症例は65歳の女性で, 右乳腺の原発性悪性リンパ腫 (非ポジキンリンパ腫, びまん性, 大細胞型) で根治乳房切断術を受け, 7年後左乳腺に再発, その2年後に白血性となり全経過9年にて死亡し, 剖検された例を報告する.乳腺腫瘤のスタンプ細胞像は, メイギムザ標本では細胞径20~35μ, 好塩基性原形質, N/C大, くびれ状の核 (cleaved) を有し, 核網は繊細緻密でやや堅固でリンパ芽球~ リンパ胚球に類似, パパニコロウ標本では, 細胞径10~15μ, 円形~ 類円形で核縁はうすく均等に肥厚し, 核網は繊細網状で小型核小体を1~ 数個有していた・PAS染色は陰性・酸フォスファターゼ染色は穎粒状に散在性で弱~ 中等度陽性であり, B細胞由来が推定された.
末梢血, 骨髄にみられたリンパ腫細胞は, スタンプの細胞像とほぼ同様であった.末梢血中の腫瘍細胞の免疫学的所見は, E-ロゼット形成能 (ERFC) 92%, Ia様抗原 (OKI1) 85.9%, B1抗原73.3%, 表面免疫グロブリン (S.Ig) 33%(κ-5%, λ-28%), 細胞内免疫グロブリン (C.Ig) 陰性, 以上より本症例のリンパ腫細胞はERFC陽性B細胞性リンパ腫と思われた.
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