日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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32 巻, 4 号
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  • 白浜 美佳, 渡辺 徹, 江村 巌, 内藤 真
    1993 年 32 巻 4 号 p. 481-488
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    角化型扁平上皮癌診断精度の向上を目的として錯角化細胞の同定法と核の形態計測を組み合わせ, 子宮頸部癌と関連病変の検討を行った.錯角化細胞の大部分は複屈折を示すことから, 偏光レンズを使うことにより錯角化細胞のほとんどを認識できた.錯角化細胞は核が濃縮した細胞 (K, P-CELL) と濃縮していない細胞 (K, NP-CELL) とに大別され, 細胞診による角化型扁平上皮癌の診断には両者の出現が重要な所見である.角化型扁平上皮癌でのK, P-CELL, K, NP-CELLの核面積はそれぞれ非角化型癌細胞のほぼ1/3, 1/2であった.核面積を同じ面積の円に置換してみてその円の直径が5μ 以上となる核を有するK, P-CELLや, 空胞状にぬけた, あるいはクロマチンが凝集した6μ 以上の核を持ったK, NP-CELLの存在, およびそれら細胞の核の大小不同は角化型扁平上皮癌を疑うべき所見とみなされ, そのような症例については精密検査を行う必要があると考えられた.
  • 松浦 祐介, 川越 俊典, 篠原 道興, 柏村 正道
    1993 年 32 巻 4 号 p. 489-494
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    過去8年間に当科で施行した妊婦に対する子宮頸部擦過細胞診より異常細胞診率, 子宮頸部初期病変発見率を検討した. また, 子宮頸部高度異形成および上皮内癌症例について症例を呈示するとともに, 妊娠中の子宮頸部初期病変の診断上の注意点やfollow up成績について検討した.
    1. 過去8年間の妊婦における異常細胞診発見率は, 1.5%であった.また, コルポスコピーおよび生検による精査で子宮頸部初期病変と診断されたのは, 0.82%であった.
    2. 子宮頸部高度異形成および上皮内癌の症例は8例みられたが, 7例において組織診が, 細胞診に対してover diagnosisであった. また, 5例に多数の腺管侵襲が認められた.
    3. 子宮頸部高度異形成および上皮内癌の8例中6例が分娩後に消失した. 消失の原因については種々の要因が考えられるが, 生検のover diagnosisが最も大きな要素ではないかと考えている.
    4.妊婦に子宮頸部初期病変が検出される率は, 非妊婦と比較してほぼ同等である. よって, 妊婦検診においても子宮癌検診を徹底し, 異常細胞診症例に対しては, コルポスコピー下に生検を施行し, 精査・厳重な管理が必要である.
  • 岩沖 靖久, 山本 津由子, 青木 潤, 勝部 泰裕, 難波 紘二
    1993 年 32 巻 4 号 p. 495-501
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    呉共済病院での過去4年間の子宮内膜細胞診2346例中, 偽陽性および偽陰性の誤判定は12例存在した. この誤判定例を, 他施設の細胞検査士16名による追試判定結果と診断別, 経験年数別に比較し, さらに誤判定の原因を細胞学的, 組織学的に検討した.
    偽陽性は7例 (16%) あり, 内訳は萎縮性内膜 (4例), 臨床情報のなかったIUD挿入例 (1例), 流産後の合胞性内膜炎で絨毛上皮細胞の出現がほとんどない例 (1例), 変性の強い正常内膜 (1例) であった. 偽陰性は5例 (26%) で, 高分化型内膜型腺癌 (4例), 採取部位の不適当な腺棘細胞癌 (1例) であった.
    追試検査の誤判定率は, 萎縮性内膜21%, IUD挿入例13%, 合胞性内膜炎7%, 正常内膜50%, 高分化型内膜型腺癌44%, 腺棘細胞癌81%であった. 萎縮性内膜では経験年数11年以上の群で偽陽性率が減少する傾向を認めたが, その他は経験年数と誤判定率に関連はなかった.
    誤判定は, 萎縮性内膜と合胞性内膜炎では再生上皮様異型細胞, IUD挿入例では知識・情報不足, 正常内膜では細胞変性, 腺棘細胞癌では不適切な採取手技に起因し, 高分化型内膜型腺癌と一部の萎縮性内膜では細胞診上判定困難な症例が存在した.
  • 佐々木 陽子, 細谷 星一, 谷尾 進司, 中本 周
    1993 年 32 巻 4 号 p. 502-506
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1986年から1991年までの5年間に施行されたPTCD細胞診のなかで, 組織i診断や経過などで診断が明らかになった89症例, 125件を再検討し, 以下の知見を得た.
    1-PTCD細胞診の正診率は74.4%(不適当材料を除外すると85.9%) と良好な成績であった.
    2. PTCD細胞診断では, 結合性低下, 核間距離不整, 核縁肥厚, 壊死背景, 核染色質増加の順に5所見が悪性所見として重要で, 特に平均核径が9μmを越える細胞は悪性の可能性が高いと考えられた.
    3. 誤陰性は24件あり, 過小評価によるものが4件, 悪性細胞非採取によるものが20件あった.
    4. 誤陽性は8件あり, 4件では見直し後も悪性所見を否定できなかった.
    5. 不適当材料は40件, 32%認められPTCD細胞診の診断能の向上には, 採取手技の工夫も必要と思われる
  • 穿刺吸引細胞診の特徴
    広川 満良, 西村 比呂恵, 伊禮 功, 三上 芳喜, 物部 泰昌, 森谷 卓也, 清水 道生, 福屋 崇, 杉原 佳子
    1993 年 32 巻 4 号 p. 507-510
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    骨形成を伴う甲状腺乳頭癌16例の穿刺吸引細胞診像を検討した. 正診率は47%で, 乳頭癌全体の正診率と比べかなり低かった. 骨化量が多い症例ほど腫瘍細胞の吸引が困難であったことより, 硬い腫瘤の穿刺吸引においては, たとえ陰性であっても良性と決めつけない方がよいと思われた. 全例において, 塗抹標本内には骨組織は認められなかった. 3例においては, 大小不同や泡沫状の胞体を有する脂肪細胞がみられ, 形態学的に乳頭癌組織内の骨梁間にみられる脂肪細胞に一致するため, そのような脂肪細胞は骨化を伴った乳頭癌の存在を間接的に示唆する所見と思われた.
  • 舩本 康申, 小林 省二, 佐藤 明, 岸田 不二夫, 河野 幸治, 大森 正樹
    1993 年 32 巻 4 号 p. 511-520
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    組織学的に確定されたポジキン病20例 (LP型5例, MC型7例, NS型8例) のリンパ節捺印標本を検討した. 全例にPapanicolaou染色とMay-Giemsa染色を, 一部の症例に酸ホスファターゼ (ACP) 染色, α-naphthyl acetate esterase (α-NAE) 染色および免疫染色を行った. 各組織亜型にみられるHodgkin (H) 細胞やReed-Sternberg (R-S) 細胞の形態は明調で柔らかい感じのする核と内部まで一様に濃染する核小体を有する点で共通しており特徴的である. 細胞の大きさや核形, 核小体の大きさ, 胞体の染色性には多彩性があった. ACP染色とα-NAE染色においてはH細胞, R-S細胞の胞体全域にび慢性に弱陽性のもの, ゴルジ野に強陽性のものあるいは全く陰性のものなどがあった. 免疫染色ではH細胞やR-S細胞にL-26が4/15例, Leu M1が4/10例, Ki-1が8/14例に陽性であった. Ki-1とLeu M1陽性細胞のなかにはH細胞, R-S細胞の形態的特徴を満たさない組織球様あるいは細網細胞様細胞がみられ, R-S細胞の由来を考えるうえで興味ある所見と思われた. 背景のリンパ球はおおむねTリンパ球優位であったが結節性のLP型ではBリンパ球が優位であった. 以上よりリンパ節捺印細胞診はH細胞やR-S細胞の同定にきわめて有用で, ポジキン病の診断は可能であり, 組織亜型の推定も可能であると考えられた.
  • 前立腺, 骨生検組織を用いて
    今井 律子, 佐藤 公治, 村松 哲雄, 山本 雅憲, 深津 俊明, 佐竹 立成, 高羽 秀典
    1993 年 32 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    一般に, 前立腺生検組織のような小さな組織や骨生検組織は迅速組織標本や迅速スタンプ標本の作製が困難であるが, 今回われわれは, それらを用いて新しい迅速診断標本の作製法を考案したので報告する.
    対象は前立腺生検組織17例 (腺癌3例, 非癌14例), 骨生検組織3例 (肺小細胞癌, 肺腺癌, 腎癌各1例の転移) である. 採取された組織はただちに22%試薬用アルブミン添加生理的食塩水に入れ軽く混和後, 組織と生理的食塩水を分け, 組織は10%ホルマリンで固定後通常の方法でH-E染色標本を, 生理的食塩水はオートスメアを用いるか1500回転5分遠心後の沈渣を用いて塗抹標本を作製し, 迅速Papanicolaou染色を施して検鏡した.
    癌症例は全例細胞診で診断可能であり, 細胞診標本中の腫瘍細胞も十分な数が認められた. 細胞, 核の収縮や裸核化がみられたが, 細胞診断に影響するものではなかった. この方法は上記のような組織の迅速診断に適していると考えられる.
  • A case report
    Kazuchiyo Iemuran, Kazuo Ohmi, Takahiko Sonoda, Ryuichiro Tsunematsu, ...
    1993 年 32 巻 4 号 p. 526-530
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹膜洗浄細胞診が腫瘍の広がりを評価する際に有用であった子宮頸部小細胞癌の1例を報告する. 術前の子宮頸部のsmear cytologyで腫瘍細胞は抗クロモグラニンA抗体, NCC-Lu243に陽性を示した. 臨床診断Ib期の下に広範性子宮全摘術が施行された.腹水, 癌性腹膜播種は認めなかったが, 術中の腹膜洗浄細胞診は陽性であった. 骨盤内リンパ節の腫大は認めなかったが, 病理学的には転移が確認された. 子宮頸部小細胞癌の病変の広がりを術中に正確に評価する際に, 腹膜洗浄細胞診が有用と考えられた
  • 篠原 道興, 松浦 祐介, 柏村 正道
    1993 年 32 巻 4 号 p. 531-535
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Sclerosing stromal tumor (硬化性問質性腫瘍, 以下SST) は若年に好発する卵巣のまれな良性腫瘍である. 過去91例報告されているが細胞診に関して述べられている報告はない. 今回われわれは13歳のSSTを経験したが, ホルモン分泌能は認められず, 組織像からも典型的SSTと診断された. 過去の報告と自験例からSSTの臨床的特徴を明らかにするとともに, 捺印細胞診により初めてSSTの細胞像を提示した. 比較的小型で裸核状の細胞が散在性に認められ, 核は卵円形あるいは紡錘形で, 核縁は薄くスムース, クロマチンは細穎粒状, 核小体は小さく1~2個認められ, 良性の間質性腫瘍と診断された. 捺印細胞診の意義については種々の見解があるが, 凍結切片による術中迅速診断ができない施設ではその代わりとして重要な価値を有している. 特に本症例は臨床的に悪性を疑いながらも, 捺印細胞診から良性の腫瘍が疑われたことの意義は大きいと考える.
  • 佐藤 倫也, 上坊 敏子, 木田 芳樹, 角田 新平, 下田 隆夫, 蔵本 博行, 大野 英治, 亀谷 徹
    1993 年 32 巻 4 号 p. 536-542
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹膜表面漿液性乳頭状腺癌 (Serous surface papillary carcinoma: SSPC) 例まれな腫瘍であり, 臨床的な診断例困難であるとされている. われわれ例第一癌の子宮頸癌より16年, 第二癌の乳癌より5年経て, 腹部膨満感を主訴に発症した症例で, 剖検によりSSPCと診断し得た症例を経験したので, 細胞所見と病理所見に若干の文献的考察を加えて報告する. 腹水穿刺細胞診で例, 腫瘍細胞例集積性著明な乳頭状細胞集塊を形成して出現している. 核例大小不同と多形性に富み, クロマチン分布例微細顆粒状で, 小型の核小体を1~2個認める. 細胞質例比較的乏しく, ライトグリーンに好染し小空胞を有するものも認められたが, PAS染色例陰性であった. 剖検時肉眼的に例, 腫瘍例腹膜面全体に大小の結節を形成していたが, 卵巣例ほぼ正常大であった. 組織学的に例, 卵巣原発の漿液性乳頭状腺癌の形態をとりpsammoma bodyを有していたが, 両側卵巣に例表在性の腫瘍しかみられなかった.また, 一部に組織型の異なる肉腫様増殖部分を認めた. 電顕ではtonofilamentが少なかった.
  • 九島 巳樹, 沖 浩佳, 川瀬 紀夫, 滝本 雅文, 塩川 章, 太田 秀一, 風間 和男, 津田 祥子
    1993 年 32 巻 4 号 p. 543-546
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    50歳代の成人女性にみられた乳腺分泌癌の2症例について, その穿刺吸引細胞像を中心に報告した.2症例ともに主訴は乳腺腫瘤であった.乳腺分泌癌の細胞像の特徴は, 細胞集塊内外に, いわゆる粘液球状様の構造物 [mucous globular structure (以下MGSと略す)] 様の構造物がみられることで, その他, 印環細胞型の細胞や粘液空胞を有する細胞も認められた.今回の2症例の細胞像を比較すると, 症例1は細胞採取量は多いが, 核異型はむしろ弱く,“MGS”類似の構造を含む「ぶどうの房状」の集塊が多数みられた.組織学的にはきわめて典型的な乳腺分泌癌の像を示した.症例2は核異型が強いために乳癌の診断はむしろ容易であったが, 細胞採取量は少なく,“MGS”様の構造はうかがわれるものの, 典型的な「ぶどうの房状」の集塊は少なく, 印環細胞様の細胞がやや目立った.したがって, 分泌癌の細胞診断はやや困難と思われた.組織学的には典型的な分泌癌の像と混在して, 印環細胞癌様や硬癌様の像がみられた.しかし, 以上の2症例はともに“MGS”様の構造に注目して鏡検することにより, 乳腺分泌癌の細胞診断は可能であると思われた.
  • 杉島 節夫, 横山 俊朗, 吉田 友子, 高木 博美, 古賀 稔啓, 掛川 暉夫, 鹿毛 政義, 森松 稔
    1993 年 32 巻 4 号 p. 547-551
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺の穿刺吸引細胞診にて乳管癌が疑われた乳房部原発基底細胞上皮腫の1例の細胞像について報告した.症例は65歳, 女性, 右乳房C領域に1.5×1.5cmの腫瘤が認められ10年来大きさは不変であった.Mammography, 超音波などの画像診断にて乳管癌が疑われ外来受診時に穿刺吸引細胞診が施行された.細胞診所見は出血像を背景に腫瘍細胞は大小の結合性の強い細胞集塊で出現し, 細胞の配列は不均等で細胞の重積性が認められた.核は類円形小型で核クロマチンの増量がみられ, 乳管癌も否定できず術中迅速病理組織診断が行われた.病理組織にて基底細胞上皮腫と診断された.基底細胞上皮腫の一般的な細胞学的所見としては大小の細胞集塊での出現, 細胞は小型類円形で大小不同性に乏しく, 細胞集塊の辺縁に柵状配列が認められることであると思われるが, 乳房部に発生する基底細胞上皮腫は非常にまれであり, 本症例では術前の穿刺吸引細胞診での確定診断は困難であった.
  • 西阪 誠泰, 佐々木 政臣, 若狭 研一
    1993 年 32 巻 4 号 p. 552-556
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    尿中に腫瘍細胞が出現した前立腺・陰茎根部悪性リンパ腫を経験したので報告する.症例は81歳, 男性. 主訴は初期排尿時痛および陰茎根部腫瘤である. 尿細胞診において悪性リンパ腫細胞の出現がみられた. 精査の結果, 前立腺と陰茎根部の悪性リンパ腫と診断された.両部位からの生検の組織学的所見では, 標本内に異型リンパ球の浸潤がみられ, それはcleaved cellを認めるcentrocyticの細胞から成り, また, 免疫組織化学所見ではUCHL-1が陽性, L26が陰性を示し, T細胞由来の悪性リンパ腫であることが判った. その後, CHOP療法を3クール施行したが, 脳転移を生じ, 18ヵ月後に死亡した. 前立腺あるいは陰茎部に悪性リンパ腫を認めることは原発性, 続発性のいずれにしてもまれなことである. そして, 本症例のごとく尿細胞診で悪性リンパ腫細胞が発見されることは非常に珍しいことではあるが, 尿細胞診がスクリーニングとして有用であることが考えられた.
  • 佐藤 隆夫, 今野 元博, 窪田 昭男, 大柳 治正, 上杉 忠雄, 宇野 重利, 前田 光代, 橋本 重夫
    1993 年 32 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腸間膜嚢腫の鑑別診断には組織学的検索が大切である.腸間膜嚢腫のうち, 組織学的に嚢胞状リンパ管腫と診断された症例の, 術前の嚢腫穿刺液の細胞像を観察する機会を得たので報告する.症例は腹部膨満と発熱で発症した1歳女児で, 腹腔内嚢胞性病変が指摘され手術がなされた.嚢胞は腹腔の間隙を埋めるように腹部全体に存在した.嚢胞内容は血性で, 内面は梁状, 1ヵ所に隔壁が認められた.組織学的には嚢胞内面に内皮細胞が認められ, 嚢胞状リンパ管腫と診断された.その嚢胞壁には多数のリンパ球, リンパ濾胞が認められた.術前に嚢胞穿刺液が採取された.細胞診的には多数の小型リンパ球が認められ, それらに混じって大型リンパ球が散見された.大型リンパ球の核には形の不整が認められ, 異型性が観察された.円柱上皮, 中皮細胞は認められず, 内皮細胞も認められなかった.大型リンパ球は組織学的に観察されたリンパ濾胞の胚中心由来であると考えられた.臨床的に腹腔内の嚢胞で, その穿刺細胞像にて多数のリンパ球, 大型リンパ球が認められれば嚢胞状リンパ管腫が想定され得ると考えられ, 細胞診が術前診断の一助となることが示唆された.
  • 特にその多核巨細胞の擦過細胞像について
    篠崎 稔, 工藤 玄恵
    1993 年 32 巻 4 号 p. 562-566
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    生後2ヵ月の乳女児の頭蓋骨板間に発生したjuvenile xanthogranuloma (JXG) の擦過細胞診検体を検討した. 単核の組織球系あるいは線維芽細胞系と思われる細胞群やリンパ球を主とする炎症性細胞群とともに多数の多核巨細胞が認められた. 多核巨細胞はTouton型と破骨型に分けられた. Touton型巨細胞は円~類円形胞体とドーム状に配列する楕円~ 類円~ 紡錘形核からなっていた. そのほぼ同じ大きさと形をした細胞の辺縁は不鮮明で, 明らかな脂肪顆粒の存在は認められなかった. その脂肪顆粒のない理由には標本作成時における細胞辺縁部の人工的破壊, あるいは脂肪のない時期の細胞が採取されている可能性が考えられた. 一方, 破骨型は大小さまざまな不整形胞体と核小体の目立つ類円形核からなり, そして核は比較的厚みのある胞体全体に不規則, 疎な分布をする特徴があった. それゆえ, Touton型巨細胞と破骨型巨細胞の識別は細胞診においても容易であると考えられた. 骨原発性JXGはきわめてまれであり, その細胞診所見に関する報告例は, われわれの知る限り, これが最初である.
  • 畠山 重春, 熊谷 智子, 竹内 加津代, 増田 孝, 渡辺 宏志, 塩田 敬, 辻本 志朗, 三浦 妙太
    1993 年 32 巻 4 号 p. 567-572
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    全身性コクシジオイデス症患者の頸部穿刺細胞診標本に認めたC.immitisの球状体について報告した. 化膿性炎症像を示す背景に, 5~100μ のオレンジG, あるいはエオジン好性を示す各種成熟段階の球状体は二重壁構造を有し, 形態的に花粉と類似していた. 未熟な球状体の内部は無構造な多糖体物質で満たされ, 成熟したものは2~5μ の内生胞子で満たされていた. 球状体には免疫反応により生じるSplendore-Hoepllieffectを認めるものもあった.輸入真菌症に遭遇する機会が増えることが予想されるが, 本症例はC.immitisの形態的特徴を把握するうえで, 貴重な症例である.
  • 斉藤 啓, 古谷津 純一, 石 和久, 宇津野 栄, 齊藤 脩
    1993 年 32 巻 4 号 p. 573-574
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 望月 裕夫, 渡辺 隆, 杉浦 丹, 森 一郎, 鬼島 宏
    1993 年 32 巻 4 号 p. 575-576
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 戸島 敏, 新井 正, 打田 敦, 吉見 直己, 安田 洋
    1993 年 32 巻 4 号 p. 577-578
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 北川 博, 谷田部 恭, 松下 孝二, 内田 一豊, 田村 潤
    1993 年 32 巻 4 号 p. 579-580
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 高田 礼子, 宮沢 富士江, 笠原 浩子, 松沢 賢治, 中山 淳
    1993 年 32 巻 4 号 p. 581-582
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 田中 久美子, 坂本 穆彦, 都竹 正文, 保坂 佳奈子, 高橋 勇
    1993 年 32 巻 4 号 p. 583-584
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 高橋 利成, 高橋 一博, 佐藤 孝, 門間 信博
    1993 年 32 巻 4 号 p. 585-586
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 原田 徹, 二階堂 孝, 中森 和仁, 清水 春美, 塩森 由季子
    1993 年 32 巻 4 号 p. 587-588
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 古谷津 純一, 喜納 勝成, 風間 玲子, 斉藤 啓, 石 和久
    1993 年 32 巻 4 号 p. 589-590
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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