日本臨床細胞学会雑誌
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33 巻, 6 号
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  • 成績と誤陰性例の検討
    松田 実, 曽根 啓子, 南雲 サチ子, 岸上 義彦, 辻 直子, 建石 龍平
    1994 年 33 巻 6 号 p. 989-995
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    組織学的に甲状腺癌が確認された112例に対する穿刺吸引細胞診の成績は, 陽性94例 (83.9%) であった. これに対し, 触診, 超音波検査, X線検査の診断率は, それぞれ67.9%, 58.6%, 50.0%であり, 穿刺吸引細胞診の成績が最も優れていた. 特に乳頭癌の陽性率は87.1%で, ほかの診断法に比しはるかに優れており, 触診, 超音波検査, X線検査のいずれもが癌の所見を示さず, 穿刺吸引細胞診のみが陽性であった症例が10.9%にみられた.
    穿刺吸引細胞診が疑陽性あるいは陰性であった症例について標本の再検討を行い, 組織所見と対比した結果, 乳頭癌で細胞判定に問題があったと考えられる症例は4例あり, 1例は核内細胞質封入体と変性空胞との鑑別に困難を感じた例であり, ほかは乳頭癌の特徴的な細胞所見が認められなかった. 組織所見に問題があったと考えられる症例は5例あり, 乳頭癌が濾胞腺腫とともに存在した例, follicular valiantを示した例があり, また腫瘍組織の石灰化の著明な例が3例みられた.
    濾胞癌の陽性率は25%と低く, 穿刺吸引細胞診による濾胞腺腫との鑑別はきわめて困難であ
  • 広川 満良, 物部 泰昌, 森谷 卓也, 定平 吉都, 清水 道生, 真鍋 俊明, 大杉 典子, 鐵原 拓雄, 太田 澄香
    1994 年 33 巻 6 号 p. 996-1000
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    われわれは甲状腺疾患における隔壁性細胞質内空胞を細胞診学的, 組織学的, 電顕的に検討た.穿刺吸引細胞診標本では隔壁性細胞質内空胞は乳頭癌の37.8%に, 腺腫様甲状腺腫の3.6%にみられ, 濾胞性腫瘍, 髄様癌, 悪性リンパ腫, 橋本病などではみられなかった. 空胞間の隔壁は乳頭癌症例では明瞭であったが, 腺腫様甲状腺腫では不明瞭で両者の鑑別に有用と考えられた. 組織学的には, 隔壁性細胞質内空胞は嚢胞型乳頭癌の乳頭状増殖部およびびまん性硬化型乳頭癌のリンパ管内浸潤部の乳頭癌細胞にみられ, 電顕的には粗面小胞体の拡張である可能性が示唆された.
  • 杉島 節夫, 神代 正道
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1001-1008
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺の細胞診のべ2,136例を病理組織診と対比し細胞診の成績と, 画像診断上悪性所見を示さず細胞診のみ乳癌の術前診断を行い得た症例の病理形態学的特徴について検討をした.細胞診のクラス分類の内訳としてClass Iは1,158例 (54.2%), Class llは99例 (4.6%), Class IIIは49例 (2.3%), Class IVは32例 (1.5%), Class Vは170例 (8.0%), さらに検体不良例628例 (29.3%) であった.細胞診陰性 (Class I, II) と診断した症例のうち98例に病理組織診が行われ硬癌2例, 乳頭腺管癌3例, 小葉癌1例が含まれていた.細胞診陽性 (Class IV, V) の症例のうち169例に病理組織診が行われ線維腺腫3例, 乳管内乳頭腫3例, 嚢胞内乳頭腫1例, 良性問質組織1例が含まれていた.細胞診の正診率については細胞診陰性例では93.9%, 細胞診陽性例では95.3%であった.
    細胞診でClass III以上と診断し悪性が疑われた251例のうち, 病理組織診が行われ術後の再発例を除き悪性と診断されたのは178例で, そのうち画像診断上悪性所見が認められなかったのは15症例 (8.4%) であった.画像診断上悪性所見のみられなかった15症例の病理組織診断は, 乳頭腺管癌6例, 粘液癌4例, 硬癌2例, 充実腺管癌1例, 嚢胞内乳頭癌1例, 非浸潤性乳管癌1例であり, 腫瘤の大きさとしては1.0cm以下が6例, 1.1~1.5cmが8例と1例は乳頭分泌物で腫瘤は認められず全症例とも1.5cm以下の腫瘤であった.さらに粘液癌では1.5cm以下の大きさの腫瘤ではすべて画像診断上は悪性所見に乏しく, 細胞診のみが乳癌の術前診断に有用であった.
  • 中澤 久美子, 弓納持 勉, 石井 喜雄, 早川 直美, 柏原 賢治, 西川 圭一, 小澤 克良, 塚原 宗俊, 須田 耕一, 久米 章司
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1009-1014
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    間質性肺炎および肺線維症の45例について喀痰, 気管支擦過および気管支洗浄液中の異型細胞を細胞学的に検討した.
    細胞診所見の結果は, 異型細胞が全くないもの16例, 杯細胞の増生1例, 扁平上皮化生細胞の軽度異型7例 (うち1例は切除肺の検索より扁平上皮癌と判明), 同中等度異型6例, 同高度異型2例, 扁平上皮癌7例 (うち1例は剖検で癌が証明されなかった), 腺癌4例, および小細胞癌2例であった. すなわち, 間質性肺炎あるいは肺線維症にみられた異型細胞は扁平上皮化生細胞が最も多く, そのうちclassIII以上の中等度および高度異型化生細胞は8例 (17.8%) であった. また, 癌細胞が13例 (28.9%) に見出され, 組織型は扁平上皮癌が最も多かった.これらのほとんどが高度喫煙者であったが, 中等度異型扁平上皮化生細胞が出現した6例中3例は非喫煙者であった.以上より, 間質性肺炎および肺線維症では喀痰などの細胞学的な経過観察が必要と考えられた.
  • 小型肺腺癌診断の問題点と予後
    中山 富雄, 宝来 威, 新井 徹, 中村 慎一郎
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1015-1019
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腫瘍径2cm以下の末梢小型肺腺癌切除例について, 診断成績, 細胞所見と予後との関連につき検討した. 腫瘍の長径が2cm以下の腺癌63例の術前細胞診陽性率は1.5~2.0cmで80.4%, 1.5cm未満では40.0%であった. 検査法別にみると病巣擦過細胞診の陽性率は腫瘍径1.5~2.0cmで64.9%, 1.5cm未満で16.7%(p<0.05) と腫瘍径が小さくなるにつれ低下するが, 経皮的肺穿刺細胞診の陽性率は, 腫瘍径1.5~2.0cmで85.7%, 1.5cm未満で75.0%と腫瘍の大きさの影響を受けにくい. したがって, 末梢小型腺癌の診断には経皮的肺穿刺を主体とする必要がある. また, 細胞所見についてはリンパ節転移の有無に特徴的な所見は認められなかったが, 複数の核小体, 均等で密度の高いクロマチンをもつ症例の予後は不良であった (p<0.05).核小体数, クロマチンパターンは末梢小型腺癌の予後因子として有用であると考えられた.
  • 喉頭, 咽頭, 上, 下顎, 消化器系
    佐藤 泰, 小野寺 恵美子, 熊谷 勝政, 菅原 美穂, 石森 弘子, 木村 伯子
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1020-1025
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    東北大学医学部附属病院病理部では診断精度の向上を目的として術中迅速診断に組織診と細胞診を併用している. 今回1981年から1992年までの併用例数2253例の中から喉頭, 咽頭, 上顎, 下顎, 舌, 胃, 食道, 肝臓, 膵臓, 胆のう, 胆道の計576例について組織診と細胞診の比較検討を試みた.
    結果は各臓器とも大概細胞診と組織診は一致した. 特に細胞診の併用が有用であったのは, 組織の挫滅をきたしやすい小型の腫瘍細胞が密に増殖する組織の診断の場合であり, 悪性リンパ腫と扁平上皮癌の一部が該当した. 一方細胞診で判定不可能なものは, その原因のほとんどが細胞数の不足や乾燥によるものであった. これらの改善のために結合組織の多い組織片に対しては替え刃を用いて細胞量をできるだけ多く採取し, やむを得ず細胞が乾燥した場合には適切な染色法を選択した. 術中迅速診断時に細胞診を併用することにより診断精度が向上した.
  • 小室 邦子, 佐藤 郁郎, 武田 鐵太郎, 小野寺 博義, 大沼 真喜子, 村田 孝次, 植木 美幸, 阿部 美和, 桑原 正明, 立野 紘 ...
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1026-1032
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    異型度や浸潤度の異なる膀胱癌10症例について, 膀胱鏡下生検を行い, 同一病変からの採取材料を薄切標本と圧挫細胞診に供して, その診断能を比較検討した.その結果,
    1) 組織診では薄切標本作製中に膀胱粘膜が剥落したことによる判定不能例が認められた. こうした例では生検圧挫法が癌の検出力において優れていると考えられた.
    2) 組織学的異型度の判定では, 両者は同等であった.
    3) 生検圧挫法においても浸潤の有無を判定することは可能であると思われた.
    以上より, 圧挫法の診断能は薄切標本に匹敵するものであり, 検出力の点では組織診よりも圧挫法がよい成績であった.
    生検圧挫法では間質浸潤の観察も可能であって, 有力な術前情報を提供するものとして, 今後の臨床応用が期待される.
  • 林 亮, 中野 嘉子, 小川 勝, 佐々木 直志, 柿島 裕樹, 石田 剛, 岡 輝明
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1033-1038
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    組織学的に血管肉腫と診断された4症例について細胞学的検討を行った.症例は43歳から79歳にわたり, 男性3例, 女性1例, 原発部位は頭頸部皮膚と心臓がそれぞれ2例であった。基本的細胞所見として, ライトグリーン淡染性の紡錘形ないし多稜形の細胞が, 出血や炎症性背景の中に散在性, あるいは中規模集塊を形成して観察された.腫瘍細胞の核は偏在傾向を示し, ときに多核の腫瘍細胞も認められた. 核のクロマチンは顆粒状を呈し, 核小体が1~ 数個認められた. 2列に並ぶ配列をとる腫瘍細胞や, 細胞質内にhaloを伴う赤血球様物質を容れた腫瘍細胞が観察された.免疫組織化学およびレクチン化学的には, 腫瘍細胞は第VIII因子関連抗原 (F VIII RA), ビメンチン, Q-Bend-10, Ulex europeaus agglutinin I (UEA-I) 陽性であった.
    血管肉腫は, その組織構築に病理学的診断根拠をおいているため, 細胞学的診断は困難な場合が多い. しかし, 腫瘍細胞が2列に並ぶ配列や, 腫瘍細胞質内のhaloを伴う赤血球様物質の存在は血管肉腫を示唆する細胞学的特徴と判断された. さらにF VIII RA, Q-Bend-10, UEA Iなど血管内皮マーカーの免疫組織化学的, レクチン化学的検索を併用することにより, さらに正確な推定診断が可能であると考えられた. Q-Bend-10, Ulex europeaus agglutinin I (UEA-I) 陽性であった.
  • 須郷 孝信, 丸山 英俊, 佐藤 重美, 齊藤 良治
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1039-1047
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣癌腫瘍組織内の腫瘍マーカーの局在を詳細に検討するため, 6種類の組織型の卵巣腫瘍, 計52例のパラフィン包埋組織標本を薄切後, 酵素抗体法による免疫染色 (ABC法) ならびに蛍光免疫染色を施し, それらをそれぞれ光学顕微鏡ならびに共焦点レーザー顕微鏡 (confocal laser scanning microscope, CLSM) で観察した. 使用した腫瘍マーカーの抗体はCA125, CEA, CA19-9, CA54, CA61, CA602, AFPの7種の抗体であり, 組織内のこれら抗原の局在を立体的に観察するためCLSM用の組織切片は酵素抗体法のそれよりは厚く, 10~20μmとした. また, CLSM用の蛍光染色にあたっては, 抗体の希釈濃度, 反応時間, 温度に関し, それぞれ予備実験を行い, 得られた成績に基づき指摘条件を設定した.
    その結果, CEA, CA19-9, CA54, CA602の4種類の腫瘍マーカーの細胞内局在に関し, 従来の酵素抗体法でのそれよりも, 詳細な所見を得ることができた.
  • 己斐 澄子, 手島 英雄, 南 敦子, 片瀬 功芳, 山脇 孝晴, 星 利良, 藤本 郁野, 山内 一弘, 荷見 勝彦, 都竹 正文
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1048-1053
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    閉経後の患者で, 細胞診で老人性変化が主体で一部にHPV感染を疑う所見を認めたが, 十分なHPV感染細胞所見を示さなかった8症例にエストロゲン (プレマリン) 負荷を施行した. 抱合型エストロゲン, プレマリン1.25mgを2週間経口投与した. 投与前は少数のkoilocyteやparakeratocyteを認めただけであったが, 投与後は, 炎症性背景が消失し, parakeratosis 100%(8/8), koilocytosis 75%(6/8), smudged様濃染核75%(6/8), giant cell 50%(4/8), multinucleation62.5%(5/8) の率でHPV感染に特徴的な細胞所見が出現した.
    HPV-DNAは, Southern blot法で5例を検索し, 100%(5/5) 陽性であった. ISH (in situ hybridization) 法で他の3例を検索し, 33%(1/3) がHPV-DNA陽性であった.
    エストロゲン投与は, 老人性膣炎と悪性細胞を鑑別するだけでなく, 老人性膣炎でのHPV感染診断に有用であった. 老人性変化, 老人性膣炎症例でHPV感染を示唆する細胞が出現している場合, エストロゲン (プレマリン) 投与により, さらにHPV感染細胞所見が明瞭となることがわかった.
  • 根井 英行, 伊東 英樹, 田中 恵, 斉藤 豪, 工藤 隆一
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1054-1067
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    正常子宮内膜細胞, 子宮内膜腺癌細胞を用いそれらの超微形態学的特徴に関し, 細胞診-SEM-TEM 連続観察あるいは組織のTEM観察で検討した. SEM観察では, 増殖期で小型でほぼ均等分布のMicrovilli (MV) を有する細胞と中程度の長さのciliaを有する細胞, 分泌期で分布がやや不規則のMVを有する細胞と細長いciliaを有する細胞を認め, 一方腺癌細胞では正常細胞に比し明らかにMVの分布が不規則, 不均一となり, さらに分化度の低下に伴いMVの減少を認めた. 集団形態の観察では, G1で大きな細胞集塊の辺縁に細胞小集塊による巨大突出構造, また細胞集塊辺縁部に連続した小さな細胞質の芽状突出構造を認め, 細胞診にfeed backできる所見と考えられた. TEM観察では腺癌で核縁不整, 巨大mesh様核小体, 腫大したミトコンドリアを認め, また分化度の低下に伴いより顕著な核縁不整, N/C比の増大, ミトコンドリア・ライソゾーム・ゴルジ装置の減少を認めた. これらの中で核所見は細胞診所見の特徴を裏付けする所見といえる. 細胞接着装置の観察ではデスモゾーム数を測定し, G3はG1, G2に比べ有意な減少を認めた. このことより細胞接着装置は癌細胞分化度, さらに細胞診標本上の細胞出現様式とも相関性があることが示唆された.
  • 小田 瑞恵, 佐々木 寛, 藤井 雅彦
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1068-1073
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    内膜細胞診疑陽性のspecificityの向上をはかるため, 内膜細胞診で疑陽性と判定した48症例, 53検体を用い, 細胞集塊の構造異型について検討し, 以下の結果を得た.
    1) 乳頭状集塊の平均出現個数は, 組織診が著変なしとされた症例では81.2±45.3個, 腺腫性増殖症では61.1±51.4個, 異型増殖症では78.7±66.0個, 高分化型腺癌では60.5±14.9個であった.このうち分岐のある集塊はおのおの42.2±21.6個 (52%), 38.5±27.7個 (63%), 49.0±43.4個 (62%), 44.0±14.1個 (72%) であった.
    2) 6個以上の腺腔を内部に有する乳頭状集塊の出現率は, 組織診が著変なしでは0%, 腺腫性増殖症では36%, 異型増殖症では62%, 高分化型腺癌では100%であった.腺腔のback to back様構造を認める集塊の出現率はそれぞれ10%, 32%, 38%, 100%であった.
    3) 樹枝状集塊の出現率は組織診が著変なしでは0%, 腺腫性増殖症で3.6%, 異型増殖症では15%, 高分化型腺癌では100%であった.
    以上より, 内膜細胞診において乳頭状集塊中の腺腔数, 樹枝状集塊の出現の有無を観察することが重要であることが示唆された.
  • 小池 昇, 小岩井 英三, 沢辺 元司, 田久保 海誉, 笠松 高弘, 野本 雅弘
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1074-1078
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    老年者の子宮頸部異形成の細胞像を理解するため, 組織学的に裏付けのある異形成症例16例 (平均年齢75.4歳) を検討し, 若年者症例17例 (平均年齢38.1歳) と比較した.またhuman papillomavirus (HPV) の感染性変化についても検討した.老年者の異形成では労基底型核異常細胞の優i位なものが多く (11/16), その細胞像は多彩な形態を示し, われわれがかつて萎縮型細胞として分類したS型 (シート状), N型 (裸核), R型 (類円形), P型 (多角形) および集団形成型に対応する核異常細胞と考えられた.しかし労基底型核異常細胞優位な症例でも組織学的には軽度異形成とされることがあり (6/11) 注意を要する.組織学的には上皮の層形成は一般に薄く, 多く (9/16) は10層以下である.HPV感染性の変化は組織学的にも (9), 細胞学的にも (6) みられ, また2例では免疫組織学的検討およびin situ hybridization法によりHPV陽性所見を示した.
  • 郡 秀一, 椎名 義雄, 澤田 好明
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1079-1085
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Human papilloma virus (以下HPVと略す) 感染を細胞診で診断するため, 核異常細胞の核所見を形態学的に分類し, おのおののHPV capsid antigen陽性頻度を検索した. さらに, 陽性頻度の高い核所見をもとにPapanicolaou標本でのblind testを行い, 診断の可能性を検索した. capsid antigenの検出はPapanicolaou標本脱色後, 酵素抗体間接法で行った.
    capsid antigen陽性の異形成10例に出現した核異常細胞の核所見で, capsid antigen陽性率は均質無構造が33.2%, 封入体様所見が48.4%であり, 細顆粒状の2.4%や粗顆粒状の1.2%より高値を示した. また, 封入体様所見を呈した中でchromatin増量核は50.3%, 褐色核は56.4%と高値であった.
    blind testでは, 均質無構造とchromatin増量を示す封入体様所見が同一標本に認めた症例をHPV感染例とした.33例の異形成において, 23例がHPV感染と診断され, そのうちの19例 (82.6%) にcapsid antigenが検出された. 褐色を示す封入体様所見は14例に出現し, 13例 (92.9%) にcapsid antigenが証明された.
    以上の成績より, 均質無構造やchromatin増量ならびに褐色を示す封入体様所見はHPV感染の診断に有力な核所見であることが示唆された
  • 竹島 信宏, 手島 英雄, 南 敦子, 片瀬 功芳, 梅澤 聡, 清水 敬生, 藤本 郁野, 山内 一弘, 荷見 勝彦, 都竹 正文
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1086-1091
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    原発性卵巣癌, 卵管癌症例において, 増淵式反復吸引法を用いた子宮内膜細胞診の有用性について検討し, 以下の結果を得た.
    卵巣癌154例, 卵管癌20例における, 子宮内膜細胞診の陽性率はそれぞれ13.6%および55.0%であった. 卵巣癌症例では, 漿液性腺癌で内膜細胞診の陽性率が高く (18.9%), 粘液性嚢胞腺癌で陽性率は最も低かった (4.3%). また, 臨床病期の進行に伴う内膜細胞診陽性率の増加を認めた.
    卵巣癌子宮内膜転移陰性症例の検討では, 腹水細胞診が陽性であった場合の子宮内膜吸引細胞診の陽性率は22.5%, また内膜吸引細胞診が陽性であった場合の腹水細胞診陽性率は75.0%であった.
    卵巣癌症例では, 腹水量の増加に伴う腹水細胞診陽性率の上昇を認めたが, 内膜細胞診陽性率はかならずしも腹水量とは相関しなかった.
    細胞所見では, 孤立性あるいは小細胞集塊での悪性細胞の出現, 腫瘍性背景の欠如が特徴と思われた.
    以上より, 増淵式反復内膜吸引法は, 卵管癌で特に陽性率が高く, 特徴ある細胞所見より, 卵巣癌, 卵管癌のスクリーニング法として有用と思われた.
  • 免疫細胞化学, 免疫電子顕微鏡的検索
    甲斐 美咲, 布引 治, 鳥居 貴代, 野田 定, 岸上 義彦
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1092-1097
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    今回, 脳脊髄液中に腫瘍細胞を認めた下垂体腺癌の1例を経験したので報告する.患者は48歳女性で, CT上鞍上槽に加え左前頭葉に伸展する腫瘍を確認し, 最終的には左後頭葉, 脳幹部, 両側小脳橋角部および脊髄にも転移がみられた.
    細胞像: 脳脊髄液 (CSF) 中の腫瘍細胞は大小不同著明な類円形細胞が, 散在性およびシート状に認められた.少数ではあるが広い細胞質に多くの空胞がみられる大型の多核巨細胞も散見された.
    免疫細胞化学所見: CSF中の腫瘍細胞を用いてGH, ACTHおよびProlactin反応を行った結果, 腫瘍細胞の細胞質には著明なGH陽性の褐色陽性顆粒を認めた.ACTHおよびPRL反応は陰性であった.
    免疫電子顕微鏡所見: CSF中の腫瘍細胞を用いてProtein A-gold法を用いたGH反応を行った結果, 腫瘍細胞の細胞質には多数のミトコンドリアと電子密度の高い直径約200nmの分泌穎粒が認められた.GI {反応陽性のgold顆粒は円形分泌顆粒のみに一致して陽性所見を認めたことより, この腫瘍細胞は周囲のGHを取り込んだものではなく, 腫瘍細胞自身がGHを産生していることが証明された.
  • 乳頭分泌液細胞像について
    西方 照二, 笹生 俊一, 斉藤 孝良, 佐熊 勉, 大津 友見
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1098-1101
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    まれな乳腺乳頭部腺腫の1例を報告した.症例は42歳女性.主訴は血性乳頭分泌物で, その細胞診で悪性腫瘍が疑われ, 乳房切断術が施行された.乳頭分泌物細胞診では, 乳頭状構造を示す大小の細胞集塊が多数みられ, 孤立散在する細胞もみた.細胞は類円形, 紡錘形, 多角形の中型細胞で, 細胞質はやや厚く, 核は類円形, 均一の大きさだが一部大型のものも混在していた.核クロマチンは細顆粒状で軽度増量していた.核小体は1個で, 腫大したものもみられ, 中に大型のものもみた.細胞集塊内に筋上皮細胞をみた.組織学的に乳頭内と乳頭直下の乳管で乳管上皮細胞の乳頭状増殖と硬化性腺症に類似した小病変を認め, 中に筋上皮細胞をみた.
    本例では, 乳頭分泌物に細胞が多く, 中に大型核や大型核小体を有する細胞がみられ, 判定が難しい症例であった.
  • 福田 利夫, 斎藤 まさ子, 引野 利明, 中島 孝
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1102-1107
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺粘液癌でGrimelius染色陽性を示し, いわゆるargyrophilic mucinous carcinomaに相当する1症例について, その捺印細胞像と病理形態学的所見を, Grimelius染色陰性の粘液癌 (nonargyrophilicmucinous carcinoma) の症例と比較検討して報告する。
    argyrophilic mucinous carcinomaの捺印細胞像は辺縁では結合性が低下した集塊形成と, 遊離性となった腫瘍細胞の出現がみられ, 細胞質は比較的豊富で核型は比較的揃っている.non-argyrophilicmucinous carcinomaでは集塊が小型で結合性がよく保たれており, 細胞質は狭小で, 核型の不整がみられた.
    さらに, argyrophilic mucinous carcinomaの症例では免疫組織学的に種々の内分泌マーカーが陽性で, 電顕的に限界膜を持つ高電子密度の顆粒が認められた.以上の所見から, 乳腺のargyrophilicmucinous carcinomaは多量の粘液産生とともに, 内分泌性格を示す導管由来の腫瘍であり, 他の臓器にみられる定型的なcarcinoid腫瘍とは形態像が異なるものと考えられる
  • 中 英男, 西山 保比古, 三富 弘之, 上杉 秀永, 蓮本 智美
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1108-1112
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 喀痰中に異型細胞が出現してから2年後に扁平上皮内癌と診断され肺切除術が施行された.切除された肺病変は気管支粘膜に0.4×0.3cm大の扁平上皮内癌が認められた.喀痰中の細胞診所見では扁平上皮癌の診断はできなかったが, そこに出現した異型細胞は遊離性の傾向があった.これらの異型細胞は核・細胞質比が増大し, 核クロマチンも増量と濃縮が認められた.細胞質はオレンジG陽性またはレモンイエローの色調を呈し, 細胞の大きさは不揃いであった.このような核異型を伴ったアポプトテック細胞は扁平上皮内癌の所見と結論した.
  • 山崎 浩一, 小倉 滋明, 磯部 宏, 秋田 弘俊, 阿部 庄作, 荒川 三紀雄, 野島 孝之, 川上 義和
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1113-1118
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    経気管支擦過細胞診にて小細胞癌細胞, 腺癌細胞の2種類の悪性細胞が同時にかつ細胞数がほぼ同じ比率で検出され, その解釈に苦慮した原発性肺癌の症例を経験したので報告する.症例は, 79歳, 男性で右側胸部痛を主訴に当科入院となった.胸部X線写真では右S8に結節性病変を認めた.喀痰細胞診は入院時陰性であったが, 病勢の進行とともに経気管支擦過細胞診で検出された2種類の悪性細胞が認められるようになった.胸水細胞診では腺癌細胞が多数認められ, 小細胞癌細胞は検出されなかった.経気管支生検では, 充実性に増殖した小細胞癌細胞の集団中に, 不規則な腺腔を形成した腺癌細胞の小集団が認められる部分が数ヵ所存在した.なお他臓器には原発巣と考えられる病変は認められなかった.患者は約1年2ヵ月後死亡, 病理解剖を施行した.その結果, 腫瘍の大半は壊死に陥っており, 腫瘍の中枢側に小細胞癌, 末梢側に腺癌が別れて存在していた.以上より, 本症例は肺小細胞癌と肺腺癌の重複癌の可能性が第一に考えられたが, 経気管支生検所見, 臨床所見および臨床経過より, combined small cell carcinomaの可能性も否定できなかった
  • 佐々木 政臣, 川口 知哉, 八幡 朋子, 若狭 研一, 桜井 幹己, 西坂 誠泰, 田中 繁宏
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1119-1123
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    気管支擦過細胞診にて診断した肺放線菌症の1例を報告する.症例は, 58歳, 男性.咳, 血痰のため来院.胸部X線上, 左肺上葉に浸潤影を認め気管支鏡検査を施行され, 気管支擦過細胞診にて多数の放線菌塊を認め, ただちに抗生剤療法が行われた.外来にて経過観察中, 喀血し当院入院となる.再度, 気管支鏡検査を施行され気管支擦過細胞診, 経気管支的肺生検にて肺放線菌症と診断し左肺上葉の切除術を施行された.
    放線菌塊 (硫黄顆粒) は, 緑-黄褐色の不定形で, 中に放射状に広がっている多数のフィラメント様の菌糸がみられた.グロコット染色では菌糸の分岐, 胞子, 隔壁が明瞭に観察できた.組織化学的に, 硫黄顆粒はPAS, グロコット陽性の菌糸体と, PAS, アルシアン青, ムチカルミン陽性の粘液多糖類からなると考えられた.
  • 弘中 貢, 亀井 敏昭, 渋田 秀美, 大田 迫祐
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1124-1128
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    経気管支的擦過細胞診で診断しえた, 原発性肺クリプトコッカス症の1例を報告した.症例は18歳の女性で, 胸部X線写真では, 多発性の結節影を呈していた.入院後, 陰影の増悪が認められた.パパニコロー染色では, 単核あるいは多核の組織球の胞体内に5-10μmの大きさの酵母様菌体が認められた.一部の菌体は, アルシアン青染色で薄い莱膜の存在が確認できた.Fontana-Masson染色では莱膜の有無に関係なく菌体は褐色-黒褐色調に染色され, 診断にきわめて有用であった.fluconazole 200mg/日経口投与により, 陰影の著明な改善を認めた.
  • 大沼 眞喜子, 佐藤 郁郎, 武田 鐵太郎, 小室 邦子, 村田 孝次, 植木 美幸, 阿部 美和, 立野 紘雄
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1129-1134
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌と同一腎内に併存した腎好酸性細胞腫について細胞所見を対比し報告した.症例は42歳, 女性, 自覚症状はなく, 人間ドックの超音波検査で右腎の腹側と背側に2個の独立した腫瘤を指摘され, 精査のため入院.画像診断 (CT, MRI, 血管造影) より腎癌が疑われ手術が施行された.右腎腹側の腫瘤は大きさ2.8×2.8cmで, 割面は暗赤色-褐色, 中心部は黒く出血性, 病理組織診断は腎好酸性細胞腫であった.割面擦過で顆粒状の豊富な胞体をもった細胞がシート状で結合性のゆるい集塊として, または孤在性・散在性にみられた.核は直径約8μmで小型, 類円形を基本とし, 2核のものも散見された.顕著なクロマチン増量はみられず, 小さな核小体が1-2個認められた.背側の腫瘤は大きさ1.5×1.5cmで割面黄白色, 腎癌・淡明細胞亜型と最終診断された.割面擦過で得られた細胞の胞体は明るく核は5-10μmと小型であるが, 大小不同がみられ, 類円形のものが多く観察された.
  • 加藤 拓, 安藤 智子, 高橋 久雄, 佐藤 信夫, 窪沢 仁, 武田 敏
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1135-1139
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    32歳, 男性の前立腺に発生したきわめてまれな癌肉腫の1例を経験した.頻尿を主訴として受診し, CT, 超音波検査にて前立腺部に6cm大の腫瘤を認めた.fine needle biopsyにて平滑筋肉腫を疑った.摘出した腫瘤の捺印細胞所見では散在性または結合性を示す細胞がみられ, 散在性には紡錘形細胞が束を形成して錯走する細胞, 粘液腫様背景に異型軟骨細胞, 破骨細胞および類骨などが認められた.また結合性細胞は類円形で, 特に核圧排像が認められ, 特に一定の分化傾向はみられなかった.個々の細胞は核に強い大小不同と核分裂像がみられた.免疫細胞化学的に紡錘形細胞はvimentin, smooth muscle actinに, 異型軟骨細胞はS-100 proteinに, 結合性細胞はCEA, EMA, keratinに陽性を示した.組織学的に非上皮性成分は軟骨, 骨, 平滑筋成分の肉腫形態を示し, 上皮性成分は未分化癌であった.
    この腫瘍の発生起源は中胚葉由来の未熟問葉細胞にもとめることが最も妥当であると考えられた.
  • 長田 明子, 社本 幹博, 新里 雅範, 金子 千之, 清水 深雪, 新美 元
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1140-1144
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    今回, 頭部嚢胞様腫瘤の穿刺吸引細胞診にてHand-Schuller-Christian病 (HSC) と診断し得た1症例を経験したので報告する.
    症例は7歳女児.左前頭部腫脹を主訴に近医を受診.画像上, 骨打ち抜き像, 骨融解像を認め, 精査のため当院小児科へ転院.
    確定診断の目的で, 頭部嚢胞様腫瘤部位より穿刺吸引細胞診を施行した.穿刺吸引細胞診にて, 不規則な形態を示す核と広く明るい細胞質を有する大型の樹状細胞を散在性, 一部集族性に認め, また背景には多数の好酸球や泡沫状の細胞質を有するマクロファージを認めた.免疫細胞化学的検索においてこれら樹状細胞は, S-100蛋白, OKT-6 (CD1a), Leu-3a (CD4) 陽性を呈した.また電顕的に, 樹状細胞の細胞質内にBirbeck顆粒を認めた.
    頭部打i僕後に生じた嚢胞性腫瘤により偶発的に発見されたHSCの1例で, より侵襲の少ない穿刺吸引細胞診にて確定診断が得られたことは有意義である.
  • 北川 泰之, 白井 康正, 中山 義人, 角田 隆, 中原 義人, 浅野 伍朗, 松原 美幸, 前田 昭太郎
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1145-1149
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診により推定診断しえたまれな関節外発生の腱鞘巨細胞腫 (びまん型) の1例を経験したので, その細胞像を中心に報告した.
    症例は50歳, 女性で, 右膝関節に隣接して13×8cmの腫瘤が認められた.大きさや画像所見から悪性軟部腫瘍が疑われたが, 穿刺吸引細胞診でclass IIと判定, 腱鞘巨細胞腫と推定診断した.細胞像は, 多数の組織球様細胞がみられ, その一部に褐色顆粒 (ヘモジデリン) を摂取している細胞や細胞質が明るく泡沫状にみえる含脂肪組織球 (黄色腫細胞) が認められた.また, 線維芽細胞様細胞や破骨細胞型多核巨細胞も少数認められた.生検にて腱鞘巨細胞腫と診断され, 腫瘍摘出術が施行された.腫瘍は鷲足を中心とした充実性腫瘤を形成しており, 関節腔との連続性および関節内病変は認められなかった.組織学的には多結節状で裂隙状空間および絨毛状構造と豊富な血管を有する腱鞘巨細胞腫, びまん型の像を呈していた.腱鞘巨細胞腫, びまん型の診断に穿刺吸引細胞診が有効であることが示唆された.
  • 安田 大成, 山上 千秋, 石上 増雄, 平田 明宏, 大林 千穂, 伊東 宏
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1150-1154
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    下腿軟部組織原発悪性リンパ腫の1例を報告する. 症例は75歳, 女性. 右前脛骨部の掻痒感を伴う皮膚炎で通院中, 同部に腫脹と痙痛生じ, 脂肪織炎の診断で生検したところ悪性リンパ腫であることが判明した. 腫瘍は画像上また肉眼的に前脛骨筋を置換するように浸潤しており, 黄色調, 軟で一見脂肪組織を思わせた. 組織像では血管内皮の核と同大ないしやや大型の球形の核に, 弱好酸性顆粒状の乏しい胞体を持つ異型細胞の単調なびまん性増生がみられた. 免疫組織化学ではすべての腫瘍細胞がLCAおよびL-26陽性で, B-cellの性格を示した.捺印細胞診では, 1-3個の核小体を有し, ときに切れ込みのみられる類円形核のN/C比の高い細胞が散在性に出現しており, Sudan III陽性の脂肪滴が少数認められた. 本例は種々の検査にてもリンパ節, 皮膚, 骨などほかの部位に病変は証明されず, 深部皮下組織ないし骨格筋原発のリンパ腫で, 細胞診が診断に有用と考えられたため, 鑑別診断などにつき若干の文献的考察と合わせ報告する.
  • 田野口 孝二, 田勢 亭, 我妻 理重, 佐藤 信二, 矢嶋 聰, 岡本 聡
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1155-1159
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腟原発性腺癌は非常にまれな疾患である.その中で明細胞腺癌は比較的特徴的な細胞所見を示し, 細胞診による診断が可能であると考えられる.今回われわれは腟原発の明細胞腺癌を経験したので報告する.症例は不正出血, 排尿困難にて近医受診し腟内に腫瘤を指摘された.子宮頸部細胞診にてClass V, 腺癌の診断を受け当科紹介となった.腫瘍は腟前壁に存在し表面はびらん状で易出血性であった.病巣から採取した細胞診は腫瘍性背景がみられ, その中に異型腺細胞がボール状-ぶどう房状の細胞集塊を成していた.細胞質は比較的明るく豊富でレース状を示す部分もみられた.核は類円形でやや大きく, 細顆粒状のクロマチンと大型核小体を数個と核分裂像を認め明細胞腺癌と推測された.病理組織診では明るくて豊富な胞体をもつ腫瘍細胞が, 腺構造を形成し一部ホブネイル様の細胞も認められた.細胞質はPAS染色陽性, ジアスターゼ消化試験陰性を示し腟原発明細胞腺癌と診断された.放射線療法, 動注化学療法施行後, 腫瘍は著明に縮小し手術切除が可能となった.患者はその後外来通院中である.以上のように腟明細胞腺癌は病変部より細胞を採取できればその特徴的な所見により細胞診による診断が可能と考えられた.
  • 服部 学, 大野 英治, 横山 大, 高山 明子, 豊永 真澄, 桑尾 定仁, 蔵本 博行
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1160-1164
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    上皮様結合を示す腫瘍細胞集塊が出現したために, 捺印細胞診による組織型の推定診断が困難であった子宮体部平滑筋肉腫を経験した. 症例は34歳, 1回経妊未産の女性で, 月経不順, 立ち眩みなどを主訴に来院し, 子宮筋腫を指摘され, 手術目的で入院した. 術中迅速組織診にて悪性と診断, 摘出標本からの捺印細胞診が施行された. 腫瘍細胞として, 上皮様結合を示し乳頭状に配列する腺癌様細胞と, 孤立散在性に出現する紡錘形細胞や巨細胞の肉腫様細胞が認められたため, 当初ミュラー管混合腫瘍を考えた. しかし, 免疫細胞化学的に腺癌様細胞ならびに肉腫様細胞はデスミン, ビメンチンおよび平滑筋アクチンがいずれも陽性であり, ミオグロビン, CEA, EMAおよびSCがすべて陰性であったことより, これらの腫瘍細胞は同一系統で平滑筋由来であると判断した. パパニコロー標本を再検討した結果, 腺癌様細胞と肉腫様細胞は核縁が薄いことやクロマチンが細かい点で類似性が認められた. 以上より, 平滑筋肉腫の捺印細胞診では, 腫瘍細胞が集塊で出現する場合もあるため, 核縁およびクロマチンパターンなどの所見を総合して組織型の推定を行うことが重要であると思われた.
  • 小島 英明, 斉藤 隆二, 川口 洋子, 菅沼 麗桜, 井上 泰
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1165-1166
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 森 正樹, 前川 秀樹, 法木 左近, 今村 好章, 宮保 進
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1167-1168
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 羽原 利幸, 藤村 紀行, 桑田 久子, 藤井 智恵, 林 雄三, 小池 秀爾
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1169-1170
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 石水 弘子, 峰 高義, 角田 耕造, 田中 智之
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1171-1172
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 奥山 隆三, 羽賀 博典, 逢坂 光彦, 杉山 武敏, 高橋 玲
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1173-1174
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 戸島 敏, 新井 正, 吉見 直己, 安田 洋
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1175-1176
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 今野 元博, 佐藤 隆夫, 大柳 治正, 橋本 重夫
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1177-1178
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 隆夫, 今野 元博, 丹司 紅, 宇野 重利, 橋本 重夫
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1179-1180
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 池田 聡, 木村 博, 深沢 徳行, 鈴木 恵子, 船越 尚哉
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1181-1182
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 石井 恵子, 鈴木 義孝
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1183-1184
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 松元 保, 家村 和千代, 沖 利通, 永田 行博, 中村 行彦, 松下 能文
    1994 年 33 巻 6 号 p. 1185-1186
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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