日本臨床細胞学会雑誌
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27 巻, 1 号
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  • 松田 実
    1988 年 27 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    喀痰細胞診を肺癌集検の場で行うには, 1) 細胞の保存が良好であること, 2) 標本の作製が簡単であること, 3) 標本が美麗で異型細胞のスクリーニングが容易であること, 4) 陽性率が高いこと, 5) 経済的であること, 6) 安全性が高いこと, などが必要な条件となる. 現在までに, 喀疾保存の目的で, ホルマリン固定法, 名市大法, サコマノ法などが行われ, 細胞診陽性率を高める目的で, 蛋白分解酵素あるいは粘液融解剤を用いる集細胞法が行われてきた, 最近では, サコマノ氏固定液に粘液融解剤を加える方法が行われ, 操作が簡単で, 背景がきれいであるために, 異型細胞のスクリーニングが容易であるといわれている. 標本作製法の歴史を知ることは興味のある事実であり, また啓発される点も多い.
  • 綿棒との比較
    川口 恵子, 西川 裕子, 大屋 美香子, 小林 忠男
    1988 年 27 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    endocervixとectocervixの細胞診を同一症例において, 同時に綿棒とDr. Stormbyによって考案されたサイトブラシを用いて採取し, ブラシと綿棒の細胞材料のとれ方を比較した.
    両者の問で疑陽性, 陽性の検出率には有意の差はなかった.
    endocervixからの検体においてブラシ法および綿棒法の腺細胞シート数を数え, 対象者の年齢別に検討した. 若年者から高齢者に至るすべての年代において, サイトブラシを用いた方が有意に腺細胞シートの出現率も高く, シート数も多かった.
    妊婦においてもサイトブラシの方が綿棒よりも大量の腺細胞が採取された.
    ectocervixからの検体について両者の扁平上皮細胞のとれ方を比較したところ, ブラシ法のほうが綿棒法よりも細胞量が多かった.
    すなわちサイトブラシは綿棒よりも腺および扁平上皮細胞ともに大量に採取され, 子宮口の狭小な婦人や, squamo-columnar junctionの上昇した高齢者や妊産婦に適した細胞採取器具であるといえる.
  • 和泉 滋, 田村 昭蔵, 佐川 順子, 筒井 章夫, 栗原 操寿
    1988 年 27 巻 1 号 p. 14-23
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症患者81名にダナゾール (以下Dと略す) を投与し治療した. D投与による内分泌環境の変化を知る目的で, 患者より採取した膣細胞診像を詳細に検討した. Dは1日400mg投与した予備研究において, D投与下に認められる膣剥離扁平上皮細胞の種類と, その出現頻度を検討した結果, 中層細胞を大型および小型中層細胞に分類し, それらの出現頻度を成熟度指数のなかに組み入れ, われわれ独自の立場より細胞診分類パターンすなわち, 表層型 (表層細胞指数10以上), 中層型1型 (大型中層細胞が30%以上), 中層型II型 (小型中層細胞が71%以上), 毒基底型 (労基底細胞指数10以上) の4型を設定した. それに基づいて検討したところ, D投与下の膣細胞診像では中層型が最も多く, 中層型の1型36%, II型33%で, 表層型15%, 労基底型16%であった. D投与期間別のその推移は, D投与開始後, 早期には表層型, 中層型1型が多く, 投与期間が長くなるに従って中層型II型, 労基底型が多くなった. 特にD投与7ヵ月以後においてその変動は著明であった. 膣細胞診像はDの持続的影響をよく反映しており, D投与下の内分泌的変化と細胞レベルでの変化を知るうえに有用である.
  • 腟スミアと口腔スミアの比較検討
    福本 ひろみ, 印牧 義孝
    1988 年 27 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    エストロゲン動態を調べるための腟スミア細胞診に対し, 口腔スミア細胞診を代用することの可能性について検討した. 約4年間に採取された合計755標本 (614症例) について表層の扁平上皮細胞 (表層細胞) の出現の動態を調べた.
    そのうち産後症例116標本, 不妊症例15標本, 流産後症例2標本 (合計133標本) においては, 腟スミアが萎縮像を示すのでこれらの例を除いた合計620標本について, 口腔および腟の表層細胞出現率の相関を算定した. この除外例については, 別に検討した.
    両スミアにおける表層細胞出現率の相関係数は, 全症例からみると0.62, 不妊症例では0.63, 妊娠症例0.59, 流産後症例0.46であり, それぞれt検定を行ったところ, 危険率0.5%で有意な相関であった.
    したがって, 腟粘膜の萎縮のないかぎり, 大多数例において, 口腔スミアから腟スミアの状態を推定することが可能であると考えた.
  • 秋葉 隆三
    1988 年 27 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞診による子宮頸部扁平上皮癌組織型診断の可能性を検討する目的で, Ib期76例の術前細胞診標本を分析し, 以下の結論を得た.
    悪性細胞の大きさ, 形, 染色性, 核クロマチン, N/C比に注目し, 子宮頸部扁平上皮癌に出現する悪性細胞を大型角化悪性細胞, 小型角化悪性細胞, 小型悪性細胞, 大型悪性細胞の4型に分類すると, 大細胞非角化型では大型悪性細胞が多く, 一部の症例に小型角化悪性細胞の出現はあるものの大型角化悪性細胞の出現はまれであった. 角化型では小型角化悪性細胞の出現に加えて, 大型角化悪性細胞の出現が特徴的であった. 小細胞非角化型では小型悪性細胞が主体であり, 角化悪性細胞の出現はきわめてまれであることが明らかになった. この結果から大型角化悪性細胞, 小型悪性細胞の出現頻度に注目し, 大型角化悪性細胞が10%以上の頻度で出現していれば角化型, 小型悪性細胞が60%以上出現していれば小細胞非角化型とし, その他を大細胞非角化型とする方法を考案した. この方法を用い, II期46例の術前細胞診標本でBlind testを行った結果, 角化型83.8%, 大細胞非角化型91.7%, 小細胞非角化型90.0%の正診率が得られ, 本法の臨床的有用性が示された.
  • 杉下 匡
    1988 年 27 巻 1 号 p. 37-50
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 子宮頸部の正常腺細胞 (23例) と癌細胞 (23例) の核DNA分布率 (propidiumiodide染色法) を比較し, 次に扁平上皮癌細胞の世代時間を計測 (FLSm法) するとともに, さらに, これらの成績から癌細胞中のG0細胞の量的割合を算出することである.
    正常細胞における平均DNA分布率は2C=89.6%, 3C=7%, 4C=3.4%であった. 癌細胞の分布率はそれぞれ77.7, 14.5, 8.5%であった. FLSm法による癌組胞の世代時間は, 平均12.6時間であり, S期時間は7-1時間であった. S期癌細胞数はG2M期細胞の約2倍量存在することと, 2Cの癌細胞の構成はG1期が約19%, G0期が約58.2%から成立っていることとが判明した.
    これらの成績から癌細胞の方が, 正常細胞より約2倍分裂が旺盛であることと, 癌細胞のDNA ploidyは2C域が主たる存在域であることが推論され, 同時に多くの癌治療法の標的外であるG0塵細胞が全体の5割以上占めている事実を知り得た.
  • 小俣 好作, 望月 敬司, 千野 正彦, 伊東 裕也, 石川 美香, 田中 昇
    1988 年 27 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    48,120人の成人病検診受検者のうち, 超音波検査上腎腫瘤状陰影が指摘された21人 (0.044%) に穿刺細胞診が施行され, 5人 (0.010%) の腎組胞癌患者が発見された. また, 外来および紹介患者で腎腫瘤の疑われた36人に穿刺細胞診が行われ, そのうち5人が術後に腎細胞癌と診断された. これら10例の腎細胞癌手術例の術前穿刺細胞診断は, 9例が陽性, 1例が誤陰性であった. 同成人病検診において, 穿刺細胞診により2例, 術後の組織診により1例の合計3例 (0.006%) の腎血管筋脂肪腫が発見された.
    平滑筋組胞はときに異型な裸核状を呈し, 塗抹細胞が少ない場合には, 腎血管筋脂肪腫と淡明型腎細胞癌との鑑別が問題となったが, 注意深く検鏡すれば, 腎細胞癌の術前細胞診断は十分に可能であると思われた.
  • 平岡 裕, 広岡 保明, 小林 陽子, 岸本 弘之, 木村 章彦, 飯塚 保夫, 古賀 成昌, 工藤 浩史
    1988 年 27 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹膜播種を有する胃癌患者10名を対象とし, 温熱と抗癌剤を併用した持続温熱腹膜灌流療法continuous hyperthermic peritoneal perfusion (CHPP) を行った. その前後にわたり経時的に腹腔内遊離癌細胞を採取し, 主としてこれらの形態的変化につき検討し, 以下の成績を得た.
    1. CHPP施行後には, 遊離癌細胞の胞体内空胞形成および核の腫大, 凝縮などの変性所見が認められ, さらに特徴的な多核巨細胞化した癌細胞の出現が認められた.
    2. CHPPの回数を重ねるに従い, 癌細胞の変性程度, 変性癌細胞の出現頻度が増加した.
  • 和田 順子, 木村 祐子, 重田 幸子, 小倉 まき子, 吉田 茂子, 武田 佳彦
    1988 年 27 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ヘルペス感染症の治療法のなかで, 消毒剤のPovidone40dine, DNA合成阻害による抗ウイルス剤のAcycloguanine, Vidarabineについて, これをヘルペス感染Vero細胞に投与し, slidechamberを用いて, 37℃, 5%CO2培養器において培養した. これを経時的・形態学的に観察し, 検討して次の結論を得た.
    1. Povidone-Iodineは強力な殺ウイルス作用のみならず, 細胞毒としての薬理作用を有する.
    2. 抗ウイルス剤は, ヘルペス感染細胞のS期におけるDNAの合成を阻害して効果を発揮し, 二次・三次感染を予防する.
    3. ヘルペスウイルスの接種があっても, 感染を受けなかったVero細胞は, medium中の薬剤の効果により, 後続感染を受けずに発育・増殖を続ける. この過程を観察し, さらに経過について仮説を立て, その正しいことを形態学的に証明した.
    4. 細胞診断学を薬剤の作用機序, 治癒機転の解明に応用し, therapeutic cytopathologyへの新しい展開を行った.
  • 酵素抗体法二重染色による検討
    松田 壮正, 小野 大志, 西谷 巌, 布川 茂樹, 松田 勲, 上中 雅文, 熊谷 千晶, 井上 幸夫
    1988 年 27 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    唾液腺 (S) 型アミラーゼおよびCA125を産生する卵巣類内膜癌症例に遭遇し, さらに, アミラーゼおよびCA125局在と腫瘍細胞内エストロゲンレセプター (ER) の有無との関連性を酵素抗体二重染色法で検討した. 興味深いことには, 術前高値を示した血中アミラーゼとCA125は, 術後すみやかに正常値に復した. また螢光抗体法により, 腫瘍の捺印細胞中にアミラーゼの局在が確認され, 腫瘍ホモジネート中にはS型アミラーゼのみが検出されたことより, この腫瘍はアミラーゼを産生分泌していることが明らかになった. 腫瘍組織を抗ERモノクローナル抗体を用いて酵素抗体法 (PAP) で染色した結果, ERは核内に局在していた. この切片に対して, さらにPAP法によりアミラーゼまたはCA125染色をかさねる二重染色を施した. アミラーゼは, ER陽性細胞中に局在したが, CA125は組織構築に関連して観察された. ステロイドホルモンに対する応答は細胞分化を意味するものと思われ, アミラーゼは分化にも関連して出現すると考えられた. このように多彩な性格を示す腫瘍の異なったマーカーの検討には免疫細胞化学的重畳染色は有用であろうと考えた.
  • 新垣 京子, 仲間 健, 伊藤 悦男
    1988 年 27 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    27歳女性の子宮頸部に発生したPlacental-site trophoblastic tumor (PSTT) を経験した. 症例は, 4回経妊2回経産婦, 自然流産9ヵ月後から不正性器出血が続き来院し, 子宮頸部腫瘤を指摘された. 子宮膣部塗抹細胞診および腫瘤生検で絨毛癌を疑われ, 子宮摘出術を受けた. 腫瘤は鳩卵大で子宮頸部後壁に位置していた.
    子宮膣部塗抹細胞診では, 中ないし大型の異型細胞が散在性にまたは少数個集簇してみられた. 胞体は豊かでN/Cは中等度, 核は類円形で単核もしくは2核であり, 核小体は目立たなかった. 合胞体細胞はみられなかった.
    病理組織学的には, 単核ないし多核の大型の腫瘍細胞が, 充実性胞巣状, 索状あるいは遊離散在性に配列しており, 絨毛癌に特徴的なcytotrophoblastとsyncytiotrophoblastよりなる2層構造を欠いていた. 免疫組織学的には, hCGおよびhPLが約半数の腫瘍細胞に陽性であった.
    PSTTの細胞診の特徴は, intermediate trophoblastのみが出現し, cytotrophoblastおよびsyncytiotrophoblastを欠如することで, 合胞体細胞が全くみられない点が, 流産およびほかの絨毛性疾患との鑑別に重要であろうと考えられた.
  • 三好 正幸, 神田 雄司, 佐藤 智子, 田中 恵, 堀 保彦, 下谷 保治, 伊東 英樹, 工藤 隆一, 橋本 正淑
    1988 年 27 巻 1 号 p. 81-87
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    局所再発を再三繰り返した, きわめてまれな子宮頸部のverrucous squamous cell carcinomaを経験し, その細胞学的, 組織学的特徴を走査型電顕, 透過型電顕所見を含めて検討した.
    細胞診ではエオジン好性を示す中層型から砦基底型のdysplasticce11が多数出現し, また一部にはライトグリーン好性を示す労基底型から基底型のdysplasticce11も認められた.
    組織像では, 角化傾向が著明な乳頭状突起がみられ, 突起のなかの飾rovascular coreは不規則であった. また基底膜を破り, 一部浸潤していると思われる部分がみられた.
    同一細胞における光顕一走査型電顕の連続観察では, 光顕において労基底型のdysplasticce11とみられる細胞表面には, microridge, microvilli様構造はみられず, 凹凸不整のある屋根がわら状構造であった.
    透過型電顕による観察では基底型扁平上皮細胞に類似していたが, basallaminaの厚さに変化がみられ, 一部不明瞭になっている部分があった.
  • 池永 素子, 坂本 穆彦, 佐藤 之俊, 都竹 正文, 平田 守男, 原島 三郎, 河西 信勝
    1988 年 27 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺濾胞腺腫の一亜型であるatypicaladenomaは, 一般の濾胞腺腫に比べ, 構造および細胞異型の強い特異な疾患である. 今回, われわれは本症の1例を経験したので, その細胞像を中心に報告する.
    患者は34歳の主婦で, 4年前に左前頸部の腫瘤に気付き, 3年間の経過観察後, 甲状腺左葉・峡部切除術が施行された. 術前の細胞診所見は, 多数の好中球, 組織球などを背景に大小不同性のある腫瘍細胞が, 小集塊状ないし孤立性に認められた. 細胞質は豊富で, 核は肥大し, 核形不整, 核クロマチンの増量があり, また, 腫大した核小体を伴っており, class IIIと診断された. 細胞診所見のみでは, 本症を診断することは困難であるが, 組織学的所見に相応の細胞像であった.
  • 両側の甲状腺腺腫内に転移した乳癌
    堀部 良宗, 笠原 正男, 是松 元子, 小林 一彦, 山本 修美, 川村 貞夫, 樋口 公明
    1988 年 27 巻 1 号 p. 92-98
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    両側の甲状腺腺腫内に転移した乳癌の1例を経験したので, 捺印細胞所見を中心に本腫瘍の組織学的特徴ならびに文献的考察を加え報告した. 症例は53歳, 女性. 4年前に右乳癌の手術を受けた. 術後経過観察中に前頸部腫瘤を発見され, 甲状腺腺腫の診断で左右2個の核出術が施行された. 術中捺印細胞診では左右ともに腫瘍細胞の大部分は, 正常濾胞細胞より軽度腫大する小濾胞集団からなる濾胞腺腫であったが, これら細胞に混在して大型の異型細胞がみられた. 異型細胞の大部分は結合性の強い細胞集団で出現する腺癌細胞で, パパニコロウ標本脱色後, Alb-PAS染色にてintracyto Plasmiclumina (I. C. L.) を認めた. 組織学的には両側ともに濾胞腺腫で, 腺腫内の中心部濾胞間および被膜下に管状構造を示す癌胞巣がみられ, 被膜および脈管内浸潤を伴っていた. alb-PAS染色および電顕的にI. C. L. が確認され, これら癌胞巣は乳癌 (硬性癌) の転移と考えられた.
  • 渡辺 正秀, 加藤 由美子
    1988 年 27 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    日常の細胞診で遭遇する真菌の多くは, 細胞外に存在するものであり, 組織球内に存在する酵母様真菌としては, Camdiaa glabrataがときに経験されるにすぎない. 今回われわれは, 剖検で播種性ヒストプラスマ症と診断された症例を経験したが, 生前の尿細胞診標本を再検討したところ, 組織球の細胞質内に多数の本菌要素が認められたので報告した.
    症例は52歳の日本人男性で, 海外渡航歴はなく, 米国人の死体腎移植を受けて4年後に肺炎を起こして死亡した. 剖検では, 移植腎, 前立腺, 両肺, リンパ節などに, 著しい組織球浸潤を伴う壊死性炎症病巣が認められた. これらの組織球の細胞質内には径2~5μm (平均3μm) の酵母様真菌要素が多数認められ, H. capsulatmmと同定された.
    剖検診断確定後に生前の尿細胞診標本を再検討したところ, Papanicolaou染色ではやや不明瞭であったが, PAS, Grocott染色では組織標本でみられたと同様の真菌要素が, 組織球の細胞質内に多数存在していた.
    本邦での細胞診においてこのような真菌が出現することはきわめてまれであるが, Camdiaa glabm如などいくつかの真菌あるいは原虫との鑑別についても考察した.
  • 佐藤 孝, 岩崎 琢也, 里舘 良一, 凌 時徳
    1988 年 27 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 1988/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜間質肉腫の術後に血性の腹水が出現した1例で, 腹水中の異型細胞について, 光顕的, 免疫細胞化学的, 電顕的検討を行った. 患者は47歳Gravida-5Para-5の主婦. 不正性器出血を訴えて来院した. 子宮は驚卵大に腫大し, 子宮筋腫の疑いで腹式単純子宮全摘術が施行された. 摘出した子宮体部筋層に内膜間質肉腫が認められた. 術後2ヵ月目に血性腹水が出現し, 塗抹標本に直径が20μm前後の異型細胞がみられた. 異型細胞の核は多少偏在し, 類円形ないし多形性で, クロマチンは粗穎粒状であった. 核縁は不整で, 切れ込みもみられた. 細胞質は厚くcyanophilicであった. 電顕的には細胞小器官は核周囲に, 周辺には微小管, マイクロフィラメント, 中間径線維を認めた. 免疫細胞化学的には異型細胞の細胞質はビメンチン陽性ケラチン陰性であった.
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