発生したヘルペス外陰炎ならびにヘルペス膀胱炎
    和田 順子, 河西 洋, 篠崎 百合子, 木村 祐子, 高橋 文子, 貞永 明美, 重田 幸子
    1983 年 22 巻 4 号 p. 823-827
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    興味あるヘルペス感染症の3例を報告した.症例1は36歳, 症例2は44歳ともに腹式子宮単純全摘出術後13日目, 9日目に外陰部や肛門周囲の掻痒感, 疼痛, 発疹を生じた.補体結合反応によってHSV-1がその原因であることが判明した.手術というストレスが引き金になって発症した再発感染と考えられた.
    症例3は36歳, 発熱, 歩行および排尿困難を訴えて来院.外陰部から肛門にかけて発赤, 浮腫, 出血, 水庖形成, びらん, 潰瘍などの高度で多彩な炎症所見を呈していた.排尿の目的で留置カテーテルを使用したが, その尿細胞診にもヘルペス感染細胞が出現した.
    外陰部捺印細胞診所見は炎症性背景のなかに巨大細胞が散見された.多核形成, 核の押合い, 核内封入体形成, 核内構造のgrey degenerationが認められた.尿細胞診所見も移行上皮の核にすりガラス様のクロマチン分布が明らかであった.ヘルペス膀胱炎は, 文献上, 本邦2例目の報告である.
    ヘルペス外陰炎にはポビドンヨード液を使用した.そのほか粘膜麻酔剤の塗布, coolingなどの対症療法を行って効果があった.
  • 佐川 正, 山下 幸紀, 林 博章, 牟礼 一秀, 清水 哲也, 清野 邦義
    1983 年 22 巻 4 号 p. 828-831
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    頸部上皮内腺癌は, 異形成や上皮内癌と高率に合併することが報告されているが, 異形成のほかに, 体部に高分化型腺癌を伴っている症例を経験したので報告する.
    頸部擦過細胞診および頸部組織診により, 子宮頸部に上皮内腺癌と扁平上皮異形成が認められ, 同時に施行した子宮内膜診で, 子宮内膜に高分化型腺癌が認められた.
    術後組織検査では, 頸部に上皮内腺癌と異形成が存在し, 体部後壁に高分化型乳嘴状腺癌が限局していた.頸部と体部の病変の問には, 組織学的には全く連続性がなく, 組織形態も違うことにより, 全く別個に存在している病変と考えられた.
  • 新谷 一郎, 松本 容子
    1983 年 22 巻 4 号 p. 832-837
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    45歳で子宮筋腫と右卵巣のう腫で子宮腟上部切断術および右附属器別出術をうけた既往のある52歳の婦人が, 8ヵ月前よりるい痩と腹部膨隆をきたし来院, 内診所見で左側の卵巣が鵞卵大のう腫状でかつ小骨盤腔左下壁に一部癒着し, また大量の腹水貯留を認めそのダグラス窩穿刺によって帯黄透明のゼリー状粘液を得て卵巣粘液のう腫に続発した腹膜偽粘液腫と診断した.
    この穿刺液はPAS染色, アルシアン青染色で強陽性を示し, なかにわずかな組織球, 線維細胞と腹膜上皮由来の中皮細胞を認めたが粘液産生細胞はみられなかった.開腹手術にて全腹膜面および腹腔内全臓器の漿膜面にゼリー塊状の腫瘤を認め, その捺印細胞診ではシート状の円形細胞や粘液産生の認める小型印環細胞, および塊状の粘液産生のある大型細胞集団を認めた.そのうち大型細胞集団は中心部は軽度重積しており, 核小体は不明で核は軽度に大小不同があり, 一部にはMitosisを示すものもあるが細胞形態学的には悪性所見に乏しかった.
    一方, CTでは原発卵巣のう腫は明瞭であり, 肝や脾と腹水との境界は直線的でなく凹凸を示し, また肝や脾に腫瘍像がないため貯留液が漿液性腹水でないことを示し, 粘液貯留の診断の一助となるように思われた.
  • 阿倉 薫, 畠中 光恵, 泉 好宣, 名取 弘道, 神尾 守房, 田平 公子, 竹中 正治, 川井 一男
    1983 年 22 巻 4 号 p. 838-844
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    急性腎不全で治療中の5歳女児の尿中に, 極めて多彩な核内封入体細胞を認め, Polyoma virus感染を疑った1例を経験した.核内封入体細胞の核は類円形で腫大し, 直径11~18μmであった.核膜に不規則なクロマチン集塊が付着していた.細胞質は小胞状で変性傾向が強く崩壊脱落状で奇妙な形態, または裸核状のものが多かった.核内封入体は濃青緑色から青緑色でスリガラス様あるいは, ガラスビーズ様にみえ極めて多彩であった.
    核内封入体細胞をその特徴ある形態からI型, II型, III型, III'型に大別することができた.I型, 細胞質の保存性は比較的良好で大きな単一の核内封入体が核内全体を占め, スリガラス様不透明にみえる細胞.II型, ガラスビーズ様の卵円形から不整形の比較的小型の封入体を核内に多数もった細胞.III型, 単一の直径8~11μmの円形あるいは類円形の大型封入体をもち'その周囲の核との問にハローがみられる細胞.III'型, 弱拡大下ではIII型と同様に単一の大型封入体のようにみえるが, 強拡大下では小型の封入体が集合している細胞.
    核内封入体が多彩な形態を示す点について光顕所見および電顕所見から, I型の核内にあるウイルス粒子が時間とともに結晶化して体積を減じ, 核内に空間ができて, II型あるいはIII型, III'になるものと考えた.
  • 斉藤 多紀子, 佐川 文明
    1983 年 22 巻 4 号 p. 845-854
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    66歳, 男性の膀胱癌患者の尿中に扁平上皮化生および腺化生を伴う移行上皮癌が観察された症例を経験したので報告する.生検で乳頭状移行上皮癌と診断され, 加療中経時的に尿細胞診で, 三者の腫瘍細胞が観察された.
    手術時の病理組織診断では, G-3を示す移行上皮癌で, この癌巣に接して扁平上皮化生部と乳頭状腺構造が認められた.手術時の組織と同一部位のスタンプ標本を作成して三種類の細胞を同定, その所見から尿中の腫瘍細胞を分類した.移行上皮癌は紡錘型, 細胞質は中程度の厚さで, 緑色に染まるものが多い.クロマチンは粗顆粒状が多い.核小体は小型で1~3個までみられる.扁平上皮化生の細胞形は扁平上皮癌細胞と同じ形態を示し, 多彩で有尾型や線維型もみられ, 細胞質は厚く, 二層性で, 色は橙色, 緑橙混合もみられる.腺化生細胞も膀胱原発腺癌細胞と同様の形態を示し, 細胞質も薄く, 緑色で細胞境界は不鮮明, クロマチン量は少量, 微細顆粒状が多い.核縁は円滑, 核小体は小型で多数観察されるのが特徴である.細胞配列は重積性を示す.電子顕微鏡的にも, 三種類の細胞を裏付ける所見が観察された.
  • 及川 正道, 榛沢 清昭, 石岡 国春, 佐藤 泰, 野田 明美, 岡田 妙子, 工藤 佳子, 菅原 登志子, 大久保 俊治, 大倉 一雄, ...
    1983 年 22 巻 4 号 p. 855-860
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    3歳8ヵ月男児の神経節芽細胞腫と, 16歳男性の神経節細胞腫の2症例を経験した.2例とも術中細胞診で正診できた.
    これらの腫瘍は, 非クローム親和性の交感神経系腫瘍で, 成熟型が神経節細胞腫, 末熟型が神経芽細胞腫で, その中間型が神経節芽細胞腫であり, 縦隔や後腹膜に発生することが多い.神経節芽細胞腫の塗抹細胞所見の特徴は, 紡錘形のシュワン細胞の間に, 散在性に神経節細胞が認められ, さらに神経芽細胞も存在することである.神経節細胞は, 大型多辺形で細胞質が豊富で, 時に突起や胞体内に顆粒を持ち, 核は大型で, クロマチンは細顆粒状均等分布で, 核小体は1個で著明である.神経芽細胞は, 小型楕円形で細胞質は少なく, 核は濃染し, 核小体は1~2個認められる.神経節細胞腫の特徴は, シュワン細胞と神経節細胞が認められるが, 神経芽細胞が存在しないことである.
    近年, 術中細胞診や超音波誘導下穿刺細胞診が盛んになってきたので, 今後交感神経系腫瘍に遭遇する機会が多くなるものと推定されるが, 上述の特徴的な細胞像より, 本腫瘍の細胞診断は可能と思われる.
  • 畠 栄, 太田 節子, 日浦 研哉, 福屋 宗, 津嘉山 朝達, 真鍋 俊明, 中川 定明
    1983 年 22 巻 4 号 p. 861-865
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    44歳男性.血痰を主訴として近医を受診し, 胸部X線検査で, 左上葉に円形の腫瘤状陰影を指摘され, 精査の目的で入院した.
    気管支造影で左のB3a枝に閉塞像があり, 気管支鏡検査で同部位に閉塞性の腫瘤が認められた.腫瘤の表面は平滑で光沢をもち, 一部に潰瘍形成がみられた.
    同部からの擦過細胞診を行った.細胞像は紡錘形または線維状を示し, 核は類円形または両端がやや鋭い紡錘形で核膜は薄い.核クロマチンは微細顆粒状あるいは砂粒状を呈し, 均等に分布する.一応, 紡錘形細胞肉腫の細胞学的診断を下した.
    左上葉摘出術が施行された.摘出腫瘍組織は周囲肺組織と比較的明瞭に境界されていた.組織学的に, 紡錘形細胞の錯綜する増殖巣から成っており, 核分裂像も多くみられ, 紡錘形細胞肉腫と診断した.電顕的検索を行って, 最終的にFibrosarcomaと診断した.
    術後, 軽快退院し, 9ヵ月後の現在再発の微候はなく, 経過良好である.
  • 岩田 正一朗, 垣花 昌彦, 浦崎 政浩, 野原 キクエ, 遠藤 久子
    1983 年 22 巻 4 号 p. 866-870
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
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    足踪線維腫症は, 良性軟部腫瘍の中でもまれで, この疾患の細胞診に関する報告は, いまだない, 著者らは, 術前に穿刺細胞診を施行した後, 摘出術を行った1症例を報告する.
    穿刺細胞診上では, 類円形の核を持ち, 細長形のいわゆる活動型線維芽細胞様の細胞が多くみられた.この他, 膠原線維様の組織塊および細長い核と線維状の胞体を有する, いわゆる成熟型線維芽細胞がからみ合った細胞塊もみられた.リンパ球や好中球はなく, 核分裂像も認められなかった.
    組織所見では, 腫瘤は, 大部分小波様を呈し密に増殖した膠原線維と成熟型線維芽細胞によって占められていた.腫瘤の辺縁部や中心部に結節状に細胞の密な所があり, 線維芽細胞も活動型で, 毛細血管も発達し, リンパ球や形質細胞も認められた.
  • 症例報告
    笠原 正男, 山岸 要範, 八木 弥八
    1983 年 22 巻 4 号 p. 871-880
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
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    神経鞘腫と横紋肉腫とが混在し, 移植実験の結果, 同様の腫瘍を発生することに成功し, 神経鞘腫と横紋筋肉腫との混在する腫瘍をその動物名をとりTriton tumorと称されている.本症例は31歳, 女性でVon Recklinghausen病に始まり, 右側後頭部腫瘤と縦隔に巨大腫瘍が検索された.後頭部摘出腫瘍に関し, 細胞学的, 組織学的ならびに電顕的に検討した.細胞学的には, 横紋構造を形成する紡錘形, ラケット状あるいはtadpole形の腫瘍細胞と胞体内に好エオジン性題粒を有し, 核が大きく, 多核, 連珠状核を呈する細胞も認められた.組織学的にも多形性を示す明らかな横紋を有する横紋筋肉腫で, 電顕的には束状filaments, 網状microfilaments, A帯12μ, H帯0.3μ の横紋構造が観察された.一方腫瘍細胞の中にはfiber cellsやspindl ecellsを呈する神経鞘腫に相当する所見も検索された.剖検時の巨大縦隔腫瘍の細胞学的および組織学的所見は悪性神経鞘腫であり, 膵, 卵巣に転移巣が存在していた.
    末梢神経は発生学的にはneuroectodermより生じるとされており, 末梢神経腫瘍には時にosteoid, angioma, myogenictumor, lipoma等の合併がみられ, とくにVon Recklinghausen病を伴う症例に検索されることが多いとされている.この現象は, neuroectoderm由来の腫瘍はmultipotentialityを有しいると考えられる, 間葉系由来の腫瘍組織の成り立ちについて興味ある事実が証明された.
  • 1983 年 22 巻 4 号 p. 882-886
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 22 巻 4 号 p. 935-1066
    発行日: 1983/10/25
    公開日: 2011/11/08
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