日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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ISSN-L : 0387-1193
26 巻 , 3 号
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  • 坂本 寛文, 吉見 直己, 北瀬 綾子, 田中 卓二, 杉江 茂幸, 高橋 正宜
    1987 年 26 巻 3 号 p. 381-385
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    原発性乳癌74例を用いて腫瘍組織中のホルモンレセプター (HR), 特にエストロゲンレセプター (ER) のRIA法による定量およびその捺印細胞による腫瘍細胞のPAS染色態度を観察し両者の関連性について検討した.また, HRと細胞異型度, 組織型, 閉経との関係についても検討した.その結果, ER陽性51例のうち42例 (82.4%) がPAS陽性-多様性を示し, ER陰性23例のうち17例 (73.9%) がPAS陰性-弱陽性を示し, ERの有無とPAS反応性との間に有意の相関をみ (p<0.001), 腫瘍細胞のPAS染色態度によりERの有無を推定することができた.プロゲステロンレセプター (PgR) についてはER (+) 51例中, PgR (-) でPAS多様性 {10例/18例 (55.6%)} を示したのに対して, PgR (+) ではPAS陽性 {14例/33例 (42.4%)} を示す傾向がみられた.HRと細胞異型度においては, ER (-) 例では大型核や多核などの細胞核異型が強かったのに対して, ER (+) PgR (+) 例では核型が均等で良性病変との鑑別が困難な症例が多く, ER (+) PgR (-) 例については両者の中間に位置する傾向がみられた.
  • 広瀬 敏樹, 小海 陽子, 山村 はるみ, 土屋 みはる, 西 常博, 宮元 秀昭, 高梨 利一郎
    1987 年 26 巻 3 号 p. 386-392
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    術前に穿刺吸引細胞診を施行した乳癌症例の成績をもとに, 小腫瘤乳癌に対するその意義および問題点を考察した.
    腫瘤径別の正診率は, Tis: 20.0%(1/5), T0: 0%(0/2), T1: 76.9%(50/65), T2: 93.3%(135/149), T3: 100%(20/20), T4: 100%(15/15) であった.TisおよびT0症例の誤診はすべて癌細胞が吸引されていないためであり, いかに細胞を吸引するかが課題と思われた.T1症例では触診・超音波・X線軟線撮影よりも高い正診率を示した.T1症例を5mmごとにわけ, 誤診要因を検討したが, 径が小さいものに誤診が多いわけではなく, むしろ, 組織型別にわけた乳頭腺管癌と特殊型乳癌に多かった.これらは, 癌細胞がとれない要因が径によるものというよりは触診しやすいか否かによるということと, 特殊型乳癌に対する認識が不足していたためと考えられ, 穿刺技術の向上および判定側の経験の蓄積によって改善し, さらに成績が向上する可能性があると思われた.他検査で陰性で穿刺吸引細胞診のみが陽性だったのは, T165例中11例 (15.9%) で, このことは穿刺吸引細胞診断が小腫瘤乳癌の早期診断の可能性を大きくするものであることを示している.また, 乳癌の術前診断に穿刺吸引細胞診を導入してから以前に比べて外科的生検を減少させることができた.
  • 上井 良夫, 塩沢 勇治
    1987 年 26 巻 3 号 p. 393-397
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腺癌細胞は扁平上皮癌細胞よりも分散しがたく, 子宮癌の細胞診自動化にあたり腺癌の存在を考慮すると, その分散法を検討する要がある。そこで, 先に報告したわれわれの方法4) を改変して, ヒト腺癌55症例の細胞分散法を検討した, 腺癌の組織亜型を乳頭状, 非乳頭状, 硬癌の3型に, 細胞分化度を高度, 中等度, 低分化に, 細胞分散度を優, 良, 可の3段階に分けると, 分散良好 (優) のものは乳頭状癌 (11例) では4例 (36%), 非乳頭状癌 (41例) では31例 (76%), 硬癌 (3例) では2例 (67%) となり, 高分化癌 (17例) では9例 (53%), 中等度分化癌 (22例) では14例 (64%), 低分化癌 (16例) では14例 (88%) となった.本法は検体を高速で撹拌し細胞を分散する方法であるが, 細胞質が保存されているものは46例 (84%) あった.
    次に自動細胞診断の誤陽性の原因となる好中球を除去するために, streptolysin-Oを用いて腟スミアに好中球の多い29症例について検討したところ, 有効例は23例 (80%), 無効例は6例 (20%) となった.
  • 矢羽田 一信, 伏見 恵, 川井 一男, 赤土 洋三, 宝来 威
    1987 年 26 巻 3 号 p. 398-403
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    粘液融解剤Dithiothreitol (DTT) を用いた喀痰保存液 (0.005%DTT, 35%エタノールなどを含む) を開発調整した (DTT液).また, 沈渣が取りやすく, 郵便ポストに投函可能な粘液粉砕翼付喀痰容器を開発した.DTT液とこの容器を用いた喀痰集細胞法 (DTT集細胞法) では喀痰中の粘液の融解率は72時間で96%であった.本法で作成した細胞診標本は粘液が融解されているので, 背景には粘液片はなく, 細胞は標本上に均等に分布したが, 細胞集団の保存性は良かった.癌細胞の細胞質・核の染色性も良好で従来の肺癌細胞の判定基準に従って細胞型の判定も可能であった.同一喀痰を用いたDTT集細胞法と直接塗抹法の陽性率の比較では, 肺癌症例の喀痰100件での癌細胞検出率はDTT集細胞法は65%, 直接塗抹法43%で, DTT集細胞法が22%高率であった.また細胞型別では, DTT集細胞法では扁平上皮癌68%, 腺癌61%で直接塗抹法の扁平上皮癌48%, 腺癌34%を大きく上回った.DTT集細胞法は標本作成操作が簡易で同時に多数の検体の処理ができるので, 集団検診をはじめ増加する喀痰細胞診に有用な方法である.
  • 小松 彦太郎, 上野 喜三郎, 川村 光夫, 佐藤 紘二, 石原 尚, 米田 良蔵
    1987 年 26 巻 3 号 p. 404-411
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞診および組織診のある肺小細胞癌16例を対象に, アルシャンブルー-PAS染色, ABC法でCEA, Keratin, SC, NSE染色を, さらに7例は電子顕微鏡による検索を行い, 小細胞癌の分化の多様性について検討した.
    NSEは16例中10例, 神経分泌顆粒は7例中4例が陽性で, 小細胞癌の神経内分泌系への分化が指摘される.
    一方, Kefatin6例, CEA9例, SC3例に陽性, AB-PAS染色も6例に陽性の部分がみられ, 電顕でも張原線維1例, デスモゾーム5例, 分泌顆粒5例, 微絨毛1例にみられ, 小細胞癌の上皮性としての性格がみられるなど, 分化の多様性がうかがわれる.
  • 赤石 直之, 清水 哲雄, 坂井 英一
    1987 年 26 巻 3 号 p. 412-426
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    家兎35羽に, 気管支ファイバースコープでMNNG 1mgを週1回, 10回まで経気管的に投与し, 実験期間別に細胞学的・組織学的検討を行った.
    1) 有効家兎26羽中, 12羽 (46.2%) に気管・気管支の扁平上皮癌が発生し, 浸潤は気管・気管支壁内にとどまり転移を認めなかった。
    2) 実験の初期段階では基底細胞増生や扁平上皮化生が, 遅れて軽度, 中等度, 高度異形成上皮が出現した.
    3) 細胞診では, 初期には反応性上皮細胞がみられたが, 実験期間3週以降, すべての検体に異型扁平上皮化生細胞が認められた.
    4) 細胞診・組織診の対比検討の結果, 発癌に至る過程を解明するうえで, 細胞診が有力な手段となりうる.
    5) 扁平上皮癌と異形成上皮には, 異形成上皮出現率が発癌例で高率なこと, 実験期間の延長とともにより異型度の高い異形成上皮が出現すること, 癌組織と連続する上皮には基底細胞増生や異形成上皮が高頻度でみられること, などの関係がみられ, 本実験系における発癌過程には, 段階的な組織発生が深く関与していることが示された.
    6) 本実験系は, 内視鏡・細胞診が経時的に施行可能であり, いわゆる肺門部早期癌の実験モデルとして, その予防・治療法の研究に有用である.
  • 南雲 サチ子, 宝来 威, 松田 実
    1987 年 26 巻 3 号 p. 427-432
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    喉頭癌, 下咽頭癌患者を対象として喀痰細胞診を行い以下の結果を得た.
    喉頭癌104例の喀痰細胞診陽性率は, 63. 5%で, T因子別にみた陽性率ではT1~T4の各グループの間で有意差が認められ, 癌の進展度と陽性率は平行していた. 下咽頭癌31例の喀痰細胞診陽性率は, 77. 4%で, T因子別の陽性率ではT2~T4の各グループの間に有意差は認められなかった.
    喀痰中に出現する喉頭, 下咽頭の扁平上皮癌細胞の数は一般に少なく, オレンジG好性の強い角化を呈する癌細胞は出現頻度が高く, N/Cが小さく, クロマチンの増量が軽度であった. ライトグリーン好性の癌細胞は出現頻度があまり高くなく, N/Cはやや大きいがクロマチンの増量は軽度であった. 喀痰中に出現した咽喉頭部の扁平上皮癌細胞は, 異型の乏しいことが特徴といえる.
    喀痰細胞診は肺癌の診断だけでなく, 咽喉頭癌の診断にも有用であると考える.
  • 森澤 孝行
    1987 年 26 巻 3 号 p. 433-442
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮体癌の多様性とin vitro培養系での諸性格を検討のため, 多数例を培養に供した.
    1) 30例のうち, 17例 (56.7%) に上皮性細胞の増殖がみられ, うち3例 (10.0%) が株化した.
    2) 細胞の増殖はjig-saw puzzleと敷石状形態の混在で, 継代とともに敷石状形態の細胞が優位を占める.またadenoacanthoma (HEC-88nu) では重積増殖とともにドーム状のhemicystを形成するが, 中・低分化 (HEC-59,-108) の細胞は腺腔様構造のみである.
    3) 3株細胞はいずれも異種移植可能で, 原腫瘍と類似の組織型の腫瘍を形成する.
    4) 細胞の増殖速度は継代とともに速くなった.
    5) 染色体構成は2倍体領域にピークがみられる (HEC-59,-108).また, ヌードマウスを経由した細胞の染色体構成は著しい異数性・高倍体傾向を示す (REC-88nu).
    6) 各種progestogenの抗腫瘍効果は株細胞個々により異なり, またその黄体ホルモン作用と抗腫瘍作用は同一基盤上にない可能性が示唆される.
  • 石川 てる代, 関谷 宗英, 岩崎 秀明, 武田 敏, 高見沢 裕吉, 堀内 文男
    1987 年 26 巻 3 号 p. 443-448
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    2種の絨毛癌培養細胞 (BeWoおよびHCCM-5株) の形態と, methotrexate (MTX) によるDNA, RNA, 蛋白合成, 細胞生存率および形態変化をin vitroで観察した.
    両細胞ともMTXに濃度依存性にDNA, RNA, 蛋白合成, 細胞生存率が低下した.
    MTX 10-6M 48時間処理後のDNA合成, RNA合成, 蛋白合成, 細胞生存率はBeWo細胞ではそれぞれ無処理対照の61, 27, 30, 87%, HCCM-5細胞では42, 23, 30, 66%であった.
    同条件で両細胞に細胞質の淡染化, 細胞質内空胞および顆粒の出現, 核の増大と淡染化, 核不整形化, 核小体の増大と1個の核内に出現する核小体数の減少を認め, HCCM-5細胞により著明であった.上記形態変化はMTXによるDNA, RNA, 蛋白合成の抑制により出現したと考えられた.
  • 家坂 利清, 井上 浩, 木村 茂
    1987 年 26 巻 3 号 p. 449-456
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    人工妊娠中絶術後に出現する子宮内膜再生細胞について, 性ホルモン投与後の形態変化を観察した (109例).全体を無処置群, プロゲステロン投与群, エストロゲン投与群の3群にわけ, 術後2~3日と6~8日に内膜細胞診を施行した.主として核分裂細胞と巨細胞の出現率という観点から, これらの検体を分析し, 以下の結論を得た.
    1. プロゲステロンやエストロゲンは再生細胞の出現率には影響は及ぼさなかった.
    2. だがプロゲステロンもエストロゲンも再生細胞の分裂能を低下させた.特にエストロゲンの作用は著明であった.
    3. エストロゲンには再生細胞を小型化し, 成熟を抑制する作用もある.プロゲステロンにはこの効果は明らかでなかった.
    これらの作用が生体内においていかなる役割を果たすか, 詳細な意義は不明である.しかし成熟内膜が両ホルモンにより発育を制御されるのと異なって, この場合両者の作用とも抑制的であることから, 細胞増殖を基盤とした内膜の再生は内分泌因子だけでは解釈しにくい.また同じ内膜とはいえ, 成熟腺細胞と未熟な再生細胞では, エストロゲンに対する応答が異なる事実も興味深い.
  • 牧村 士郎, 山本 宏司, 阿部 庄作, 川上 義和, 荒川 三紀雄, 遠藤 隆志
    1987 年 26 巻 3 号 p. 457-459
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    46歳, 男性, 昭和46年より菌状息肉症の診断で経過観察中, 昭和60年11月5日の胸部X線写真上右肺門部から下肺野にかけて, 腫瘤状陰影と, 左下肺野に小腫瘤陰影を認めた.喀痰細胞診にて, 小型の類円形の異型細胞が多数認められ, 菌状息肉症の肺転移と診断された.エンドキサン, ビンクリスチン, ペプレオマイシン, プレドニンによる化学療法を4クール施行し, 胸部X線写真上, 著明な改善を認めた.
  • 広瀬 敏樹, 小海 陽子, 山村 はるみ, 土屋 みはる, 西 常博, 宮元 秀昭, 呉屋 朝幸, 高梨 利一郎
    1987 年 26 巻 3 号 p. 460-464
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肝左葉に原発した嚢胞腺癌の1例を経験した. 術前の穿刺吸引細胞像, 捺印細胞像, 電顕組織像を比較検討し, その細胞診断上の問題点および組織発生について若干の知見を得たので報告したい.
    症例は56歳の女性で, 諸検査の結果, 肝の多発性嚢胞性腫瘍を疑われた. 穿刺すると, 粘稠な液とともに良性と思われる細胞が少数認められた. 肝左葉外側区域切除術と残存嚢胞壁切除術にていちおうの根治手術が施行された. 切除肝の割面所見で, 充実性部分・低乳頭状増殖を示す嚢胞・内面平滑な嚢胞の混在を認めた. 組織学的には, 高分化ではあるが, 明らかに浸潤像を認め, 肝原発嚢胞腺癌と確定診断した.
    細胞像の特徴としては, 細胞結合性が強く乳頭状配列を示すこと, 細胞自由縁に粘液染色が陽性を示す細胞が多くみられること, Goblet型の細胞が散在することであるが, 捺印部位による細胞の異型度に差が認められ, 正しく術前診断するためには, 多数部位よりの穿刺が必要と考えられた.
    電顕ではmicrovilli, apical secretory granule, intracytoplasmic microcystが観察され, 本腫瘍が胆管上皮由来としても矛盾しないことが確認された.
  • 成田 元也, 西野 武夫, 菅野 勇, 花輪 孝雄, 鍋嶋 誠也, 武田 雄一, 河西 十九三, 久保田 浩, 山崎 健
    1987 年 26 巻 3 号 p. 465-470
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    原発性空腸癌の発生頻度はきわめて低く, 最近14年間の本邦報告例でも, 200例に満たない, したがって空腸癌の細胞像に関する報告も, 文献上ほとんどみられていないこ. 最近, われわれは原発性空腸癌を経験し, その捺印細胞像の検索と, CEA, CA 19-9, CA 125の腫瘍マーカーによる免疫組織化学的検索を行い, 興味ある知見が得られたので報告した.
    (1) 細胞形態は, おおむね高円柱状で, 核は類円形ないし楕円形であった. 核形の不整, 核縁の不均等肥厚の比率は半数以上であり, 核小体は2μ 以下で2~3個認めるものが多かった. 核chromatinの性状と分布は粗顆粒状不均等分布のものが主体であり, 全体的に高分化型乳頭状または管状腺癌を示唆していた.
    (2) CEA, CA 19-9, CA 125の腫瘍マーカーの血中濃度は術前高値を示し, パラフィン包埋切片による酵素抗体法染色でも陽性であった.
    CEAとCA 19-9の染色態度は類似しており, 細胞質表面で強い染色傾向にあった. また, CA125では, 管腔内側の核の辺縁に, 小胞状に局在して認められた.
  • 山川 久美, 柴 光年, 山口 豊, 藤沢 武彦, 堀内 文男, 岡本 達也, 大岩 孝司
    1987 年 26 巻 3 号 p. 471-475
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸腺腫は浸潤, 転移といった臨床像から悪性と診断されたものでも, その組織像, 細胞像に悪性所見の乏しい症例が多く, 形態学的な検索のみで悪性度を判定することが困難な腫瘍といわれている. 今回, 術前の経皮針生検細胞診で悪性と確診することのできた胸腺腫を経験したので報告する.
    症例は41歳男性胸部X線, CT像で前縦隔腫瘤の気管, 上大静脈浸潤が疑われた, 経皮針生検細胞診では高度の壊死を背景に大小不同の著しい細胞が散在性に出現しており, これらはN/C比が大で不整形の核が多く, クロマチンは粗顆粒状に凝集していた. 組織学的にも異型性多形性に富んだ腫瘍細胞が充実性に増殖し, 胞巣中心部には壊死を認め, 周囲組織との境界では浸潤像が認められた.
    胸腺腫では悪性所見の明らかな細胞像, 組織像を示す症例が少数例ではあるが存在することを念頭に診断すべきである.
  • 島田 勝政, 古谷 満寿美, 谷口 久子, 片山 博正, 山本 寛, 林 肇輝
    1987 年 26 巻 3 号 p. 476-481
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    上皮性悪性瀰漫性中皮腫の2例について細胞学的, 組織学的に検討し報告した.
    症例1は75歳の男性で腹腔原発の乳頭状中皮腫であり, 症例2は79歳の男性で左胸腔原発の乳頭管状型の中皮腫であった. 細胞学的には2例ともほぼ同様の所見がみられた.腫瘍細胞は20~50ミクロン程度の中~大型のものが多く, clusterとともに遊離した大型の腫瘍細胞が多数出現した. これらの遊離大型腫瘍細胞の胞体は大部分パパニコロー染色でライトグリーンに濃染するが, 核周は淡く, 胞体辺縁部では全周性でリング状の特徴的不染部を認めた. これらの不染部に一致してPAS染色で赤染する瀰漫性あるいは顆粒状の陽性物質が染めだされ, ジアスターゼで消化された. このPAS染色所見はほかの転移性腺癌にはみられない所見であり, これらの腫瘍細胞が中皮細胞由来とするのにきわめて有力な手掛かりとなり, 2例ともに生前に上皮性中皮腫との診断が可能であった.
    上皮性中皮腫の場合には中皮細胞としての性格を有しつつ腫瘍細胞としての規準を兼ね備えた分化型の中皮腫細胞に焦点を合わせ, 特徴的なパパニコロー染色やPAS染色により細胞診での診断は可能であると考えられる.
  • 相澤 宥子, 桑江 千鶴子, 相澤 浩, 久我 文子, 福留 伸幸, 小川 浩美, 吉田 美雪, 水口 国雄
    1987 年 26 巻 3 号 p. 482-486
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣未熟奇形腫は, 多彩な組織学的所見を示し, 臨床経過も種々であるが, 腹水細胞診が予後推定に有用であった症例を経験したので報告する.
    患者は29歳主婦.右卵巣未熟奇形腫, stage Ic, grade 3の診断で, 右付属器摘出術+左卵巣模状切除術を行った. 奇形腫の未熟組織は神経成分のみであった. 手術後VAQ療法を4クール行ったが, 終了4ヵ月後リンパ節転移とLDH上昇をきたし, PVP療法を6クール行った。LDH下降, リンパ節やや縮小したものの, 再度LDH上昇, 急激な腹水貯留, イレウスを呈し, 手術より1年5ヵ月後消化管出血にて死亡した.
    腹水細胞診では, 原発巣の捺印細胞診と同様の神経芽細胞腫に似た細胞像であり, また腹水のcell block中の腫瘍細胞では, PAP法によるs100タンパクが染色されたことから, 未熟神経成分の腹膜への播種と診断した. 剖見所見でも, 腹腔内への播種は未熟神経組織でほかの成分はなかった. そして今回の症例では, LDHがAFPより腫瘍マーカーとして有用であった.
  • 梶原 昌治, 岩本 和彦, 小林 良二, 高見 剛, 武田 武夫, 三国 主税, 宮川 明, 長嶋 和郎
    1987 年 26 巻 3 号 p. 487-492
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    11歳男性の腹水中に出現した腫瘍細胞を用いて, 従来の形態学的検索に加えて, 表面抗原の検索と染色体分析を行った. その結果, 腫瘍細胞は, 細胞質に, 中性脂肪滴からなる小空胞を有するB-cell由来の細胞であり, かつ, 染色体異常として, Burkitt's lymphomaに特徴的である8q (24) を含む転座t (8: 14) が証明された. したがって, 腹水細胞を用いた検索のみでも, 生検に匹敵する情報が得られることが判明した. さらに, Denis Burkittの最初の報告以来の精力的なBurkitt'slymphomaの研究成果を文献的に検討することで, 本論文の考察の裏づけとした.
  • 柏村 正道, 馬場 伸二, 中村 修治, 岩井 重寿, 佐藤 房枝
    1987 年 26 巻 3 号 p. 493-498
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌の治療後3年めに発生したpostirradiation dysplasiaの症例について, 詳細な細胞学的検討を行いいくつかの知見を得た. 通常のdysplasiaより小さな細胞および核面積, より大きなN/C比, より不規則な細胞型が認められ, Pattenの報告と一致していた. このdysplasiaは2年6ヵ月の間, 経過が観察されたが, 年月の経過とともに若干の細胞像の変化が認められ, 再発との関連を考えるうえで興味深い知見であった. この症例は最終的にはブレオマイシン軟膏による治療にて寛解せしめた.
  • 陳 欣栄, 手島 英雄, 日野 修一郎, 松岡 良, 森 宏之, 藤原 作平
    1987 年 26 巻 3 号 p. 499-503
    発行日: 1987/05/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    21歳の初妊婦の外陰より発生したgranuloma inguinaleについて, その細胞および組織像について言及した. 外陰部の肉芽性潰瘍底からの擦過細胞標本は, Papanicolaou染色を行って, 多数の好中球浸潤を伴う高度の炎症性背景が認められた. Oil immersionにて, 多型白血球および組織球の細胞質内に多数の好塩性の桿状の細胞内封入体の集塊, すなわちDonovan bodyを認めた. 潰瘍辺縁から採取した生検組織をHematoxylin Eosin染色したところ, 真皮や皮下脂肪組織に高度の炎症性細胞浸潤を認めたが, Donovan bodyは明瞭ではなかった. そこで, slow Giemsa染色 (1%Giemsa液over night) では毛嚢周囲の組織球の細胞内, 外にDonovan bodyの特徴とされている赤紫色に染まる桿菌の集塊を認めた. 患者は3週間の抗生物質全身投与にて, 細胞診のDonovanbodyが消失し, 潰瘍が瘢痕形成し治癒した.
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