日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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26 巻, 1 号
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  • 林 玲子, 上坊 敏子, 蔵本 博行
    1987 年 26 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    無症状, 癌検診希望者4,283例に, 子宮内膜細胞診を用いて体癌検診を行った. その成績をまとめ, 狭義のscreeningとしての体癌検診の有用性の有無について検討した.
    2例に細胞診陽性例を認め, うち1例は子宮体癌で, 発見率は0.02%であった. 他は, intrauterine contraceptive divices (IUD) 装着の誤陽性例 (0.02%) である.
    内膜細胞診によって高い頻度で体癌の発見が期待される要素である, 年齢, 妊娠歴の有無, 閉経の有無いわゆる体癌合併症の有無について検討した. その結果, これらの要素は無症状者中ではなんらの意義もみいだされないことが判明した. 結果は,「何がしかの出血を訴える者」に対象を絞った選択検診の正当性を側面から支持するものであろう.
  • 千綿 教夫, 杉下 匡, 石田 禮載, 佐藤 寛, 有松 直, 天神 美夫
    1987 年 26 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本報告は, 合併症の全くない子宮頸部human papillomavirus (HPV) 感染症における経過観察期間中の細胞診所見の変化と推移について検討したものである. 観察症例は5年の経過を観察し得た1例, 1.6~3.0年の経過を観察中の5例, 計6例である.
    1) これまでに明らかにされている現時的な検鏡によって蓄積されている諸事実は, 長期間の経過を追う経時的な細胞診においても, そのまま適用された.koilocytesは必ずしも毎回出現せず経過のなかで出没を繰り返すものが多く, 5年経過例では6/14回に認められた. dyskeratocytesは比較的しばしば出現していた. 2核, 両染性細胞, 巨細胞, eosinophilic backgroundなどは症例によって一定しなかった.
    2) この調査で注目されたことは, 合併症の全くない子宮頸部HPV感染症においては, 症例ごとにそれぞれ経過を通して観察される1~2の所見をもっていたことである. inmatureな細胞とともに出現する化生細胞が終始認められたもの4例, koilocytesが経過中出現して経過を特徴づけた1例, 2核および巨細胞のもの1例であった.
    3) 5年の経過を観察し得たwarty atypia例では, 観察期間の初期には細胞診, 組織診に確定所見なく, コルポ診のみが本症の存在を明らかにした. しかし観察期間の後期にはコルポ診所見は消失し組織診は不明瞭となり, 細胞診のみが本症の継績を示していた.子宮頸部HPV感染症の経過観察には, コルポ診, 細胞診, 組織診の3者の協同的な判断が大切であろうと思われる.
  • 久保田 浩一, 山崎 健, 河西 十九三, 岩崎 秀昭, 武田 敏, 高見沢 裕吉, 山本 まゆみ, 森山 祐子, 石川 明
    1987 年 26 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1979年から1981年, 1984年から1985年の4年間に千葉県対がん協会による集団検診で細胞診上, ヒトパピローマウイルス (human papilloma virus, HPV) 感染と診断された166例について細胞, 組織学的に検索した.
    1) 年齢別では30歳代は77例 (46.4%), 40歳代は63例 (38%) と多かったが, 相対的な頻度では20歳代は50歳代の7.83倍と最も多かった.
    2) 細胞診にてkeratosisを認めたのは41例 (24.7%), 組織診にてkeratosisを認めたのは15例 (9%) であった.
    3) 組織診でkoilocytotic lesion (KL) のみを認めたのは74例 (44.6%), KLとdysplasiaや癌との合併は5例 (3%), KLを合併しない純粋なdysplasiaやCISは24例 (14.5%) であった.
    4) KLのhistologic patternはflat type 76例, endophytic type 3例であった.
    flat typeのうち7例は細胞診, 組織診から, atypical condylomaと診断された.
    5) KLの周辺の組織像から, endophytic typeは頸管円柱上皮に隣接し, 頸管腺にglandular involvementとしてKLが進展したときにみられることが明らかとなった.
    dysplasiaとKLの合併例ではdysplasiaはKLの腟側に隣接した.
  • 及川 直弘, 土岐 利彦, 田勢 亨, 和田 裕一, 矢嶋 聰, 佐藤 信二
    1987 年 26 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部スミア中にみられた, いわゆるkoilocyteに関して, HPV抗原の存在を免疫組織学的に検討し, また, その超微形態像を, 走査電顕と透過電顕によって観察し, 以下の結果を得た.
    1) 一部のkoilocyteの核内に, PAP法によってHPV抗原の存在が証明された.
    2) 走査電顕像では, 一部のkoilocyteは細胞の中心部が陥凹した, 特異な3次元構造を呈していた.
    3) 透過電顕像では, koilocyteの核周囲に, 電顕的に無構造なスペースが存在し, 一部のkoilocyteでは, human papillomavirusと思われるウイルス様粒子が, 主として核内に認められた.
  • 小池 昇, 樋口 龍夫, 坂井 義太郎
    1987 年 26 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    60歳から98歳までの女性711例の正常腟スミアを用いて “萎縮像” の検討を行った. また65歳から100歳までの女性54例の剖検材料を用いて組織学的背景を検討した.
    萎縮像を示す腟スミアは375例に対し非萎縮像は336例でほぼ半々の割であり, これは加齢による有意の増減を示さなかった.
    萎縮型細胞はシート状ないし合胞状 (S型) 細胞, 裸核 (N型) 細胞, 類円形 (R型) 細胞, 多角形 (P型) 細胞の4型およびその変性像と変形像に分けられた. S型細胞は最も多く出現し (46.1%), 萎縮像の基本となる細胞と考えられた.
    腟壁の扁平上皮組織を成熟型と退縮型に分けると前者は21例 (38.9%), 後者は33例 (61.1%) であり, 両者とも60歳代から90歳代の各年代群に認められ, 100歳の1例は成熟型であった. 退縮型の組織像を観察すると, 上皮細胞は4から8層の旁基底細胞からなり, その形態は一様ではなく, SNRPの各萎縮型細胞に該当する細胞が認められた.
  • 佐々木 綾子, 小幡 憲郎, 竹内 正七, 永井 絵津子
    1987 年 26 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部のadenoma malignum 7例の臨床病理学的ならびに細胞診学的検討を行った.
    1. 患者の平均年齢は48歳で, 4例に帯下の増量, 3例に不正性器出血がみられた.
    2. 全症例に手術が施行され, 2例にはリンパ節転移があり, 術後放射線療法を行ったが再発し死亡した. 1例は癌性腹膜炎のため試験開腹に終わった. ほかの4例は生存中である.
    3. 初診時剥離細胞診では, 5例がクラスIII, 1例がIV, 1例がVであった.
    4. 細胞診像は, きれいな背景に20個以下の比較的少数の細胞が柵状, シート状あるいは不規則重積性に集合し, 豊富な細胞質をもち, ときに粘液空胞や核の偏在がみられるが, クロマチン増量, 核小体肥大, N/C比増大はまれにしか認められなかった.
    5. 術前の生検組織診では, 3例が異型腺上皮, 2例が頸管炎, 1例が転移性腺癌, 1例が腺癌の疑いであった.
  • 堀内 文男, 大木 昌二, 岡田 敏之, 武田 敏, 岩崎 秀昭, 高見沢 裕吉, 計良 恵治, 椎名 義雄, 河西 十九三, 久保田 浩一 ...
    1987 年 26 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    組織学的に子宮頸管炎と診断された161例の生検組織に酵素抗体法PAP (peroxidase antiperoxidase) を応用し, 組織学的にC.trachomatisの検出を試みた.
    1.子宮頸管炎161例中52例にPAP陽性所見を認めた.その頻度は32.3%であった.
    2.年齢別頻度は~30歳, 26.7%, 31~40歳33.3%, 41~50歳, 33.3%, 51~60歳, 35.3%, 61歳~, 16.7%, と各年代にわたり, 30%近くの感染を認めた.
    3.感染細胞は円柱上皮が最も多く, 扁平上皮化生, 扁平上皮の順であった.
    4.感染細胞におけるPAP陽性所見は, 円柱上皮細胞の核に隣接した一側または, 周囲に認められ, 特に腺腔側に出現するものが圧倒的に多く注目された.また, 細胞診で認められる円形様の封入体は少数であった.
    5.一部の症例に螢光抗体法を行い, PAP陽性部位に一致して, 陽性所見を認めた.
  • 1. Chlamydia感染培養細胞の超微形態
    計良 恵治, 堀内 文男, 武田 敏, 椎名 義雄, 橋爪 壮, 吉沢 花子
    1987 年 26 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    臨床細胞学への応用を目的にChlamydiaを感染させたHeLa細胞を電子顕微鏡的に観察した.
    (1) 大部分Reticulate bodyを含む比較的感染初期のHeLa細胞は, 封入体が小型で, 封入体内のChlamydiaの数は少なくまた密に充満していた.
    (2) EIementary・Intermediate bodyの増加した感染中期の細胞では, 封入体は大きく, Chlamydiaの数は増加し, 封入体による核圧排がみられた.
    (3) 大部分Elementary bodyを含む感染細胞では, 封入体内のChlamydiaの数は減少し, 内部は疎になり, 封入体の境界は明瞭である.
    (4) Chlamydiaの大きさは, Elementary body 0.36±0.02μm, Intermediate body 0.47±0.07μm, Reticulate body 0.67±0.44μmであった.
    (5) Chlamydia感染によるHeLa細胞の核・細胞質の変化は, Chlamydia封入体による核圧排のほかは, 核・細胞質ともに軽度であった.
  • 2. ヒト子宮頸部にみられたChlamydia感染細胞の超微形態
    計良 恵治, 堀内 文男, 武田 敏, 椎名 義雄, 石川 明, 高見沢 裕吉
    1987 年 26 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Chlamydia感染が疑われた24例の子宮頸部生検組織を電子顕微鏡 (以下電顕と略) 的に観察し, 2例にChlamydia感染細胞 (以下CICと略) を検出した.
    1. CICは, 扁平・円柱上皮境界部の扁平上皮化生を示す部分の, 大部分は表層にまた一部中層に, 単独~小グループで認められた.
    2. CICの種類は, 化生細胞とみられる細胞のほか, 一部は扁平上皮, 円柱上皮またわずかに細胞質内管腔形成細胞であった.
    3. Chlamydia封入体は, 大部分核近傍の細胞質内にみられ, 形は類円形~軽度不整形, 大きさは約5~10μmで, 封入体の様子はChlamydiaのタイプにより差がみられた.
    4. CICの核質・細胞質は, Chlamydia封入体による核圧排以外, 著しい形態変化はみられない.
    5. 光学顕微鏡 (以下光顕と略) 的にChlamydia封入体とまぎらわしいと思われる細胞質内管腔が電顕的に多数観察された.
  • 長坂 宏一, 石川 昌文, 岩瀬 裕郷, 武田 敏, 秋元 晋
    1987 年 26 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Chlamydia trachomatis (C.trachomatis) は, 近年非淋菌尿道炎 (Non-gonococcal urethritis: NGU) の原因微生物として注目されているが, 細胞診断学的検索は現在まであまりなされていない. そこで, 尿道炎症状を訴えた男性93例から, 直接塗抹標本を作成し, Papanicolaou標本の細胞形態, 螢光抗体法 (IF法: Micm Trak Chlamydia Trachomatis Direct Test, Syva社), 酵素抗体法 (PAP法: クラミジア同定用キット, Ortho社) を施行し, この3者における陽性率および形態について比較検討した. また, 一方これらの症例は同時に細菌学的検索も行い, N.gonorrhoeaeと同定されたものを淋菌性尿道炎 (Gonococcal urethritis: GU) とした. その結果, Papanicolaou標本から封入体細胞は34.4%に出現したが, 封入体自体はPapanicolaou脱色後PAP法において陰性であった. また, 星雲状封入体, あるいはC.trachomatisの特徴的細胞像は認められなかった. しかし, 封入体の出現する症例は, MT法, PAP法により71.9%にC.trachomatisが陽性であった. C.trachomatisの陽性率はNGUで, MT法52.2%, PAP法36.2%であった. また, GUではMT法25.0%, PAP法33.3%が陽性であり, 淋疾後尿道炎の可能性が示唆された. さらに, MT法とPAP法の併用で陽性率は57.0%に上昇し, C.trachomatisの検出には有効と考えられた.
  • 上井 良夫, 岸 紀代三, 塩沢 勇治
    1987 年 26 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮癌細胞診自動化に適した標本を作製するため, 子宮腟部擦過綿球を生食水に入れ綿球に付着した細胞をしぼり出し, これを前回のわれわれの方法で処理した10). 婦人科患者147例について上記方法で標本を作製した (前処理標本) これを細胞分散, 細胞数, 好中球数, 背景の所見より評価すると自動化に適した標本は102例 (69%) 適さないものは45例 (31%) となった.
    次に前処理標本と同時に採取したルチンの子宮腟部擦過標本の癌細胞と異型細胞を両者合わせて30個まで数え, それ以上認めた場合には “多数” として取扱い, 両標本を比較すると, 前者に癌細胞と異型細胞が多かったものあるいは “同じ” ものは64例 (63%), 少なかったものは38例 (37%) で, 特に異形成, 上皮内癌では前処理標本に少ないものが多かった. 前処理操作により癌細胞と異型細胞は減少することがあるので, 細胞診自動化には “異常” と判定しうる最小限の細胞を失わないような前処理法でなければならない.
  • 原発性肺癌の症例を対象にして
    石井 保吉, 藤井 雅彦, 深堀 世津子, 佐久間 市朗, 萩原 勁, 知名 吉江, 斉藤 博子, 大岩 孝司
    1987 年 26 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    YM式蓄痰固定液を用いた集細胞法を, 原発性肺癌患者82例について実施し, 陽性率および細胞像について検討を行った. 検体処理および標本作製方法は, YM液の入った蓄痰容器に早朝痰を3日間喀出させ, これを検体として遠心沈澱, 塗抹, 乾燥させ, 95%エチルアルコールで再固定後パパニコロウ染色を施して行った. また, 細胞の剥離防止のため, スライドグラスは0.1% poly-L-lysine coating処理したものを用いた.
    全体の陽性率は76.8%(63/82) で, 各組織型別に陽性率をみると, 扁平上皮癌87.1%(27/31), 腺癌64.7%(22/34), 小細胞癌86.7%(13/15), 大細胞癌50%(1/2) であった.また, 切除例34例について24例, 70.6%が陽性であった.臨床病期別の陽性率では, I期61.9%(13/21), II期87.5%(7/8), III期77.1%(27/35), IV期76.5%(13/17) であった. 気管支鏡検査を行った80症例についてみると, 気管支鏡にて腫瘍の所見が認められたものは83.0%(44/53), 無所見のものは59.3%(16/27) の陽性率であった.
    本法は手技が容易であり, 組織型の判定も十分可能で, かつ高い陽性率を期待できることから, 肺癌の喀痰細胞診法として集検施設はもちろんのこと, 一般医療機関でも積極的に取り入れる価値のあることが明らかになった.
  • 特に担癌例と非担癌例の差異
    手塚 文明
    1987 年 26 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    硬変肝の肝細胞計測を行い, 担癌例と非担癌例の細胞学的差異を明らかにした. 担癌肝硬変16例と非担癌肝硬変17例および正常対照15例の剖検肝を用い, 次のパラメーターを計測した. NVO (単位容積肝組織中の肝細胞核の個数), D (肝細胞核の平均直径), S (肝細胞核直径の標準偏差) およびN/C (肝細胞の核・胞体容積比). その結果「担癌硬変肝」の非癌部では, NVOの増加, DとSの減少, N/Cの上昇が認められ,「非担癌硬変肝」との間に有意差を示した. 肝細胞癌は硬変肝実質中に多中心性に発生することが多く, 硬変肝偽小葉実質は前癌状態にあるとみなされる. 本研究の結果は, この前癌状態が「N/Cの高い, 核の大小不同性の低い, 小型肝細胞の過形成」によって特徴づけられることを示唆している.
  • 及川 正道, 鈴木 忠泰, 石岡 国春, 三浦 ヨウ子, 佐藤 泰, 佐藤 明, 梅津 佳英, 豊原 時秋, 榛沢 清昭
    1987 年 26 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近10年間の, 膵・胆道系の癌232例に対する液状検体の細胞診成績を検討した. その結果, C-Sテスト十二指腸液細胞診の陽性率 (() 内は治癒切除可能例の陽性率, ただし胆嚢癌は治癒切除例なし) は, 膵癌24%(33%), 胆管癌15%(20%), 胆嚢癌0%, 乳頭部癌40%(43%), ERCP膵液・胆汁細胞診の陽性率は, 膵癌45%(80%), 胆管癌36%(25%), 胆嚢癌33%, 乳頭部癌100%(100%), PTCD胆汁細胞診の陽性率は, 膵癌36%(33%), 胆管癌55%(50%), 胆嚢癌45%, 乳頭部癌23%(11%), 転移・浸潤癌33%であり, それほど高率ではなかったが, 治癒切除可能例でも全体の陽性率とほぼ同程度の陽性率であった. したがって, 膵・胆道系の液状検体の細胞診は, 比較的早期の膵・胆道癌の診断にも有用と思われた. しかし, ERCP法やPTCD法でも陽性率は50%内外であり, 洗浄法やブラッシング法を積極的に用いて, 変性の少ない細胞を多く採取する努力が必要である.
  • 5症例の検討
    海老原 善郎, 佐々木 久美子, 前田 陽子, 清水 雅子, 大村 剛
    1987 年 26 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳汁中に悪性腫瘍細胞が検出されたが, 腫瘤は触知されず, 種々の画像診断法によっても腫瘍の存在が証明され得なかった乳癌の5例を報告する.
    乳汁中に出現した癌細胞は核の長径が9μ前後の小型細胞からなり, 10~50個の細胞からなる集塊が大部分であったが, 症例により1,000個内外のものもあった.背景は血性で, 泡沫細胞も多数出現した.組織学的に癌の多くは管内性に腫瘤を作らずに多発していたが, 乳頭直下の集合管あるいは乳腺実質に小さな管内乳頭癌とclinging carcinomaがみられることが共通しており, これが乳汁中への癌細胞出現の起源と考えられた.
    乳腺の早期癌の細胞学的所見と組織学的所見について簡単な考察を行った.
  • 石原 明徳, 上森 昭, 木村 多美子, 北畠 修生, 中西 国夫, 矢谷 隆一
    1987 年 26 巻 1 号 p. 102-109
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺疾患の細胞質内小腺腔 (ICL) について検討した.
    ICLはPap., PAS, Alcian blue, MGG染色, および酵素抗体法を用いたCEA染色で観察することができるが, このうちPAS染色での観察が最も容易である.ICLは形態的に小腺腔内の分泌物の有無により, 分泌物の認められるI型と, 分泌物の認められないII型に分類される.
    細胞診標本では, ICLは乳癌の51%に認められるが, 良性疾患では線維腺腫の1例 (0.5%) にのみ認められたにすぎない.また癌例では, 硬癌や小葉癌で陽性率が高いが, 充実腺管癌, 髄様癌, 粘液癌では低率である.
    細胞学的に異型性の強い癌におけるICLの陽性率は高いが, 異型性の弱い癌の陽性率は低い.
    細胞診において, ICLは癌の決定的なマーカーとはなり得ないが, チェックすべき重要な所見であり, 癌診断の一助になることが確認された.
  • 荒川 三紀雄, 遠藤 隆志, 清水 幹雄, 佐野 松子, 野島 孝之, 井上 和秋, 阿部 庄作
    1987 年 26 巻 1 号 p. 110-115
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    外科的に摘出された原発性肺腺癌26症例を病理組織学的に高, 中, 低分化型に分類し, それに対応する喀痰中の腺癌細胞形態像の特徴について検討した. 細胞の配列は高分化型で重積性は強く, 胞体内に空胞を有し, 中, 低分化型では重積, 平面, 散在などさまざまで, 胞体内空胞は認められないこともある. 核・細胞質比は高分化型より低分化型で大きかった. 核の大きさは高分化型で小さく, 中, 低分化型で大きい. 核の大小不同は高分化型で軽度, 中分化型で中等度, 低分化型では高度であった. 核形は高, 中, 低分化型ともに類円形, 立方形が多い. 核縁は高, 中, 低分化型ともに薄く均等が多いが, 中, 低分化型に厚く不均等が少数みられた. 核縁の切れ込みは低分化型より高分化型に出現頻度がやや多かった. 核クロマチンは高, 中, 低分化型ともに細顆粒状が多い. 中, 低分化型に粗顆粒状が少数混在していた. 核小体は高, 中, 低分化型ともに円形で高分化型より低分化型で大きく, 高, 中, 低分化型ともに1個が多い. 中, 低分化型で数個のものが少数みられた. 以上, 肺腺癌の分化度により, 喀痰中にみられる細胞形態像は異なり, 肺腺癌の分化度を推定しうることが示された.
  • 葉 清泉, 大橋 裕, 北薗 正大, 三田 村民夫, 薬師寺 道明, 加藤 俊, 小森 恵子, 池田 美佐枝, 藤 幸子, 樋口 千鶴子, ...
    1987 年 26 巻 1 号 p. 116-123
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    集団検診時の細胞診で偶然発見され, 試験開腹術および病理解剖などによって子宮頸部原発malignant lymphomaと確診し得た1症例を経験したので, 集団検診時の細胞診を中心にその概要を報告した.
    症例は49歳女性で, malignant lymphomaの病理組織学的分類ではLSG分類のnon-Hodgkin lymphoma diffuse, medium-sized cell, B cell type, 臨床進行期分類ではAnn Arbor病期分類のIVA期, 子宮頸癌臨床進行期分類ではIII b期の症例であった.その集団検診時の細胞診所見は, N/C比大, 類円形, 小型の腫瘍細胞が主として孤立散在性に出現していたが, 組織様集塊を形成する所見も認められた. 核形はほとんど類円形で核縁は薄く, 一部切れ込みをもつcleaved nucleiもみられた.核クロマチンは増量し, 主として微細顆粒状で, 核小体は大きく目立ち核縁に偏在する傾向がみられた.また核分裂像およびHodgkin's deseaseに特徴的といわれているmirror image様所見も認められた.
  • 捺印細胞所見
    菰田 温美, 布川 茂樹, 松田 勲, 上中 雅文, 熊谷 千晶, 井上 幸男, 岩崎 琢也, 笹生 俊一
    1987 年 26 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    53歳, 4妊2産の主婦が左下腹部の腫瘤に気づき来院. 口髭と下肢に軽度の多毛を認めたが, 内分泌検査では異常は認められなかった. 左卵巣の小児頭大の腫瘤を認め, 摘出を行った. 腫瘍は充実性であったが, 一部に嚢胞性病変を認めた. 充実性部分は組織学的に低分化型のSertoli-Leydig細胞腫で, 嚢胞性部分は成熟奇形腫であった.
    腫瘍の捺印細胞は大小不同が著しく, 核は類円形で偏在し, 染色質は粗ないし細顆粒状で, 明瞭な核小体が認められた. 少量の胞体はcyanophilicであった. これらの捺印細胞とは明らかに区別しうる, 円形の核と豊富な胞体を有した細胞がみられ, 胞体は小空胞状を呈していた.後者の細胞がLeydig細胞に分化を示す細胞と考えられ, 捺印細胞診でのSLCTの診断上, 最も重要な所見と考えられる.
  • 杉江 茂幸, 田中 卓二, 吉見 直己, 森 秀樹, 高橋 正宜, 坂本 寛文, 北瀬 稜子, 山川 光徳, 松田 幹夫
    1987 年 26 巻 1 号 p. 129-133
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診により診断された顆粒膜細胞腫の1例を報告した. 本症例はホルモン産生腫瘍としての性格に乏しく, 巨大腹部腫瘤が主症状であったが穿刺吸引細胞診上coffee bean様核の出現, 少数ながらCall-Exner body様構造およびロゼット様構造が認められ顆粒膜細胞腫が示唆された. 剖検標本の組織学的所見でも同様所見を認めたが, 円柱または梁柱型組織パターンを示し, 卵胞型は認められなかった. 本例は内分泌症状および典型的なCall-Exner bodyなどを認めず, 診断困難であったが, 注意深い穿刺吸引細胞像の観察により確診できた. また, 穿刺吸引細胞診像は組織像とよく一致し, その有用性も示唆された.
  • 卵巣癌, 子宮内膜癌の5症例報告
    岡和田 昌弘, 工藤 隆一, 熊井 健得, 浅井 冬世
    1987 年 26 巻 1 号 p. 134-140
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    癌性腹膜炎を合併した卵巣癌および子宮内膜癌の5症例にCisplatinを主とした各種制癌剤を投与し, その治療前後の腹水中の癌細胞ならびに中皮細胞, 好中球, 組織球, リンパ球などの各種細胞相互の比率の変化について観察した.これら症例を報告するとともにこれらの観察より以下の結果が得られた.
    (1) 臨床的に化学療法の効果が認められた症例の癌細胞は早期に減少し, 腺癌細胞集団の減少や細胞集団を構成する細胞数の減少として認識された。一方, 治療効果が明らかでない症例では癌細胞の減少はわずかかもしくは増加していた.
    (2) 制癌剤投与後の腺癌細胞では核の腫大, 細胞分裂像の消失, 細胞腫大, 細胞質空胞などの所見が認められ, これらの所見は臨床的に化学療法の効果が認められた症例で明らかであった.
    (3) 腺癌細胞以外の腹水細胞では治療効果が認められた症例で中皮細胞の減少が認められた.リンパ球については治療効果が認められた症例でリンパ球が増加した症例と減少が明らかでなかった症例があった.
  • 高橋 保, 市原 ちひろ, 園部 宏, 大橋 洋三
    1987 年 26 巻 1 号 p. 141-145
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近われわれは, 血尿を主訴とした患者で膀胱鏡検査により頂部の腫瘤を指摘され, 尿細胞診にて粘液産生性腺癌と判定し得たことから, 尿膜管癌が強く示唆された2症例を経験した. 症例1は78歳女性で症例2は61歳女性であった. 両症例は細胞学的に分化度は多少異なるものの, ともに粘液産生性腺癌であった.
    自験例2症例のうち, 特に症例1では自然排泄尿の沈渣成分の細胞学的検索では悪性細胞は検出できなかったが, 遠心しても浮遊したままであったゼリー様の粘液物質中に腺癌細胞を認めてはじめて診断ができた.
  • 小池 昇, 山本 友喜人, 坂井 義太郎
    1987 年 26 巻 1 号 p. 146-150
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸水中に腫瘍細胞のみられた甲状腺髄様癌の1例を経験した.
    症例は38歳の男性で, 左臓下リンパ節の腫脹に気付き受診.入院後諸検査の結果, 甲状腺髄二様癌と診断され, 左葉切除およびirradiationを施行された. その後転移再発, 治療を繰り返し, 初発から6年後胸水出現, 胸水中に腫瘍細胞を認めた.
    胸水細胞診のPap. 標本では, 腫瘍細胞は不規則疎な集団としてみられ, 紡錘形の細胞質に円形の核をもち多形性は乏しい. クロマチンは細ないし粗顆粒状で, 核小体は不明瞭M.G.Giemnsaでは一部の細胞に微細な赤色顆粒を認める. PASでは細胞質辺縁部に顆粒状に陽性所見を呈する. コンゴー赤では陽性物質を認めなかった. 酵素抗体間接法によるCEA染色では細胞質にび漫性に明瞭な陽性所見を呈する.
    以上から, この腫瘍細胞は顆粒状の細胞質と粗顆粒状のクロマチンが特徴的であり, 酵素抗体法は鑑別診断の一助となると考えられた.
  • 園部 宏, 真辺 俊一, 高橋 保, 大原 栄二, 橋本 真智子, 中村 真一, 弘井 誠, 岸本 誠司
    1987 年 26 巻 1 号 p. 151-156
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺に原発したと考えられる中分化型扁平上皮癌に遭遇し, 捺印細胞診を行う機会を得たので, 本腫瘍の細胞像と摘出材料の病理組織学的検討結果ならびに組織発生について若干の考察を加えて報告する. 患者は嗄声と労作時の息切れを主訴とする38歳の男性であった. 手術材料では, 6×5×3cm大の腫瘍が甲状腺の峡部にあり, 両葉内や周囲組織に気管を狭窄しながら浸潤性に増殖し, 気管壁を貫いて潰瘍を形成していた. さらに腫瘍は粘膜下をリンパ行性に連続して広がり, 喉頭の右仮声帯には小隆起性の転移巣がみられた. 甲状腺腫瘍の捺印細胞診では, 主体となる腫瘍細胞は比較的大型多角形で上皮性結合を示し, 島状ないしシート状となり, 明らかな角化も認めた. 組織学的には, 本腫瘍は中分化型角化扁平上皮癌の像を呈し, 淡明な胞体を有する腫瘍細胞の増殖が優勢であった. 組織発生学的には本腫瘍は正中線上に発生していること, 舌骨部に甲状舌管嚢胞が存在することなどから甲状腺のごく近くにあった甲状舌管遺残組織を母地として発生した可能性が高いものと考えられる.
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