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杉田 道夫, 室谷 哲弥, 杉下 匡, 天神 美夫, 長島 義男
1984 年 23 巻 4 号 p.
503-508
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
子宮頸部扁平上皮癌 (浸潤癌) 6例に対して, 新しい組織分散法を応用し, 顕微蛍光測光法とflow cytometryの両者のアプローチから悪性細胞の形態と核DNA量の比較, 検討を行いつぎの結論を得た.
(1) dispase, 高速ブレンダーによる分散は良好で, 組織塊を細胞レベルで観察することが可能となった.
(2) 核DNAパターンでは, 4C以上の高倍体の多いヒストグラムを呈し, 特に蛍光測光法の方がFCMよりも高倍体が強調された.
(3) FCMでは形態に関する情報が乏しいが, 蛍光測光法による蛍光像を補うことにより細胞個々の形態と核DNA量の比較ができる.
(4) 細胞形態と核DNA量の比較では, 核の大きさはDNA量を決定する大きな要素であるが, 例外もあり, クロマチン密度および核縁の不整も重要なパラメーターである
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関 晴夫, 小川 英弍, 真木 正博
1984 年 23 巻 4 号 p.
509-516
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
昭和471年1月より昭和58年12月までの12年間に, CIS3例を含む12例の原発性膣癌を経験した.そのうち, 扁平上皮癌8例および腺癌1例, 計9例について, 特に細胞学的検討を行った結果を報告する.
1) 背景はCIS3例ともcleanであり, 浸潤癌では6例中4例に出血, 壊死などの腫瘍性背景を認め, 両者の鑑別上役立つと考えられる.
2) 未分化型CISおよび低分化型浸潤癌では深層型悪性細胞がおもに出現していた.
3) 分化型CISでは, 中層型, 表層型のdyskaryotic cell様細胞を多数認め, このほか表層型, 中層型, 深層型の悪性細胞が少数ながら出現し, 多彩な像を呈していた.中層型悪性細胞で, 多核または大きな核を有するものが特徴的であった.無核角化型細胞や錯角化細胞も多数認められた.
4) 高度分化型浸潤癌では分化型CISと同様の細胞像であったが, さらに異型性の少ない表層型dyskaryotic cell様細胞および角化型悪性細胞が特徴的であった.これら異型性の乏しい表層型細胞は, dysplasia由来の細胞として認識される可能性があり, 注意を要する.
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小川 英弍, 備前 美輝子, 真木 正博
1984 年 23 巻 4 号 p.
517-523
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
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内膜細胞診を子宮内膜癌19例 (分化型10例, 中間型3例, 低分化型3例・腺扁平上皮癌1例, 明細胞癌2例) および癌肉腫, 中胚葉性混合腫瘍各1例, 計21例にEndocyte法と増淵式吸引法で施行し, 両法を比較検討した.
結果
1.細胞採取量はEndocyte法の方が多かった.
2.血液の混入は増淵式吸引法の方に多くみられた.
3.細胞の重積性は両法に差はなかった.
4.細胞診断はEndocyte法で全例陽性であったが増淵式吸引法では2例に疑陽性がみられた.
5.Endocyte法では組織型の推定が可能なものが多くみられた.
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井上 悟, 伊藤 昌春, 東矢 俊光, 小山 伸夫, 藤崎 俊一, 徳永 達也, 松山 茂麿, 三森 寛幸, 広瀬 英治, 小山 保広
1984 年 23 巻 4 号 p.
524-531
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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子宮体癌の早期発見のため, エンドサイト法による子宮内膜細胞の採取を行い, adenomatoushyperplasia (8例), atypical hyperplasia (6例), 子宮体癌 (21例) の細胞像と組織の比較検討を行った.
1) adenomatous hyperplasiaではclass II-IIIaを示し, class IIIb以上のものは認めなかった. atypical hyperplasiaではclass IIIbのものが最も多いが, 一部ではclass IVを示すものがあり, 子宮体癌との鑑別が困難なものが存在した.
2) 子宮体癌の浸潤が進むにつれ, 採取されてくる異型細胞数は増加傾向にあった.
3) 子宮体癌細胞の重積性に関して, 吸引法ではgrape formationをきたしやすいが, エンドサイト法では組織を反映し, 乳頭状配列あるいは腺腔構造を呈した.
4) adenomatous hyperplasia, atypical hyperplasia子宮体癌と異型性が増すにつれて, 核径は増大し, 子宮体癌においては, 15μ 以上のものが存在した.
5) 子宮体癌の分化度と核小体の大きさとの間には相関が認められ, 未分化になるほど核小体は増大していった.
エンドサイト法による子宮体癌の正診率は85.7%, 疑陽性のものを含めると95.2%となり, 子宮体癌のスクリーニングとして有用と思われる.
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林 和彦
1984 年 23 巻 4 号 p.
532-540
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
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BrOmocriptine (以下BCと略す) は高Prolactin (以下PRLと略す) 血症排卵障害の血中PRLを抑制し排卵性月経周期を回復させ, 今日ではこの投与が乳汁分泌性無月経のもっとも有効な治療法として確立されている.さらに, BCは正常PRL血症排卵障害の治療においても排卵誘発効果を有することが判明している-著者は膣細胞診でつぎのような結果を得た.
1.遅延型排卵, 黄体機能不全群ではBC投与による妊娠率は50%(3/6) であり, その治療中のEosinophilicCellIndex, KaryopyknoticIndex, Smear Indexは頸管粘液の変化に相関し, 排卵期には正常周期にみられるような高値を示す.
2.高PRL血症排卵障害群ではBCによる排卵率は66.7%(4/6), 妊娠率は16.7%(1/6) であり, それらのIndicesは前群と比較して低値を示す.
3.無排卵周期症群ではBCによる排卵率は100%(4/4), 妊娠率は25%(1/4) である.第一度無月経群ではBCによる排卵率は100%(7/7), 妊娠率は28.6%(2/7) である.両群におけるIndicesは頸管粘液の変化と一定の相関みられず, 血中エストラジオール高値の排卵期でもエストロゲンの影響が弱い値を呈する.
4高PRL血症排卵障害無排卵群および第二度無月経群でのIndicesはBC投与中すべて低値を示す.
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特にfollow up例の細胞所見の解析
武田 雅身, 伊藤 圭子, 及川 洋恵, 東岩井 久, 手島 研作, 野田 起一郎
1984 年 23 巻 4 号 p.
541-548
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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頸部腺癌は近年増加傾向が指摘されているが, その初期のものは細胞診上陰性と判定されやすい.本研究では, 集検における頸部腺癌のスクリーニング上の注意点を知るために, 集検初診時に発見された初期腺癌12例, 一定期間のfollowup後に発見された初期腺癌11例の細胞所見を詳細に検討した結果つぎの結論を得た.
1.過半数 (13例) に扁平上皮型異型細胞の存在を認めた.したがって, 扁平上皮型異型細胞の存在する場合は, 同時に腺型異型細胞の有無に注目する必要がある.
2.スクリーニング上癌の基準を満たさない腺型異型細胞に着目する必要があり, その所見は不規則重積性, 柵状配列, 核小体肥大である.
3.腺型異型細胞が持続し生検陰性の場合は, 早い時期に円錐切除による確認を行わなければならない.
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甘糟 仁, 佐藤 裕美子, 武田 鉄太郎, 山形 淳, 高相 和彦, 新沢 陽英, 山田 章吾, 松田 尭, 斉藤 博之, 長谷 とみよ, ...
1984 年 23 巻 4 号 p.
549-553
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
体腔液中の癌細胞が非癌細胞と容易に鑑別できた10症例 (胃癌5, 乳癌2, 食道癌, 結腸癌, 卵巣癌各1) を対象として, 体腔内に制癌剤あるいはステロイド剤を直接注入することにより, 体腔液単位容積あたりの有核細胞数, 特に癌細胞数の変動と各種細胞相互の比率の変化について検討した.
治療により, 体腔液中の有核細胞一特に癌細胞一は著明に減少した.リンパ球は変動の幅が小さく, 治療によりその比率の高くなる例が多かった.治療内容別には, Mitomycin-C単独よりもステロイド併用例が, 細胞数が早期に減少した.癌細胞陰性化3例の治療前の細胞像には一定の傾向を認めなかった.
体腔液貯留から死亡までの期間が16週以上は, 乳癌, 卵巣癌各1例, 8週以上は胃癌1例で, 3例は4~6週, 4例は4週以内に死亡した.このように, 生存期間には差があるが, 治療による有核細胞数, 特に癌細胞が減少するというパターンには大差なく, 大多数は, 癌細胞の減少あるいは消失した状態で死亡した.
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特に細胞配列およびPAS染色所見について
山本 玲子, 竜田 正晴, 野口 左内, 春日井 博志, 田中 幸子, 和田 昭, 田村 宏
1984 年 23 巻 4 号 p.
554-562
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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肝細胞の細胞学的特徴を把握するために, 肝細胞癌41例について, 超音波映像下にヘパリン処理した細径穿刺針・注射器を用いて肝臓を穿刺した.得られた同一材料より細胞および組織標本を作製し, 両者を比較観察しながら, 特に細胞配列ならびにPAS染色所見について検索し, つぎの知見を得た.
1.肝細胞癌では, 細胞配列に良性肝疾患例ではみられない “腺様の配列”,“樹枝状の配列”,“ウロコ状の配列”,“充実性の配列” および “不規則な配列” の5つのパターンが認められた.
2.PAS染色所見では, 良性肝細胞には認められなかった “陽性型”,“陰性型” および “混合型” の3つの特徴的なパターンが認められた.
これらの所見と, 個々の細胞における核・細胞質所見とを総合的に勘案することにより, 肝細胞癌の細胞学的診断は向上するものと思われた.
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細胞診と最終診断の不一致例の検討を中心として
及川 正道, 榛沢 清昭, 石岡 国春, 野田 明美, 菅原 登志子, 佐藤 泰, 工藤 佳子, 林 仁守, 庄司 克吉, 武田 鉄太郎, ...
1984 年 23 巻 4 号 p.
563-570
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
肝穿刺細胞診199例, 延234回のうち, 最終診断の明らかな175例, 延209回を対象として, その成績と, 細胞診と最終診断の不一致例の検討を行った.
成績: 悪性100例中陽性は88例 (88%) で, 高率であったが, 良性75例中4例 (5%) の偽陽性があり, 正診率は90%であった.
不一致例の検討: 偽陰性例26回中良性細胞のみのものは20回, 変性細胞あるいは細胞数が少ないものが4回で, 細胞採取技術の向上が望まれる.一方高分化肝細胞癌と肝硬変の細胞鑑別が問題で, 比較的異型軽度のため陰性あるいは疑陽性にされていたものが3例あり, 逆に, 核の重積性, 大小不同性, あるいは核内封入体から陽性とされていた偽陽性が2例あった.また, 異型裸核細胞だけで陽性と判定するのは危険で, 注意を要すると思われた.
肝穿刺細胞診は, 安全で正診率も高く, 肝限局性病変の有用な検査法であることが再確認された.また, 不一致例の検討より, 細胞採取技術の改善と, 高分化肝細胞癌と肝硬変の細胞鑑別について, 症例を重ねて検討する必要があると思われた.
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藤井 雅彦, 加藤 一夫, 山崎 政城, 杉江 茂幸, 島 寛人, 高橋 正宜
1984 年 23 巻 4 号 p.
571-575
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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フリー
脳腫瘍の捺印細胞標本を用いて, PAP法によるglial fibrillary acidic protein (GFA蛋白) の局在を検索し, 組織像, 細胞像との比較検討を行った.
正常大脳白質においては, 線維性星状膠細胞の核周囲細胞質およびその突起に陽性反応が認められた.星状膠細胞腫では7例全例が強陽性を呈した.異型星状膠細胞腫 (5例) や膠芽細胞腫 (12例) も全例陽性であったが, 染色性は不均一で, 異型が強くなるに従い, 染色性の低下が認められた.星状膠細胞腫と稀突起膠細胞腫の混在例 (混合膠腫) では, 星状膠細胞腫の細胞のみが選択的に染色性を示した.脳室上衣腫は2例とも陽性であった.髄芽細胞腫は5例中4例が陰性であったが, 1例では弱い陽性反応が一部の細胞に認められた.髄膜腫の3例と転移性腺癌の3例はいずれも陰性であった.
これらの成績は, 組織切片を用いてのGFA蛋白の検索結果とよく一致しており, GFA蛋白の検索が脳腫瘍細胞診の領域に十分応用可能であることが明らかになった
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入江 康司, 杉島 節夫, 入江 砂代, 笹栗 靖之, 森松 稔, 北城 文男, 小宮 節郎, 山中 健輔, 辻 浩一
1984 年 23 巻 4 号 p.
576-583
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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慢性関節リウマチ21例の関節液60検体について光顕, 螢光抗体法, 電顕法により検討を行った. 症例の性別は女性19例, 男性2例, 年齢は22~63歳で, アメリカリウマチ協会診断基準のclassical RA 17例, definite RA 4例であった.関節液の性状は黄白色-黄褐色調, 粘稠性は低く, ときに米粒体をみ, 細胞像は好中球を主体とし, 単球様細胞とリンパ球を認めた. Hollanderの呼唱したRA細胞は全症例にみられ, 有核細胞の平均58%にみられた. 螢光抗体法では多核白血球と単球様細胞に12例中10例にIgGと補体が陽性, IgMは8例に陽性であった.電顕的にRA細胞の封入体に相当するものとして脂肪滴, phagosome phagolysosomeがみられ, このなかでphagolysosomeが免疫複合物としての可能性が高いと思われた.RA細胞の出現は, 慢性関節リウマチとの相関性が高いと考えられる.
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偽陽性の原因となる精嚢上皮系細胞の異型性について
矢谷 隆一, 北本 正人, 曾我 俊彦, 三浦 悟, 矢花 正, 中林 洋, 石原 明徳, 柴田 偉雄
1984 年 23 巻 4 号 p.
584-589
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
前立腺穿刺吸引細胞診で偽陽性の原因のひとつである精嚢上皮系の細胞について検討した.
材料は前立腺穿刺吸引細胞診31症例, 術中迅速細胞診1症例および剖検時精嚢塗抹細胞診47症例を使用した.
40歳以上の症例における精嚢上皮系細胞は, 核の大小不同が顕著で, クロマチン量が多く, クロマチンは粗顆粒状で, 核内に不均等に分布する細胞がみられるが, 同時に細胞質内色素顆粒・核内細胞質封入体, 核形不整, 核皺襞形成がみられ, 核小体は不明瞭なことが多い.前立腺腺癌細胞には細胞質内色素顆粒や核内細胞質封入体は認められないので, 異型細胞を注意深く観察すると, これら両者の鑑別は可能と考えられ, 精嚢上皮系細胞の混入に起因した偽陽性や疑陽性率の低下が期待される.
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20症例の分析
山田 喬, 正和 信英, 佐藤 豊彦, 小池 史子, 岡本 一也, 土井 久平, 藤森 勲, 川根 哲
1984 年 23 巻 4 号 p.
590-597
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
脂肪肉腫20例より穿刺吸収, あるいはその切除材料から直接塗抹により得られた剥離細胞の形態と, その病理組織学的背景について検索した.
脂肪肉腫の剥離細胞像は, その病理組織学的型により著しく異なるが, その基本的な細胞学的所見は, 脂肪芽球と類粘液細胞, そして細胞の背景にみられる類粘液物質であった. しかし, これらの細胞がすべての病理組織学的型から得られるわけでなく, それぞれに特徴ある細胞所見が認められた. 分化型の脂肪肉腫からは, 主として上記の細胞が出現するが, これらの細胞や, 円形あるいは穎粒状細胞型からの細胞は, よく観察しないと肉腫としての診断はやや困難であり, 未分化型の脂肪肉腫からは肉腫として診断することは容易であるが, それを脂肪肉腫として鑑別することが, ときには困難な場合があることを知った.脂肪染色による脂肪の証明や, 銀染色により脂肪肉腫細胞周囲にまとわりつく嗜銀線維の発見は, 鑑別診断の補助的手段として有効であった.
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原発性肺癌343例の検討
川井 俊郎, 兼子 耕, 小林 誠一, 久保野 幸子, 勝川 恵理子, 芳賀 美子
1984 年 23 巻 4 号 p.
598-603
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
組織学的に検索された原発性肺癌343例について, 喀痰細胞診の陽性率に関与する種々の因子を検討した. 特にこのうち88例の手術例に関しては, 病理学的因子を詳細に検索し陽性率との関係を検討した.
1) 肺癌の組織型別頻度では, 扁平上皮癌が44.0%と高率を示した.
2) 組織型別喀疲細胞診陽性率では, 扁平上皮癌72.2%, 腺癌・小細胞癌67.3%であった.
3) 連続検査の重要性, 生検後の陽性率の向上を確認した.
4) 手術例にて, 腫瘍が浸潤ないし占拠する気管支次数が喀疾細胞診の陽性率に最も関連する因子と考えられた. 扁平上皮癌が最も著明にこの傾向を示した.
5) 上葉と下葉を比較すると, 左右の肺はともに同じ気管支次数にて, 下葉がより高い陽性率を示した.
6) 陽性率は腫瘍径の増大に伴って上昇した. 特に腺癌においてこの相関が著明であった.
7) 扁平上皮癌ではリンパ節転移, 腺癌では胸膜浸潤陽性例が, 陰性例に比し著明な陽性率の差を示した.
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A case report
Yoshio ISHIZUKA
1984 年 23 巻 4 号 p.
604-607
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
29歳, 既婚女性, P-1, G-3, 妊娠37週で当院に入院.
主訴: 無痛性の性器出血.
局所所見: 子宮膣部の栂指頭大出血性腫瘍.
細胞診: 陽性.
組織診: 当初biopsyでは, 未分化扁平上皮癌と思われた.
経過: 妊娠38週にて帝王切開にて児を分娩さらにその4週間後に広汎子宮全摘出術をうけたが, 術後8ヵ月にして全身転移のため死亡.
剖検: 転移は肝ならびに脊椎に著明であった.
術後病理所見: 子宮は正常大, 卵管, 卵巣は著変なし.子宮頸部に直径2cmの出血性腫瘍を認む.子宮頸部ならびに体部内膜には腫瘍を認めなかった.
最終組織診断: 子宮頸部に異所性に発生した子宮間質肉腫であり, その起源はあるいは子宮頸部にあった子宮内膜症とも考えられる
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A case report
Masanao OKADA, Kazuo MIYAMOTO, Yasuko SAKAMOTO, Mitsuya HONDA
1984 年 23 巻 4 号 p.
608-614
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
59歳の女性. 性器出血のために, 内膜生検をして低分化腺癌と診断された. 摘出子宮は小児頭大で, 2個の筋腫と長径8cmの腫瘍があり, 中心壊死に陥り, 子宮内腔に破綻しているが, 漿膜を侵していない. 腫瘍は組織学的に, 大形多角形均一な細胞からなり, 類円形の核を持つ. 腫瘍細胞は髄様にあるいは敷石状に, また索状に配列する、強拡大10視野中に約25個の核分裂像がみられ, 悪性度は高い. 捺印パパニコロウ染色標本の細胞学的所見. 腫瘍細胞は孤立性に存在するものが多く, 細胞形は円形ないし楕円形で, N/C比は高く胞体は乏しい. 細胞質は淡青色に染色され, 胞体縁は不明瞭で, 胞体がしばしば透明である. 胞体がやや豊富で好塩基性に強く染色され, 核が偏在する細胞が少数みられる.核の面積は251μ
2で, 対照の間質細胞 (3例の分泌期末期内膜) の核138~178μ
2に比べて有意に大きい. 核形は円形から楕円形で, 核縁は平滑で明瞭である. 紡錘形, 桿状, 彎曲あるいは2分葉化した核が少数ある. 核クロマチンは軽度増量し, 細穎粒状ないし粗穎粒状である. 核小体は顕著ではないが, 1個から3個ある. 電子顕微鏡的に細胞間接着装置が少数みられ, また胞体内に細線維があり, まれにはそれらが細線維性の球状体として観察される.
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河野 貢, 丸谷 千明, 釜本 善之, 野田 恒夫, 冨井 由文
1984 年 23 巻 4 号 p.
615-621
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
52歳, 主婦の卵巣原発悪性黒色腫を, はじめて子宮内膜吸引細胞診で発見できたきわめてめずらしい症例を, 細胞形態を中心として若干の考察を加え報告した.
卵管, 子宮体部および頸部には転移巣はなく, 悪性細胞は卵管を経由して, 子宮腔内および頸管に出現したものと考えた. 子宮内膜吸引細胞像は, 卵管を経由してきたためか, 上皮性腫瘍形態とされている結合性が強く, 腺癌および胚細胞性腫瘍などとの鑑別が非常に困難であった. しかし背景中の組織球細胞質内に凝集性のメラニン色素の存在が観察でき, 悪性黒色腫を推定するうえで非常に役立った.
組織像においては, 円形細胞, 紡錘形細胞が胞巣状あるいは充実性に発育していたが, 子宮内膜吸引細胞診, 腫瘍割面タッチ細胞診においては, 円形の細胞しか出現しておらず興味深かった.
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エンドサイト細胞採取法を用いた子宮腔内細胞診を中心にして
高橋 健太郎, 山根 由夫, 木島 聡, 渋川 敏彦, 山本 和彦, 松永 功, 北尾 学
1984 年 23 巻 4 号 p.
622-626
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
子宮体部の中胚葉性混合腫瘍は, 臨床的に診断が困難であり, 細胞診断学上においても興味ある疾患である.今回, 55歳の婦人の膣細胞診にてadenocarcinomaを疑い, エンドサイトを用いた子宮腔内細胞診でmixed Müllerian tumorと術前診断できた, 子宮体部原発中胚葉性混合腫瘍の1例を経験したので, 中胚葉性混合腫瘍のエンドサイトを用いた子宮腔内の細胞診像を中心に報告する.
本症例は組織学的に, 高度分化型腺癌と内膜間質肉腫および横紋筋肉腫より構成されていて, 術前の膣細胞診では, N/C比の増大した重積性のある核小体の目立つ腺癌を疑わせる細胞のみを認めたが, エンドサイト法による子宮腔内細胞診では, 上述した腺癌細胞と孤立散在性に出現する, 多彩な形態をした非上皮性悪性腫瘍を疑わせる細胞が混在していた.
最終的には, PTAH染色により, 細胞質に横紋構造を検出し, 中胚葉性混合腫瘍と診断した.
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細胞診, 組織診, 組織培養
相馬 雅行, 中口 竹紀, 小野 勲, 石渡 千恵子, 石渡 勇
1984 年 23 巻 4 号 p.
627-632
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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卵巣endodermal sinus tumor (EST) の腫瘍捺印細胞像, 組織像, 培養細胞像について検討した. 腫瘍捺印細胞像では, 細胞質の菲薄な辺縁不明瞭な類円形, 円柱状の細胞がシート状に出現し, またN/C比大, ときに裸核状の大小不同著明な細胞が孤立散在していた. 核には大小不同著明, 核形不正, 核染色質の粗大凝集性, 核小体の肥大増加などの強い異形性がみられた. Papanicolaou染色で緑灰色に染色される無構造小体が細胞質内外に認められた. 同一標本をPapanicolaou染色, ついでPAS染色してこの小体の染色性について検討したところ, Papanicolaou染色では緑灰色に染色される小体は, PAS染色では強陽性で赤紫色に染色されることからhyaline globulesと診断された. 組織像では, 大小の多形性未分化な上皮様細胞に囲まれた網目状構造, 細血管を取り囲む上皮細胞の層よりなるperivascular formation, のう胞状構造, 充実性構造よりなるESTで, 細胞質内外に好酸性なPAS陽性の無構造小体hyaline globulesがみられた. ESTの初代培養では, 上皮細胞よりなるコロニーと線維芽細胞が認められ, 培養上清中に1,200ng/m
lのalpha-fetoprotein (AFP) が検出された.
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晴山 仁志, 武田 直毅, 山口 辰美, 服部 広太郎, 石崎 善昭, 兼元 敏隆, 山口 潤, 水無瀬 昂
1984 年 23 巻 4 号 p.
633-639
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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23歳, 未婚女性. 無月経と著明な男性化徴候を呈し来院. 血中testosteroneの異常高値と, 右側の付属器腫瘍を認め, 諸検査から, 卵巣の男性化腫瘍を疑い, 開腹した. 右側の充実性卵巣腫瘍を確認し, 組織学的に, 中等度分化型のSertoli-Leydig cell tumorの像を呈していた. 摘出腫瘍の捺印細胞診, 酵素抗体法を用いた組織内testosteroneの検索, および電顕的検索を行った. 本例は, 術後血中testosteroneが征常化し, 月経も再来した.
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山岸 要範, 舟橋 正範, 舟橋 供爾子, 柳田 隆正, 金子 千之, 社本 幹博
1984 年 23 巻 4 号 p.
640-645
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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頸部リンパ節生検にてATL (成人T細胞白血病) と診断され, ただちにステロイド, カルシトニン投与. その後も強い意識障害のため抗生剤, 化学療法, 強心剤, インターフェロンなどの投与を行ったが急激な呼吸不全にて死亡. 死亡直前に気管内吸引細胞診を行った. そのsmear中に, 多数の散在性で渦巻き様の虫体を発見したので多種の特殊染色による光顕的観察および電顕的観察を行った. 虫体はPapanicolaou染色では, ほとんど染まらず, May-Giemsa染色, PAS反応で明瞭に虫体を確認することができた. また, Grocott染色では虫体尾端部の特徴的所見を得て糞線虫のフィラリア型幼虫と診断することができた.
白血病, 悪性リンパ腫などの腫瘍性疾患や癩などの慢性炎症性疾患あるいは長期間にわたってステロイド療法を受けた患者に, 重症の糞線虫感染症を併発する場合があることが知られている.
今回われわれが経験した患者は, 奄美大島出身で糞線虫流行地域と一致しており, 白血病による全身状態の強度増悪およびステロイド投与などによる急激な宿主抵抗力の低下も加わり自家感染を繰り返し, 宿主内において急速な糞線虫の増殖がおこったものと考えられる. 気管内吸引細胞診により, 糞線虫感染の診断が可能であった1例である.
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大高 啓, 豊原 時秋, 望月 福治, 石岡 国春, 沢井 高志
1984 年 23 巻 4 号 p.
646-652
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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カルチノイドの細胞診に関する文献はこれまでいくつか報告されているが, 封入細胞を認めた症例の記載はいまだみられていない.われわれは封入細胞が混在し, しかもGrimelius染色塗抹細胞診により封入細胞もカルチノイド腫瘍細胞であることが判明した症例を経験したので, 若干の考察を加えて報告する.
症例は73歳, 男性.直腸腫瘍の外科的摘除術および肝左葉切除術を施行し, 手術標本の組織診断で直腸カルチノイドとその肝転移と診断された.腫瘍細胞は小型で円形, i類円形ないし多辺形, おもに散在性または平面状配列を示し, 一部に重積性配列や腺腔様配列および封入像を示す細胞集団が認められた.核は小型で円形ないし類円形, 大小不同性に乏しく, 核クロマチンは正染穎粒状で異型性は認められなかった.Grimelius染色による細胞診では腫瘍細胞が陽性となり, カルチノイド腫瘍と診断した.封入細胞は癌, 肉腫あるいは良性疾患においても出現するといわれているが, 本症例にみるようにカルチノイド腫瘍にも出現することが明らかになった・なお, カルチノイドを疑う場合, 組織診と同様に細胞診においてもGrimelius染色がカルチノイドの同定に有用であった.
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中西 功夫, 小田 恵夫, 岡田 保典, 黒田 譲
1984 年 23 巻 4 号 p.
653-657
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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経皮的肺穿刺細胞診によって診断し得た腺扁平上皮癌の1例を報告した. 患者は66歳女性, 無症候性末梢肺野の腫瘍陰影を集団検診にて指摘された. 肺穿刺細胞診では異型細胞の大部分は扁平上皮癌細胞であったが, 少数の腺型異型細胞が混在していたので腺扁平上皮癌が強く疑われた. 切除肺における組織学的検索で, 右肺中葉S
5末梢の1.7×1.9×1.7cm大の腺扁平上皮癌であることが確認された. 腫瘍の胸膜への露出や, リンパ節への転移は認められなかった. 生検による合併症はみられなかった.
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野田 恒夫, 冨井 由文, 斎藤 滋, 一條 元彦, 伊藤 寛子, 安達 博成, 川井 一男
1984 年 23 巻 4 号 p.
658-666
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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1948年Cahanが放射線照射後一定の潜伏期をおき, その照射野に一致して発生した腫瘍で組織学的に肉腫であるものをPostirradiation sarcomaと定義したが, 今回われわれは68歳の症例で子宮頸部角化型扁平上皮癌にて外照射
60Co 5,000 Rad, Radium 5,090mghにて治療後8年目に, 照射野磐部に生じたそれらの肉腫でも, まれなmalignant fibrous histiocytornaの1例を若干の文献的考察を加え報告する.
腫瘍の穿刺・捺印細胞診とも線維形の細胞質で, 小型の短楕円形の核をもつ線維芽細胞様細胞と, 類円形~不正形の細胞質と核を示す組織球様細胞, さらに両者の移行型細胞・大型多核巨細胞が存在した. 組織像は線維芽様細胞が密な束状配列でいわゆるstoriform patternを示し, そのなかに多形性の組織球性細胞と大型多核巨細胞が存在していた. 電顕的にもelectron-dense materialを認めるrough ER, lysosome, 空胞, 脂肪滴などを有する上記の細胞を確認した.
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1984 年 23 巻 4 号 p.
669-675
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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1984 年 23 巻 4 号 p.
707-839
発行日: 1984年
公開日: 2011/11/08
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