日本臨床細胞学会雑誌
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25 巻, 6 号
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  • 坂本 穆彦, 池永 素子, 都竹 正文, 平田 守男, 原島 三郎, 河西 信勝
    1986 年 25 巻 6 号 p. 993-996
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺分化癌 (乳頭癌および濾胞癌) のなかには比較的予後不良で, かつ特有の組織像を示す一群がある. われわれはこれを低分化癌poorly differentiated carcinomaと呼び独立した疾患単位として扱うことを提唱した.
    本研究では低分化癌の細胞学的特徴を把握することを目的として以下の検索を行った. 用いた材料は細胞診で甲状腺癌 (乳頭癌) とされ, かつ組織診にて低分化癌 (乳頭癌) と診断された12例である. 細胞診用検体は穿刺吸引法により採取し, パパニコロウ染色およびギムザ染色を施した.
    低分化癌の細胞個々の特徴に関しては, 核内細胞質封入体の出現頻度が42%(5例) であり, 一般の乳頭癌より低かった. 細胞結合性でみると, 多少の集塊はみられるが全般に結合性の低下があり, 散在する傾向が優勢な例は75%(9例), 小集塊のみを形成する例は25%(3例) であった. 重積性が著明な大規模な集塊のみのみられた例はなかった. 低分化癌では大集塊を認めることが少なく, 細胞は一般に散在性を示すことが特徴の1つと考えられた.
  • 特にCEAおよびBFPについて
    松井 武寿, 安井 洋, 田久保 海誉, 高山 昇二郎, 石井 勝
    1986 年 25 巻 6 号 p. 997-1002
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸, 腹水のスメア標本にみられる腫瘍細胞と反応性中皮細胞を鑑別することを目的として, 腫瘍マーカーであるCEA, BFPを用いて, 酵素抗体法で原発組織を含めて染色し検索した. また胸, 腹水および血清中の両腫瘍マーカー値も同時に測定し, 胸, 腹水中の腫瘍細胞との関係についても検討した. 反応性中皮細胞はCEAに陰性でBFPに陽性を示した. 腫瘍細胞は両者とも陽性を示す症例が多かったが, BFPは1症例あたり、より多数の腫瘍細胞が染色されており, 陽性症例も多かった. 反応性中皮細胞にもBFP陽性を示したことから, 反応性中皮細胞にも腫瘍細胞同様にBFPもしくは, BFPと共通する抗原性を有する物質が存在することが示唆された. 胸, 腹水中のCEA, BFPは同一患者の血清中のCEA, BFP値より高値のことが多かった.
  • 特にリンパ球系白血病細胞と骨髄系白血病細胞の鑑別について
    中村 忍, 中西 二, 吉田 喬, 大竹 茂樹, 伊藤 恵子, 小林 和美, 松田 保
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1003-1009
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    急性白血病FAB分類の問題点の1つである, acute lymphoblastic leukemia (L) とacute myeloid leukemia (M) との鑑別について, その精度の向上を目的として, 組織化学的ならびに電子顕微鏡 (電顕) 的に検討を試みた.
    対象症例は, 金沢大学第3内科および関連病院で, 急性白血病と診断された259例である. 治療開始前に骨髄塗抹標本を作製し, May-Grunwald-Giemsa (M-G) 染色, Peroxidase (POX) 染色, Sudan black B (SBB) 染色, 3-3′diaminobenzidine (DAB) 染色およびesterase二重染色を施すとともに, 電顕POX反応を行い観察し, 以下の結果を得た.
    1. 各種染色法における芽球の陽性率を比較すると, SBB染色およびDAB染色での陽性率は, POX反応のそれとよく相関した.
    2. SBB染色では, POX反応低陽性率例での芽球の陽性率の上昇が認められ, LとMとの鑑別が容易になった.
    3. DAB染色によるPhi bodyの出現率は, M-G染色でのアウエル小体の出現率よりも高く, 本染色は, Mの診断に有用と考えられた.
    4. 電顕POX反応では, 陽性率のより正確な判定が可能であり, LとMとの鑑別上有用であることが確認された.
  • 荒谷 義和, 井上 勝一, 伊藤 正美, 高岡 和夫, 宮本 宏, 川上 義和, 安田 悳也, 遠藤 隆志
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1010-1016
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    神経芽細胞腫の捺印標本と45例の肺小細胞癌の擦過標本の細胞形態を光顕にて比較検討し, 肺小細胞癌細胞中にみられた神経芽細胞腫細胞に類似した細胞 (神経芽細胞腫類似細胞) の出現頻度と肺小細胞癌患者の予後との関係について検討した. さらに, 燕麦細胞型肺小細胞癌細胞と神経芽細胞腫細胞の透過型および走査型電顕像についても比較観察した.
    光顕像ではほとんどの神経芽細胞腫細胞は小型円形で暗く微細なクロマチンパターンの核をもち, 核小体は不明瞭で核縁は薄かった, 肺小細胞癌のなかには神経芽細胞腫に比し種々の形態を示す細胞がみられたが, 神経芽細胞腫類似細胞がしばしばみられ, これを含む症例はすべて1年以内に死亡していた.
    電顕像では両者とも細胞内に神経分泌顆粒を有し, 表面は大体平滑で微絨毛を有さないなど類似点もみられたが, ミトコンドリアや粗面小胞体の発達の点では異なっており, 神経芽細胞腫類似細胞が必ずしも燕麦細胞型肺小細胞癌細胞と一致しないと考えられた.
    肺小細胞癌の細胞形態, 特に神経芽細胞腫類似細胞の混在は, 患者の予後推定の1つの目安になると思われる.
  • 特に基礎的形態学的検討を中心に
    礒西 成治, 落合 和徳, 乾 裕昭, 安田 允, 寺島 芳輝, 蜂屋 祥一
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1017-1024
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    当教室で樹立したヌードマウス移植ヒト未分化胚細胞腫を用い, エストロゲン1μg/day投与群 (E), プロゲステロン1mg/day投与群 (P), コントロール群 (C) の3群に分類し, おのおのにつき, 移植卵巣腫瘍の病理組織および細胞診を検討するとともに, 腫瘍組織サイトゾール中ホルモンレセプターを測定し, 形態, 機能の両面から検討を行った.
    成績:(1) 組織像の変化;C群は継代ごとに, 細胞充実性の増加, およびMitotic Index (以下MI) の軽度上昇を認めた. ほか2群はホルモン投与による組織構築の変化はみられなかったが, MIは2群とも著しい上昇を示した.
    (2) 細胞像の変化;C群は全継代を通じ細胞診上著変は認めなかった. E群は細胞質内小空胞, 核の大小不同の出現, クロマチンの淡染化を認めた. 一方, P群の細胞は全体に小型で細胞質内に小空胞の出現, 網様構造の消失を認めた. 核は小型で, クロマチンは不規則細顆粒状を示した. 核長径の計測ではC群14.1±2.6μ, E群13.7±3.2μ, P群10.9±1.6μ であった。
    (3) 細胞質レセプターの変化;移植前腫瘍は, エストロゲンレセプター (ER), プロゲステロンレセプター (PR), いずれも約5fmol/mg proteinを有し, E群において, エストロゲン投与によるPRの増加を認めた.
    以上より, 細胞診, 組織診を細胞質ホルモンレセプターと合わせ検討することにより, 本腫瘍のホルモン依存性が示唆された.
  • 良・悪性の鑑別および組織型の推定診断
    西野 るり子
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1025-1034
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    common epithelial originの卵巣癌37例および良性上皮性卵巣腫瘍7例の腫瘍割面から捺印細胞診標本を作製して細胞分析を加え, 組織標本との比較から, 捺印細胞診による卵巣上皮性腫瘍の, 良・悪性の鑑別診断および組織型の推定診断について検討した結果, 以下の知見が得られた.
    1. 捺印細胞診による良・悪性の細胞学的鑑別には, 従来細胞学的に確立された核の悪性基準が十分に適応する.すなわち, 悪性の診断には核および核小体の所見が最も重要で, 良・悪性の鑑別はほぼ全例可能であった.
    2. 捺印細胞診による組織型推定診断には組織構造を反映する細胞集団の配列が最も重要である.すなわち, 漿液性嚢胞腺癌における乳嘴状・ぶどう房状配列, ムチン性嚢胞腺癌における蜂窩状・柵状配列, 類中腎癌におけるhobnail状・腺腔状・蜂・窩状およびぶどう房状配列, 類内膜癌における合胞状・乳嘴状・柵状配列などである.細胞集団および細胞質, 核の所見を把握することにより, 組織型推定は47.4%の一致率を得た.
    3. 捺印細胞診と腹水細胞診とを対比させて判定することにより, 腹水中の悪性細胞の有無をより正確に診断し得た.
  • 椎名 義雄, 飯島 淳子, 依田 さつき, 沢田 好明, 武田 敏, 石川 明
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1035-1042
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1,096名のMicro TrakTM法の成績は25例 (2.3%) が陽性で, 地域別にはS市8/360 (2.2%), Y市11/493 (2.2%), 0町6/243 (2.5%) と地域間での差はみられなかった. Micro TrakTM法陽性 25例の年齢分布は30歳までが1/18 (5.6%), 31~40歳10/331 (3.0%), 41~50歳11/429 (2.6%), 51~60歳3/248 (1.2%) であり, 若年者での陽性率が高かった.
    ビランや帯下などの所見はMicroTrakTM法陽性者と陰性者で著明な差はみられなかった.
    Papanicolaou標本でChlamydia trachomatis (C. trachomatis) 感染の診断可能な星雲状封入体nebular inclusion=NIは8/25例 (32%) にみられた.
    Micro TrakTM法陽性者の性周期は増殖期が8例 (32%), 排卵期が5例 (20%), 分泌期が6例 (24%) であった. 興味あることに分泌期の5/6例 (83.3%) のPapanicolaon標本にNIを認めた.
    Papanicolaou標本における各種細胞の出現頻度は, 化生細胞76%, 修復細胞28%であった. 好中球は52%の症例で増加を示したが, かなりの増加 (卅) を示したのは12%であった. 幼若リンパ球は80%の症例に認め, 総好中球・リンパ球数に対する割合は7例が10‰ 以上であった. また, 組織球は18例 (72%) にみられた.
    今回の検索では本邦においても欧米とほぼ同じC. trachomatisの潜在罹患者の存在が示唆された. また, Papanicolaou標本でC. trachomatis感染を診断するためには, NIの検出はもとより, 化生・修復細胞や幼若リンパ球の出現および一部の粘液に沿ってのみ球菌状のものが密在する所見は, 副所見として重要と思われた.
  • 浅見 正敏, 川口 幹夫, 石渡 仁深, 栗原 正美, 木村 雄二
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1043-1047
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    56歳, 男性の気管支擦過標本で核内封入体を認めた, 肺胞II型上皮細胞型肺腺癌を報告する.
    1. 気管支擦過標本にみられた腺癌細胞の核内封入体は, 2.5μmから10.0μmの類円形または不整形で空胞状であった.
    2. 組織標本に認めた好酸性核内封入体は超微構造上, 細管状を呈した.
    3. 気管支擦過標本にみられた腺癌細胞の核内封入体は, 甲状腺癌の細胞質陥入像と異なる形態であった.
  • 鬼塚 正孝, 赤荻 栄一, 山部 克己, 塚田 博, 船越 尚哉, 石川 成美, 小川 功, 森田 理一郎, 村山 史雄, 中川 晴夫, 村 ...
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1048-1051
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸部X線写真上肺野腫瘤状陰影を呈した2例の非腫瘍性肺良性疾患の擦過細胞診に出現した異型細胞について検討した. 第1例は4O歳主婦の器質化肺炎例で, 核小体の著しく肥大した大型の類円形の核を有する異型細胞を認めた. この細胞の核所見からのみでは高分化腺癌との鑑別が困難であったが, 細胞の数が少なく結合性の強いことが悪性との鑑別の要点であると考えられた. 第2例は33歳の主婦で, 肺硬塞発症後3~4日めに核小体の目立つ未熟な扁平上皮化生細胞に類似した細胞を認め, 組織修復細胞との関連が考えられた.
  • 三浦 弘資, 川井 俊郎, 小林 誠一, 斎藤 建, 市村 直司, 芳賀 美子, 羽石 惠理子, 久保野 幸子
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1052-1059
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸水に腫瘍細胞が出現した悪性血管内皮腫の3例を経験した. そのうち1症例では, 喀痰にも腫瘍細胞が出現した. 第1症例はきれいなangiomatous patternを示し比較的分化はよく, 第2症例はangiomatous pattern不明瞭で異型性の強い細胞よりなり分化は低くundifferentiated typeが主体であり, 第3症例は原発巣はspindle cell typeであったが転移巣ではspindle ce1lに乏しく, undifferentiated typeを呈する悪性血管内皮腫であった. その細胞像は, 出血性の背景に第1症例では, 小型類円形で偏在性の核をもつ比較的大きさのそろった異型細胞が散在性ないしclusterとしてみられ, ロゼット状配列や血管腔を思わせる配列があり, 喀痰中には上皮性を思わせるシート状配列がみられた. 第2症例では, 類円形小型の細胞からその約3倍はある大型多稜形のものまで多形性の強い異型細胞が散在性にみられ, 多核異型細胞も混在していた. 第3症例は, 原発巣では比較的細長い細胞質突起をもつspindle cellが日立ったが, 胸水中では多核異型細胞を混じえた多形性の強い異型細胞が遊離散在性または, clusterを作ってみられ, 部分的に空胞状の細胞質を有していた. パラフィン包埋切片および捺印細胞にて, 第VIII因子関連抗原は3症例とも陽性を示した. 電顕的には, Weibel-Palade bodyはみいだし得なかった.
  • 臨床細胞学的検討
    須田 耕一, 三俣 昌子, 小山 敏雄, 弓納持 勉, 石井 喜雄, 早川 直美, 飯野 捷子, 谷中 誠
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1060-1064
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Letterer-Siwe病の2例を臨床細胞学的に検討した. 症例Iは1歳男児で皮膚の点状出血を主訴として来院. 皮膚表面の捺印による細胞診にて細胞質に富んだ組織球性の腫瘍細胞がみられ, 核の中央部が彎入していた. 症例IIは1歳5ヵ月の女児で頸部リンパ節腫脹にて来院し, 躯幹などに黄色小結節斑を認め, 骨には多発性にosteolytic lesionを認めた. 皮膚生検割面の捺印標本にて核の切れ込みを伴った組織球性の腫瘍細胞が認められた. このように2例の組織球性細胞の核所見は, 感染症などにみられる反応性組織球増多症には出現することのない特徴的なもので細胞診断上特に有用である.
  • 郡谷 裕子, 小谷 広子, 水谷 雅生, 杉原 誠一, 松田 実
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1065-1068
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    喀痰中に軟骨肉腫細胞が出現した胸椎原発軟骨肉腫の1例を報告する. 患者は, 54歳, 男性, 右肩甲部, 右肘関節部の軽度の疼痛を主訴として来院. 胸部X線撮影の結果, 縦隔腫瘍が疑われ, 手術が施行された. 臨床的に腫瘍は, 第1, 第2胸椎間原発と考えられた. その後, 局所再発を繰り返し, 縦隔, 肋骨, 右肺へと浸潤部位が拡大し, 7年後に胸髄損傷による呼吸不全にて死亡した. 腫瘍の右肺への著明な浸潤により, 喀痰中に腫瘍細胞を多数認めた. 腫瘍細胞は, ヘマトキシリンに淡く染まる軟骨基質様物質とともに, 1~数個の細胞がシート状に認めれた. 細胞質はライトグリーンに好染し, 円形ないし多辺形, 核は中心性にて, 円ないし類円形であった. 核の大小不同は著明でなかった. まれに2核細胞も認められた. 核小体は円形で大きく, 主として1個認められた.
  • 石井 保吉, 若林 富枝, 糸柳 尚代, 後藤 昭子, 張堂 康司, 藤井 雅彦, 萩原 勁
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1069-1073
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳頭分泌物の細胞診は細胞成分が得られにくく, また標本の乾燥などにより判定の困難なことが少なくない. 著者らは乳頭分泌物の集細胞法としてYM液を用いた蓄乳法を考案した方法は, YM液の入ったスピッツグラスに乳頭分泌物を3~4日間貯めさせ, これを検体として遠心沈澱塗抹, 乾燥させ, さらに滴下式瞬間固定液にて固定して行うものである. また, 細胞の剥離防止のためスライドグラスは0.1%poly-L-lysine coating処理したものを用いる. 本法を乳頭異常分泌物を訴えて東京都がん検診センターを受診した者を対象に行ったところ, 触診にて腫瘤を触知しなかった2例の乳癌を発見できた.
    蓄乳法による2例の乳癌の細胞像は直接塗抹法によるものよりやや濃縮傾向にあるが, 細胞集塊, それからの逸脱像, 相互封入像, 核内構造などは十分に観察できた. 加えて, 従来の方法に比べて数倍~数十倍もの細胞量が得られるため, 情報量がはるかに多くなり, より確実な判定が可能であった.
  • 河原 栄, 小田 恵夫, 八木 雅夫, 吉光 外宏, 小坂 健夫
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1074-1079
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    経皮経肝胆管造影ドレナージ (PTCD) 胆汁細胞診により腺扁平上皮癌が疑われた肝外胆管および肝門部胆管癌の3例を報告した.
    症例1は70歳の男性. PTCD胆汁細胞診では多数の線維型角化扁平上皮癌細胞と少数の腺型異型細胞の集塊が認められた. 開腹術にて肝門部の腫瘍が確認された. 術後出現した腹水中には多数の腺癌細胞が認められた. 症例2は68歳の男性. 細胞診では多数の小型腺癌細胞のほかに, 中心性核と重厚で層状構造の細胞質をもつ扁平上皮癌様細胞が少数混在していた. 組織学的には, 中部胆管から下部胆管に広がる腺扁平上皮癌であった. 症例3は38歳の男性. 細胞診で多数の腺癌細胞と, 症例2にみられたと同様の扁平上皮癌様細胞が少数認められたので腺扁平上皮癌を疑つた. しかし, 組織学的には下部胆管の低分化腺癌であった.
    胆管癌の組織型に関するPTCD胆汁細胞像と組織学的所見との差異について考察を行った.
  • 平井 康夫, 福田 耕一, 藤本 郁野, 山内 一弘, 荷見 勝彦, 増淵 一正, 坂本 穆彦, 都竹 正文, 平田 守男, 稲葉 憲之, ...
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1080-1085
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    50歳, 女性の子宮付属器に発生した悪性腹膜中皮腫を経験したので, 細胞所見, 組織所見について報告する. 患者は卵巣癌を疑われ開腹手術をうけた. 超手拳大の腫瘍が付属器に限局してみられ, 単純子宮全摘術, 両付属器切除, 大網部分切除術が施行された. 腫瘍の捺印細胞診では, 上皮性の結合を示すやや小型の腫瘍細胞と, 散在性に出現する非上皮性形態を示す大型の腫瘍細胞が混在して認められ中胚葉性混合腫瘍を思わせた. 術前の腹水細胞診でも紡錘形の胞体をもつ異型細胞をごく少数認めたが, 確診はできなかった. 組織学的には, 付属器の漿膜面に限局して, 管状, 乳頭状ないし髄様構造をもつ腫瘍が認められたがはっきりした非上皮性部分はなく, 限局性, 上皮型の悪性腹膜申皮腫と診断された. PAS染色陰性, Alcian blue染色で一部陽性となり, これはhyaluronidase処理で消失した. 電顕では細胞の管腔面や細胞間隙腔に細長い微絨毛が多数認められた. 免疫組織化学的に各種腫瘍マーカーの染色を試みたが, ヒトケラチン蛋白, epithelialmembrane antigen, CA125で陽性所見が得られ, carcinoembryonic antigen (CEA) は陰性であった.
  • 特にその細胞像について
    譜久山 當晃, 松井 武寿, 保泉 恵子, 江良 英人, 塩原 明子, 石原 理, 松沢 真澄, 田久保 海誉, 北野 元生, 高山 昇二郎
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1086-1091
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    52歳女性の腟原発の悪性線維性組織球腫 (MFH) を経験したので報告する. 5ヵ月前に腟壁の腫瘤切除術を受け, 同部位に腫瘤が再発した. 腫瘤は前腟壁2/3と傍腟組織へ浸潤し, 5ヵ月後肝転移, 骨転移などの全身転移のため死亡した. 細胞所見としては, 線維芽細胞様細胞, 組織球様細胞, 単核および多核異型巨細胞が認められ, ほかに奇妙な裸核巨細胞も散見された. 線維芽細胞様細胞は, 異型がやや弱く少数存在し, 組織球様細胞はおもに異型の強い細胞で多数出現し, 一部細胞質に貪食能を示唆する黄緑色の顆粒状物質を認めた. 病理組織学的所見としては, 線維芽細胞様細胞と組織球様細胞が混在し, 多数の単核および多核細胞が存在し, storiform patternを認めた. 電顕的にもMFHを支持する所見が得られ, 酵素抗体間接法で, S-100蛋白, α1-antichymotripsin染色陽性であった. 腟細胞診において, 前記の臨床細胞学的所見の存在する場合にはまれではあるがMFHの存在を考慮する必要があると思われた.
  • 細胞像と組織像
    谷 啓光, 児玉 省二, 柳原 敏宏, 黒瀬 高明, 田中 耕平, 竹内 裕, 金子 義晴, 樋口 正臣, 半藤 保
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1092-1096
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    術前の擦過細胞診が陰性を示した子宮頸部浸潤癌2例を経験した. これらは肉眼的に乳頭状に増殖した腫瘍で, 細胞診では角化細胞が多く出現しており, 明らかな悪性像はなかった. しかし, 生検組織診で, 1例は高分化角化型扁平上皮癌, ほかの1例はきわめてまれなverrucous carcinomaであった. 前者では, 進行期分類Ib期の診断で, 広汎性子宮全摘術を行い, 術後1年1ヵ月を経過した現在, 再発を認めていない. 後者はmb期の診断で, 化学療法を施行したが, 効果なく, 永眠された.
    これら2例の細胞学的, 組織学的診断上の問題点を文献的考察を加えて検討した.
    verrucous carcinomaは, その組織像から予期されるように, 細胞診で陰性を示しやすい. おもな症例報告をまとめると, 細胞診陰性率は84.6%と高く, 本疾患における細胞診の限界を示している.
    これら2例とhuman papilloma virusとの関連を検索した。電顕ではviral particle陰性, 抗papilloma virus抗体を用いた酵素抗体法も陰性であった.
  • 熊谷 清, 森 一磨, 柏崎 好美, 菊池 良知, 武知 公博, 大村 剛, 高木 実
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1097-1102
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸水細胞診でmirror ball patternを認め卵巣clear cell carcinomaと診断し得た1症例を経験したので報告する.
    患者は48歳の主婦で, 半年ほど前から右の下腹部痛を訴えていた.その後胸水が貯留, 胸水の細胞診でsignet ring type悪性細胞およびmirror ball pattern の出現する卵巣類中腎腫が強く疑われた. 内診所見では子宮の左側に手拳大の腫瘍が確認され, 卵巣悪性腫瘍の診断で単純子宮全摘および両付属器摘除術を行った. 術後の組織検査では卵巣clear cell carcinomaであった.
    胸水の細胞診で, 2~3個の印環型空胞を含む細胞が集塊となり, これが散在しているなかに少数のmirror ballpatternがみられた. 腹水の細胞像では胸水のものとほぼ同様の所見であり, mirror ball patternが数多くみられたほか, 少数のpsammoma bodyも確認された. 胸水および腹水のなかにmirror ball patternを呈した卵巣clear cell carcinomaの報告は今までになく, その発生過程について若干の考察を行ってみた.
  • 上坊 敏子, 安西 弦, 蔵本 博行, 佐々木 憲一
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1103-1108
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな腫瘍である子宮頸部原発のadenoid cystic carcinomaを経験したので, その細胞像とともに, 組織像・電顕像について報告する. 細胞診では, 大小不同性に乏しい小型の腫瘍細胞が, 重積性著明な集塊を形成して出現している. 核は類円形~楕円形で, 大小不同性は乏しい. 核クロマチンは増量しているが, その分布は均等である. 小型の核小体を認める細胞もある. 細胞質は乏しく, レース状で, ライト・グリーンに淡染する. 孤立性に, あるいは重積性ある細胞集塊中にglobules of mucusが散見される. このほかに, 大型で厚い細胞質を有する異型細胞を少数認めた. 組織学的には, 小型で比較的均一な腫瘍細胞よりなり, 少量の結合織で大小の胞巣に分けられている. 胞巣内には嚢胞状部分を認め, 全体として, いわゆる篩状構造を呈している. この嚢胞状部分は, PAS染色では陰性であり, Alcian Blue染色では陽性であったが, hyaluronidase消化によって陰性化した. 腫瘍細胞のごく一部には, 分化型扁平上皮癌と判定される像も認められる. 電顕像の特徴は, intercellular spaceと基底膜物質に囲まれたpseudocystの存在であった.
  • 水無瀬 昂, 堀江 孝子, 佐藤 力
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1109-1112
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    カルチノイドで卵巣に原発するものは少ない. われわれは腹部腫瘤を主訴とした2例のカルチノイドを経験した.
    1例はムチン粘液性腺腫と合併し, ほかは卵巣甲状腺腫との緊密な関係をもつstrumal carcinoidであった. 組織学的にはいずれも異型性の少ない細胞が線維性の結合織によって境され索状配列を示していた. 核は類円形から円形でクロマチン分布は均一であった. いずれもGrimelius染色で陽性の顆粒を細胞質内に証明できた. 電顕的には電子密度の高い100~200nmの神経内分泌顆粒が細胞質内に確認された。手術時に行った捺印細胞診ではシート状配列を示す異型性の乏しい細胞が観察された.
  • 神田 雄司, 佐藤 智子, 田中 恵, 高階 俊光, 工藤 隆一
    1986 年 25 巻 6 号 p. 1113-1118
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣癌由来の癌細胞が子宮内膜, 腟頸管に出現し, かつpsammoma bodyが認められることは非常にまれである.
    著者らは, 卵巣癌由来の悪性細胞とpsammoma bodyを腟頸管細胞診および子富内膜細胞診で観察した症例を2例経験したので報告する.
    第1例は, 腹水が存在し子宮内膜, 頸管に転移病巣が認められないが, 腟頸管細胞診, 子宮内膜吸引細胞診に腺癌細胞とpsammoma bodyが観察された.
    第2例は, 子宮内膜に卵巣癌の転移が認められた症例で, 腟頸管細胞診, 子宮内膜吸引細胞診に腺癌細胞とpsammoma bodyが認められた. これらの細胞像より卵巣癌が疑われ, 2例とも, serous cystadenocarcinomaであった.
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