日本臨床細胞学会雑誌
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31 巻, 3 号
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  • 各種脳腫瘍の細胞像と免疫細胞化学的検討
    松尾 武, 穴見 正信, 津田 暢夫, 柴田 正則, 池野 雄二, 岩崎 啓介, 上井 元, 小田 繁樹
    1992 年 31 巻 3 号 p. 363-370
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞診による脳腫瘍の診断をより正確にするため, 手術摘出材料からの捺印細胞標本を用い, 各種脳腫瘍の細胞像の特徴を明らかにするとともに, 免疫細胞化学的検討を行った.
    脳腫瘍の細胞像の特徴を3群に分けた. 第1群の紡錘形細胞群に属するastrocytoma, meningioma, neurinomaなどでは, 線維の走向の具合や細胞相互の接着性の違いがそれぞれにみられ, 第2群の円形細胞群に属するmedulloblastoma, ependymoma, oligodendroglioma, neurocytoma, pituitary adenomaなどではおのおのに特徴が少なく鑑別に苦慮した. 第3群の多形細胞群に属するgliloblastomaやmetastatic carcinomaなどでは細胞結合性の強弱に差がみられた.
    免疫細胞化学的検討の結果, GFAP, EMA, FNを組合わせてglia系腫瘍と非glia系腫瘍を鑑別できた. NSE, Leu7, LCAなどを組合わせた結果medulloblastoma, lymphoma, oligodendroglioma, neurocytomaなどが鑑別できた. GFAP, EMA, CEAを組合わせglioblastomaとmetastaticcarcinomaが鑑別できた. 類似した細胞像を示す脳腫瘍の鑑別に, いくつかのマーカーを組合わせ使用すると有用なことがわかった.
  • 土岐 利彦, 並木 恒夫
    1992 年 31 巻 3 号 p. 371-377
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    1989年に発表された子宮頸部および膣細胞診診断報告法である1988Bethesda Systemは, 従来のPapanicolaouクラス分類を廃し記述的診断名を明記するということと, 標本の適切性に関してもコメントするという2点で, 非常に画期的な診断報告法である. しかし, Bethesda Systemで新たに提唱された記述的診断名の内容には問題のあるものもある. 主な問題の第1はmilddysplasiaのほかにHPV関連病変 (koilocytosis) をlow-grade SIL (squamous intraepithelial lesion) としたことであり, 第2にはmoderate dysplasiaをsevere dysplasia, CISとともにhigh-grade SILに含めたことである. また, Bethesda Systemの理念からいうと, 頸部上皮内病変の組織学的診断や臨床的取り扱いに関しても, SILの概念に準じて対処することが求められる訳で, これが第3の問題点といえよう. Bethesda Systemの意義をこれらの問題点とともに, 頸部上皮内病変の診断用語の歴史的推移や, 最近のHPV感染に関する病因論をふまえて論述した.
  • 特に細胞診による術前診断について
    柴 光年, 小高 恵美子, 光永 伸一郎, 山川 久美, 山口 豊
    1992 年 31 巻 3 号 p. 378-385
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    当施設において1977年以降外科的に切除され, 組織学的に硬化性血管腫と診断が確定した局所再発1例を含む14例を対象として, 術前診断, 組織像, 細胞像について検討した. 14病巣中, 術前, 術中に診断された症例は9例 (64%) で, 特に最近10年間の10症例での診断率は80%であった. 術前術中の診断法としては, 経皮針生検 (67%), 術中捺印細胞診 (80%) の診断率が良好で気管支鏡下生検の診断率 (8%) は低かった. 組織標本との比較検討では乳頭状発育パターンが優勢で充実部位の硬化が軽度な症例では, 小型円形核を有する上皮細胞に泡沫細胞が混じた多彩できわめて特徴的な細胞像が得られた. 乳頭形成が顕著でなく充実性発育が主体の症例では, 淡明細胞主体の細胞像で, 術前組織型診断の困難な症例も存在した. 抗keratin抗体, 抗surfactant apoprotein抗体を使用した免疫染色の結果は全例に陽性所見が得られた. 硬化性血管腫の術前診断は乳頭状発育の顕著な症例では典型的細胞像を呈し診断も比較的容易と考えられるが, 充実性発育が主体の症例では泡沫細胞も目立たないのでその診断には注意を要するものと考える. また免疫染色の併用は本腫瘍の組織型診断および腫瘍細胞の性格の解析に有用であることが示唆された.
  • 両肺腫瘍に関する系統的分類についての一考察
    三枝 圭, 正和 信英, 山田 喬, 嶋田 晃一郎, 半澤 儒
    1992 年 31 巻 3 号 p. 386-398
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肺小細胞癌48例およびカルチノイド9例について, 細胞形態学的ならびに, 酵素抗体法による免疫組織化学的所見について検討した. 1) 検索の基本である燕麦細胞型ならびに中間細胞型の組織学的規準を詳細に設定し, これに基づいて各亜型を分類し, それぞれの剥離細胞像の所見を整理した. 2) 化生を伴う小細胞癌の剥離細胞像を記載した. 3) 剥離細胞の形態からみると, 小細胞癌とカルチノイドとの境界病変というべき非定型的カルチノイドは2例あり, その1例の剥離細胞は中間細胞型の肺小細胞癌に最も類似していた. また病理組織像において, 他の非定型的カルチノイドの1例は細胞診を施行し得なかったが, その組織像においては, 核型からみて中間細胞型の細胞に類似していた. 4) 免疫組織学的に検索した結果, 神経/神経内分泌系への分化傾向は, カルチノイド, 中間細胞型, 燕麦細胞型の順に強く, 上皮系への分化傾向は逆に, 燕麦細胞型, 中間細胞型, カルチノイドの順に強いことが認められた.
    以上の所見より, 肺小細胞癌のなかで中間細胞型は形態学ならびにその分化の面からもカルチノイドにより近い性格を有していることが考えられた.
  • 石灰化像について
    松井 昭義, 佐藤 由紀, 千葉 清美, 伊藤 圭子, 手塚 文明, 金田 尚武, 東岩 井久, 武田 鉄太郎, 千葉 裕二
    1992 年 31 巻 3 号 p. 399-404
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    宮城県対がん協会では, 昭和52年5月から乳腺集検を実施し, 当初から1次検診に分泌物細胞診を併用している.
    分泌物細胞診では, 1) 赤血球, 2) 乳管上皮細胞集塊, 3) 異型細胞の3所見を重視してきたが, 昭和62年4月以降は乳管上皮細胞集塊中に存在する石灰化像も異常所見のチェック項目に加えた.
    平成元年9月までの2年6ヵ月間の分泌物10,596件中86件 (0.81%) に石灰化像を検出し, そのうち21例に病理組織学的検索を行った.その内容は硬癌1例, 乳頭腺管癌2例 (いずれもTO), 非浸潤性乳管癌 (Tis) 2例, 境界病変1例, 乳頭腫または乳頭腫症10例, 線維腺腫1例, 過形成3例, 乳管拡張症1例であった. 癌5例のうち, 乳頭腺管癌 (TO) 1例, 非浸潤性乳管癌 (Tis) 1例は, 石灰化像チェックが癌発見のきっかけになった.
    乳頭分泌物の細胞所見から得られる情報には限界はあるが, 間接所見としての石灰化像の拾い上げは意義あるものと考えられた.
  • 各務 新二, 渡辺 昌俊, 白石 泰三, 矢谷 隆一
    1992 年 31 巻 3 号 p. 405-412
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    直視下胃生検組織診と擦過細胞診とを併用し, 胃癌と診断され, 切除された早期胃癌70例のうち, 微小胃癌8例, 小胃癌23例について臨床細胞学的検討を行い, 以下のような結果を得た.
    1) 微小胃癌8例における陽性率は, 生検組織診75.0%, 擦過細胞診25.0%で, 両者を併用した場合は87.5%となり, 12.5%の成績向上が示された. 小胃癌23例における陽性率は, 生検組織診82.6%, 擦過細胞診47.8%で, 両者を併用した場合は82.6%と生検組織診単独の検査結果と同率であった.
    2) 生検組織診誤陰性または疑陽性例が細胞診疑陽性または陽性のため再検により癌と正診された例が微小胃癌, 小胃癌で2例ずつみられ, 正診率が全体で93.5%に向上し, 併用による臨床的意義がみられた.
    3) 癌症例を細胞診で正診できなかった原因を再検討した結果, 病巣側では, 白苔または非癌上皮の被覆があったこと, 露出部の癌密度が疎であったこと, 臨床側では, 生検採取後の出血により, 内視鏡観察が不十分であったことなどにより標本上に腫瘍細胞の数が少なかったことがあげられた. 今後, 内視鏡下での存在診断を含め, 手技の確立が望まれる. 一方, 病理側では, 形態的因子として,(1) 標本上に少数しかみられない細胞異型の弱い癌細胞の鑑別,(2) 陥凹型異型上皮巣 (atypical epitherial hyperplasia, 以下ATPとする) と類似したあるいは併存した高分化型腺癌の鑑別,(3) 良性異型細胞と類似した分化型腺癌の鑑別, に要約された.
  • 西川 眞史
    1992 年 31 巻 3 号 p. 413-419
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    治癒切除が行われた進行胃癌151例 (pm癌54例, ss癌45例, se癌52例) について, パラフィン包埋ブロックより単離細胞塗抹標本を作製し, 顕微蛍光測光法によりDNA ploidy patternを分析した. 得られたDNA ploidy patternと臨床病理学的因子, 予後との関連を中心に深達度別の検討を行った. 組織学的分化度とDNA ploidy patternとの問に有意な相関は認められなかった. ly, v, n因子の陽性率は, se癌におけるly因子を除いて, aneuploid patternを示す癌のほうがdiploid patternを示す癌よりも高かった. 特にpm癌におけるn陽性率, ss癌における1y陽性率はaneuploid patternを示す癌のほうが有意に高かった. DNA ploidy patternと予後との関係をみると, すべての深達度で, diploid patternを示す癌のほうがaneuploid patternを示す癌よりも高い5年生存率を示した. しかし両者の生存率の間に有意差が認められたのはpm癌のみであった.進行胃癌においてDNA ploidy patternを予後推定の指標として用いることができる深達度はpmである.
  • 金城 満, 藤 利夫, 稲富 久人, 川岸 淳子, 大塚 雅晋, 山口 秋人, 原 三信
    1992 年 31 巻 3 号 p. 420-425
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    平成1~2年にESWL (体外衝撃波による結石破砕) 治療を目的に入院した22患者の治療後の27検体 (自然尿) を対象に, 出現する移行上皮細胞の異型について検討した.結石の発生部位との関連はみられず, 小塊状結石にやや多く, 結石分析のなされた15例の検討では燐酸カルシウム結石が53.3%とやや多い傾向がみられた. 尿路結石症に伴う異型移行上皮細胞は, 小型の移行上皮細胞からなり, 低異型度の移行上皮癌との鑑別が重要と考えられる.尿路結石症に伴う異型移行上皮細胞は, 集塊が多く, 集塊の辺縁は明瞭で, 凹凸がなく, 小型核 (核長径の小さい) の異型細胞からなる. 孤在異型細胞は出現しないことが重要な所見で, 特に低異型度の移行上皮癌との鑑別に有用であると考えられた.
  • 藤野 通宏, 宮本 宏, 磯部 宏, 秋田 弘俊, 永森 聡, 富樫 正樹, 遠藤 隆志, 井上 和秋, 阿部 庄作, 川上 義和
    1992 年 31 巻 3 号 p. 426-430
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍356例の尿細胞診成績を解析し, さらにフローサイトメトリーにより膀胱腫瘍切除標本135例の核DNA量を測定し, 両者の関係を腫瘍の組織異型度, 深達度ごとに検討した.
    腫瘍の組織学的深達度でみると細胞診陽性率はT1で41%, T2で76%, T3で80%, T4で90%と深達度が進むほど高くなった.一方DNA aneuploidyの割合もT1では49%, T2では67%, T3aからT4にかけては80%以上であり, DNA indexもT1からT4にかけて増加した.
    腫瘍の組織学的異型度でみると細胞診陽性率はG1で27%, G2で66%, G3で85%と異型度が増すほど高くなり, 一方DNA aneuploidyはG1で42%, G2で64%, G3で90%と増加し, DNA indexもG1からG3にかけて増加した.
    DNA diploid腫瘍は全体の約40%を占め, 組織異型度が低いほどその割合が上がり, 尿細胞診陽性率は下がった.膀胱のDNA diploid腫瘍の尿中細胞は細胞異型度が低く形態学的に悪性と診断することが困難になると考えられる.
  • 綿棒とサイトピックの比較
    武智 昭和, 土屋 菊枝, 野口 美果, 簗場 久美子, 杉山田 隆男, 土屋 正和, 栗原 操寿, 長峰 敏治, 伊藤 良彌
    1992 年 31 巻 3 号 p. 431-438
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌2次検診 (精検) 時の細胞診において綿棒法とサイトピック法による正診率の優劣を比較検討した.
    まず最初に, 綿棒とサイトピックを2次検診時に同時に使用し, 組織診で確認された高度異形成8例, 上皮内癌8例, 微小浸潤癌6例の少数例について検討した.
    サイトピック法の方が塗抹異型細胞とcluster数が多いこと, 細胞診の低評価 (under diagnosis) は綿棒法に多いこと, 逆に高評価 (over diagnosis) はサイトピック法に多いこと, 上皮内癌と微小浸潤癌での細胞診の正診 (組織診断と一致) はサイトピック法に多いことなど, サイトピック法に有利な結果が得られた.
    そこで, ルーチンに行われた2次検診の多数例につき, 両法をさらに比較検討した.
    綿棒法は昭和61年11月より62年10月の間に精検) 受診のため来館した362例につき, またサイトピック法は昭和63年5月より平成元年4月までに精検した473例につき検討したところ, 浸潤癌では差はみられなかったが, 高度異形成, 上皮内癌および微小浸潤癌においてサイトピック法がより正診率が高率であった.また, 高評価はサイトピック法において, 逆に低評価は綿棒法に多くみられた.
  • 土岐 利彦, 熊谷 幸江, 高坂 公雄, 川嶋 博, 方山 揚誠
    1992 年 31 巻 3 号 p. 439-443
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    4種の子宮頸部細胞採取器具 (綿棒・木製スパーテル・サイトブラシ・Cervex-brush) を用いて採取した頸部スミアの標本としての適切性を, Bethesda Systemを用いて評価し採取器具別に比較検討した.標本の適切性が“Less than optimal/Unsatisfactory”(不適切) と判定されたものは1006例中96例 (9.5%) であり, 全例閉経前女性でendocervical component (EC: 頸管腺細胞または化生細胞) の認められない標本であった.採取器具別では, 綿棒74/248 (29.8%), スパーテル18/247 (7.3%), サイトブラシ1/265 (0.4%), Cervex 3/246 (1.2%) が不適切と判定された.閉経後女性も含めた全症例でECのみられなかった標本は, 綿棒79, スパーテル21, サイトブラシ2, Cervex 3例であり, 綿棒採取はほかの3種の採取法に比べてECの認められない標本の割合が明らかに高かった.また, 頸管腺細胞または化生細胞が十分多数出現していた標本は, 綿棒87, スパーテル177, サイトブラシ225, Cervex217例であり, やはり綿棒採取標本は頸管内成分の出現が少ないことが示された.以上より, 綿棒採取による子宮頸部スミアは標本の適切性という点で問題があり, 今後検討を要するものと思われる.
  • 堀内 文男, 大木 昌二, 武田 敏, 米満 博, 計良 恵治, 白沢 浩, 富田 善身, 清水 文七, 岩崎 秀昭, 高見沢 裕吉
    1992 年 31 巻 3 号 p. 444-449
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは子宮頸部生検組織および手術材料にて子宮頸部上皮内新生物Cervical IntraepithelialNeoplasia (CIN) I~IIIと診断された130症例を用いin situ hybridization (ISH) を実施し, human papillomavirus (HPV) の検索を行い以下の結果を得た.内訳はCINI31例, CINII43例, CIN III56例である.HybridizationはVira TypeTM Human Papillomavirus TissueHybridization Kit (LTI, 東レ) を用いた.使用したDNAプローブはHPV6/11, 16/18, 31/33/35型のビオチン標識混合プローブである.
    1.CIN全体におけるHPV-DNAの検出頻度は69.5%(91/130) であった.また, 各病変の陽性率はCIN I58.1%(18/31), CIN II74.4%(32/43) CIN III73.3%(41/56) であった.
    2.CIN異型度とISHの陽性所見はCIN Iで表層集中型 (Type S), CIN IIで全層不均等分布型 (Type A1), CIN IIIで全層均等分布型 (Type A2) がそれぞれ最も高い頻度を示した.
    3.Koilocytosisの出現頻度はHPV-DNA陰性例に比べ, 陽性例に頻度が高かった.Dysker-atosis, Parakeratosisの出現頻度は陽性例と陰性例で大差を認めなかった.
  • 森 真理子, 蔵重 亮, 藤原 喜枝, 元井 信
    1992 年 31 巻 3 号 p. 450-456
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近4年間に経験した子宮内膜細胞診250例について, エンドサイト法採取材料の通常塗抹法に加えて, エンドサイト付着残存内膜組織から寒天法を用いてセル・ブロック標本を作製し, 両法を併用して子宮内膜細胞診断を行い, セル・ブロック法の有用性を検討した結果, 以下の成績を得た.
    1) セル・ブロック標本では, 子宮頸管腺と内膜腺, 内膜腺上皮と表層被蓋上皮, 上皮細胞と間質細胞の区別, 内膜周期性変化の判定が容易であった.
    2) 子宮内膜増殖症の診断, 特にその型別診断や異型度の判定は塗抹標本のみに比し, 本法の併用により精度の向上があった.
    3) 内膜癌の診断では, 本法の併用により塗抹標本の診断を確認でき, 分化度の推定が可能であった.
    4) セル・ブロック法では同一材料で多数の標本が作製でき, 細胞診材料において免疫組織化学的検索など特殊染色が可能である.
    エンドサイト法による子宮内膜細胞診にセル・ブロック法を併用することは多くの利点があり, 診断精度の向上に役立つものと考えられた.
  • 林 玲子
    1992 年 31 巻 3 号 p. 457-465
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    正常ならびに腫瘍性子宮内膜の位置付けを確立させ, 各疾患の細胞診断を向上させる目的で, 健常内膜25例, 子宮内膜増殖症38例, 子宮体癌35例, 計98症例の内膜細胞診標本の核の大きさ・形状を画像解析システムを用いて計測し, 次の結果を得た.(1) 分泌期内膜の核面積は増殖期に比し1.24倍 (最大径は1.12倍) に増大し, 嚢胞性あるいは腺腫性増殖症より大きかった.(2) 萎縮内膜の核は増殖期より小さく (面積, 最大径ともに0.79倍), 大小不同性なく均一化し, 真円に近い形をとった,(3) 体癌では, 低分化になるほど核は大きく, 大小不同性も顕著であった.また, 形状の不整は健常内膜や子宮内膜増殖症に比し強かった.(4) 異型増殖症の核は腺腫性増殖症に比し有意に大きかった.またG1体癌よりやや大きい傾向にあったが, 大小不同性は軽微であった.(5) 腺腫性増殖症の核は, 増殖期内膜に比し有意に大きく, 大小不同性も強い傾向にあった.(7) 核最大径は健常内膜では萎縮6.4±0.8, 増殖期8.1±1.1, 分泌期9.1±1.5μm, 腫瘍性子宮内膜では嚢胞性腺増殖症7.6±1.2, 腺腫性増殖症8.0±1.4, 異型増殖症8.5±1.5, G1体癌8.7±1.7, G29.4±2.0, G39.6±2.2μmの順に大きくなった.
  • 嶋本 富博, 加来 恒寿, 井町 正士, 重松 敏之, 斎藤 俊章, 嘉村 敏治, 塚本 直樹
    1992 年 31 巻 3 号 p. 466-471
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣の未分化胚細胞腫はまれな疾患で, 当科では過去25年間に20例を診断治療した. 20例中8例に胸腹水を認めた. このうち7例に腹水あるいは胸水中に腫瘍細胞を認めた. この7例の細胞学的所見について検討した結果, 以下のような特徴的所見が認められた. 1) 細胞は小集塊あるいは孤立散在性に出現し, 小集塊を形成した場合にはその重積性は弱かった. 2) 細胞境界は明瞭, 細胞質は豊富で好塩基性で, 7例中6例は小空胞状であった. 3) 核は15μ 前後と大型で明るく, クロマチンは増量し多くは微細穎粒状で, 7例中3例に核縁の肥厚を認めた. 4) 核小体は複数個認め, 2μ以上の大型のものが多かった. 5) 捺印細胞像で特徴的な腫瘍細胞とリンパ球とがみられる, いわゆるtwo-cellpatternは胸腹水細胞像では認めなかった.
  • 樋口 正臣, 半藤 保
    1992 年 31 巻 3 号 p. 472-475
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    生体に高い抗原性を有するOncofetal-antigen (OFA-I) の婦人科悪性腫瘍における分布状態を免疫粘着反応 (IA法) と間接蛍光抗体法 (MIF) にて検討を行い, 以下の結果を得た.
    1. 免疫粘着反応での各種婦人科悪性腫瘍におけるOFA-1の存在は, 卵巣癌20例中14例 (70%) 未分化胚細胞腫3例中3例 (100%) に, 子宮頸癌では, 15例中6例 (40%) に, 外陰癌2例中1例 (50%) に, 子宮体癌7例中3例 (43%) に, 子宮平滑筋肉腫2例中2例 (100%) に認められた.
    2. 間接蛍光抗体法では, 卵巣悪性腫瘍では, 20例中9例 (45%) に, 子宮頸癌では, 15例中5例 (33%) に, 外陰癌2例中2例 (100%) に, 子宮体癌7例中3例 (43%) に, 子宮平滑筋肉腫2例中1例に主として細胞膜上にOFA-Iの存在が認められた.
    3. 子宮筋腫症例17例の子宮頸部上皮, 子宮内膜, 筋層部組織および卵巣上皮性良性腫瘍8例の腫瘍上皮にはIA法, 間接蛍光抗体法両方においても, すべての組織にOFA-Iが認められなかった.
    以上の結果からOFA-Iは, 婦人科悪性腫瘍組織に高頻度に存在し良性腫瘍組織には存在しないことが判明した. このOFA-Iは, 生体に高い抗原性を有しさらにその抗体が腫瘍細胞に対し強い細胞障害作用を有していることから, 抗OFA-I抗体による婦人科悪性腫瘍に対する特異的免疫療法への応用の可能性が示された.
  • その経時的変化と相互の関連性について
    福田 良夫, 田村 昭蔵, 和泉 滋, 根津 義広, 野澤 志朗
    1992 年 31 巻 3 号 p. 476-484
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症患者12名にgestrinone (G) 5または10mg/週, 4~6ヵ月間投与し, 投与前卵胞期に, 投与中は2ないし4週ごとに, また投与後卵胞期にそれぞれ膣壁より検体を採取した.Pap標本により成熟指数 (MI) を観察し, 同時に採血してRIA法によりestradiol (E2), progesterone (P) およびtestosterone (T) 値を測定し, MIとホルモン値の推移およびそれらの相互の関係を検討した.
    G投与中は中層細胞が主体を成すため, これを細分して労基底細胞に近い小型中層細胞と, 表層細胞に近い大型中層細胞に分け, MIを労基底/小型中層一大型中層/表層の順で示して検討した.成績, 1) MIの平均値は投与前で0/15-40/45, 投与中の全期間で0/52-38/10, 投与後3ヵ月で0/22-41/37であった.労基底細胞は投与20週以後わずかに増加, 小型中層細胞は2週より増加 (p<0.05), 大型中層細胞は4週まで増加し以後減少, 表層細胞は2週より減少 (p<0.05) した.2) ホルモンの平均値は投与前でE284P9/ml, P0.5ng/ml, T0.5ng/ml, 投与中の全期間でE231Pg/ml, P0.5ng/ml, T0.3ng/ml, 投与後3ヵ月でE259pg/ml, P0.6ng/ml, T0.4ng/mlであった.G投与によりE2は投与2週以後低下 (p<0.05), Pは初期より卵胞期レベル, Tは2週より低値 (p<0.05) を続けた.3) MIとホルモン値との関係では, 小型中層細胞指数とE2, T値の問に負の, また表層細胞指数とE2, T値との間に正の相関がみられた (p<0.001).
  • 西 一典, 鳥野 美千代, 野中 喜代美, 佐藤 隆夫, 門田 永治
    1992 年 31 巻 3 号 p. 485-488
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    術中に採取した嚢胞内容物の塗沫標本がトルコ鞍内に発生した症候性ラトケ裂嚢胞の診断に有用であった1例を経験したので報告する.
    患者は42歳, 女性で前頭部痛, 不眠, 右眼霧視を主訴に入院.頭部MRIにてトルコ鞍内に約15mmの円形腫瘤を認め, しだいに増大してきたため腫瘍摘出術を行った.術中の凍結迅速標本では提出された検体が微小で, 切片上嚢胞壁がでていなかったため診断が困難であった.同時に提出された嚢胞内容物の塗抹標本では, 異型性のない円柱上皮細胞が散在性あるいは平面的な細胞集団としてみられ, 散在性に出現している細胞の中には明瞭な繊毛をもつ細胞が認められラトケ裂嚢胞と診断した.また, 背景には無) 構造物質が散見された.Mucicarmine, PAS, Alcian-blue (pH2.5およびpH1.0) の染色では背景の無構造物質および繊毛を持つ細胞の一部に陽性を示した。病理組織学的にはその後の永久標本にて嚢胞壁に沿って円柱および繊毛円柱上皮が認められラトケ裂嚢胞と確信された。
    術中迅速病理診断が困難であった本症例は, 塗抹標本で繊毛上皮細胞と粘液染色陽性細胞が証明され細胞診断が有用であった.
  • 捺印細胞診について
    中島 透, 田島 康夫, 菅野 勇, 長尾 孝一, 佐久間 晃, 周 信夫, 箕田 健生
    1992 年 31 巻 3 号 p. 489-492
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    患者は75歳の女性で, 6年前から進行する左眼球突出と復視を訴えて来院した.左眼窩外上側に弾性硬の腫瘤を触知し, 切除手術が行われ, 涙腺由来の多形腺腫内癌腫の病理診断を得た.腫瘍の捺印細胞診では, 結合性の弱い, 多角形~紡錘形の腫瘍細胞の集塊がみられ, 一部の細胞には細胞異型が目立った.組織学的には, 粘液または線維性基質中に, 未分化癌または低分化腺癌が増殖しており, 先行して存在していた多形腺腫の癌化に由来していると考えられた.電子顕微鏡的所見では, 腫瘍細胞には腺上皮性細胞内器官が主に認められたが, 中間フィラメントが目立つ細胞も混在していた.
  • 松井 武寿, 上原 敏敬, 佐野 裕作, 江良 英人, 出雲 俊之, 金子 安比古, 岸 紀代三, 高山 昇二郎
    1992 年 31 巻 3 号 p. 493-498
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    耳介後部に初発したKi-1リンパ腫を経験したので報告する. 患者は18歳の男性. 確定診断と治療目的のため当センター耳鼻科を受診し生検が行われた. 捺印標本では腫瘍細胞は孤立散在性に出現し核は大小不同が著しく, 核異型の強い細胞であった. 馬蹄形や多核およびドーナツ状の核を有する細胞がしばしばみられた. また, Reed-Sternberg (RS) 細胞類似の巨細胞が観察された. 病理組織学的には, 既存のリンパ節構造は認められなかった.腫瘍細胞の核は非常に多形性に富んでいた. 免疫染色で, Ki-1, Ber-H2, EMA染色などが陽性であった. Ki-1リンパ腫は, 著しい多形性を示すため, ほかの腫瘍との鑑別には臨床経過, 臨床診断, 免疫染色などを参考に, 細胞像を詳細に観察することが肝要と思われた.
  • 佐野 暢哉, 山田 順子, 鈴木 祐鳳, 高井 チカ子, 上原 久典, 中村 宗夫, 山本 洋介, 泉 啓介
    1992 年 31 巻 3 号 p. 499-502
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    まれな甲状腺腫瘍である硝子化索状腺腫を経験したのでその穿刺細胞像ならびに病理組織学的, 電顕的および免疫組織化学的所見について報告する.
    症例は38歳女性で, 甲状腺腫瘤の穿刺細胞診にて異型の少ない短紡錘形細胞ではあるが, 核内偽封入体, 核溝を有した細胞が認められたため, 乳頭癌を疑われ, 切除手術が施行された. 切除材料の組織学的検索では, 短紡錘形の細胞が索状に配列し, アミロイド様の間質を伴う像を認め, 電顕的には核内偽封入体, 多量の細胞質内フィラメント, 肥厚した基底膜様構造がみられ, 硝子化索状腺腫と診断した.
    細胞診上, 硝子化索状腺腫を正診することは容易ではないと思われるが, 乳頭癌と髄様癌の両者の類似像を得た際は, それを鑑別診断にあげる必要があるものと思われた.
  • 島田 智子, 照井 仁美, 小坂井 守, 荻野 雅弘, 土橋 一慶, 川口 研二
    1992 年 31 巻 3 号 p. 503-506
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺腺腫は若年女性にみられるまれな腫瘍で, 管状腺腫 (tubular adenoma) と授乳性腺腫 (lactating adenoma) に亜分類される. 今回われわれは, 一部に線維腺腫様結節病変を伴った管状腺腫の1例を経験したので報告する.
    患者は23歳, 女性. 穿刺吸引細胞診および捺印細胞診で, 上皮細胞は管状, 腺房状ないし, シート状の結合の強い細胞集団であった. 細胞は中等大, 均一で大小不同はほとんど認めない. 核は円形~類円形. クロマチンは微細顆粒状で, 小型核小体が1~2個認められた. 背景には裸核状の間質細胞および筋上皮細胞がみられ, 線維腺腫 (丘broadenoma) を考える細胞像であった. 組織学的には管状腺腫と診断されたが, 内部に硝子化した線維性の小結節状病変が混在しており, その発生に関し線維腺腫との異同が問題となるものであった.
  • Raj K. Gupta, Sharda Lallu, Andrew G. R. McHutchison, Tadao K. Kobayas ...
    1992 年 31 巻 3 号 p. 507-511
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    奇怪な上皮性巨細胞の出現をともなったまれな乳癌の鎖骨上リンパ節転移症例の穿刺吸引材料について細胞学的および免疫学的に調べたので報告する. ここに示した免疫細胞化学を含めた細胞所見や最近, われわれが報告した乳房原発の類似症例2例をあわせた検討によりリンパ節に認められた奇怪な悪性巨細胞の由来は組織球や間質細胞よりむしろ乳癌細胞同様の上皮性由来と考えられる.
  • 手塚 文明, 安藤 紀昭, 草刈 千賀志, 平山 克
    1992 年 31 巻 3 号 p. 512-515
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    食道原発・未分化小細胞癌の1例を報告する. 患者は49歳男性. 検診で食道胸部上中部を占拠する癌が発見され, 生検組織診および捺印細胞診により未分化小細胞癌と診断された. 術前照射で癌巣の縮小を図り, 根治手術を施行したが, 脳を含む全身諸臓器につぎつぎと転移巣が現れ, 術後10ヵ月で死亡した. 癌細胞は, 概して小型で結合性に乏しく孤立散在性の分布を示していた. ごく一部で小塊形成を伴い, 免疫抗体法でcytokeratin陽性, 電顕的にdesmosomal attachmentが証明された. しかし扁平上皮や腺上皮への分化は確認されなかった. またargyrophiliaやneurosecretory granulesは存在せず, 神経内分泌細胞への分化も認められなかった. 本癌は食道上皮のtotipotent primitivecellに由来した未分化細胞癌と理解された. 食道・未分化小細胞癌は, 従来報告が少ないが, 必ずしも発生頻度の低いものでなく, その存在が広く認識されるにつれ増加するものと予想される.
  • 26年間の経過とその細胞病理学的所見
    小池 昇, 浅見 英一, 坂井 義太郎
    1992 年 31 巻 3 号 p. 516-521
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    26年間の経過を経て死にいたった限局性胸膜中皮腫の1例を報告し, その細胞病理学的所見を述べた.症例は保険外交員の女性.1963年 (38歳時), 右胸膜の限局性中皮腫の摘出術を受けた.1975年 (50歳時) 低血糖とともに同側に再発した腫瘍が指摘され, 腫瘍の切除術を受けた.以後合計5回の再発, 切除を繰り返し, 1989年 (65歳時) 再発, 転移 (両肺, 後腹膜) により死亡.剖検により悪性胸膜中皮腫, 線維型と確認された.経過中の1978年, 1984年, 1988年に腫瘍から得られた穿刺細胞診および捺印細胞像を比較検討した.腫瘍細胞は散在性に出現する紡錘形の非上皮型細胞で, その異型性ことに核大小不同は経過とともに有意に増大した (P<0.01).また経過とともに上皮型腫瘍細胞の出現したことも注目に値する.
  • 近藤 万里, 日野 典文, 池内 五十鈴, 宮本 一雄, 田部井 亮
    1992 年 31 巻 3 号 p. 522-526
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性で呼吸困難を主訴として来院し, 両側の胸水および心嚢水が認められ入院した.胸水と心嚢水の細胞診により腺癌の心嚢腔への転移を疑ったが, 原発巣を特定できないまま呼吸不全で死亡し, 剖検により心膜原発の中皮腫と診断した.
    心嚢水の塗抹標本に, Papanicolaou, Giemsa, PAS染色を行った.腫瘍細胞はまりも状あるいは乳頭状に集塊し, ライトグリーンに淡染した細胞質には粘液空胞や細胞辺縁にブリスター様突起を有するものを認めた.また, 核内には明瞭な1~3個の核小体が認められた.PAS染色では, 細胞質辺縁に滴状の陽性反応を示した.
  • 福田 精二, 大掘 純一, 国田 秀樹, 川野 陽子
    1992 年 31 巻 3 号 p. 527-530
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    中皮腫のなかで, きわめてまれな腹膜多房性中皮腫を経験したので報告する. 症例は43歳, 男性. 昭和62年2月に右下腹部に無痛性鶏卵大腫瘤を触知したが, 放置していた. 徐々に増大するため, 平成元年7月に切除術施行された. 腫瘤は盲腸から上行結腸と広く接し, 右側腹壁との問に存在する多房性腫瘍で, 嚢胞液は漿液性および粘液性だった.組織学的に1ymphangiomaと酷似していたが, 捺印細胞診では多辺形細胞が主にシート状, 散在性にみられ, ライトグリーンに染色されるレース状の豊富な胞体を有しており, 中皮細胞の形態を示した. この結果から腹膜多房性中皮腫を推定し, 免疫組織化学的にケラチン, ビメンチン, EMA陽性から確診した. 本症例は男性の盲腸部腹膜に発生した腹膜多房性中皮腫だが, 一般的には若年成人女性の小骨盤腔腹膜, 特にダグラス窩, 子宮, 直腸部に好発する嚢胞性病変で, この特徴的な臨床病理学的事項を理解していれば, 術前穿刺細胞診や術中の捺印標本による診断も可能と思われる.
  • 佐藤 英章, 国実 久秋, 小泉 勉, 森 吉臣
    1992 年 31 巻 3 号 p. 531-535
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮原発の横紋筋肉腫で, ほかの間葉系の肉腫や上皮性の要素を含まない純粋横紋筋肉腫を経験したので報告する. 症例は, 63歳の女性で, 不正性器出血, 下腹部痛を主訴として来院. 内診で筋腫分娩を指摘され, 子宮内膜生検にて肉腫が疑われたことから子宮卵巣摘出術が施行された. 筋腫部の捺印細胞診では, 紡錘状ないしラケット状を呈する腫瘍細胞を多数認め, 核は長楕円形, 類円形を呈し, 核が細胞質より突出してみられた. 核クロマチンは細顆粒状で明瞭な核小体を1ないし数個有していた. また, 組織化学的検索では, desmin, myoglobin, CPK-mmがともに陽性の像を示し, 電顕的にも筋細線維と筋線維を認めた. しかし, 多数の標本の検索にても, ほかの間葉形由来の肉腫成分, 上皮性成分などを認めないことから子宮に原発した純粋横紋筋肉腫と診断した
  • 草間 博, 福島 良明, 大塚 光一, 池畑 信正, 花岡 知々夫
    1992 年 31 巻 3 号 p. 536-540
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は9歳女子. 下腹部膨満感を主訴に来院, 左卵巣腫瘍の診断にて切除術が施行された. 腫瘍は最大径13cm, 割面では黄白色の充実性部分に大小の嚢胞をまじえていた. 術中の穿刺吸引細胞像では丸みをおびた小型の乳頭状細胞集団が多くを占めたが, 重積性を示す比較的大型の乳頭状集団も散見され, その先端部からさらに小乳頭状の突出像を伴っていた. 構成細胞は小型で胞体は乏しく, 境界は不明瞭. 類円形でほぼ均一な核を有し, 核縁は平滑で中等度のクロマチン増量を示した. 淡明な胞体を有するやや大型の細胞が平面的に配列する集団も少数ながら出現し, その一部は間質様の紡錘状細胞と接していた. 組織学的には精巣網に類似した大小の不規則な網状構造が特徴的で, 一部は嚢胞状の拡張を示した. 内壁は小型立方状細胞に被覆され, 小型乳頭状の突出を伴っていた. 充実性部分では, 紡錘状細胞からなる間質様成分の中に未熟なセルトリ細胞が索状ないしリボン状に配列し, スリット状の網状構造への移行を示した. 臨床病理学的に卵黄嚢腫瘍や漿液性腺癌との鑑別が重要である.
  • 伊藤 耕造
    1992 年 31 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣原発mixedmesodermaltumor (MMT) はきわめてまれな疾患である. 国内の報告例は15例にすぎない. 卵巣原発MMTを経験し捺印細胞診と病理組織学的検討を行ったので報告する. 患者は58歳主婦, 3回経妊2回経産で主訴は腹部膨満感であった. 捺印細胞診では腺癌細胞と肉腫細胞を認めた. 前者は大きな細胞集塊で出現し, 細胞質は淡青色に染まり, 細胞質はうすくレース状であった. 核は腫大して類円形を呈し, 核の大小不同を認め1から2個の核小体を有してクロマチンパターンは細顆粒状であった. 一方後者の細胞は小集塊で出現し, 細胞質は好塩基性に淡染し境界明瞭で, 類円形の形を呈した. 核もまた類円形ではほぼ中心に位置し, クロマチンの増量を認めるが核縁の肥厚はなく赤染する核小体を1個有していた. この細胞はS100蛋白の免疫染色を施行すると陽性を示したことにより軟骨肉腫由来の細胞と同定した. 組織学的検索では上皮性成分として漿液性嚢胞腺癌と非上皮性成分としては軟骨肉腫を認め, 腺癌と肉腫とは組織学的には混在して存在していた. 併せてMMTの組織発生に関しても若干の考察を加えたので報告する.
  • 名方 保夫, 山中 陽子, 井原 茂美, 石川 一幸, 森 睦子
    1992 年 31 巻 3 号 p. 546-549
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹水中に腫瘍細胞の出現した卵巣未分化胚細胞腫の1例を経験したので報告した. 症例は, 45歳, 女性. 下腹部痛および下腹部膨満感を主訴として来院し, 卵巣腫瘍が疑われ, 両側付属器切除および単純子宮全摘出術が施行された. 腫瘍は, 肉眼的に新生児頭大で充実性であった. さらに腹水が1100ml認められ, 腹水細胞診中に, 腫大した核小体を有する大型核をもつ腫瘍細胞がシート状出現していた. 腫瘍細胞の細胞質は淡明で, さらに細胞境界は明瞭で重積性は認められなかった. 組織学的には, 典型的な未分化胚細胞腫像であった. 未分化胚細胞腫は, 捺印細胞診や吸引細胞診では, 腫瘍細胞と小リンパ球とが出現するいわゆる2cell patternが特徴像とされるが, 本症例では, 腹水細胞診であるために2cell patternは明らかではなかった. したがって細胞学的には, 腺癌や悪性リンパ腫との鑑別を必要とするが, 本症例のように典型的な未分化胚細胞腫細胞の出現を腹水細胞診中に認めた場合には, たとえ2cell patternが不明瞭でも, その診断は比較的容易ではないかと考えられた.
  • 清水 誠一郎, 伊佐山 絹代, 三田 健司, 兼子 耕, 諏訪 敏一, 清水 健
    1992 年 31 巻 3 号 p. 550-551
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 脇坂 好孝, 野島 孝之, 井上 和秋, 荒川 三紀雄, 遠藤 隆志, 内野 純一
    1992 年 31 巻 3 号 p. 552-553
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 武井 由美, 台丸 裕, 徳永 次行, 郷田 宏子
    1992 年 31 巻 3 号 p. 554-555
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 藤井 丈士, 川井 俊郎, 鈴木 光明, 杉村 雅美, 大和田 倫孝, 斎藤 建
    1992 年 31 巻 3 号 p. 556-557
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 石原 浩, 寺原 賢人, 肥後 真, 田中 貞夫, 金森 康展, 皆川 幸久, 紀川 純三, 寺川 直樹
    1992 年 31 巻 3 号 p. 558-559
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
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