日本臨床細胞学会雑誌
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31 巻, 6 号
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  • 佐藤 雅美, 斎藤 泰紀, 永元 則義, 太田 伸一郎, 今井 督, 須田 秀一, 仲田 祐, 中嶋 隆太郎, 佐藤 博俊, 藤村 重文
    1992 年 31 巻 6 号 p. 887-896
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    早期肺癌および境界病変において喀痰中に出現する境界領域の異型細胞の特徴を明らかにし, さらに胸部X線無所見肺癌の喀痰像を病変の深達度別に検討することにより, 深達度推定が可能か否かを検討する目的で, 喀痰細胞像を病変の深達度別に検討し, 以下の結論を得た.(1) 境界病変と上皮内癌では, 細胞面積, 核面積ともに浸潤例より有意に小さく, 境界病変では核は有意に円に近かった.(2) 癌と断定できない所見を呈する場合でも, 多核細胞の出現や明るく輝くレモンイエローの染色性を示す細胞の出現, さらには全体としての多様性から, 要精査例を選別し, 上皮内癌を含む早期病変を発見することができた.(3) 病変の深達度が増すにつれ, 核形不整の程度が増し, 粗顆粒状のクロマチンパターンを示すものも増えていた.(4) これらの所見を総合した喀痰細胞診判定は, その各症例の深達度との関連から臨床的に以下の意義を有していた.すなわち, Class IIIとした症例には境界病変もしくは上皮内癌例が多く, Class IVとした症例には胸部X線無所見肺癌が大部分を占め, Class Vとした症例には胸部X線有所見肺癌または壁外浸潤の非早期癌が大部分を占めていた.このように喀痰細胞診によりほぼ胸部X線無所見肺癌であることは推定可能である一方で, さらに詳細な深達度の推定までは困難であった.
  • 佐藤 雅美, 斎藤 泰紀, 永元 則義, 遠藤 千顕, 薄田 勝男, 高橋 里美, 菅間 敬治, 佐川 元保, 太田 伸一郎, 藤村 重文
    1992 年 31 巻 6 号 p. 897-904
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    上皮内癌を含む胸部X線無所見気管支原発早期扁平上皮癌例および境界病変例を対象として, その擦過細胞像を病変の深達度別に検討し, 以下の結論を得た.
    1) 擦過細胞像の検討では, 病変の深達度が増すにつれて, 核形不整の程度, 核面積, 核小体数, 出現する異型細胞数, 解離係数などが増加していた.
    2) 個々の細胞異型からは浸潤が平滑筋層を越えると進行癌と同等となっていた.
    3) 細胞の配列の乱れは浸潤が軟骨を越えた場合著明で, 胸部X線無所見肺癌では壊死性背景はまれであった.
    4) これらを総合し, 擦過細胞像から, 胸部X線無所見肺癌の各病変の深達度を推定することがある程度可能であることが示唆された.今後, 手術術式を含めた治療法の選択に際して有用な情報を提供するものと考えられた.
  • 小池 綏男, 寺井 直樹, 土屋 真一, 渡辺 達男, 高橋 洋子, 松山 郁生, 丸山 雄造
    1992 年 31 巻 6 号 p. 905-912
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    過去7年3ヵ月間に長野県がん検診センターの乳腺外来で穿刺吸引細胞診を施行した良性乳腺疾患917例について検討した.
    穿刺吸引細胞診による正診 (class I・II) 率は嚢胞が94.4%と最も高く, ついで, 炎症性偽腫瘍92.3%, 良性葉状腫瘍87.5%, 炎症85.7%, 線維腺腫80.3%, 乳腺症79.9%の順であり, 乳管内乳頭腫は50.0%と低かった.判定不能率はその他良性腫瘍が25.0%と最も高く, ついで, 乳腺症が13.1%, 乳管内乳頭腫6.3%, 線維腺腫5.2%の順であった.
    誤陽性 (class IIIb以上) 率は良性乳腺疾患全体では2.9%であったが, 乳管内乳頭腫が25.0%と最も高く, 良性葉状腫瘍は8.3%, 乳腺症は3.7%, 線維腺腫は3.5%であった.誤陽性例27例中16例は生検で, 9例は経過観察により良性疾患と診断したが, 2例には乳房切断術を施行してしまった.穿刺吸引細胞診は良性乳腺疾患の診断に有用であるが, 誤陽性判定は過剰診療につながるおそれがあるので, 穿刺感なども考慮して慎重に対処しなければならない.
  • 森 一磨, 乙幡 由美子, 柏崎 好美, 永山 剛久
    1992 年 31 巻 6 号 p. 913-919
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺腫瘍関連抗原CA15-3を認識する2つの異なるモノクローナル抗体115D8とDF3を用い, 乳腺良性悪性病変の穿刺吸引細胞標本を対象に免疫細胞化学的に染色し, これらの抗体が認識する抗原の局在部位を観察した.その結果いずれの染色も良性細胞ではapical borderに線状で褐色調の陽性反応を認め, 一方, 悪性細胞はcytoplasmにdiffuseに顆粒状ないし小塊状で褐色調の陽性反応を認めた.これらの反応局在部位はx2検定にて有意 (p<0.01) と判定され, この反応局在の違いから良性・悪性の鑑別は可能と思われた.
    Papanicolaou染色で誤陰性, 誤陽性とされた症例に対する本染色の結果は, 誤陰性例は悪性細胞と, 誤陽性例は良性細胞と同様の反応を示し, 本染色の有用性が示唆された.
    血清値測定におけるCA15-3は原発乳癌の早期診断には適さないとする報告が多いが, 今回, 免疫細胞化学的に検討を加えた結果では, 早期乳癌においても進行乳癌同様cytoplasmがdiffuseに染まり, 本染色は乳癌早期診断にも有用であると考えた.
  • 福田 利夫, 斎藤 まさ子
    1992 年 31 巻 6 号 p. 920-924
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    組織学的に確認された乳腺髄様癌の4症例について捺印細胞像を検討するとともに, 髄様腺管癌の2症例の捺印細胞像と比較した. 髄様癌の捺印細胞像の特徴は, 1) 背景にリンパ球がめだつ. 2) 集塊は主にシート状であり, 重積はめだたない. 3) 細胞質は大型で淡明である.4) 核は中心性で, 大型, 不整形であり, クロマチンは粗網状で核小体がめだつことなどである. 以上の所見から, 乳腺髄様癌の捺印細胞像は組織像をよく反映しており, 捺印細胞像からも組織型の診断が可能と思われる.
  • 組織学的背景を中心に
    加藤 拓, 高橋 久雄, 渡辺 義二, 佐藤 裕俊, 武田 敏
    1992 年 31 巻 6 号 p. 925-930
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胃癌349例について手術中腹腔内洗浄細胞診を行い検討した.(1) 陽性例は62例 (17.8%) であり, 深達度との関係はssγにおいてすでに1例 (1.8%) 認められ, se, seiでは各42例 (52.5%), 6例 (66.7%) と高率であった.(2) 腫瘍の大きさが平均3cmにて陽性例がみられ4cmまでに4例 (13.3%) であり, さらに大きくなるにしたがい陽性例が徐々に多くなり11cm以上14cmまでに8例 (53.3%) と高率を示した.また特に深達度se例においてその傾向は強かった.(3) 腹膜播腫との関係はPOにおいてすでに33例 (10.5%) を示し, P3においては16例 (100.0%) 全例陽性であった.(4) 腫瘍肉眼形態はBorrmannIV型が66.7%と最も多く, ついでIII型25.0%の順であった.(5) 陽性例の組織型は低分化腺癌 (por) が35例 (28.5%) と多かった.(6) 漿膜下組織層での浸潤増殖様式 (INF) はγ型58%と優位を示し, つぎにβ型40%, α型はわずか2%と少なかった.これを腫瘍の大きさとの関係でみると3~4cmと比較的小さな腫瘤でも陽性例はγ型を示すものに多かった.それに対しα 型は11~14cmと大きな腫瘤にてようやく1例認められた.(7) 腹腔内での胃癌細胞の出現形態は小集塊型54%, 散在型38%であり, この2つの型の細胞出現が大多数を占めた.
    このように腹腔洗浄細胞診の成績は胃癌の大きさ, 組織型, そして深達度, 特に漿膜下組織層での浸潤増殖様式に密接に関係し, さらに腹腔への出現細胞形態にも大きく影響しているものと考えられた.
  • 佐々木 政臣, 若狭 研一, 桜井 幹己, 岩 信造
    1992 年 31 巻 6 号 p. 931-936
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    術中腹腔洗浄液の細胞診で由来組織の推定が困難であった“cellballs”様細胞集塊 (以下“cell balls”と略す) につき, 酵素抗体法を実施し, 由来組織の推定が可能となったので報告する. 1989年の本院における術中腹腔洗浄液174例中32例 (胃癌28例, 大腸癌1例, 卵巣嚢腫1例, 子宮体癌2例) に“cellballs”を認めた.“cellballs”のPapanicolaou染色の特徴所見は球状から円柱状の立体的な細胞集塊で, 表面が扁平な細胞で被われ, 内部がライトグリーン好性を示す均一無構造で, ときに指紋様構造がみられるものもある.酵素抗体法では表面の扁平な細胞はケラチン, ビメンチンが陽性を示す中皮細胞と内部構造はコラーゲン・タイプI, IIIに陽性を示す膠原線維成分を含むことが推定された.
    したがって,“cellballs”は中皮細胞とその直下の線維性組織を含めた漿膜組織であり, 酵素抗体法を用いることにより他の腫瘍細胞との鑑別に有用と考えられた.
  • 片岡 明生, 大田 喜孝, 岡 邦彦, 本村 聡, 河野 勝一, 薬師寺 道明
    1992 年 31 巻 6 号 p. 937-942
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Carboplatin (CBDCA) 膣内投与を3例の上皮内癌 (CIS) に行い, 細胞診, 摘出組織により形態変化の観察を行った. 症例1: CBDCA50mg投与6時間後の摘出組織像において, 核周囲の細胞質内に空胞形成が著明であった. 症例2: CBDCA: 250mg (25mgx10) 投与後, 上皮層の剥離による潰瘍形成が著しく, 細胞浸潤も目立つ. 細胞診は, CIS細胞の出現はなく, 核質染色性の判然としない膨化変性細胞が認められた. 症例3: CBDCA: 500mg (25mg×20) 投与の摘出組織でCISを含む異型上皮は, 脱落していたが一部に91andular involvementとしてのCIS上皮の残存を認めた. 細胞診は,(1) 約2倍程度の細胞の膨化 (2) 細胞質内の空胞の出現 (3) 核クロマチンの粗凝集 (4) 細胞質融解 (5) 核質の濃縮, 破砕 (6) CIS由来細胞の消失 (7) repair cellの出現が観察された. CDDP投与時の変化と類似しておりCDDPとCDDPアナログの共通の薬理作用による抗腫瘍効果と推察されるが, 初期の細胞胞体の変化は, 症例1の組織像にも観察されており特に重要と考えている. 組織像では潰瘍形成により細胞の脱落を認めた. コルポ診でUCF症例では, 頸管深部に十分なCBDCAが及ばなかった可能性が考えられた.副作用は, 全く認められなかった.
  • 特に腺異形成の細胞出現様式
    梅嵜 圭吾, 中島 徳郎, 寺西 二郎, 加納 徳照, 木戸 美智子, 大崎 尚, 椹木 勇
    1992 年 31 巻 6 号 p. 943-949
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部腺癌の前癌病変であると思われる子宮頸部腺異形成に着目した. まず1984年1月より1992年4月までの約7年間で子宮全摘術治療を受けた2016例の術後標本につき子宮頸部腺を中心に再検討した. 子宮頸癌取り扱い規約 (1987) に基づいて, 浸潤腺癌18例, 微小浸潤腺癌4例, 上皮内腺癌9例, 腺異形成27例を診断し得た. ついでこれらの症例での術前スミアを再検討し, これらの頸部腺系細胞の出現様式を比較した.
    正常の頸部腺と腺異形成との鑑別には後者でのN/C比の増大と核小体が重要であり, 腺異形成と上皮内腺癌では, 後者でより著明な羽毛状とBall様の細胞出現が役立つと思われた. 上皮内腺癌と微小浸潤腺癌との鑑別には後者で, 粗大顆粒状クロマチンと核間距離不整がより強く, 微小浸潤腺癌と浸潤腺癌とでは前者での柵状配列と羽毛状の出現が鑑別に役立つことが示唆された.
    なお, 採取器具とは関係なく検体採取が充分であれば, 子宮頸部腺領域の診断, 鑑別は, 細胞診上可能であると考えられた.
  • 滝沢 通, 菅生 元康
    1992 年 31 巻 6 号 p. 950-956
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    女性性器単純ヘルペス (herpes simplex virus, HSV) 感染症の診断における細胞診の有用性を知る目的で感染細胞の形態変化の特徴の再検討を行うとともに, 採取条件, 各種診断法との診断率の比較, HSV1型, 2型および水痘帯状痕疹ウイルス (varicella-zoster virus, VZV) 感染細胞での形態差の有無などについて検討を行い以下のような結果を得た.
    1. 感染細胞の特徴はスリガラス状および多核化圧迫状配列など核にあったが, 核内封入体は33%の症例のみに認められた.
    2. 細胞診用の外陰部検体採取は初感染例では症状発現後1週間以内であれば診断可能であった. 採取法はガラスエッジの方が綿棒より良好な検体が得られた.
    3. 培養法と比較し細胞診での診断率は77%であった. 一方モノクローナル蛍光抗体法は特異性は高いものの診断率は細胞診より低かった.
    4. HSV1型, 2型およびVZV感染細胞の細胞形態による鑑別はできなかった.
  • 細胞診標本の光顕および画像解析システムによる検討
    泉 貴文, 下田 隆夫, 林 玲子, 蔵本 博行, 大野 英治
    1992 年 31 巻 6 号 p. 957-965
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    当科では, 開院以来現在までに中胚葉性混合腫瘍2例, 癌肉腫2例を経験した. 当初細胞診では, いずれも低分化型腺癌と診断されており, 組織像を正しく推定することはできなかった. そこで, その細胞像の再検討を行った. 細胞出現パターンは, 重積性 (腺癌部分) と孤立散在性 (肉腫部分) を示し, 核の所見には, 両者間で差がみられ, 特に孤立散在性に出現する細胞は, 重積性に出現する細胞を凌ぐ異型性を示していた. さらに大型の裸核状異型細胞の出現は, 本腫瘍の細胞診診断のうえでポイントとなるものとの印象を得た. そこでさらに, 画像解析システムIBAS-1を用いて, 最近経験した3症例およびG3体癌の重積性部分, 散在性部分の細胞の核面積をおのおの100個計測し比較検討した. 重積性部分では, ミューラー管混合腫瘍の核面積はいずれの症例でもG3体癌より大きかった. 核の大小不同性を表す変動係数は1例が高値を示していたが, 他の2例では, G3体癌と大差なかった. 散在性部分でも, ミューラー管混合腫瘍の核面積はG3体癌よりも大きかったが, その傾向は, 重積性部分よりも強く出ていた. 変動係数については, 重積性部分と同様に, 例が高値を示 していたが, 他の2例では, G3体癌と大差はなかった. 以上の結果より, 腫大細胞の出現ことに孤立散在性に出現する大型細胞のそれは, ミューラー管混合腫瘍においては特徴的であり, G3体癌との鑑別のポイントになると思われた.
  • 仲沢 経夫, 五来 逸雄, 土井 千栄, 平原 史樹, 水口 弘司
    1992 年 31 巻 6 号 p. 966-972
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ヒト卵巣明細胞腺癌由来の培養細胞株 (OVISE) を樹立し, その細胞生物学的性状を調べた. 卵巣明細胞腺癌の再発患者より摘出した腫瘍組織を材料として, 37℃, 5%CO2の条件下で, 10%FCS加RPMI1640を培地に用いて静置培養を行った. 培養細胞は順調に増殖し, 2年8ヵ月経過し現在74代目である.
    1) 培養細胞は多角形ないし紡錘形を示し, 敷石状配列を呈しながら発育し, 重積傾向がみられた. またPAS陽性物質を細胞質内に認めた.
    2) 倍加時間は約60時間, 細胞密度は6×104個/cm2であった.
    3) 染色体数は58本から65本に分布し62本にピークがあり, 3倍体, 4倍体がみられた.
    4) ヌードマウスへ培養細胞を移植すると容易に腫瘍を形成し, その組織像は原腫瘍と同様で明細胞腺癌の特徴を示した.
    5) 3種の腫瘍マーカー (TPA, CA125, CA19-9) を培養液中へ放出していた.
    6) MTT assayによる抗癌剤感受性テストを, 9種類の薬剤について行ったところ, ETOPOSIDE, THP, 5FUで比較的感受性があった.
  • 飯田 和質, 原田 丈典, 福岡 哲二, 高橋 義弘, 道倉 康仁, 川上 一男, 高塚 文枝, 畑 和則, 水野 幸恵
    1992 年 31 巻 6 号 p. 973-981
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1964年から1990年までの26年間に当科で治療した11例の原発性卵管癌について, その臨床像と細胞診所見について検討した.
    1.術前の頸管, 内膜細胞診陽性と主訴および各検査項目を比較した.1) 水様性帯下の2例はともに陽性, 性器出血4例のうち3例は陽性であった.2) 臨床進行期と陽性率は進行度と一致しなかった.3) 各組織型とも約半数が陽性であった.4) 腹水の多少にかかわらず, 約半数に陽性細胞がみられた.2.卵管内の腺癌発生部位は膨大部および釆部が11例中9例で多かった.3.術中の腹膜, 腹水の陽性細胞診の頻度は高かった.腹水検査した7例は全例が陽性であった.4.術前の頸管, 内膜細胞診の陽性率は54.5%で, その所見と原発腫瘍の組織像を対比して, その由来を検討した.Papillary typeの組織から乳頭状, Alveolar typeからは葡萄房状が多くみられ, 腺房状, 球状集団もみられた.シート状は極少数で, 樹枝状はみられなかった.捺印細胞では樹枝状をはじめ, 各種のものがみられた.5.細胞診所見は1) 背景はきれい.2) 出現する悪性細胞は少ない.
    3) まるみのある軽度に変性した乳頭状, 葡萄房状, 球状, 腺房状として出現する.4) 核のクロマチン凝集, 核小体もみられた.
  • 片岡 秀夫, 山田 英二, 社本 幹博
    1992 年 31 巻 6 号 p. 982-987
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大動脈内皮細胞の単層剥離標本 (単層標本) 作製法をウイスターラットおよびヒトの腹膜中皮細胞に応用を試みた結果, 中皮細胞下の線維性結合組織以下は剥され, 一層の中皮細胞のみの標本が得られた. 本法は多数の中皮細胞を内腔面の方向からシート状に観察できる点で, 非常に有利な方法と考えられた.
    さらに腹膜中皮細胞および大動脈内皮細胞の単層標本について, 免疫組織化学 (免疫反応) および酵素組織化学利用の可能性を検討し, 以下の結果を得た.
    1. BrdU, cytokeratin (CK) & vimentin (V): 組織のまま免疫反応を行い, その後単層標本を作製した標本は, 中皮細胞, 内皮細胞ともにすべて陰性であった. 単層標本作製後免疫反応を行った標本では, 中皮細胞, 内皮細胞の核内に著明なBrdU陽性反応を認め, 中皮細胞の細胞質にはCK, Vの陽性反応を確認した.
    2. Acid phosphatase (AP): 組織のままAPの酵素組織化学反応を行い, その後単層標本を作製し, 一部の中皮細胞および内皮細胞の核周囲の細胞質に赤桃色の陽性反応が認められた.
    以上の結果より, 免疫組織化学は, 単層標本作製後に行うのがよく, それに対し, 酵素組織化学は, 組織のまま酵素反応を行い, その後単層標本を作製するのがよいことが解った.
  • 亀井 雅, 山鳥 一郎, 荻野 哲朗, 小林 省二, 大森 正樹, 白井 求, 下浦 泰昌
    1992 年 31 巻 6 号 p. 988-991
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    健常者に発症した結節型肺クリプトコッカス症と肺胞上皮癌末期に合併したクリプトコッカス肺炎の各1例について細胞診所見を中心に報告した. 前者の症例の診断はTBLBおよび擦過細胞診によったが, 細胞診では薄い英膜を有する酵母型真菌を貧食した組織球および多核巨細胞を認めた. 一方, 後者の症例では喀疾中に厚い泰膜を有する菌体を散在性に認めた. 本症特に結節型は診断に苦慮することも多いが, 細胞診が診断に有用であることが改めて示された. またわれわれの症例においても結節型では薄い英膜の菌体が強い炎症反応を伴って認められ, 肺癌末期患者においては炎症反応も乏しく厚い英膜を有する菌体が認められたことは, クリプトコッカス症の病態と宿主免疫能との関係を考えるうえで興味深い所見であった.
  • 佐藤 之俊, 小海 陽子, 早川 和志, 山村 はるみ, 前川原 貴美子, 山崎 家春, 三苫 有介, 宮元 秀昭, 高梨 利一郎
    1992 年 31 巻 6 号 p. 992-997
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    一般に術前診断が困難である肺硬化性血管腫に対し, 経皮的肺針生検細胞診が診断上きわめて有用であった1例を報告した.
    症例は75歳女性.胸部異常陰影を指摘されたため経皮的肺針生検細胞診を施行し, 次のような細胞所見を得た.
    (1) 一層ないし多層のリボン状配列を示す類円形細胞の乳頭状集塊あるいは散在性存在.これらの細胞は抗ヒト肺surfactant apoprotein単クローン抗体陽性.
    (2) 小型の核で明るい細胞質を有する未分化な細胞群.
    (3) 硬化性部分や乳頭状部分の茎部に存在する紡錘形細胞群.
    (4) ヘモジデリン貧食組織球の存在.
    (5) 血性背景.
    以上のような特徴的細胞像より, 術前に肺硬化性血管腫と診断した.著者らの既報告例と合わせ, 確定診断のために経皮的肺針生検細胞診は有用であり, 積極的に施行すべきであると考えられた.
  • a case report
    Akitaka Nonomura, Yuji Mizukami, Shinobu Nakamura, Yoh Watanabe, Tsuto ...
    1992 年 31 巻 6 号 p. 998-1003
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肺の腺様嚢胞癌は主に太いレベルの気管支に発生し, 末梢肺組織に発生することはきわめてまれである. 最近, われわれは末梢肺組織に発生した腺様嚢胞癌の1例を経験したので, その臨床病理所見について報告する. 症例は67歳, 男性で約1ヵ月半の咳漱を主訴に近くの病院を訪れた. X線検査の結果, 左肺野に異常陰影を指摘され, 精査, 治療のため当病院に紹介された. 腫瘤は左肺舌区に存在し, 肺癌を疑い, 切除を行った. 切除された肺腫瘤は約2.3×3.0×2.6cm大, 割面は淡黄白色で, 境界は明瞭であった. 肉眼的に腫瘤と大きな気管支との間に明確な関連はみられなかった. 組織学的に, 腫瘤は腺様嚢胞癌であった. 他の部位に原発巣は発見されなかった. 組織像にても腫瘤と太い気管支との問に関係を認めなかったが, 腫瘤の辺縁部に軟骨を欠く細気管支が存在していることから, おそらく5ないし6次分枝の細気管支より発生したものと推定された.
  • 川井 俊郎, 望月 真, 久保野 幸子, 鈴木 智子, 村山 史雄, 山口 勉
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1004-1008
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    喀痰に腫瘍細胞が出現した縦隔精上皮腫の1例を経験した. 症例は20歳, 男性。咳を主訴とし, 胸部X線写真で異常陰影を指摘された.穿刺吸引細胞診では, 腫瘍細胞は大型の円形核, 繊細なクロマチン, 明瞭な核小体をもち, 背景のリンパ球とのtwo cell patternが特徴的であった. 胸水細胞診で腫瘍細胞の細胞質はPAS染色陽性であった. 喀痰にも同様の腫瘍細胞がリンパ球を伴つて出現した. 摘出後の組織学的検索では, 化学療法により腫瘍は広範に壊死に陥っていた.
  • 工藤 浩史, 植嶋 輝久, 植嶋 しのぶ
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1009-1012
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺のMucocele-likelesionはRosenにより報告された小唾液腺のMucoceleに類似した組織像をもつ比較的まれな良性疾患であるが, その良悪性の診断は細胞学的にも組織学的にも難しいことが多いとされている. 今回, われわれは27歳の女性に発症した本症を経験したので, その細胞学的特徴につき検討し報告した. その結果, 本症と粘液癌との鑑別を細胞学的に行うことは比較的困難であり, 組織学的にもきわめて早期の粘液癌と鑑別することが重要と思われた. 粘液癌では異型性が弱く, 背景の粘液の存在がその診断の助けになるとの報告が大部分であるが, 本症の存在も念頭において慎重な細胞の読みをする必要があるものと思われる. 臨床的には癌の好発年齢より若い閉経前の女性に多く発生するといわれており, 実際の診療においてはこれが参考になるかもしれない.
  • 近藤 安子, 坂本 允弘, 飯田 修平
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1013-1018
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    既往歴より膵島細胞癌の転移が最も疑われた副腎腫瘍において迅速捺印細胞診を組織診と併用することにより, 褐色細胞腫の診断が容易であつた多臓器腫瘍の1症例を報告する. 症例は32歳男性, 1983年10月 (25歳時) 膵頭部癌の臨床診断のもとに膵頭部十二指腸切除術を施行された. 摘出材料の病理組織診断は膵島細胞癌であつた. 術後7年経過良好であつたが, 腹部超音波検査 (US), Computed Tomography (CT) にて, 左副腎, 両側腎, 肝に腫瘤が認められ転移が最も疑われた. 術中左副腎腫瘍迅速組織切片より捺印標本を作成し組織診と併用した. 細胞所見では出血炎症性背景のなかに集合性孤立性に腫瘍細胞がみられ, 核の大小不同, クロマチンの増量が著明であつた. なかに大きな核内封入体を有する細胞が存在し, これらの細胞像より褐色細胞腫の診断が容易となつた. 摘出材料において左副腎の褐色細胞腫, 膵島細胞癌の肝転移, 両側の腎細胞癌が病理組織学的に確認された. 電顕では褐色細胞腫と膵島細胞癌に分泌顆粒が認められた. 免疫組織化学的には褐色細胞腫において支持細胞にS-100蛋白が大型の腫瘍細胞にはNSE, クロモグラニンが陽性であつた. なお本症例は膵島細胞癌と褐色細胞腫の存在よりMEN Type I & IIの重複例でありしかも腎細胞癌の合併したまれな症例である.
  • 宮石 理, 村上 栄, 田村 邦夫, 酒井 求, 赤田 邦夫, 酒井 喜久, 原 一夫
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1019-1025
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    28歳男性に発生した心外膜原発の悪性中皮腫について報告した. 心タンポナーデにて発症, 心嚢水細胞診および生検を施行したが確定診断のつかないままに腹膜炎を併発して死亡. 剖検にて心外膜に限局して発育する腫瘍組織を認めた. 組織学的, 組織化学的, および電顕的検索によりこの腫瘍は中皮由来のものと考えられ, また他の臓器には腫瘍性病変がみられなかったことより心外膜原発の悪性中皮腫と診断した. この腫瘍は, 本邦では50数例が報告されているかなりまれな腫瘍である. 本例は免疫組織学的にCEA陽性であるところが特異であった.
  • 藤崎 人美, 小山田 誠朋, 植村 芳子, 徳留 隆博
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1026-1032
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    先天性白血病は生下時または生後まもなく発症するまれな疾患であるが, 今回われわれは, 自然寛解をきたした先天性単球性白血病の1例を経験したので報告する.
    症例は在胎40週3日, 帝王切開により近医にて出生の女児, 生下時より全身に浸潤性小結節性皮膚病変をみとめ, 精査目的のため当院新生児センターへ搬送された. その皮膚生検材料の組織診および捺印細胞診にて多数の異常細胞をみとめた. さらに著明な白血球増多, LDHの異常高値がみられ, 末梢血・骨髄においても多数の異常細胞をみとめた. これらの異常細胞は細胞化学, 表面形質, リゾチーム値などより単球系の白血病細胞で, その形態よりFAB分類M5bと診断された.
    入院後, 白血球数・LDH値の減少がみられたため対症療法のみで観察していたところ3週問目にはこれらはほぼ正常域になり, 末梢血および骨髄での異常細胞もほとんど消失, 皮膚病変も消退し, 寛解と判断された.
    本症例は, 非Down児に生下時より発症し, 造血臓器以外である皮膚に浸潤をみとめたこと, さらにLeukemoid reactionを起こすような原因がみられないことから, 先天性白血病の範疇に入るものと考えられた.
    本症例は, 現在生後18ヵ月で経過良好であるが, 今後慎重かつ長期にわたる経過観察が必要と考えている.
  • 細胞診を中心に
    笹生 俊一, 浅沼 美貴子, 井筒 俊彦, 西谷 巌, 高野 長邦
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1033-1036
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳児膣のyolk sac tumorから擦過細胞診を行い, その細胞像を中心に報告した.
    症例は4ヵ月の女児で, 出血性のsarcoma botryoides様の腫瘤が腔より突出しているのに気づいて来院.腫瘍からの擦過細胞診と生検がなされた. 塗抹された腫瘍細胞は, 孤立散在性あるいは集合性であった. 細胞質はライトグリーンに淡染し, 泡沫状で小空砲もみられた. 核は類円形ないし楕円形で大小不同があり, くびれを有するものもみられ, 核縁は肥厚し, クロマチンは細穎粒状で増量していた. 核小体は一個から数個で大型であった. 細胞集塊には, 細胞が互いに連なって網状構造を示しているものをみた.
    組織学的に腫瘍組織は空胞状, 粗網様構造を示し, Schiller-Duval bodyはみられなかった. PAS弱陽性でジアスターゼ消化抵抗性の硝子様球状物質がみられた. 免疫染色で腫瘍細胞の一部がα-フェトプロテイン陽性であった.
  • 畑 和則, 川上 一男, 山道 昇, 高橋 義弘, 原田 丈典, 飯田 和質, 大森 正弘
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1037-1041
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮腔部頸管細胞診にてChlamydia感染細胞を多数認め, その細胞所見およびChlamydia抗原の検索を行った1例を報告した.
    Chlamydia感染細胞は労基底型扁平上皮細胞や扁平上皮化生細胞を宿主細胞として, 細胞質内封入体が細胞質全体に広がっているものから小型の細胞質内封入体を2個有するものまで認められた. 細胞質内封入体の内部構造については, 紫青色の微細顆粒を細胞質内封入体内部に充満しNebolarinculusion (NI) の性状を示したもの, 紫青色の凝集塊が粗に分布したものなど多岐にわたっていた. さらに細胞質内封入体の35個のうち16個にEosin好染性の針状構造物を認めた. これらの細胞質内封入体や針状構造物はChlamydia抗体による免疫細胞化学染色で陽性を示した.
  • 森 泰宏, 根井 英行, 小泉 基生, 田中 恵, 寒河江 悟, 水内 英充, 伊東 英樹, 工藤 隆一
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1042-1047
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌の手術ならびに放射線治療後30年を経て発生した腔原発malignant fibrous histiocytoma (MFH) を経験したので細胞所見, 免疫組織化学所見ならびに超微形態学的所見について報告する. 昭和35年, 子宮頸部扁平上皮癌にて放射線照射を施行した後広汎子宮全摘を施行, 治療後約30年を経て, 腔壁腫瘍が出現したため当科受診し, 腔原発肉腫の疑いにて入院したが, 急激な全身状態の悪化により死亡した. 術前細胞診では, 出血性の背景に孤立散在性に存在する多形性に富む非上皮性の悪性細胞群が認められ, 主に類円形のhistiocyte様細胞と紡錘形のfibroblast様細胞の2種類の細胞から構成されていた. 摘出組織でも多彩な細胞像が混在し, 一部はいわゆるstoriform patternを呈し, 病理診断は, 腔原発MFHであった. 電顕所見および免疫組織染色でもMFHを支持する所見が得られ, 放射線誘発の2次性悪性腫瘍と考えられた.
  • 三浦 弘守, 宮田 清美, 仁平 博子, 鈴木 不二彦, 青木 幹雄, 望月 博, 守矢 和人
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1048-1052
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮体部ミューラー管混合腫瘍は比較的まれで予後不良な疾患であり, 術前に診断を得ることは困難なことが多い.
    当院において1987年から1989年の3年間に術前の細胞診で診断し得た3例の本腫瘍を経験したので報告する. 症例は67歳, 54歳, そして54歳の閉経後の婦人で, 3例とも不正性器出血を主訴として来院した. 外来で子宮頸部, 子宮内膜細胞診 (1例は増淵式吸引法, その他はエンドサイト法) が行われた. 子宮内膜細胞診ではそれぞれに共通して, 血性壊死背景のなかに腺癌細胞の集塊と, 多彩な形態を示す肉腫様細胞が同時に認められた. また腺癌細胞の胞体内に硝子様物質が少数みられた. エンドサイト法は吸引法と比較すると変性の少ない腫瘍細胞が多数採取された. 最終病理組織診断は, 2例が癌肉腫, もう1例は中胚葉性混合腫瘍であった.
    子宮頸部および体部の細胞診において, 腺癌細胞のほかに奇怪な形の異型細胞を認めた場合には, 本腫瘍の存在も疑ってスクリーニングすることが重要である.
  • 深澤 雄一郎, 中村 厚志, 小林 克己, 谷口 雅, 野崎 正行, 立野 正敏, 佐藤 英俊, 山田 良隆
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1053-1057
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    子宮体部に発生したMüllerian adenosarcomaを2例経験した.症例1は, 67歳女性.不正性器出血で来院. 内膜細胞診, 組織診にて悪性疾患を否定し得ず, 子宮全摘術施行. 子宮後壁から子宮内腔を充満する7×7×3cm大のカリフラワー状腫瘍を認めた. 症例2は, 55歳女性. 不正性器出血で来院. 外子宮口から腔内へ脱出した腫瘍を認めたため, 子宮全摘術施行. 子宮底部に基底部を有し頸部をこえて脱出した12×5×6cm大の有茎性腫瘍を認めた. 術後6年4ヵ月, 肺転移にて死亡した. 2例とも病理組織学的にはadenosarcomaの典型例であった.
    細胞診所見では, 上皮成分に悪性を示唆する異型性はみられず, 内膜腺様細胞, 頸管腺様細胞, 扁平上皮化生細胞, tissue repair cell様細胞など多彩な形態を示していた. ミュラー管由来の上皮はさまざまな形態に分化する可能性があり, 閉経婦人の内膜標本で一般にみられない上皮細胞が出現する場合はadenosarcomaを考慮する必要があると考える. 診断の決め手は, 肉腫様の異型細胞の出現を確認することであるが, ごく少数しかみられない場合があり, 間質細胞の集塊が目立つ場合には, 積極的に再検, 生検を行う必要があると考える.
  • 宮城 悦子, 平原 史樹, 五来 逸雄, 水口 弘司, 北村 和久, 下山 潔, 桔梗 辰三
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1058-1062
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    婦人科細胞診標本中に性器外悪性腫瘍由来の細胞が出現する頻度はきわめて低いとされている. これらの症例の原発臓器として, 欧米では乳癌の頻度が高いのに対して, 本邦では胃癌の報告が圧倒的に多い. また, 転移性子宮癌は不正性器出血などの症状を伴い広汎な全身転移の一部として発見されることが多く, 予後不良であるとされている.
    今回われわれは, 乳癌根治術2年後に子宮内膜吸引細胞診標本中に, 乳癌由来の腫瘍細胞が出現した転移性子宮癌の1例を経験した. 摘出子宮における転移巣は比較的小さいものであったが, 子宮内膜間質から筋層へかけて発育していた. また, 術前検査で肝左葉への転移も発見されたため, 術中肝動注用カテーテルを設置し, 術後肝動注化学療法を施行したところ奏功し, CT上肝転移巣はほぼ消失した. 術後1年以上を経たが患者は全身状態良好で再燃徴候はなく, 外来にて経過観察中である.
  • 羽場 礼次, 小林 省二, 舩本 康申, 岸田 不二夫, 河野 幸治, 三木 洋, 大森 正樹
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1063-1068
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹水, 胸水細胞診にて推定診断が困難で, 剖検により扁平上皮化生を伴う穎粒膜細胞腫と診断された1例を報告した. 本症例は肝臓に多房性嚢胞状病変を認めたが, 肝穿刺生検時に出血が強く組織診材料が得られないため, 組織学的診断がつかなかった. 腹水と胸水の細胞診では重積性のある細胞集塊や敷石状の配列を示す細胞集団がみられ, 核の大小不同, クロマチンの増量と核分裂像の増加を認め悪性が示唆される所見であったが, 細胞の起源は不明であった. 剖検の結果, 腹水と胸水に出現した腫瘍細胞は顆粒膜細胞腫の扁平上皮化生による非定型的な細胞像を示していたことが判明した.
  • 平園 賢一, 篠塚 孝男, 藤井 明和, 堀 貞明, 伊藤 仁, 川井 健司, 佐藤 慎吉, 長村 義之
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1069-1074
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    パルボウイルスB19 (以下B19) は伝染性紅斑, いわゆるリンゴ病の病原体であり, 成人でも風邪様症状や関節炎を起こし, 特に妊婦が妊娠初期から中期にかけて感染すると胎児水腫などを引き起こし流早死産になることが明らかになってきた. 現在, 産科的に風疹やサイトメガロウイルスにつぐ重要なウイルスとして注目されている.
    〈症例〉胎齢25週2日の男児死産児. 母親は28歳, 保母. 妊娠10週頃に伝染性紅斑に患, 妊娠22週の超音波検査にて胎児水腫を指摘され当院産科を受診し, B19感染による非免疫性胎児水腫が疑われた. 25週2日子宮内胎児死亡のため人工中絶となった.
    〈剖検〉全身浮腫と著明な胸腹水の貯留を認めたが外表奇形, 内臓奇形はみられなかった. 剖検時の腹水細胞診では細胞の変性強く核内封入体を有した感染細胞は明らかでなかったが, 酵素抗体間接法 (B19に対するモノクロナール抗体) により感染細胞の細胞質に特異抗原を認めた. また諸臓器 (肝, 脾, 肺, 腎, 骨髄, 胎盤など) に核内封入体を有する感染赤芽球が多数認められ, 酵素抗体法にて陽性が認められた. また胎児胸腹水のPCR法分析および組織電顕にてB19を確認した.
    〈考察〉本邦の妊娠可能女性の50%から80%はB19抗体陰性といわれており, 感染時に定形的な紅斑を示さないことが多いとされる. またB19IgM陽性妊婦の約10%に胎児水腫が発症したとの報告があり, その致死率も高い. 早期診断のためにも簡便でかつ臨床応用可能な細胞診は有用であると思われた.
  • 桑原 宏子, 宇多 弘次, 岸田 不二夫, 河野 幸治, 斉藤 勝弘, 阪本 晴彦, 佐藤 明
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1075-1078
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本症例は20歳, 女性で斜台に発生した脊索腫である. 手術時の圧挫細胞診で, 背景は粘液様物質にとみ, 腫瘍細胞は担空胞細胞 (physaliphorous cells) と空胞を有しない上皮性細胞を認め, 一部でlacuna内に存在する核を認め, 軟骨様脊索腫と診断した. ホルマリン固定ヘマトキシリンエオジン標本ではalcian blueに濃染する軟骨様基質を背景に, 脊索腫に特有なphysaliphorous cellsを認め, 明らかなlacunaをもつ軟骨へ分化したものを認めた. 腫瘍細胞は免疫染色法で, NSE, S-100, Keratin, EMA, Vimentinに陽性を示した. 脊索腫は細胞診診断上, 臨床像, 部位, 肉眼所見から困難ではないが, 予後を知るうえで脊索腫を軟骨様, 非軟骨様の2型に分けることは重要である. 本症例では手術時圧挫細胞診がその鑑別に有効であった.
  • 三宅 洋子, 工藤 玄恵, 品川 美和子
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1079-1080
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 之俊, 小海 陽子, 山村 はるみ, 前川原 貴美子, 早川 和志, 高梨 利一郎
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1081-1082
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 家村 和千代, 手島 伸一, 野村 利之, 朝隈 蓉子, 福島 範子, 直塚 康史
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1083-1084
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 畑 和則, 川上 一男, 飯田 和質, 山道 昇, 大森 正弘, 小西 二三男
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1085-1086
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 藤井 丈士, 川井 俊郎, 久保野 幸子, 斎藤 建
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1087-1088
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 城崎 俊典, 有吉 啓子, 石堂 統, 馬場 聡, 三浦 克敏, 半澤 儁
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1089-1090
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 矢島 幹久, 山田 稔, 大矢 良之, 浜谷 次郎, 清水 秀樹, 上杉 憲子, 浅野 伍朗
    1992 年 31 巻 6 号 p. 1091-1092
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/11/08
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