日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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34 巻, 6 号
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  • 組織診との不一致例の問題点
    新井 徹, 宝来 威, 中山 富雄, 中村 慎一郎, 建石 龍平
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1003-1009
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    当院において1981年~1992年に組織診断または細胞診にて大細胞癌と診断された40例を, CYT群 (細胞診: 大細胞癌, 組織診: 大細胞癌以外, すなわち非大細胞癌) の18例, HIS群 (細胞診: 非大細胞癌, 組織診: 大細胞癌) の16例, 一致群 (細胞診・組織診: 大細胞癌) の6例, の3群に分け, 細胞所見, 組織像, 粘液染色, 免疫細胞化学の所見につき検討した. 細胞所見では, 背景の壊死像・孤立性の腫瘍細胞・巨細胞・cytophagocytosisなどの従来より大細胞癌に特徴的といわれる所見は, HIS群よりも, むしろCYT群に高頻度に認められた. さらに, 核の大小不同はCYT群で有意に大きかった。CYT群では, 組織学的に低分化のものが多く, 細胞診断が組織診断と一致しなかったものと思われる. 粘液染色・免疫細胞化学でも, 正確な細胞診断の補助にはいたらなかった.
  • 特にアスベスト曝露の評価
    青木 潤, 山本 津由子, 佐々木 なおみ, 谷山 清己
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1010-1015
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    痰と肺に含まれるアスベスト小体数を同時に算出し, 両者の関連性を検討した. 剖検12例から採取された気管内の痰は, 集細胞細胞診法と次亜塩素酸ナトリウムによる溶解法を用いて, また同一症例の肺組織は溶解法を用いてアスベスト小体を検出した. 痰中のアスベスト小体は細胞診法では12例中1例のみから検出されたが, 溶解法では8例から検出された. 肺組織からは全例でアスベスト小体が検出され, そのうち高度以上曝露 (151本/5g以上) は9例であった. 痰溶解法で検出された8症例の肺は高度以上のアスベスト曝露であった. 気管内痰と喀痰は成分的には同一と考えられるため, 通常提出される喀痰において溶解法を用いてアスベスト小体が検出されれば, 高度以上の曝露者である可能性が高く, 痰溶解法はアスベスト曝露のスクリーニング検査法として有用と考える.
  • 松田 実, 宝来 威, 菊井 正紀, 楠 洋子
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1016-1024
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大阪肺癌集検研究班では, 1981年より胸部X線撮影と喀痰細胞診による肺癌検診を実施しているが, 1990年までの10年間に, 喀痰細胞診でDあるいはEと判定された症例の, 精検および追跡調査の結果について報告する. 喀痰を提出した高危険群所属者は, 男女合計16,992人で, 有効喀痰は16,795人が提出した. 要精検者は402例, 原発性肺癌患者は28例であり, したがって陽性反応適中率は6.97%となった. 要精検者のうち判定D群は53例で, 発見された肺癌患者は14例, 陽性反応適中率は26.42%であった. 一方, 判定E群は14例で, 発見された肺癌患者は9例, 陽性反応適中率は64.29%であった. 臨床病期1期肺癌の比率は, 判定D群14例中12例85.7%と, 判定E群6例中2例33.3%よりかなり高かった. また, 判定D群14例中10例は喀痰細胞診単独発見例であり, すべて臨床病期1期であった. 肺癌または喉頭癌以外の判定D群37例, 判定E群3例を追跡し, 5年以上追跡しえた判定D群の16例, 判定E群の2例からは肺癌を発見しえず, Eと判定した2例はfalse positiveと考えられた
  • 丸田 淳子, 川本 均, 野口 志郎, 山下 裕人
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1025-1029
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺疾患と癌遺伝子c-erbB-2, c-mycの蛋白発現の関係を検討するため捺印標本を用いて免疫染色を施行した. 乳頭癌43例のうち28例 (65.1%) がErbB-2蛋白陽性であり, 26例 (60.5%) がc-myc蛋白陽性であった. 両蛋白とも濾胞腺腫, 腺腫様甲状腺腫に比して有意に高い陽性率を示した (P<0.001). また, ErbB-2, c-myc蛋白の染色結果がともに陽性または陰性の率は71.4%であった. ErbB-2蛋白陽性率では郭清したリンパ節の総数が増加するにつれて多くのリンパ節に転移が認められたが, 陰性例では郭清数と無関係であり, 転移のみられるリンパ節はわずかであった. さらに, 腫瘍が周囲組織へ浸潤性の増殖を示す症例 (5例) はすべて陽性例であった. c-myc蛋白に関しては転移や浸潤との関係はなかった. また, 同一組織を用いた免疫染色結果との一致率は両蛋白とも83.8%であり, 細胞診材料を用いた術前のリンパ節転移や浸潤傾向の予測がある程度可能であると考えられた.
  • (2) 穿刺吸引細胞診における判定困難症例とその取扱方法について
    澤井 繁男, 垣花 昌彦, 山下 俊樹, 木村 尚哉, 金田 竜真, 浦崎 政浩, 野原 キクエ, 佐々木 陽一, 山田 喬
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1030-1040
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    刺吸引細胞診は乳房疾患の治療方針を決めるための主要な手段であるが, 診断困難症例にしばしば遭遇する. われわれは, 独自の細胞判定基準を作成し, 診断困難な症例をCIIIaとCIIIb群に分けた. そして, CIIIaは良性とは断定できないので再検もしくは厳重な経過観察か, 外来で試験切除を行う. CIIIbは, 悪性を強く疑うが断定できないので他の診断所見を考慮したうえで入院して試験切除を行うよう勧告する. 疑いなく悪性の場合にのみCIV, CVとするという報告様式を考案した. 1988年1月から1993年6月まで, 総計1197例に対し1510回の穿刺吸引細胞診を行った. CIIIa群は83, うち47例の手術例中7例 (14.9%) が悪性, 40例が良性であった. CIIIb群は44. 35例に手術, うち22例 (62.9%) が悪性であった. CIV, CV群の76例はすべて悪性で, 誤陽性はなかった. CIIIa群の良性は, 乳腺症, 巨大線維腺腫, 隆起性皮膚線維肉腫, CIIIb群の良性は乳腺症, 線維腺腫, 乳管腺腫 (ductal adenoma), 葉状腫瘍などで, 組織学的にも問題例が多くみられた. CIIIb, CIIIa群の悪性症例は, 硬癌, 小葉癌, など細胞採取しにくい小型の細胞からなる症例, 非浸潤癌, 微小浸潤癌など異型の少ない癌, 異型の少ない細胞の乳頭癌症例が多かった。術中迅速組織診断では診断できなかった乳頭癌症例をCIIIbとして拾い上げている. 以上, われわれの判定基準は, 診断困難症例の診断に適用でき, この報告様式は治療方針を立てるうえで有用であった.
  • サイトケラチン染色による癌細胞の鑑別診断
    高橋 とし子, 星 宣次, 斎藤 英郎, 鈴木 謙一, 金田 隆志, 大山 力, 佐藤 信, 吉川 和行, 折笠 精一, 木村 伯子
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1041-1046
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    リンパ節吸引細胞診の診断効率をあげる目的で, 膀胱癌症例を対象に骨盤内リンパ節吸引細胞標本の抗サイトケラチン抗体 (KL-1) による免疫染色の有用性を検討した. 同時に膀胱癌原発組織と摘出リンパ節組織も検討した. 原発組織のKL-1染色では, Grade1, 2の癌細胞は強く染色されたが, Grade3の染色性は低下していた. リンパ節組織では, 癌細胞のみがKL-1陽性であり, リンパ管造影後に出現する組織球は染色されず非特異反応も少なかった. 病理診断で転移陰性と診断されたリンパ節標本で, KL-1染色により微小な癌転移を診断できた例が認められた. 吸引細胞標本では, パパニコロー染色で組織球と鑑別できずClass IIIの判定例がKL1染色により陽性に染色され, 癌転移と診断できた.
    以上から, 抗サイトケラチン抗体を用いた免疫染色の併用により, 細胞診のClass IIIを減じ, さらに摘出リンパ節の癌転移の診断率を向上させることができると思われた.
  • 特にT細胞リンパ腫の核構造との相違点について
    畠 榮, 坂東 美奈子, 山口 昌江, 小林 博久, 伊禮 功, 森谷 卓也, 定平 吉都, 清水 道生, 広川 満良, 真鍋 俊明
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1047-1053
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    多分葉核を伴うB細胞性リンパ腫4例 (multilobated B細胞リンパ腫), T細胞リンパ腫12例 (皮膚初発T細胞リンパ腫4例, 多形細胞型リンパ腫4例, 大細胞未分化型T細胞リンパ腫4例) を対象とし, 捺印細胞の核形態を中心とした細胞所見の相違点について検討したので報告する. 標本は捺印後95%アルコール, 乾燥固定を行いPapanicolaou染色, May-Grünwald-Giemsa染色 (以下MGG染色), H-E染色を行った. B細胞リンパ腫は, 中~ 大型の異型リンパ球が34.5~79.1%, 平均51.9%の割合で認められ, クローバー状や3分葉以上の分葉核が約40%に認められ, 6分葉以上の核は3.3~8.2%, 平均4.8%に出現した. これらの分葉像は平面的分葉を示し, 菊花様構造を呈した. 一方, T細胞系リンパ腫にみられた分葉核は, 複雑に入り込んだ立体的構造を特徴とする “脳回様構造” を示した. さらに大細胞未分化型T細胞リンパ腫では, 腎形の核や花冠状配列を呈した多核巨細胞が認められ, 一部にReed-Sternberg細胞やHodgkin細胞に類似した腫瘍細胞も認められた.
    Multilobated B細胞リンパ腫は一点を中心とした菊花様構造の平面的な多分葉核を呈する点がT細胞系リンパ腫の立体的な大型核と異なることが明らかとなり, 重要な鑑別点になると思われた.
  • 黒瀬 顕, 柳沢 忍, 三浦 康宏, 佐々木 功典, 柴田 祐二
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1054-1057
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    現在染色体解析に広く用いられているfluorescence in situ hybridization (FISH) 法では, ハイブリダイゼーションに通常一晩以上を要する. 近年, このハイブリダイゼーション時間を短縮したキットが市販されだした. そこでこのキットを用い, ハイブリダイゼーション時間30分, 2時間および12時間において, シグナル数の比較を行った.
    17番染色体αサテライトDNAプローブを用いた場合, 12時間のハイブリダイゼーションでは正常ヒトリンパ球の95%以上に2個のシグナルを検出できたのに対し, 30分のハイブリダイゼーションではリンパ球の75.5%にしか2個のシグナルを検出できなかった. 大腸癌検体においては, 30分, 2時間そして12時間と, ハイブリダイゼーション時間が増すにつれシグナル数は増え, さらに, その分布に大きな変化がみられた. したがって十分なシグナル検出のためには, 従来通り一晩以上のハイブリダイゼーションが必要と考えられる.
  • 10症例の臨床細胞学的検討
    山脇 孝晴, 手島 英雄, 古田 則行, 加藤 友康, 都竹 正文, 藤本 郁野, 山内 一弘, 荷見 勝彦
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1058-1063
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    癌研究会附属病院婦人科にて経験した, 腟原発悪性黒色腫10症例の臨床細胞学的検討を行った. 初診時の腟腫瘍表面の擦過細胞診はすべて陽性であり, 以下の結果を得た.
    1) 剥離細胞の形態は, 円形細胞型, 紡錘細胞型, 多形細胞型が混在して出現し, 病理組織学的亜分類とは必ずしも一致しなかった.
    2) 腫瘍細胞の大部分は散在性に出現したが, 4例 (40%) において一部に類上皮様配列を呈する小細胞集塊を認めた.
    3) 核内空胞は9例 (90%), 偏在性核は7例 (70%), 多核細胞は6例 (60%) と高率にみられた.
    4) N/C比は細胞形態により異なり, 円形細胞では高く, 紡錘細胞, 多形細胞では比較的低かった.
    5) 核小体は, 9例 (90%) において, 顕著で目立っていたが, 巨大核小体の出現は低率であった.
    6) メラニン顆粒は, melanotic melanoma 8例すべてにおいて, 腫瘍細胞のみならず, 組織球内にもみられた. 病理組織診断でamelanotic melanomaであった2例のうち1例に, 腫瘍細胞内にきわめて少量のメラニン顆粒が認められた.
    腟原発例では, 核内空胞などの悪性黒色腫の特徴所見の出現頻度は低率であるとされてきたが, 今回の検討で, 腫瘍表面の擦過により, 十分量の細胞検体が採取され, 悪性黒色腫の特徴所見の出現頻度は高率であることが明らかになった.
  • 山脇 孝晴, 手島 英雄, 荒井 祐司, 秋山 太, 都竹 正文, 藤本 郁野, 山内 一弘, 荷見 勝彦
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1064-1069
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部small-cell neuroendocrine carcinoma (SCNC) は, まれではあるが, きわめて予後不良な疾患であり, その診断は重要である. 一般には, 細胞診上, SCNCをその他の小型細胞癌と鑑別することは困難とされてきた.
    今回, 1977年~1993年の17年間に経験した子宮頸部浸潤癌1917例中6例 (0.31%) が, H-E染色, 免疫組織化学的染色, 電顕による検索で, SCNCと確定診断された. これらの症例の細胞診標本の検討を行い, SCNCの細胞診断学的特徴を明らかにした.
    1) 背景には壊死物質が多く, 炎症細胞は少ない. 2) 腫瘍細胞は, 孤立散在性あるいは結合性の弱い上皮性集塊として出現する. 3) 集塊は, 細胞配列に一定の方向性 (流れ) を認めず, また, 一部裸核状のほつれ像を伴う. 4) 核は円形~ 類円形, 細胞質は狭小, N/C比はきわめて大きく, クロマチンは細顆粒状で, 核小体は目立たない. 5) 扁平上皮癌や腺癌成分を伴うことがある.
    これらの所見に注目することにより, 細胞診断学的にSCNCを推定しうる可能性が示唆された.
  • その形態学的特徴と免疫細胞学的検討
    田中 洋子, 杉原 佳子, 鐵原 拓雄, 広川 満良
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1070-1073
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸腟部スメア12,560例中に認められた非腫瘍性延長細胞24例 (0.19%) について, 形態学的, 免疫細胞学的に検討した. 形態学的に延長細胞は, 結合性を有し, 細胞境界が明瞭な1型, ほとんど結合性をもたず著明に延長した細胞質を有する2型, 孤立散在性に出現し, 辺縁不明瞭な泡沫状の細胞質を有する3型に分類した. 1型および2型はkeratin陽性で, 扁平上皮および化生細胞由来と考えられた.
    3型はkeratin, vimentin, lysozymeいずれにも陰性でその由来を示唆することはできなかった. また, 非腫瘍性延長細胞の出現と年齢, 臨床診断, 月経周期などとの関連は認められなかった.
  • 宇津木 久仁子, 手島 英雄, 南 敦子, 古田 玲子, 秋山 太, 横須賀 薫, 山内 一弘, 荷見 勝彦, 都竹 正文
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1074-1081
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    純粋型Adenocarcinoma in situ (AIS) 8例, 共存型としてAIS+squamous cell carcinoma in situ (CIS) 4例, AIS+microinvasive squamous cell carcinoma (MIC) 1例についてその細胞像を検討し早期発見に役立つ特徴の把握を試みた.
    1) 手術前細胞診は, 純粋型AISでは陰性が1例, 陽性が7例であった. AIS+CISでは疑陽性が3例で陽性は1例であり, AIS+MICの1例は細胞診陽性であった. 共存型では5例中4例が扁平上皮系の推定病変であった. 2) AIS病変の位置はSCJより下方のみは3例, 上方のみは6例, 両方に存在するのが4例であった. 深さは子宮頸部表層上皮より3mm未満が10例, 3mm以上5mm未満は2例, 5mm以上は1例であった. 3) 純粋型AISの細胞像の特徴として, きれいな背景, 柵状やシート状集塊が多い, 核の飛び出し像, 核は楕円形が多く大小不同や不整は少ない, 核縁はスムースで肥厚が軽度であるなどがあげられた. 4) AISの核径は柵状集塊では11.24×6.69μm, シート状集塊では9.79×7.52μmで, 正常の卵胞期, 黄体期と較べ長径が長く, 浸潤腺癌と較べ短径が短かかった.
    以上のAISの細胞像を把握することは, 子宮頸部腺癌の早期発見に有用であると思われた.
  • 芳賀 厚子, 平井 康夫, 荒井 祐司, 秋山 太, 南 敦子, 神谷 真由美, 都竹 正文, 山内 一弘, 神谷 稔, 荷見 勝彦
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1082-1088
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    癌研附属病院において過去45年間に経験した子宮頸部悪性腺腫 (adenoma malignum) 7症例の臨床的検討とともに, 細胞標本の再検討が可能であった4症例について細胞像の検討を行った. 7症例の子宮頸部腺癌454症例に占める割合は1.54%, 平均年齢は52.3歳であり, 主訴は水様帯下, 不正出血が多く, 5年生存率は71.4%であった. 治療前細胞診の疑陽性を含む陽性率は71.4%であった. 再検討した4症例の細胞像の特徴は以下のとおりであった.
    1.粘液産生を伴い辺縁が全周柵状配列になった大型シート状の腫瘍細胞の集塊が出現する.
    2.柵状部では核位置は一定しているが核の重なりが著明である.
    3.核は緊満感があり, 一部の核には核形不整もみられる. 核クロマチンは微細穎粒状粗であり, euchromatinの増加が示唆される.
    上記の特徴を考慮することにより, 細胞診による子宮頸部悪性腺腫の診断は十分に可能であると思われた.
  • 藪下 廣光, 古谷 博, 水野 義己, 小枝 吉紀, 原 一夫, 野口 昌良, 中西 正美
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1089-1093
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜細胞診の診断精度の向上を目的として, 子宮内膜細胞診とともに, 細胞診材料採取時に得られた小組織片を用いた組織診 (セルブロック法) を子宮内膜細胞診と併用して行い, その有用性を検討した.
    不正性器出血, 癌検診希望などを主訴とした患者87例を対象とし, 21例については, 内膜試験掻爬による組織診を併せて行った.
    子宮内膜細胞診の結果は, 陰性78例, 疑陽性3例, 陽性6例であり, セルブロック法の結果は, 悪性所見なし62例, 異型増殖症1例, 腺癌8例, 検体不良16例であった. セルブ'ロック法での検体不良例を除く71例について, 両者の結果が一致したものは67例 (94.4%) であり, 子宮内膜細胞診が陰性でセルブロック法では異型増殖症と判定したものが1例, 子宮内膜細胞診が疑陽性とした3例のうちで腺癌と判定したもの2例, 悪性所見なしと判定したもの1例があった. 内膜試験掻爬による組織診を行った21例のうち腺癌は9例あり, これらでの子宮内膜細胞診の陽性例は6例 (66.7%) であったのに対し, セルブロック法の陽性例は8例 (88.9%) であった.
    以上の結果より, 子宮内膜細胞診とセルブロック法の併用は, 子宮体癌スクリーニングにおける細胞の判定の困難性を克服することで細胞診の診断精度を明らかに向上させうることが示された.
  • 特に臨床進行期I期開腹例の陽性頻度を中心に
    黒瀬 高明, 半藤 保, 大野 正文, 五十嵐 達也, 塩田 敦子
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1094-1097
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1984~1993年の10年間に香川医科大学附属病院で治療された子宮体癌68例中, 術中腹膜細胞診施行例は47例であり, うち5例 (10.6%) が陽性であった. これを臨床進行期1期のみについてみると, 腹膜細胞診陽性例は41例中4例 (9.8%) であった. ただし, この中には手術進行期分類IIIの1例が含まれていた. 腹膜細胞診陽性例は, 腺扁平上皮癌, 未分化腺癌や推計学的有意差はなかったものの子宮筋層浸潤の深いものとの関連が示唆された. 腹膜細胞診陽性5例中1例は, 細胞形態学的に悪性細胞と判別できたものの子宮体癌由来と診断することは難しい細胞像を呈していた.
    術前に子宮鏡診を施行した46例中, わずか4例のみが腹膜細胞診陽性であった.
  • 坂井 秀隆, 馬場 寿美子, 高尾 直大, 森山 伸吾, 小寺 宏平, 中島 久良, 行徳 豊, 山辺 徹
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1098-1103
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮体部非上皮性悪性腫瘍の子宮腔細胞診による診断精度について, 最終組織診断, 腫瘍発育形式, 進行期分類および臨床症状の面より検討した. なお, 子宮腔内細胞採取には, エンドサイトを用いた. 最近14年間に手術された子宮体部非上皮性悪性腫瘍17例を対象としたが, その術前の組織型別細胞診陽性率は平滑筋肉腫2/9例, 横紋筋肉腫1/1例, high gradeの子宮内膜間質肉腫2/3例, ミューラー管混合腫瘍 (MMT) 3/4例であり, pure sarcomaの陽性率 (39%) はMMT (75%) に比べて低かった. この細胞診陽性8例中6例は細胞所見により非上皮性悪性腫瘍の推定がなされていたが, 子宮内膜間質肉腫の1例は起源不明の悪性腫瘍, またMMTの1例は腺癌が疑われていた.
    Pure sarcoma 8例およびMMT4例は腔内発育型であり, それぞれの細胞診陽性率は63%および75%と大差なかったが, 壁内限局型の5例はいずれもpure sarcoma (平滑筋肉腫) であり, 全例が細胞診陰性であった. 子宮体癌の手術進行期分類を適用した場合の細胞診陽性率はI期36%, III-IV期67%と病巣の進展したものほど細胞診の陽性率も上昇する傾向が伺われた.
  • 羽場 礼次, 小林 省二, 野間 勝之, 矢野 好人, 小川 裕道, 黒河 達雄, 梅田 政吉
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1104-1108
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    浸潤性胸腺腫と胸腺癌を各1例経験したので細胞像を中心に報告した. 症例1は62歳の女性で, 左胸水の出現と前縦隔腫瘤が発見された. 穿刺吸引細胞診では, 小型リンパ球をまじえる重積性の強い細胞集塊を認めた. 細胞は大小不同性と多形性とも軽度で, 円形から楕円形の核には微細顆粒状のクロマチンと小型核小体がみられた. 組織学的には浸潤性胸腺腫と診断された. 症例2は44歳の男性で, 検診時に前縦隔腫瘤を指摘された腹部CTにより肝臓に転移性病巣も発見された. 縦隔と肝の穿刺吸引細胞診では散在性の細胞集団がみられた. 細胞はN/C比が高く大小不同性と多形性の強い核には, 顆粒状のクロマチンと数個の大型の核小体を認めた. 組織学的には胸腺癌 (低分化型扁平上皮癌) と診断された. 細胞診で今回経験した2例の鑑別点としては, 核の不整と大小不同性, N/C比の増大, 核分裂像の増加, 細あるいは粗大顆粒状のクロマチン, 数個の大型の核小体などを考慮することが重要と考えられた. また胸腺腫の浸潤性の判定は細胞像のみでは困難であった.
  • 広川 満良, 三上 芳喜, 定平 吉都, 清水 道生, 真鍋 俊明, 有安 早苗
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1109-1112
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腺腫様甲状腺腫にみられた濃縮コロイドが砂粒体様石灰化や扁平上皮類似の形態を示した1例を報告する. 患者は, 甲状腺左葉に約3cm大の腫瘤を指摘された60歳女性である. 穿刺吸引細胞診にて好酸性細胞型細胞が集合重積性に散見され, それらの細胞集塊内に多数の同心円状の石灰化小体が観察された. 術中の迅速診断時に作製した腫瘤割面捺印塗抹H-E電染色標本では, 多稜形をした濃縮コロイドの中心に類円形石灰化がみられ, あたかも扁平上皮細胞のようであった. 摘出した腫瘤の組織診断は腺腫様甲状腺腫で, 主として好酸性細胞型細胞よりなっていた. 小濾胞内には濃縮したコロイドが目立ち, 同心円状の石灰化を伴うものが目立った. これらの石灰化は形態学的に砂粒体に類似していたが, 診断学的な意味はなく, 乳頭癌の間質にできる真の砂粒体とは区別すべきものと考える. また, 扁平上皮細胞様構造物も中心に石灰化をきたした濃縮コロイドであったと考えられた.
  • 穿刺吸引細胞診の2例
    堀部 良宗, 笠原 正男, 是松 元子, 山本 修美, 田代 和弘, 鈴木 良典, 溝口 良順, 見元 裕司
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1113-1118
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Carneyらによって提唱された甲状腺硝子化索状腺腫 (Hyalinizing trabecular adenoma of thyroid, HTA) 細胞・組織学的に乳頭癌および髄様癌に類似する特殊型の濾胞腺腫である. 今回われわれは2例のHTAを経験し, 細胞学的検索の結果, 乳頭癌とは異なる所見が得られたので報告する. HTAの細胞学的特徴は, 1) 背景にはライトグリーンに濃染する無構造な硝子様物質の出現が観察され, これらはギムザ染色において, メタクロマジーを示した. 2) 細胞集団は結合性の強いシート状ないし柵状配列を示し, 間質結合織および無構造物質を中心に配列する傾向にあった. 3) 腫瘍細胞は楕円型, 紡錘形ないし卵円形で, 細胞質はライトグリーンに淡染していた. 4) 核クロマチンは細顆粒状で均等分布を示し, 核内細胞質封入体および切れ込み核が1つの細胞集団で約10-20%にみられた. 核小体周囲明暈が散見された. 核内細胞質封入体および切れ込み核を除けば, 1) から4) の所見は, 乳頭癌との鑑別診断に有効であった. 甲状腺細胞診ではHTAを含めた乳頭癌以外の甲状腺良性疾患にも核内細胞質封入体, 切れ込み核が観察されることを考慮しておく必要性があると考えられた.
  • 金城 光幸, 長嶺 利恵子, 平 圭子, 野島 満, 喜納 治男, 国島 睦意
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1119-1123
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌に合併した扁平上皮癌の捺印細胞像を観察する機会を得たので, 病理組織学的所見と免疫組織化学的検討を加え報告し, さらに, 外科的に切除された甲状腺疾患における扁平上皮化生の有無と頻度を検索した.
    症例は74歳女性. 切除甲状腺では, 左葉に大きさ3×2cmの腫瘤が認められた. が厚く一部で角化した細胞やbizarreな細胞も散在性にみられ, 後者は分化型扁平上皮癌に一致する所見であった. 組織学的には, 腫瘍の大部分は乳頭癌の像を呈していたが, 一部で扁平上皮癌巣を伴っていた. 免疫組織化学的には, 乳頭癌部分は, human epidermal keratin, bovine muzzle epidermalkeratinに陽性を示し, thyroglobulinとepithelial membrane antigen (EMA) には一部で陽性を示したがcytokeratin・squamous epitheliumには反応しなかった. 扁平上皮癌部分では, 3種のkeratinいずれにも強陽1生に反応し, EMAには弱陽性を示したがthyroglobulinは陰性であった.
    次に, 化生を認めなかった. 甲状腺での扁平上皮化生は, 乳頭癌に比較的よくみられ, 扁平上皮癌の発生母地のひとつとも考えられているが, 本症例においては, 組織学的に乳頭癌部分と扁平上皮癌部分との間に一部で移行像が認められ, 乳頭癌から直接発生したものと考えられる.
  • 辻 求, 堀岡 良康, 森川 政夫, 山本 正之, 山田 克巳, 門根 謙介
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1124-1127
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺結節性病変で組織像ではreactive lymphoid hyperplasia (RLH) であったが, Southern blot法でheavy chain (H鎖) 遺伝子再構成を示した1例を経験したので報告した. 患者は58歳の女性で, 軽度の甲状腺腫大を認めた. 血液検査では膠質反応は高値を示したが, 抗甲状腺抗体は陰性であった. 甲状腺超音波検査やCT検査で結節性病変を認め, 67Gaシンチグラムで集積像がみられた. 穿刺吸引細胞診では多数のリンパ球が採取され, 核網のやや薄い小型リンパ球が大半を占めるも, 一部には核網の濃い小型リンパ球や中型や大型のリンパ球も混在していた. 手術材料による病理組織像では, 結節性病変はリンパ濾胞の集簇巣で, 免疫染色ではmonoclonarityが証明されなかった. その他の部分では甲状腺組織の間質に散在性にリンパ球の集簇巣をみ, 一部では濾胞構造を認めた. 以上より, 組織学的にはRLHを合併した慢性甲状腺炎と診断した. しかし, 結節性病変の部分で遺伝子学的に免疫グロブリンH鎖の再構成を検索したところ, Hind III消化DNAにおいてJH遺伝子の再構成がみられたので, 結節性病変の中にB細胞悪性リンパ腫の部分が存在していることを示唆した.
  • 所 嘉朗, 上山 勇二, 鬼頭 邦吉, 奥田 克子, 中村 栄男, 栗田 宗次, 市原 周, 越川 卓
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1128-1132
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    異型上皮過形成を伴うMucocele-liketumorの細胞像および組織像について報告する. 症例は46歳の未婚女性で, 穿刺吸引細胞診上, 粘液癌を否定できないため生検組織診 (incisionalbiopsy) が行われた. 組織診では乳管内粘液貯留, 間質への粘液の漏出, さらに拡張乳管を覆う上皮の一部に低乳頭状の異型過形成を認めた. しかし粘液に浮遊する上皮は認めなかった. その後, 単純乳房切断術を行い組織学的にさらに検索したが, 生検標本とほぼ同様の所見で, 明らかな浸潤癌は認められず, Mucocele-liketumor (Rosen) と診断した. 乳腺の穿刺吸引細胞診で背景に豊富な粘液をみる場合には, 従来強調されていた粘液癌のほかにMucocele-liketumorの可能性も考えるべきである. Retrospectiveに細胞診材料を検討すると, 粘液の粘稠度が低く, 上皮細胞がきわめて少ない点で, 通常の粘液癌の所見と異なっており, 両者はある程度鑑別可能である. しかしながら, 最近の文献では, Mucocele-liketumorのカテゴリーの中にも, われわれの経験した症例と類似した良悪境界病変も報告されている. したがって細胞診上, Mucocele-liketumorが強く示唆される場合でも, 組織標本による十分な検索を省くことはできない.
  • その細胞像と免疫組織化学的検討
    神尾 多喜浩, 須古 修二, 吉田 慎一, 川村 房子, 一門 美江, 井東 さやか, 田上 圭二, 三角 幹夫
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1133-1138
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは骨化生が主体である化生性乳癌を経験したので, その捺印細胞診所見をのべるとともに, 免疫組織化学的検討により化生性乳癌の組織発生についても考察したので報告する.
    症例は65歳, 女性. 平成6年5月右乳房腫瘤に気づき, 当院外科受診. 悪性腫瘍が疑われ, 核出生検が施行された. 捺印細胞像では, 核の大小不同, クロマチンが細~粗顆粒状に増量した腫瘍細胞が集塊を形成し, その周囲には孤立散在性に腫瘍細胞が出現し, 多核巨細胞も多数認めた. 一部に骨基質と思われるものもみられた. 組織学的には, 腫瘍の大部分は細胞異型の著明な大型多角形ないし紡錘形の肉腫様細胞が充実性に増殖し, しばしば大小の骨基質を形成し, 両者間に移行を認めた. 骨基質内の細胞にも異型を認め, 骨肉腫への分化を示していた. しばしば肉腫様部分に破骨細胞様巨細胞 (以下, OGCと略する) を認めた. 腫瘍辺縁には少量の浸潤性および非浸潤性の通常型の乳癌を認め, 肉腫様部分との移行部に紡錘形細胞が介在していた. 免疫組織化学的には癌部はEMA, ケラチン陽性, 肉腫様部分はビメンチン, アクチン陽性で, OGCの一部がビメンチン陽性であった.
  • 森川 政夫, 山本 隆一, 黒川 彰夫, 橋本 和明, 辻 求, 清水 章
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1139-1143
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳頭分泌物の細胞診で, 悪性黒色腫と鑑別が困難であった乳房Paget病を経験した. 症例は59歳の女性で, 右乳頭の掻痒感と分泌物がみられ, 細胞診が施行された. 細胞像は大型の腫瘍細胞が出現, 核は不整, 著明な核小体を有し, クロマチンは増量, 細胞質は豊富で多稜形を示し, 細胞質内にメラニン顆粒がみられた. また異型性のないメラノサイトが混在していた. Paget病とpagetoid patternを示す悪性黒色腫との鑑別が問題となった.
    生検の組織像では表内に限局して, 異型性の強い大型腫瘍細胞が胞巣を形成して増生, その胞体内にはメラニン顆粒がみられ, 同部では異型性のないメラノサイトが混在していた. 免疫組織所見では, これらの腫瘍細胞はCEA, keratin, cytokeratinは陰性, S-100蛋白は弱陽性であったが, DOPA反応, 抗メラノーマ抗体HMB45が陰性を示した. 以上の結果より乳房Paget病と診断した. Paget病ではPaget細胞に混じって異型性のないメラノサイトを認めることがあるが, 悪性黒色腫でみられるような異型性の強いメラノサイトはみられない. 本例では異型性のないメラノサイトが腫瘍細胞に混じって多量にみられたことが悪性黒色腫との鑑別に有用であった.
  • 布山 繁美, 斉藤 裕紀, 諏訪 しのぶ, 鈴木 晃, 坂井 庸祐, 浦山 雅弘, 川口 清
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1144-1148
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    まれな乳腺腫瘍である乳腺間質肉腫の1例を報告する.
    患者は59歳の女性で, 右乳腺に7×5cmの大きさの皮膚に発赤をみる腫瘤が存在した. 臨床的には悪性が疑われた. 術前穿刺吸引細胞像は, 線維芽細胞様の紡錘形細胞からなる組織片が主体であり, 孤立性に出現している細胞は少数であった. 上皮性細胞の出現はみられなかった. 紡錘形細胞は異型に乏しく, 良・悪の判定を含めて確定診断はできなかった. 術中迅速組織診断によって悪性腫瘍との診断がつき乳房切断術が行われた. 組織学的には骨・類骨化生をみる高分化型の線維肉腫の像を示していた. なお, 摘出材料からの捺印細胞像は, 核の大小不同や核不整などの異型を示す多数の紡錘形細胞が孤立散在性に出現しており, 紡錘形細胞肉腫と推定できる所見であった.
    術前の穿刺吸引細胞像と捺印細胞像および組織像を対比させ本腫瘍の細胞診断上の問題点を考察する.
  • 腎オンコサイトーマと顆粒細胞型腎細胞癌
    植嶋 しのぶ, 植嶋 輝久, 山村 章次, 河村 秀樹, 佐々木 信之, 工藤 浩史, 吉田 春彦, 広川 満良
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1149-1155
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    オンコサイトーマ1例と顆粒細胞型腎細胞癌1例の細胞像を比較検討し, 報告する. 出現状態はオンコサイトーマの方が結合性がよく, シート状, 腺管状構造が目立つのに対し, 顆粒細胞型腎細胞癌では孤立散在性に, あるいは裸核状に出現する腫瘍細胞が多かった. 細胞質はオンコサイトーマでは緻密な顆粒状で, 細胞境界が明瞭であったのに対し, 顆粒細胞型腎細胞癌では顆粒がやや粗で, 細胞境界が不明瞭であり, ミトコンドリアの分布と密度の違いによるものと思われた. 細胞形態ではオンコサイトーマは多辺形, 立方形が主体で, 顆粒細胞型腎細胞癌では類円形細胞が主体であった. オンコサイトーマのN/C比は均一に低く, 顆粒細胞型腎細胞癌のN/C比は低いものからやや高いものまでさまざまであった.
  • 島田 智子, 小島 貴, 赤嶺 亮, 河野 純一, 森本 典江, 石井 美樹子, 田中 文彦
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1156-1159
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    睾丸の髄外形質細胞腫はきわめてまれな腫瘍である. 今回われわれは, 陰嚢内容液の穿刺細胞診にて形質細胞腫と診断し, 除睾術を施行した症例を経験したので報告する. 患者は83歳, 男性. 陰嚢内容液の穿刺細胞診では, 上皮性結合を示さず孤立散在性に認められる多数の腫瘍細胞が出現していた. 腫瘍細胞はN/C比が高く核は類円型で細胞質の一側に偏在していて大小不同が目立ち核クロマチンは核辺縁に片寄って増量し, いわゆる車軸状を呈しており, 形質細胞腫 (plasmacytorna) と考えられ, 組織学的にも形質細胞腫と診断された. 睾丸原発の形質細胞腫とするためには, 骨髄腫からの転移を否定する必要があるが, 本症例は全経過を通じて全身に骨病変を認めず, また術後M蛋白も消失していることより睾丸原発と考えられる.
  • 宮平 良満, 岩井 宗男, 大久保 貴子, 岡部 英俊, 菊池 浩
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1160-1164
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Epithelioid leiomyosarcoma (類上皮平滑筋肉腫) は比較的まれな腫瘍であるが, 今回われわれは小腸に原発し肝転移を伴った症例を経験したので報告する. 腫瘍はT-reitz靱帯より約5cm肛門側に位置し, 9×13×8cmの大きさで粘膜下腫瘍の形態を示していた. 細胞学的に腫瘍細胞は比較的豊富な細胞質をもち, 類円形の核を有する上皮様細胞で大部分が占められていた. 組織学的には, 紡錘形細胞を主とした部分もみられたが, 類円形~ 楕円形の中心性核をもった好酸性の細胞質を有する細胞が充実性に配列を示す部分が主体であった. しかし免疫組織染色ではVimentin, Actin, Myosinが陽性を示し, 上皮系のマーカーはすべて陰性であった。また電顕所見もfilament成分が少なく平滑筋細胞としての特徴に乏しかったものの, 平滑筋細胞由来を示唆する所見がわずかではあるが観察された. 本症例は細胞診断学的に平滑筋肉腫を推測することはきわめて困難であったが, 臨床的に平滑筋性の腫瘍を疑う症例では, たとえ細胞形態的に上皮性を思わせる所見であっても, 上皮様細胞主体の平滑筋肉腫が存在することを常に念頭において, 注意深く細胞を観察する必要があるものと思われる.
  • 小室 邦子, 佐藤 郁郎, 武田 鐵太郎, 小野寺 博義, 大沼 眞喜子, 村田 孝次, 田勢 亨, 立野 紘雄
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1165-1171
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肉腫か炎症性偽腫瘍かの鑑別診断が問題となった胆嚢病変2例について, ピットフォールに陥る原因となった細胞像の問題点を中心として検討した.
    症例は74歳・女性の黄色肉芽腫性胆嚢炎例と58歳・女性の悪性線維性組織球腫例. 両者はいずれも細胞診がなされ, 前者では核形不整な異型紡錘形細胞と類円形細胞が混在して観察されたことから肉腫を疑った. また, 後者では紡錘形細胞は低異型性で多形性に乏しく多数の炎症性細胞をまじえていたため, 黄色肉芽腫などの炎症性偽腫瘍との鑑別は容易ではなかった.
    両者とも異型紡錘形細胞がみられたが, 炎症性異型細胞と低多形性肉腫細胞の細胞像は酷似していて再鏡検によっても鑑別は困難であった.
    正診が得られなかった理由を考察すると, 前者では偽肉腫様変化を示す筋・線維芽細胞が多数出現したこと, 黄色肉芽腫性胆嚢炎に対する認識が十分でなかったことがあげられた. また, 後者では肉腫細胞自体の異型性・多形性が高度ではなかったこと, 炎症の場になりやすいという胆嚢の臓器特異性などがあげられた.
    これらの症例のごとく, 胆嚢の非上皮性病変では多くの未解決問題をかかえていて, 誤診を避け診断精度を向上させるためには, 多数例についてその細胞像をさらに詳細に観察する必要がある. また, 免疫細胞化学的検索を積極的に導入することが細胞診断の一助になるものと思われた.
  • 鈴木 文子, 森 裕二, 神津 悦子, 木村 文一, 高桑 俊文, 田所 衛, 吉元 真, 水口 國雄
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1172-1175
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Rhabdoid tumorは, 起源不明の悪性腫瘍で本来は小児の腎腫瘍として報告されたが, 軟部組織に発生することもある. 今回われわれは診断に苦慮した側胸部軟部組織発生の1例を経験したので報告する. 症例は45歳女性. 近医にて側胸部腫瘤を除去し, 摘出材料の捺印細胞診を依頼された. 細胞像からは, 第一に印環細胞癌の転移を考えた. しかし, 核縁肥厚に欠け比較的大型の核小体を有することなどから, 非上皮性悪性腫瘍も否定できないと思われた. 病理組織学的にはH-E所見, 免疫組織化学的検索, 電顕的検索などの結果, Malignant rhabdoid tumorの診断を得た.
  • 舩本 康申, 小林 省一, 河野 幸治, 岸田 不二夫, 三木 洋, 大森 正樹
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1176-1180
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節の穿刺細胞診で推定できたKi-1リンパ腫 (未分化大細胞型リンパ腫) の1例について報告する. 症例は43歳の男性で, 主訴は右頸部腫瘤の急速な増大である. 穿刺細胞診は大型の腫瘍細胞に多核細胞が混在し, 大細胞型 (免疫芽球型) 非ポジキンリンパ腫の所見に類似していた. 腫瘍細胞の核は類円形のものが多いが立体的にねじれたような不整形のもの, 環状 (ドーナツ状) のものもみられた. 特に環状形の核は特徴的でKi-1リンパ腫を疑う根拠となった. Reed-Sternberg細胞様の巨細胞も混在したが, クロマチン凝集がやや粗で核内が暗調な点や, 核小体が小型である点が定型的Reed-Sternberg細胞とは異なった. 細胞質は好塩基性で多くは不染空胞を持つが, 著しいものでは大型の空胞で満たされるものがあり本疾患に特有な所見と思われた. 一部の細胞では赤血球貧食像がみられた. 酸フォスファターゼ染色ではTリンパ腫細胞やReed-Sternberg細胞よりも強く組織球よりも弱い活性を示した. 免疫細胞化学的に, Ki-1, EMA, HLADR, IL-2-Rが細胞膜および細胞質に陽性でLCA, MT1, UCHL1が一部の細胞の細胞膜に陽性であった. 遺伝子解析では免疫グロブリン遺伝子とT細胞遺伝子の再構成によるモノクロナリティーは認めなかった. 以上は腫瘍細胞の由来を解明するうえで手掛かりとなる所見と思われた. 前記の特徴的細胞がみられれぼ本疾患を想定し免疫染色を施すことが正診につながるものと思われた.
  • 梅澤 聡, 南 敦子, 山内 一弘, 杉山 裕子, 平井 康夫, 都竹 正文, 荷見 勝彦
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1181-1185
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部の乳頭状扁平上皮癌 (papillary squamous cell carcinoma: PSCC) は非常にまれな子宮頸部悪性腫瘍である. 本疾患は名称が示すように, 子宮膣部から腫瘍の乳頭状の隆起を認め, 血管を含む問質を茎に扁平上皮系の腫瘍細胞が増殖する特徴的な形態を持っている. 本報告の症例では肉眼的, および, コルポスコープ上に著明な乳頭状の腫瘍増殖を観察できた. PSCCの典型例と思われる本症例の細胞学的, 組織学的所見は, 肉眼的所見をよく反映していた. 本症例の細胞像で特徴的な点は巨大な細胞集塊が散在し, その細胞集塊には血管を含む問質が存在することである. また, 血管を含む間質のみの出現も認めた. これらは乳頭状増殖病変の存在を示唆する重要な所見と考えられた. そのほかの細胞所見としては, 1) 著明な出血性背景中に深層型の小型の悪性細胞が集塊状あるいは, 散在性に多数出現した. 2) 核型は円から楕円形. 一部核不整を示し, 核縁肥厚は軽度であった. 3) クロマチンは細顆粒・細網状を呈した. 4) 核小体は不鮮明あるいは小型1~2個であった. 5) 角化型の悪性細胞も少数だが出現する一方, 悪性度の低い扁平上皮由来の細胞が集塊状あるいは散在性に認められた.
    組織学的には乳頭状増殖部分の細胞層は上皮内癌様の形態を示した. あきらかな浸潤部分は腫瘍基底部にあり, 組織型は扁平上皮癌であった. PSCCの浸潤の確定診断のためには襖状あるいは円錐切除診が必要であると考えられた.
  • Kanji Ryuko, Kentaro Takahashi, Ritsuto Fujiwaki, Tomoya Ozaki, Yumi N ...
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1186-1190
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    19歳の子宮内膜異型増殖症を経験した. 症例は全身倦怠感と過多月経を主訴に来院し, エンドサイト法による細胞診と子宮腔内全面掻爬組織診にて子宮内膜異型増殖症と診断された. 若年であることを考慮し, 妊孕性保存のため子宮温存し, medroxyprogesterone acetate (MPA) を600mg/dayにて加療した. 4週間後の組織診にて萎縮上皮と間質の脱落膜変化を認めるのみで, 異型細胞を認めず, MPAの効果ありと判定した. 現在まで24週間MPA継続投与し, 再発の兆候を認めず外来管理中である. 20歳以下の若年者における子宮体癌および子宮内膜異型増殖症はまれな病態で, 報告が最近散見されるにすぎない. 特に高齢者と違い妊孕性の温存および薬物療法の適否が問題となり, その管理に関して慎重さが要求される.
  • 森 悟子, 藤井 美穂, 伊東 英樹, 森 泰宏, 山本 裕之, 工藤 隆一
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1191-1195
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜粘液性腺癌 (mucinous adenocarcinoma) の細胞, 組織像について報告した. 症例は61歳で不正性器出血を主訴に某医を受診した. 肉眼的に多量の粘液を認め, 細胞像は, 粘液産生所見を反映して大小さまざまな細胞質内空胞を有する腫瘍細胞の小集塊を認めた. 組織学的には, 病巣の大部分は乳頭状構造を示し, 腫瘍細胞は大小不同が少なく, 核小体が明瞭な高分化型腺癌であるが, 一部には異型性の強い部分も認めた. また, しばしば腺管構造が腫大拡張し, 貯留した粘液内に腫瘍細胞集塊を認めた. ほとんどの細胞がPAS 染色およびアルシャンブルー染色で陽性であった. 臨床的に粘液産生著明であり, 内膜細胞診において前述した典型的な細胞質内空胞を認めた場合は, 粘液性腺癌と推定診断することが可能であると考える.
  • 捺印細胞像について
    菅 三知雄, 宮古 まろみ, 今 敦子, 桜庭 厚, 杉山 葉子, 大石 孝, 高野 敦, 黒滝 日出一
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1196-1199
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮体部の低分化型内膜肉腫とされる腫瘍例を経験したので, 特にその捺印細胞像について報告する. 症例は52歳の女性で5妊2産, 褐色帯下, 過多月経, 腰痛を主訴として受診した. 摘出子宮は児頭大に腫大, 体部内腔に変性壊死に陥った腫瘤が凝血とともに充填していた. 腫瘤は体内膜よりポリープ状に発育していたが, 頸部や右側傍組織にも及んで子宮体癌III期を示していた. 腫瘤の組織像では異型性の著しい細胞がびまん性密に増生, 多数の核分裂像や脈管侵襲像が認められた. 多核細胞の出現や問質に介在する類骨物質もみられた. 捺印細胞像では核の大小不同や多形性の著しい細胞が散在性に多数出現していた. 核膜は菲薄で核形は不整, 核クロマチンは増量して微細顆粒状に分布, 単個ないし数個の核小体を有し, 核分裂像が認められた。多核の細胞や大型奇怪な細胞もみられた. N/C比は概して大きく, 細胞質は淡染性で, 境界は不明瞭であった. 退形成の高度な非上皮性悪性腫瘍が推定され, 組織像を反映していた.
  • 早川 清一郎, 佐藤 信二, 高野 忠夫, 我妻 理重, 田野口 孝二, 岡本 聡, 矢嶋 聰, 並木 恒夫
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1200-1204
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    卵巣の問質肉腫は類内膜腫瘍に分類されるもので, 婦人科の悪性腫瘍の中でもきわめてまれな疾患である. 病理組織学的には子宮内膜間質肉腫に類似する腫瘍で, 卵巣子宮内膜症内の問質細胞から発生すると推定されている. 今回, Endometroid Stromal Sarcoma of the Ovaryと診断した1例を報告する. 症例は62歳の女性で, 下腹部腫瘤を主訴に受診し, 内診で右付属器は新生児頭大, 可動性は不良であり, 画像診断では大部分充実性で中心部に液性部を有する12cm×12cmの腫瘍を認めた. 手術時所見では少量の腹水を認め, 腫瘍はダグラス窩に強固に癒着し, 大網に転移を認めた. 術中腹水細胞診で結合性の乏しい, 細胞質の少ない紡錘形の異型細胞の集塊を認めた. 病理組織は, 軽度の核異型を有する類円形~ 長紡錘形の腫瘍細胞がシート状に増殖し, 鍍銀およびAzan-Mallory染色では細網線維が個々の腫瘍細胞にまとわりつくように増生していた. Mitosisは全視野を通じて2~3MF/10HPFで10MF/10HPF以下であり, low gradeと診断した. 免疫染色ではVimentin (+), Smoothmuscleactin (+), Desmin (+), S100 Protein (-) であった。術後補助療法としてCAP療法を3クール施行し, 術後29ヵ月経過したが再発を認めていない.
  • 森 篤, 土岐 利彦, 石井 恵子, 市川 哲朗, 藤井 信吾
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1205-1209
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな卵巣のSex cord tumor with annular tubules (SCTAT) の1例を経験した. 症例は49歳, 女性, 月経不順を主訴に来院. 左卵巣腫瘍の診断で開腹手術を行った. 本症例にはPeutz-Jeghers症候群にみられる臨床症状は認められなかった. 摘出された卵巣腫瘍の組織像は, 中心部の硝子体を取り囲むように腫瘍細胞が輪状に配列している単純輪状細管と, これらが集合した複雑輪状細管が特徴的であり, SCTATと診断された. 捺印細胞診では, 背景はきれいで, ライトグリーンに厚く染まる円形の硝子体様物質を取り囲むように輪状に配列した腫瘍細胞がみられ, 輪状細管に相当する像と思われた. 腫瘍細胞の核は円形から類円形で, 小型の核小体を1から数個認めた. N/C比はきわめて高く, 胞体はレース状で乏しかった. 細胞診断学上, このような輪状細管を思わせる硝子体様物質とそれを取り囲む腫瘍細胞の存在が, SCTATの組織診断の推定に重要な所見であると思われた.
  • アメリカのLung Projectにおける喀痰細胞診の方法と成績を中心に, 大阪の成績と比較して
    松田 実
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1210-1217
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1972年アメリカでは, National Cancer InstituteのCooperative Early Lung Cancer Groupにより, Manual of Proceduresが作成された. その目的は (1) 肺癌検診に喀痰細胞診を加えることにより肺癌発見率を改善させうるか,(2) 肺癌検診は肺癌死亡率を減少させうるか, であると記載されている.(2) については, わが国でも解説され, 議論されたが,(1) についてのそれは見当たらない. 著者はアメリカにおける喀痰細胞診の方法と成績を紹介し, このGroupによる成績を, 大阪肺癌集検研究班の成績と比較した. 肺癌発見率はアメリカで高いが, 切除率および1期肺癌の比率に差はなかった.(1) の目的を担当したSloanでは, 喀痰細胞診を加えることにより肺癌発見率はわずかに上昇しているが, Hopkinsでは差が認められていない. 切除率, 1期肺癌の比率は, 喀痰細胞診を加えることにより上昇するが, Sloanでは, 経年検診群でも1期肺癌がかなり発見されることから, 初回検診で1期肺癌が多数発見されたのは, length bias効果と信じると述べ, 喀痰細胞診は肺癌検診に利益をもたらすものではないと結論している.
  • 木村 雅友, 下戸 隆, 上杉 忠雄, 宇野 重利, 橋本 重夫
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1218-1219
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 中島 正光, 吉田 耕一郎, 二木 芳人, 広川 満良, 松島 敏春
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1220-1221
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 藤山 淳三, 上野 真由美, 河又 國士, 佐藤 之俊, 河端 美則
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1222-1223
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 松本 光司, 相田 昌子, 村瀬 幸宏, 佐藤 春明, 山田 宣孝
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1224-1225
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 土谷 弘志, 境 良司, 大森 康弘, 八塚 宏太, 自見 厚郎
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1226-1227
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 伊禮 功, 広川 満良, 川野 亮, 玉田 隆一郎, 保田 浩平
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1228-1229
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • その捺印細胞像
    呉 清芳, 豊田 充康, 小池 悦子, 清水 亨, 工藤 玄恵
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1230-1231
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 柳瀬 亜矢子, 長谷 一憲, 桑名 恭子, 桑岡 勲, 中西 和夫
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1232-1233
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
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  • 大原 信哉, 大倉 強, 荻田 達二, 吉野 正
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1234-1235
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
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  • 広川 満良, 有安 早苗, 鐵原 拓雄, 岩知道 伸久, 鞍津輪 優子
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1236-1237
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
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  • 内田 一豊, 山本 明美, 夏目 篤二, 前多 松喜, 半澤 儁
    1995 年 34 巻 6 号 p. 1238-1239
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
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