家兎35羽に, 気管支ファイバースコープでMNNG 1mgを週1回, 10回まで経気管的に投与し, 実験期間別に細胞学的・組織学的検討を行った.
1) 有効家兎26羽中, 12羽 (46.2%) に気管・気管支の扁平上皮癌が発生し, 浸潤は気管・気管支壁内にとどまり転移を認めなかった。
2) 実験の初期段階では基底細胞増生や扁平上皮化生が, 遅れて軽度, 中等度, 高度異形成上皮が出現した.
3) 細胞診では, 初期には反応性上皮細胞がみられたが, 実験期間3週以降, すべての検体に異型扁平上皮化生細胞が認められた.
4) 細胞診・組織診の対比検討の結果, 発癌に至る過程を解明するうえで, 細胞診が有力な手段となりうる.
5) 扁平上皮癌と異形成上皮には, 異形成上皮出現率が発癌例で高率なこと, 実験期間の延長とともにより異型度の高い異形成上皮が出現すること, 癌組織と連続する上皮には基底細胞増生や異形成上皮が高頻度でみられること, などの関係がみられ, 本実験系における発癌過程には, 段階的な組織発生が深く関与していることが示された.
6) 本実験系は, 内視鏡・細胞診が経時的に施行可能であり, いわゆる肺門部早期癌の実験モデルとして, その予防・治療法の研究に有用である.
抄録全体を表示