日本臨床細胞学会雑誌
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29 巻, 1 号
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  • 肝細胞癌Edmondson分類を中心に
    杉島 節夫, 横山 俊朗, 吉田 友子, 鹿毛 政義, 神代 正道, 入江 康司, 真島 康雄, 安倍 弘彦, 谷川 久一
    1990 年 29 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細小肝癌46例の穿刺吸引細胞診について報告した.その病理組織学的異型度分類による内訳は, Edmondson I-II型9例, Edmondson II型35例, Edmondson III型2例であった.腫瘤の大きさと異型度との関係についてはEdmondson I-II型では10mm以下は1例, 11-20mmに8例, Edmondson II型では10mm以下に5例, 11-20mmに30例みられ, Edmondson III型では11-20mmに2例とも含まれていた.
    細胞の大きさでは細胞長径平均値は正常肝細胞とEdmondson I-II型は同様の大きさであったが, Edmondson II型ではやや小さく, Edmondson III型ではふたたびほぼ同様な大きさであった. 核長径平均値は正常肝細胞, Edmondson I-II型, Edmondson II型, Edmondson III型の順で徐々に大きくなり, N/C比についても同様であった.
    肝細胞癌の特徴的所見は核の腫大, 細胞質の狭小化, N/C比の増加, 核クロマチンの増量, 細胞集塊での細胞密度の上昇であった.Edmondson分類での異型度が高くなるにつれ, これらの所見は顕著となり, 細胞の出現状態についてもより大型の細胞集塊でみられ細胞密度がより高くなり細胞の重積性も著明となっていた.
  • 藤田 彬, 藤原 登美子, 渡辺 精子, 提嶋 真人, 上坂 佳敬, 綿貫 勤, 阿部 一之助, 蒔田 光郎
    1990 年 29 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    エンドサイト法による内膜細胞診において, 過去4年6ヵ月間に, 組織診の裏付けの得られた, 増殖期54例, 分泌期41例, 子宮内膜増殖症33例, 内膜癌49例について, 組織診との問にdiscrepancyをみた症例を中心に, 過大評価と過小評価になった原因, および内膜増殖症, 高分化型内膜癌 (G1) の細胞像について検討した.
    1. 増殖期例での過大評価の原因は間質細胞の混入 (75.0%) であり, これらが重なり合い大小不同あるいは配列の不規則な像として写った.
    2.分泌期例では, やや大型の核で核小体が明瞭に認められたり, 核問距離の不均等な構造を捕えていた.また増殖期例と同様に, 間質細胞の混入 (47.0%) があり, ときに核の大型化を伴う. したがって, これら問質細胞の混入を十分に考慮する必要がある.
    3.内膜増殖症の共通の細胞像として,(1) 核は円-類円形が多い,(2) クロマチン分布は均等,(3) 重積性はあっても, 核間距離は保たれており, 配列に方向性がある,(4) 正常内膜細胞がほとんどの例に認められ, ときに移行像がある.
    4.G1例で過小評価した例は, 内膜増殖症に比べ, 細胞の異型性はむしろ軽度で, 重積性や細胞配列にも差がなかった.また, G1例の共通の細胞像として,(1) 核は円-類円形の他, 不整形核の混在をみる,(2) 核小体は認めても小さい,(3) 核間距離は不均等,(4) 柵状配列が多い,(5) 正常内膜細胞は量的に少ない, などが内膜増殖症とG1例の鑑別に重要な所見と思われた.
  • 米本 行範, 和田 裕一, 那須 一郎, 亀 セツ子, 鈴鹿 邁, 手塚 文明, 矢嶋 聰, 伊藤 圭子, 東岩井 久
    1990 年 29 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    分化型体部腺癌の細胞所見を検索するために, 分化型腺癌10例, 低分化型腺癌6例, 非癌 (内膜増殖性病変を認めずかつ最近子宮内操作をうけていないもの) 20例の子宮内膜吸引細胞像を比較検討し, 以下の結果を得た.
    (1) 分化型例で低分化型例と比べ出現頻度の低かった所見は, 細胞の乳頭状配列・顆粒状クロマチン・赤色肥大核小体・核小体周囲の透明化像などであった.
    (2) 分化型例では, 低分化型例と比べ, 核の増大と大小不同が軽度のものが多く, なかには核の増大がほとんどないものもあった.
    (3) 分化型例でも, 低分化型例と同様に,(4) で述べるクロマチン所見とともに核重積性と核縁不整が高頻度に認められた.
    (4) 分化型例と低分化型例で例外なく認められ, 非癌例でほとんど認められない所見は,「クロマチンが核内に密に充満すること」および「クロマチンの不規則凝集像がみられること」であった.
    以上の所見の中で,(1),(2) は分化型腺癌を悪性と判定するために有用とはいいがたいが,(3),(4) は分化型腺癌を悪性ないしは悪性疑いとしてチェックアップするために有用な所見と考えられた.子宮内膜吸引細胞診では, これらのことに留意し分化型体部腺癌の検出に努める必要がある.
  • 手島 英雄, 古田 則行, 陳 瑞東, 清水 敬生, 藤本 郁野, 山内 一弘, 荷見 勝彦, 増淵 一正, 平田 守男
    1990 年 29 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部癌や子宮頸部前癌病変とヒトパピローマウイルス (HPV) 感染の疫学的検討をDotblot hybridization法 (Vira Pap, Vira Type kitなど) を用いて行い以下の結果を得た.
    1) 各種子宮頸部病変におけるHPVゲノムの陽性率は, mild dysplasia 22.2%(22/99), moderatedysplasia 62.9%(22/35), severe dysplasia 42.9%(6/14), carcinoma in situ (CIS) 59.2%(45/76), invasive squamous cell carcinoma 77.4%(24/31), invasive adenocarcinoma45.5%(5/11), 細胞診陰性婦人1.4%(3/218) であった.
    2) Vira PapやVira TypeでHPVゲノム陰性であった症例に対して, HPV52b型をDotblot hybridization法で検討したところ, 陽性率は13.9%(10/72) であった.
    3) HPVのタイプ別では, 従来癌化と関係があるといわれてきたHPV16, 18型以外に31, 33, 35型が高率に認められた.
    4) 膣病変におけるHPVゲノム陽性率は62.5%(5/8) であった.
    以上の結果から子宮頸部病変とHPV感染との間に何らかの因果関係が想定される.しかも従来のHPV16型, 18型のみならず, 31/33/35型, そして52b型や58型といったサブタイプの関与も示唆された.今後は各HPVタイプ感染病変の自然史研究が望まれる.
  • 川井 俊郎, 藤井 丈士, 角田 尚久, 久保野 幸子, 羽石 恵理子, 芳賀 美子, 斎藤 達也, 北村 諭, 斎藤 建
    1990 年 29 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    原発性5例, 転移性1例の縦隔悪性胚細胞性腫瘍の細胞像を報告する. 6例とも青壮年男子に発症し, 精上皮腫を除く5例で血中AFPあるいはHCGが上昇していた.
    5例で穿刺吸引細胞診が行われ, そのうち3例で確定診断が可能だった. 胎児性癌と未熟奇形種の合併した奇形癌では, 腺癌i類似細胞集塊と, 未熟上皮と未熟問葉系細胞の混在した集塊が確認された. 卵黄嚢腫瘍では胎児性癌に類似した上皮細胞集塊内にPAS陽性の硝子体が認められた. 壊死性背景に合胞様多核細胞をまじえた異型細胞が認められた例では, HCG陽性腫瘍細胞の確認により絨毛癌と確定診断された.残る2例の異型細胞の由来は同定できなかったが, 1例では後に胸水細胞の免疫細胞化学的検索で, 腫瘍細胞の一部が未熟神経組織由来であろうと推定された.精上皮腫では, 捺印細胞診で核小体の明瞭な大型腫瘍細胞とリンパ球からなるtwo cell patternが認められ, 診断は最も容易だった.
  • 立花 亨, 和田 正彦, 増田 栄治, 橋本 健太郎, 山本 俊明, 米田 正太郎, 置塩 達郎, 松田 実
    1990 年 29 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近, われわれは肺腫瘍としてはまれな, Alpha-fetoprotein産生の低分化腺癌の穿刺吸引細胞診を経験したので報告した.
    症例は70歳女性, 胸部X線像にて右上肺野, 縦隔寄りに巨大な腫瘤陰影が認められ, 血清AFP値が高値を示した.穿刺吸引細胞診では平面的あるいは不規則重積性に配列した異型細胞が多数出現していた.これらの細胞は細胞質が豊富で顆粒状を呈し, 大小不同がみられた.クロマチンは増量し粗顆粒状不均等分布し, 大型類円形の核小体が1個認められた.PAS染色では一部の異型細胞がびまん性に陽性を呈し, 酵素抗体法により腫瘍細胞内にAFPの局在が証明された.
    なお, 肝臓や消化器, 卵巣などに腫瘍は認められず, 穿刺吸引細胞診にてAFP産生の肺腺癌が推定された.肺生検および剖検にて肺原発性の低分化腺癌と確診された.
  • 笠井 久豊, 前田 勝彦, 伊藤 真子, 上森 昭, 石原 明徳, 吉田 利通, 矢谷 隆一
    1990 年 29 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    早期胃癌を合併し, 多数のマロリー小体を伴った細小肝細胞癌例を経験したので報告した.
    症例は54歳男性で, 胃検診にて異常を指i摘され来院.生検にて印環細胞癌と診断され, 同時に画像診断にて肝左葉鎌状靱帯近くに径2cmの小腫瘤像が認められた.胃亜全摘および肝針生検が行われた.
    術中肝針生検で採取された捺印細胞診標本では, N/C比の大きな細胞集団が散在性に出現し, 核の大小不同, 大型の核小体, クロマチンの増量および胞体内に好酸性に染まる不整形のマロリー小体が認められたことなどから肝細胞癌と診断された.
    参考のため剖検例肝組織標本を用い, 49例の肝硬変, 51例の肝細胞癌および47例の胃癌肝転移例におけるマロリー小体および球状硝子体の出現頻度を検討した. 両封入体はともに肝細胞癌で比較的高頻度に認められた.
    胃癌症例での肝小結節病巣は, 転移癌と診断される懸念があるが, マロリー小体などの封入体の同定は, 肝細胞癌の細胞診断および転移癌との鑑別に有用であると考えられた.
  • 佐伯 逸子, 元井 信, 山内 政之, 亀井 孝子, 万代 光一, 中西 慶喜
    1990 年 29 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    髄膜癌腫症はまれな病態で, その診断には髄液細胞診が必須である.今回われわれは, 噴門部早期胃癌に続発したまれな症例を経験したので報告する.
    症例は58歳の男性で, 頭痛, 回転性眩量を初発症状とし, 多彩な神経症状を呈し, 髄液細胞診にて本症と診断された.臨床的には, 血中および髄液中のCEA, CA19-9が高値で消化管原発が強く疑われたが, 種々の画像診断でも生前には康発巣の確定にはいたらず, 全経過4ヵ月で死亡した.剖検の結果, 低分化腺癌の像を呈した噴門部早期胃癌であった.
  • 牛島 治雄, 今村 市夫, 徳永 蔵, 仲嶋 孝治, 永田 章
    1990 年 29 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    脾原発の悪性リンパ腫を報告する.症例は60歳男性で上腹部不快感を主訴として受診し, 諸検査にて肝機能障害と脾内に腫瘤陰影が認められ摘脾が行われた.その際, 術中捺印細胞診が行われた.腫瘍細胞は細胞質に乏しく, N/C比は大で核の大小不同があり, その形は円形-類円形であった.クロマチンは細穎粒状で大きさ1-5μ の大小不同の核小体が1-数個みられた.細胞の結合性はみられず悪性リンパ腫と-断された.
    腫瘍細胞はIgG (+) でlight chainはKappa (+) であった.電顕的にもB細胞の特徴を示していた.病理組織的にはNon-Hodgkin's Lymphoma, diffuse and medium-sized typeと診断された.患者は摘脾後3年経過するも再発の徴候なく健在である.
  • 木村 雅友, 佐藤 隆夫, 丹司 紅, 蛭間 真悟, 前田 光代, 高橋 学, 酒谷 邦康
    1990 年 29 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    播種性トリコスポロン症の1例を報告する.患者は75歳男性で, 薬剤性肺炎の疑いで副腎皮質ホルモンを投与されていたが, 呼吸不全のため死亡した.生前, 血液培養でTrichosporon beigeliiが, また尿培養でT. beigeliiとCandida albicansが分離されている.剖検により, 心, 腎, 肺, 甲状腺にトリコスポロンの菌要素が, 膀胱では多数のカンジダと少数のトリコスポロン菌要素が見い出された.腎の病巣の塗沫細胞診によって, トリコスポロン酵母状要素の不整な形や, 大小不同が認められた.ねじれを伴った有隔性分岐性菌糸や分節型分生子も確認された.上記菌要素の形態は単独でもトリコスポロンとしてかなり特徴的で, その形態的特徴を確認するためには細胞診が優れており実際的である.特に最も発見頻度の高い酵母あるいは菌糸が単独で発見された場合, 細胞診で得られる形態的情報は診断のために有用と考えられる.
  • 浜谷 次郎, 大矢 良之, 内田 勝次, 杉田 道夫, 杉下 匡, 天神 美夫
    1990 年 29 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    われわれはきわめて稀有な子宮頸部原発悪性黒色腫を経験し, その細胞形態を観察する機会を得たので, 細胞診断学的特徴を中心にコルポ診, 組織所見も併せて報告する.
    症例は62歳, 主婦, 昭和57年11月5日集団検診で子宮膣部に溢血斑様の異常のあることを指摘され, 昭和57年12月20日来院.子宮膣部12-7時に黒褐色の腫瘤を認めたので, 擦過細胞診を行ったところ, 黒褐色-茶褐色の色素穎粒を含有した特徴ある異型細胞が認められた.その結果悪性黒色腫を推定し, 組織診で確認した.われわれが観察した細胞学的特徴は孤立散在性-シート状に配列した, 多形性細胞が大半を占め, 類円形細胞がこれに次ぎ, 細胞質に微細穎粒状のメラニン色素を充満していた.類円形細胞はメラニン色素が密に充満して, 核の観察ができないものも認められた.紡錘形細胞は少数認められたがメラニン色素を含有していなかった.核の極度の偏在や, 著明な円形巨大核小体, 明瞭な核内空胞, 細胞相互封入, bizarreな巨大多核多形性細胞など, 非上皮様, 上皮様の特徴を備えた興味ある細胞像を観察することができた.
  • 奥山 隆三, 木村 和郎, 吉岡 秀幸, 武内 英二, 吉田 治義, 濱島 義博, 杉山 武敏
    1990 年 29 巻 1 号 p. 64-65
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 桜井 秀樹, 津村 秀憲, 渡部 洋三, 松本 道男, 木島 宏, 沢田 好明, 前川 武男, 権田 厚文
    1990 年 29 巻 1 号 p. 66-67
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 雲類鷲 恭子, 原 秀俊, 中川 晴夫, 船越 尚哉, 藤原 明, 中川 真也, 赤荻 栄一
    1990 年 29 巻 1 号 p. 68-69
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 岡部 英俊, 岩井 宗男, 宮平 良満, 吉田 孝
    1990 年 29 巻 1 号 p. 70-71
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 小谷 広子, 郡谷 裕子, 三原 勝利, 西田 雅美, 杉原 誠一, 松田 実
    1990 年 29 巻 1 号 p. 72-73
    発行日: 1990/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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