日本臨床細胞学会雑誌
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25 巻 , 4 号
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  • 原島 三郎
    1986 年 25 巻 4 号 p. 602-609
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞診において, Papanicolaou染色法についで使用されているGiemsa染色法 (1904), May-Grunwald-Giemsa染色法 (1908) とWright染色法 (1902) について原法の内容と発表年度を調査し, 原法と現在用いられている変法との問の染色方法の変遷について検討した.
    Giemsa染色法では蒸留水を用いた原法よりリン酸緩衝液を用いる変法の方が良好な染色所見を示した.May-Grunwald-Giemsa染色法では原法変法ともに良好な染色所見を示した.Wright染色法では原法より変法の方が良好な染色所見を示した.
    これらの染色法の歴史についてみると, メチレン青とエオジンの単純な混合液の染色より始まり, メチレンァズールを含みRomanowsky効果を有する染色法に発展し, 至適pHの検討によりリン酸緩衝液が使用されて安定した染色所見が得られるようになった.
    現在世界中で広く, これらの方法は用いられているが, 染色方法のより簡略化が研究されている.
  • 牛込 新一郎, 高桑 俊文, 田所 衛, 有福 三重子, 森脇 友子, 星川 咲子
    1986 年 25 巻 4 号 p. 610-614
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    破骨細胞様の多核巨細胞を伴う骨病変にはいろいろある.このなかで, 腫瘍病変を取りあげ, 鑑別診断上の細胞学的特徴を明らかにするための検討を行った.材料は, 骨巨細胞腫 (2例), 軟骨芽細胞腫 (3), 非骨化性線維腫 (2), 骨芽細胞腫 (1), 多核巨細胞に富む骨肉腫 (2) の吸引生検かオープンバイオプシーの塗抹標本を用いた.Pap.染色, ギムザ, PAS染色のほかに, S-100蛋白, 血液凝固13因子, A1-Paseの抗血清を用い, avidin-biotin-peroxidasecomplex法により免疫染色を施し, 観察した.いずれも, 多核巨細胞以外の腫瘍細胞, すなわち巨細胞腫におけるいわゆる「間質細胞」, 軟骨芽細胞における類円形, 多角形細胞, 非骨化性線維腫の紡錘形細胞, 骨芽細胞腫における骨芽細胞に, それぞれ細胞学的特徴が観察された.骨肉腫では悪性を示唆する核をもつ骨芽細胞がみられた.S-100蛋白は軟骨芽細胞腫の細胞にのみ, A1-Paseは骨芽細胞に陽性像が得られた.13因子は巨細胞腫と非骨化性線維腫の紡錘形細胞に陽性であった.一方, 多核巨細胞の核数の分布をみると, 各腫瘍間で参考となる多少の相違がみられた.
  • 牛込 新一郎, 田所 衛, 高木 正之, 森脇 友子, 有福 三重子, 星川 咲子
    1986 年 25 巻 4 号 p. 615-620
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    軟骨形成を主体とする骨腫瘍にはいろいろあり, その組織診断, ことに良・悪性の区別に難渋することがある.これら腫瘍の細胞学的鑑別点を明らかにするため, 吸引生検, 掻爬, 切除標本などの塗抹標本を用いて検討した.
    症例は内軟骨腫 (4例), 骨軟骨腫 (3), 軟骨芽細胞腫 (3), 通常の軟骨肉腫 (3), 脱分化型軟骨肉腫 (1), 軟骨形成を主体とする骨肉腫 (3) である. Pap.染色のほか, ギムザ, PAS染色を施し, さらにS-100蛋白の抗血清を用い免疫染色も行い検討した.細胞所見として, 腫瘍細胞と密接する軟骨基質を認めることが軟骨性腫瘍の良い指標となった.核の変化, ことに核の腫大, N/C比の増大, 2核-多核の細胞などが悪性を示唆する所見であった.軟骨芽細胞腫は類円形, 多角形の割合特徴的な細胞, 核所見を呈した.S-100蛋白は軟骨細胞と軟骨芽細胞の細胞質と核に陽性を示した.骨肉腫は軟骨性細胞のほかに, 悪性を示唆する核をもつ骨芽細胞を認めることが鑑別上重要であった.さらに, これらの腫瘍における軟骨性細胞の核と細胞の平均直径を計測し, その分布をみると, 良性, 悪性とでそれらのパターンの相違がみられ, 参考となる所見と思われた.
  • 榛澤 清昭, 石岡 国春, 及川 正道, 浅木 茂, 佐藤 明, 豊原 時秋, 梅津 佳英
    1986 年 25 巻 4 号 p. 621-630
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    内視鏡直視下生検材料について, 胃粘膜の細胞核内DNA量を測定し, 次の結果を得た.1.正常粘膜に比べて潰瘍の再生性粘膜の平均核内DNA量は高く, なかでも修復期では活動期や瘢痕期に比較して高かった. 2.ポリペクトミー後の潰瘍は細胞分裂直後の細胞比率が高く, 盛んな修復活動が推定された.他方, 再発性潰瘍では不均一な細胞回転が想定された. 3. 胃癌病変ではDNA量, 分散傾向, 多倍体出現率などで良性病変に比較して有意に高かった. ヒストグラムをI-III型に分類すると, 深達度粘膜層の癌 (rn癌) と粘膜下組織層以下に浸潤した癌との間に差を認め, またリンパ管侵襲度とヒストグラムの各型とを比較すると一部を除き関連を認めた. 癌の組織学的分化度とヒストグラムパターンは一定の相関を認めなかった. 4. 異型上皮では, DNA量は正常粘膜との中間にあったが, 3c以上または4c以上の多倍体出現率のみで比較すると, 一部に癌病変と鑑別困難な例を認めた.しかしII型早期胃癌との鑑別や経過観察を含めた異型上皮の治療指針には有用と思われた.
  • 山本 玲子, 野口 左内, 竜田 正晴, 春日井 博志, 和田 昭, 田村 宏
    1986 年 25 巻 4 号 p. 631-640
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    昭和57年4月より59年9月までの間に, 術前に超音波映像下に肝穿刺を施行し, 29例 (高分化肝細胞癌14例, 中等度分化肝細胞癌4例, 低分化肝細胞癌5例, 未分化型肝細胞癌1例, 肝細胞癌・胆管細胞癌の混合型2例, 肝内胆管癌3例) の切除可能な原発性肝腫瘍を経験した.このうち, 高分化肝細胞癌, 中等度分化肝細胞癌および肝内胆管癌については, その細胞学的診断は容易であった.しかし, 低分化肝細胞癌と肝細胞癌・胆管細胞癌の混合型は類似点が多く, 特に混合型は粘液染色にほとんど反応せず, 両者の鑑別は困難であった.検索の結果, 光顕的に低分化肝細胞癌と異なる点は, 混合型の方が, 1) クロマチンパターンが粗いこと, 2) 細胞質内に黄褐色顆粒が認められることの2点であった.しかし, 透過型電子顕微鏡的観察によって, 低分化肝細胞癌は肝細胞の典型構造を示したのに対し, 混合型では, 一腫瘍細胞内に肝細胞と胆管上皮細胞の両者の要素の併存が認められた.
  • 畠山 重春, 戸谷 恵美子, 土屋 真一
    1986 年 25 巻 4 号 p. 641-645
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳癌細胞に多く出現する細胞質内小腺腔 (Intracytoplasmic lumina, ICLs) の光顕標本上での形態を検討した.
    検索には通常型乳癌53例, 特殊型4例, 計57例からの穿刺吸引スメアおよび捺印標本を用いた.ICLsは内腔に分泌物を認める型 (A型) と認めない型 (B型) の2種に分け, 前者はさらに分泌物の状態から明瞭な分泌物をもつ型 (A-I型) と, 不明瞭な分泌物しか含まない型 (A-II型) に区別した.B型は変性空胞との鑑別に過ヨーソ酸シッフ (PAS) 反応が有用であった.ICLsは3-12μm大で1つの細胞内に2-3個みられたり, A-I, A-II, B型が1つの集団内に混在している場合もあった.ICLsの出現率をPapanicolaou (Pap.) 染色標本でみたところ, 通常型53例中26例 (49.1%) で, 特に硬癌ではA型が高頻度にみられた.良性例にはほとんど出現せずICLsは悪性を疑う所見の1つとして重要と考えられた.
  • 土屋 真一, 丸山 雄造, 小池 綏男, 山田 邦雄, 小林 康人, 東 靖宏, 加賀谷 昇
    1986 年 25 巻 4 号 p. 646-653
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺双極裸核の本態と起源を知る日的で, 線維腺腫15例の穿刺・捺印細胞診標本を用いて, 酵素組織学 (adenosine triphosphatase, ATPase染色) 的, 超微形態学的に検索した.線維腺腫細胞診の背景に現れる細胞群は, おもに楕円形, 紡錘形および濃縮状円形核を有する3型に大別されたが, 双極裸核に相当するものは, 楕円形, 紡錘形の核をもつ細胞であり, 濃縮状円形核は, 変性によるものと考えられ, 双極裸核の範疇には入れがたいと思われた.筋上皮細胞に特異的なATPase染色では, 上記の細胞群には, 一部の例外を除き, 全く染色されなかった.超微形態学的に, 楕円形, 紡錘形の核をもつ双極裸核には狭小ながら細胞質が認められ, 小器官も, ミトコンドリア, 粗面小胞体, 遊離リボゾームが存在し, 線維芽細胞に類似していたが, 筋上皮細胞に特徴的な暗斑をもつ微細線維は認められなかった.これまで, 双極裸核は筋上皮細胞がその大部分を占めるとい'われているが, その本態の中心は線維芽細胞であり, 一部に筋上皮細胞と腺細胞を混じているものと解された.線維腺腫15例, 乳癌87例, 乳腺症21例の双極裸核の出現頻度は, それぞれ67.1, 24.3, 35%であった.
  • 山内 修, 神田 雄司, 草薙 鉄也, 高階 俊光, 工藤 隆一
    1986 年 25 巻 4 号 p. 654-659
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Krukenberg tumorにおいて, 子宮頸部細胞診あるいは子宮内膜細胞診に腫瘍細胞が出現することはまれである・われわれは, Krukenberg tumorと診断された10症例中, 子宮頸部あるいは内膜細胞診で疑陽性・陽性であった症例を3例経験したので, これらの症例と剥離細胞像の特徴について報告する.
    1) 子宮頸部あるいは子宮内膜に転移巣が存在した症例と腹水を合併した症例の細胞診に異常細胞が認められた.
    細胞診の特徴として, 腫瘍背景に乏しく, 大型の粘液空胞をもつ異常細胞が, 比較的少数の細胞集団として出現する所見があげられる.
    2) 腫瘍細胞の核の平均長径・短径は, それぞれ10.36±1.80μ, 7.44±1.39μ であって, 原発性頸部腺癌の核より若干小さい傾向が認められた.
  • 野田 信之, 久保 久光, 都竹 正文, 平田 守男, 坂本 穆彦, 赤澤 憲治
    1986 年 25 巻 4 号 p. 660-667
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1978年1月より1984年12月までの7年間に, 癌研究会附属病院婦人科において, 子宮摘出された子宮体部悪性ミューラー管混合腫瘍で, かつ間質肉腫, 平滑筋肉腫, 横紋筋肉腫の各成分単独と混在の6症例について, 子宮腔内吸引細胞診に出現した異常細胞を7種の細胞形態に分類し, 各細胞形態の細胞学的検討の結果, 全症例を通じて一定の大きさと一定の核内構造を示す小型裸核異常細胞が出現することをあきらかにした.従来いわれているおたまじゃくし型細胞を, A・B・C型の3型に分類し, その出現頻度および細胞長径を各組織型と対比したことにより組織型を推定する手がかりが得られた.1) 平滑筋肉腫および横紋筋肉腫単独例では, A型が高率に出現するのに対し, 間質肉腫が混在すると, B型が高率に出現すること, 2) 4症例を通じて平均細胞長径を同じくするB型細胞は, 平滑筋肉腫成分を含む症例では, A型より大きく, 横紋筋肉腫成分を含む症例では, A型より小さいなど特徴的所見が得られた.
  • 高林 晴夫, 桑原 惣隆
    1986 年 25 巻 4 号 p. 668-675
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    異常妊娠および絨毛性疾患のflow cytometryによる病態解明を目的として, 生理的, 病的条件下のヒト絨毛組織細胞の相対的核DNA螢光量を測定し, その増殖動態を検討した.
    絨毛組織 (妊娠初期, 妊娠後期, 流産, 重症悪阻, 妊娠中毒症, 胞状奇胎) を採取し, クエン酸処理法により裸核化した.裸核化した検体を固定後, propidium iodideにて染色し, Cytofluorograf50Hにより相対的核DNA量を測定した.データは, Friedの解析法とTakahashiの解析法を折衷し藤川 (1984) の開発したcell cycle analysis program (Fujikawaの解析法) により解析した.その結果は, 以下のとおりである.
    1. 妊娠前期において, 妊娠後期と比較して, 増殖期細胞の顕著な増加がみられた.polyploidyやaneuploidyはみられなかった.
    2. 異常妊娠において, その増殖動態に正常群と相違がみられ, 病態解明の一助となることが示された.
    3. 胞状奇胎群において, きわめて盛んな細胞増殖状態が示され, またすべての例においてhypertetraploidyがみられた.
    4. 増殖期細胞の主要細胞はcytotrophoblastであり, HCG分泌機構との関連も示唆された.
  • 椎名 義雄, 飯島 淳子, 依田 さつき, 沢田 好明, 武田 敏
    1986 年 25 巻 4 号 p. 676-682
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞学的にherpessimplexvirus (HSV) 感染と診断された患者から得られた婦人科スミアに対し, 細胞学的・免疫細胞化学的観察を行った.観察した365個の細胞は形態学的にHSV感染と診断できる250個とHSV感染の疑われた115個の細胞に分けた.そして, Papanicolaou標本脱色後に抗HSV type II家兎血清を用い, 酵素抗体間接法で染色した.
    免疫陽性反応はHSV感染と診断された細胞では250個中223 (89.2%) 個, HSV感染が疑われた細胞では115個中93 (80.9%) 個にみられた, よって, 細胞学的にHSV感染が疑われた症例のPapanicolaou脱色標本に酵素抗体法を応用することの意義を認めた.しかし, 細胞質が変性により好酸性を示した感染細胞では, 著しい免疫反応の低下がみられた.
    細胞形態学的にHSV感染が疑われた細胞の核が好塩基性小顆粒を伴う空胞を含むことが重要であった.さらにPapanicolaou標本において重積性や濃染性核の存在もHSV感染の診断のために無視すべきでないと思われる.
  • 田勢 亨, 及川 直弘, 土岐 利彦, 和田 裕一, 矢嶋 聰
    1986 年 25 巻 4 号 p. 683-689
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Human papillomavirus (HPV) とcervical intraepithelial neoplasia (CIN) との関連性を知るために, 外陰condylomaをもつ患者24例の子宮頸部病変およびsexualpaftnerを検索し, 以下の結果を得た.
    1) colposcopyでは, 全例にwhite epithelium (W), punctation (P), mosaic (M) などの異常所見が認められた.
    2) 子宮頸部組織診では, metaplasia: 9例, CIN1: 10例, CIN2: 2例, CIN3: 3例であり, 24例中15例 (63%) にCINが認められた.
    3) 組織学的には, 24例中19例 (79%) に, 子宮頸部のHPV感染陽性の所見がみられた.
    4) immunoperoxidase法では, 24例中5例 (21%) のみに子宮頸部のHPV structural antigenが検出された.
    5) sexual partnerの検索では, 21例中12例 (58%) に陰茎condylomaが認められた, また, 子宮頸部病変がmetaplasiaであった症例に比べて, CINの認められた症例ではsexual partnerに陰茎condylomaの認められた割合は有意に高かった (p<0.005).
  • 水内 英充, 工藤 隆一, 田村 元, 熊井 健得, 塚原 国比古, 佐藤 賢一郎, 橋本 正淑
    1986 年 25 巻 4 号 p. 690-696
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    酵素抗体法の走査電顕への応用を試みるべく, 酵素抗体法を行った遊離細胞を光顕で観察した後さらに同一細胞を走査電顕で観察するための試料作製法について検討した.
    (1) 材料はリンパ節のインプリントスメアから得られたリンパ球を用い, リンパ球表面マーカーである抗Leu1, 2a, 3a抗体を使用した酵素抗体法を行った.
    (2) 固定液は0.25%グルタールアルデハイド, PLP単独, 0.025%グルタールアルデハイド加2%パラホルムアルデヒド, 95%エタノール, メタノール, 95%エタノール・エーテル混合液の各種について検討した.走査電顕観察には0.25%グルタールアルデハイドが最も良い保存状態を示した.また, 酵素抗体反応も0.25%グルタールアルデハイドで満足すべき結果が得られた.
    (3) メチルグリーン核染色の影響は表面構造上認められなかった.
    (4) 内因性ペルオキシダーゼ反応のブロック法であるStreefkerkの方法, Isobeらの方法は表面構造へ影響を与えなかった.
    (5) DAB反応の沈着物はmicrovilliなどの微細構造の観察に影響を与えなかった.
    (6) 以上, 目的とする抗原により固定液はその都度選択しなければならないが, 遊離細胞または培養細胞に対し酵素抗体反応を施行後, 反応陽性細胞の表面微細構造を走査電顕で観察することが可能となり, 本法は酵素抗体法の走査電顕への応用法の1つとなりうると思われた.
  • 倉山 英生, 森久保 寛, 信田 重光
    1986 年 25 巻 4 号 p. 697-700
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ヒトインスリノーマの初代培養を9ヵ月間維持し, その間培地中に持続的に高濃度のインスリンおよびソマトスタチンを分泌していることを確認した.
    この細胞集団は, ラ氏島様細胞集塊と, まわりを取り巻く線維芽細胞様集団からなり, 9ヵ月間に前者はほとんど増殖せず, 形態学的にも変化がみられず, 後者は培養初期には増殖がみられたがやがてみられなくなった.
    培地へ分泌されたインスリン量は, 細胞増殖のいかんにかかわらず初期量の約500μU/mlを維持した.ソマトスタチンは, 約100pg/mlを分泌していた.Peroxidase-antiperoxidase法により細胞質内にインスリン分泌顆粒を認めた.
  • 片岡 秀夫, 天野 殖, 笹原 正清, 西岡 淳一, 杉山 繁雄
    1986 年 25 巻 4 号 p. 701-705
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    骨腫瘍の細胞診におけるacidおよびalkaline phosphataseの酵素, 免疫細胞化学的検索の有用性を明らかにする目的で, 胸水中に腫瘍細胞を認めた骨肉腫の1症例について細胞学的, および両酵素に対する酵素および免疫細胞化学的検索を行った.
    胸水の腫瘍細胞の大半は紡錘形であり, 一部の細胞は小型の円形核を多数もつ破骨細胞類似の, あるいは多形性に富む多核巨細胞よりなっており, 生前には非上皮性悪性腫瘍と診断されたが, 骨肉腫および骨巨細胞腫の鑑別は困難であった症例である.
    胸水塗抹標本中の腫瘍細胞のalkaline phosphataseは細胞膜および細胞質に陽性であり, 一方acid phosphataseは陰性であり, 剖検時の腫瘍組織材料に対する組織化学的検索の結果とも一致し, 骨肉腫の診断が確定した.
    細胞診においても, alkaline phosphatase, およびacid phosphataseの検索より, 骨肉腫と骨巨細胞腫の鑑別診断が可能であることが示された.
  • 弘井 誠, 森木 利昭, 橋本 真智子, 松崎 圭祐, 園部 宏, 山根 敏子
    1986 年 25 巻 4 号 p. 706-711
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    55歳男性にみられたhistiocytosis Xの鼠径部皮下腫瘤について, 捺印細胞像, 組織像, 電顕像および核DNA量の測定結果を報告した.腫瘤には, histiocytic cell, xanthoma cell, Touton型, あるいは異物型巨細胞などの浸潤増殖がみられた.histiocytic cellは深い切れ込みを有する核とやや少量の細胞質を有し, 捺印標本, 組織標本ともに免疫組織学的にS100蛋白陽性であった.電顕的には細胞内小器官は比較的良く発達しているが, lysosomeは乏しく, 一部の細胞にLangerhans cell granule (Birbeck顆粒) が認められた.また, histiocytic cellの核DNA量の測定からaneuploidyとG2, S期細胞の増加がみられ, 本例のhistiocytic cellが腫瘍性である可能性が示された.
  • 山上 修, 井口 恵美, 林 茂子, 本田 孝行, 勝山 努, 小林 直樹, 丸山 雄造
    1986 年 25 巻 4 号 p. 712-716
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    脊髄腫瘍の捺印細胞診で印環細胞様腫瘍細胞を多数認め, 転移性腫瘍との鑑別が問題となった症例 (60歳, 男性) を経験した.腫瘍細胞の示す印環細胞様構造の本態は, 1~2個の細胞よりなるependymal tubuleで, 腫瘍は特異な組織像を呈する脳室上衣腫と診断された.悪性印環細胞との鑑別点は, 本腫瘍細胞が繊維性突起を有すること, 細胞異型に乏しいこと, PAS反応が陰性であることの3点である.また, 粘液組織化学的検索により, 腫瘍細胞のsurface coatにglycosaminoglycan (GAG) を認めた.
  • 福田 剛明, 石川 宏, 大西 義久, 長谷川 富淑, 立川 信三, 吉原 正弘, 樋口 正一
    1986 年 25 巻 4 号 p. 717-721
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    酵素抗体法を用いて心膜原発の悪性神経原性腫瘍と診断し得たまれな1症例を経験したので, その細胞診学的および組織学的特徴について報告する.
    症例は54歳の女性で, 呼吸困難を主訴として来院し, 著明な心拡大がみられた.種々の検査から臨床的には縦隔腫瘍が疑われた.手術時の所見では腫瘍は完全に心嚢腔内にのみ限局し, 心前面に位置し, 白色軟, 易出血性で脂肪組織へ浸潤していた.また, 265mlの血性心嚢水を伴っており, 細胞診では均一な細顆粒状のクロマチンを示し, 偏在する核を有するN/C比の比較的小さなきわめて大型の腫瘍細胞がみられ, 中皮由来の細胞とは明らかに異なっていた.組織学的には腫瘍は紡錘形細胞から成り, 細胞密度は高く, 分裂像も多数みられたため悪性腫瘍と判断され, しかもS100蛋白陽性細胞が散在性にみられることから神経原性と診断された.
  • 奥山 隆三, 今井 俊介, 螺良 義彦
    1986 年 25 巻 4 号 p. 722-725
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    頭蓋底部のBlumenbach斜台に原発した脊索腫の1例を報告した.患者は20歳の女性で主訴は複視であった.
    腫瘍は灰白色で軟らかく, 小脳橋角部に浸潤しており, 組織学的には大部分が線維性結合組織で境された小葉構造を呈していた.細胞学的には, 腫瘍細胞は担空胞細胞と空胞を有しない上皮性細胞を認めた.前者は脊索腫に出現する独特の腫瘍細胞で, 大きな細胞質内空胞と偏在した濃染核を有し, PAS染色で細胞質は陽性でmucinを有すると考えられるが細胞質内空胞は陰性であった. 脊索腫はその発育段階によって3つの細胞学的特徴が認められるといわれているが, 本症例は担空胞細胞が大部分を占め比較的悪性度の低い成熟傾向を示す脊索腫であったと考えられる.
  • 清見原 正騎, 石川 武憲, 三次 正春, 田中 浩二, 奥井 寛, 下里 常弘
    1986 年 25 巻 4 号 p. 726-730
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    58歳, 女性の小唾液腺 (頬腺) に発生したacinic cell tumor (腺房細胞腫) の1例の術前診断に, 穿刺吸引細胞診が有効であった症例の概要を報告した.小唾液腺に発生した本腫瘍では, 細胞診の報告例は皆無であり, 今回, その細胞診と既報されている耳下腺発生例の細胞診の対比から, 本腫瘍における細胞診の所見を観察した.
    Papanicolaou染色標本には, 比較的単一で単調な形態の単離細胞や, 集塊または島嶼状の腫瘍細胞群の混在がみられた.円形または類円形の核は偏在し, 均一なクロマチン分布を示し, 核小体も目立たなかった.細胞質は類円形や, または, 偏在する核を要として扇形に広がるものが多く, 核から遠位の辺縁部は不明瞭化する傾向があった.緑色に好染する細胞質には, 分泌顆粒を思わせる小空胞様所見がみられた.N/C比は小さかった.
  • 和田 昭, 石黒 信吾, 山本 玲子, 岸上 義彦, 今岡 真義, 佐々木 洋, 春日井 博志, 市川 長
    1986 年 25 巻 4 号 p. 731-736
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    52歳の男性に発生した有茎性肝外発育型肝細胞癌の1例を報告した.腫瘍は, 肝右葉下面と索状の結合織で連絡し, 23×15×10cm大で, 被膜を有し, 中心部は壊死性変化が高度であった.本来の肝には肝硬変症が認められたが, 腫瘍は存在しなかった. 術前の細胞診では, 腫瘍細胞は巨大で著明な大小不同性, 多形性がみられ, 特に紡錘形のものが多数認められたため, 平滑筋肉腫を強く疑った.しかし, 切除された腫瘍では組織学的に胞巣構造がうかがわれ, 腫瘍のごく一部に索状配列の明らかな肝細胞癌像が認められた. さらに, 電子顕微鏡的に細胞間隙に細胆管様構造が存在したことから, 本腫瘍は肉腫様配列を示す未分化肝細胞癌と診断された. 患者は術後3年になるが, 再発の徴候はなく, 健在である.
  • 中口 竹紀, 小野 勲, 鴇田 尚彦, 相馬 雅行, 石渡 千恵子, 石渡 勇
    1986 年 25 巻 4 号 p. 737-740
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近, われわれは膵臓癌患者の腹水細胞診にglucagonのmonoclonal抗体を用いたPAP法による免疫染色を施し, glucagonomaと診断した1症例を経験した.症例は71歳の婦人で腹部腫瘤と高血糖のため他院より紹介された.超音波診断装置下に生検と腹水が採取された.腹水のPapanicolaou染色標本では, 腫瘍細胞は核の大小不同, 核染色質の粗大凝集性, 核小体の肥大がみられた.細胞質には免疫酵素細胞学的にglucagonが証明された.剖検すると腫瘍は膵体部にあり, 大網と肝臓, 所属リンパ節に転移していた.病理診断はglucagonomaであった.膵体部腫瘍を組織培養すると培養上清中にglucagonが産生されていた.
  • 田久保 海誉, 譜久山 當晃, 松井 武寿, 江良 英人, 高山 昇二郎, 川上 睦美, 並木 崇江
    1986 年 25 巻 4 号 p. 741-745
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    64歳男性の食道偽肉腫の1剖検例について報告した.腫瘍は広基性ポリープ状で, 組織学的におもに紡錘形の肉腫様細胞から成り, 扁平上皮癌を伴っていた.捺印細胞診で全く角化傾向を欠く, ライトグリーン好性の細胞質を有する紡錘形細胞が主として集塊状に出現していた.食道偽肉腫の細胞像の報告は従来乏しいが, 広基性ポリープ状の食道腫瘍より肉腫様細胞の得られたときは, 臨床細胞学的に食道偽肉腫が示唆されると思われた.
  • 畠 榮, 太田 節子, 津嘉山 朝達, 中川 定明
    1986 年 25 巻 4 号 p. 746-750
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    生後2ヵ月の男児の胃に発生した成熟奇形腫の1例を経験した. その吸引, 捺印細胞診像は成熟した扁平上皮, グリア細胞などの外胚葉成分と, 内胚葉成分呼吸器系の線毛円柱上皮, 消化器上皮, それに加えて中胚葉としての骨, 軟骨, 平滑筋, 脂肪細胞が混在した. 少数の未熟な神経系細胞が認められたが, 幼若な胚細胞は認められなかった. これらの点から成熟奇形腫が推測された. 組織学的にも, 成熟した三胚葉成分がみられ, 捺印細胞像を裏づけるような所見を得た. 術後6ヵ月までの観察では再発の兆候はない.
  • 松尾 武, 柴田 正則, 神原 昭吉, 牛尾 利裕, 川田 信吾, 五反田 照三
    1986 年 25 巻 4 号 p. 751-757
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肝嚢胞性病変に穿刺細胞診を行い, 診断できたまれな肝腺扁平上皮癌と肝嚢胞腺癌のそれぞれ1例を経験した.
    肝腺扁平上皮癌の症例は, 72歳の男性で下血, 食欲不振, 腹部膨満を主訴とし, 腹部CT, エコー検査, 血管造影などより肝嚢胞性病変がみつかり, エコー下の穿刺吸引と組織生検が行われ腺扁平上皮癌と診断された.全経過6ヵ月で死亡し剖検された.剖検により肝原発の腺扁平上皮癌とわかり, 右肺下葉, 横隔膜, 右肺門リンパ節に転移がみられた.
    肝嚢胞腺癌の症例は, 51歳の女性で左上腹部腫瘤を主訴とし, 腹部CT, エコー検査で肝嚢胞性病変がみられ, 腹腔鏡検査時に穿刺吸引と組織生検が行われ10wgradeの肝嚢胞腺癌と診断された. その後腹水や右胸水が貯留し, それらの細胞診検査でも同様の腺癌細胞がみられた.肝病巣は増大し周囲への浸潤も疑われるが2年6ヵ月後の現在, 生存中である.
  • 森内 昭, 辻 浩一, 中村 泰也, 後藤 英雄, 阿南 知子, 豊田 長, 玉井 繁信, 鷲見 悦子, 横山 繁生, 山下 裕人
    1986 年 25 巻 4 号 p. 758-763
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺顆粒細胞腫の1症例の細胞所見を, 組織および電顕所見と比較検討した.細胞標本で, 典型的な顆粒細胞とAngulated body cellを同定した. 前者は顆粒状で境界不明瞭な広い胞体と大小不同の類円形で, 中心性あるいは偏在性の核を有した. 後者はパパニコロー染色では, 不染性で弱い偏光性のある紡錘形ないし多形な封入体を有し, 境界が比較的明瞭な小型の細胞として, おもに顆粒細胞巣の辺縁部にみられた.これら封入体はPAS染色で濃染した.組織学的にはAngulated body cellは主として顆粒細胞胞巣間の結合組織内にみられ, PAS染色で濃染する封入体を有していた.本細胞は電顕的に線維芽細胞に類似し, 胞体内に紡錘形ないし類円形で微細線維あるいはbimolecular structureから成る封入体が高頻度に出現した.Angulated body cellの細胞診による報告は本報告が最初であるが, 顆粒細胞腫の細胞診では, Angulated body cellの同定は, 顆粒細胞腫の確定診断および鑑別診断には重要な所見と考えられた.
  • 石原 明徳, 上森 昭, 木村 多美子, 脇田 純子, 野村 ひとみ, 小山 英之, 土屋 真一
    1986 年 25 巻 4 号 p. 764-769
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    74歳女性の左乳房に発生した印環細胞癌の細胞像を中心に組織像, 電顕像, ならびに粘液組織化学的所見について報告した.
    乳腺腫瘍の大きさは1.5×1.3cm, 組織学的, 電顕的に典型的な粘液細胞型の印環細胞癌で, 乳管由来を示唆する所見がみられたこと, 消化管などの検査で異常の認められなかったことから乳腺原発と診断した.
    本腫瘍の細胞所見は細胞相互の結合性が弱く, 散在性に出現し, 背景には粘液様物質はみられなかった. 細胞境界は明瞭で, 泡沫状あるいは顆粒状の豊富な胞体はPapanicolaou染色で淡桃色-橙縁色に染色された.核は胞体の一側に偏在し, 類円または腎型で, 顆粒状のクロマチンと小型の核小体が1個観察された. PAS, Alcian blue染色ともに細胞質はびまん性に強陽性で, 粘液組織化学的にはSialomucinとともにSulfomuc並の存在が証明された.
    乳腺印環細胞癌は比較的予後良好な粘液癌に比べ予後不良とされているが, 本例は術後3年3ヵ月の現在, 健在である.
  • 松田 実, 山登 直美
    1986 年 25 巻 4 号 p. 770-773
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺腫瘤穿刺材料に, 上皮細胞とともに, ヘマトキシリンに濃染し, 層状構造を示す砂粒体様石灰を多数認めたため, 細胞診陽性と判定したが, 手術の結果, 腺腫様甲状腺腫であった1例を報告する.
    摘出された腫瘤は大小種々の濾胞よりなり, 間質内に多くの石灰化巣が認められたが, 砂粒体はみいだし得なかった.油浸にて, 細胞診標本にみられた砂粒体様石灰を再度観察すると, 同心円状かつ層状の構造を示すが, 中心部は淡く, 顆粒状ないし泡沫状で, 癌例にみられる真の砂粒体のようにびまん性に染色されていなかった.PAS染色も陰性であり, 本症例にみられた砂粒体様石灰は, 変性や壊死によって生じた石灰沈着がたまたまこのような形を呈したものと考えられた.
  • 小林 省二, 三木 洋, 大森 正樹
    1986 年 25 巻 4 号 p. 774-778
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    破骨細胞様の巨細胞の出現を伴う未分化甲状腺癌はきわめてまれである.症例は72歳の女性で, 右甲状腺の腫瘤に気づき, 穿刺吸引細胞診で多核巨細胞をまじえる悪性細胞がみいだされた.甲状腺の亜全摘とリンパ節の廓清が行われた.細胞診における腫瘍細胞は大小不同性は著明であるが核は円形ないし長円形で, 多形性は弱く, 細胞間の結合性も弱く重積性はほとんどみられなかった.1~2個の赤く明瞭な核小体をもつものが多かった.巨細胞は破骨細胞に似るが, 核数の少ない巨細胞の核は腫瘍細胞の核に酷似していた.組織像では数個から150個ぐらいまでの核を含む巨細胞が多数介在する未分化癌で, 腫瘍のごく一部に乳頭状癌の混在がみられ, 未分化癌の部にしだいに移行していく所見を認めた.電顕的には腫瘍細胞は粗面小胞体とミトコンドリアに富み, 細胞間にはintermediate junction, basal laminaがみられた.また腫瘍細胞間にはmicrovilliの形成を伴う細胞間隙が形成され, コロイド様物質の集積がみられた.合胞化し巨細胞が形成されつつあると考えられる細胞集団にはmicrovilliの形成が一部にみられた.また巨細胞の細胞質に腫瘍細胞が部分的に取り囲まれて, 互いに細胞膜の消失しつつある像も認められた.このような所見は光顕像でもみられ, 上皮性の腫瘍細胞が合胞化して特徴ある多核巨細胞を形成するものと考えられた.
  • 平野 隆, 西宮 克明, 奥仲 哲弥, 小中 千守, 加藤 治文, 早田 義博, 馬場 孝
    1986 年 25 巻 4 号 p. 779-783
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    喀痰細胞診は中心型早期肺癌の早期発見に有用であり, 集団検診にかなり取り入れられてきている.今回著者らは胸部X線写真正面像で1例は右横隔膜陰影に, 1例は肺門部陰影に重なり, 腫瘤陰影を指摘できず, 喀痰細胞診で陽性所見を得て発見された末稍型肺癌 (clinical stage I) の2例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する.最近しばしば報告されるradiological occultcancerの多くは喀痰細胞診の導入によって発見された中枢発生の肺扁平上皮癌である.このような末梢型肺腺癌が喀痰細胞診でみつかったのはまれであり, 貴重な症例である. 喀痰細胞診の重要性を改めて認識させ, 胸部正面写真のみの集団検診の問題点を提起する症例と思う.
  • 鳥居 久二, 岸川 正大
    1986 年 25 巻 4 号 p. 784-788
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性, 右上腹部痛を主訴として来院.胆石および胆嚢炎のほかに, 胆嚢癌が疑われたため入院.入院後6日目に呼吸不全と心不全のため死亡した.
    病理解剖では腹水 (600ml), 胸水 (左350ml, 右640ml), 心嚢液 (500ml), 心臓と心嚢の癒着, 胆石などの所見はみられたが, 肉眼的には腫瘍性の病変はみられなかった.
    心嚢液の細胞診で, 異型細胞を多数認め, Papanicolaou染色では, 悪性細胞と考えられたが肉眼的に腫瘍を認めなかったため, 悪性細胞か反応性中皮細胞か判定に苦慮した.しかし酵素抗体法でCEAおよびケラチンが強陽性であったので癌を強く疑い, 肺を5mm厚で連続cuttingしたところ, 左肺上葉に10×4mmの肺癌を発見することができた.
    本例は剖検時の体腔液細胞診ではあっても酵素抗体法が有用であったことを報告した.
  • 阿部 俊弘, 山田 知之, 中山 吉則, 樋口 英次郎
    1986 年 25 巻 4 号 p. 789-793
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    特徴ある細胞診所見を呈した子宮内膜異型増殖症の1症例を経験したので報告する.症例は52歳の閉経婦人で, 子宮腔内にポリープ状腫瘤を形成し, 組織学的には角化を示す著明な扁平上皮化生と異型腺増殖が認められた.頸部擦過および内膜細胞診には異常角化細胞とともに強いエオジン好性を示す無定形のケラチン様物質 (keration body) が多数認められた.
    本症例には内膜異常のrisk factorであり, hyperestrogenismと関連する肥満と糖尿病がみられたが, これらに加えて組織学的にも炎症所見が著明であったこと, 周囲環境の刺激を受けやすいポリープ状を呈したことなどにより著明な扁平上皮化生をきたしたものと思われた.
  • 畠 榮, 太田 節子, 津嘉山 朝達, 中川 定明
    1986 年 25 巻 4 号 p. 794-799
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    52歳女性の尿道後壁より発生したclear cell adenocarcinomaの1例を経験した. 女性の尿道に発生するclear cell adenocarcinomaは非常にまれで今までに8例の報告をみるにすぎない.
    自験例における剥離細胞像は類円形の細胞が, 平面状あるいは乳頭状に多数認められた. これらの細胞質は広くライト緑好性に淡く染色され繊細な構造を有していた. 組織学的には, 乳頭状に増殖したclear cell adenocarcinomaであった.細胞像, 組織像および, 電子顕微鏡的所見は女性生殖器系に発生するclear cell adenocarcinomaと非常に類似し, Müllerian originが示唆された.
  • 川口 惠子, 石井 広重, 紀川 純三, 青木 智, 冨田 由里香, 大庭 ふみ子
    1986 年 25 巻 4 号 p. 800-807
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    2例の中胚葉性混合腫瘍と1例の横紋筋肉腫を経験したので, その剥離細胞像を中心に報告する.
    症例1: 68歳の中胚葉性混合腫瘍例.子宮体部より腟腔へ突出している腫瘤からの擦過スメアにて多数の非上皮性異型細胞がみられたが, これらの細胞にheterologous elementsに特徴的な所見はなかった.これらの細胞とは別に少数の腺癌細胞も認められた.組織学的には腺癌部分とchondroid類似の構造を有する肉腫部分からなる中胚葉性混合腫瘍であった.
    症例2: 78歳の中胚葉性混合腫瘍例.子宮体部の腫瘤から術中捺印細胞診を行ったところ, 扁平上皮癌を思わせる異型細胞や, 腺癌細胞が多数みられ, 一部には非上皮性の異型細胞がみられたが, heterdogous elementsに特徴的な所見はなかった. 組織学的には扁平上皮化生を伴った腺癌部分と, 横紋筋肉腫よりなる中胚葉性混合腫瘍であった.
    症例3: 77歳の横紋筋肉腫例.子宮体部より腟腔へ突出している腫瘤からの擦過スメアにて非上皮性異型細胞が多数みられ, その一部には横紋が認められた.組織学的にはpleomorphic typeの横紋筋肉腫であった.
  • 神谷 博文, 永井 荘一郎, 酒井 潔, 工藤 隆一
    1986 年 25 巻 4 号 p. 808-815
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌に原発したいわゆるカルチノイド腫瘍症例の1例を報告する. 患者は44歳主婦で不正性器出血, 腰部不快感を訴え来院した. 子宮頸癌IVa期と診断, 放射線療法を行つた. 治療中, 脳転移を併発し死亡した.
    本症例の組織学的特徴ならびに細胞像は以下のごとくである.
    1) 組織像: 腫瘍細胞は小型の紡錘形細胞から構成され, 細胞質は淡く, 好酸性で乏しい.これらの腫瘍細胞は過染性の小円形または嚥麦形の核を有し, 充実性, 索状構造, ロゼット様構造をもって配列している. 腫瘍細胞はGrimelius染色が陽性, Fontana-Masson染色は陰性である. 電顕的には細胞質に神経分泌顆粒が認められた.
    2) 細胞像: 狭小な塩基性細胞質をもち類円形あるいは紡錘形の核を有する小細胞からなる腫瘍細胞が散在性, 平面的に出現する. 核クロマチンは細顆粒状でほぼ均一に分布し核小体も日立つ細胞が多い. 核縁の肥厚はなくときに核分裂像が認められた.
  • 信田 重光
    1986 年 25 巻 4 号 p. 816-822
    発行日: 1986年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    過去30年間の胃癌細胞診の方法論の変遷を自らの経験より概説し, 消化器各臓器における細胞採取法の進歩, 早期癌診断への可能性を自験例を中心に述べた.
    すなわち食道癌早期発見のための細胞診によるスクリーニング法の1つとしてのスポンジ擦過法の有効性を強調し, 早期胃癌診断における生検細胞診同時併用の意義を説き, 一般に等閑視されている胃肉腫, 特に胃悪性リンパ腫診断における細胞診の優位性を述べ, 肝・胆・膵領域癌の診断における各種細胞採取法の特徴を説明し, さらに最近開発されている各種免疫細胞化学的手法の利用により, 1個の細胞の形態と機能の両面を把握することの意義を概説した.
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