日本臨床細胞学会雑誌
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34 巻, 4 号
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  • 笹川 基, 石井 史郎, 塩田 吉一郎
    1995 年 34 巻 4 号 p. 599-602
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膣カンジダ症の診断における細胞診の診断能力に関する報告は少ない. われわれは腟カンジダ症の診断における子宮頸部細胞診の役割を明らかにするため臨床的解析を行い, 以下の結果が得られた.
    (1) 腟分泌物培養でカンジダ陽性の45症例を用い, 同時に行った子宮頸部細胞診によるカンジダ検出感度を解析した. 45例中23例 (51%) の細胞診で真菌陽性と診断されており, 真菌の存在を診断できなかった症例は22例 (49%) であった. 22例の標本を再検鏡してみると, 14例では真菌の仮性菌糸または分芽胞子が認められ, 真の陰性症例は8例であった.
    (2) 細胞診で真菌陽性と報告された17例で, 細胞診施行2週間後に腟分泌物培養を行い, その信頼性を検討した. 17例中16例 (94%) において培養でもカンジダ陽性の結果が得られた.
    細胞診による真菌検出感度は約50%と, それほど高くなかったが, 注意深い検鏡により約80%の症例で真菌の診断が可能であると思われた. 一方, 細胞診で真菌陽性と診断された場合の信頼性はきわめて高いことが判明した.
  • 北村 隆司, 光谷 俊幸, 伊藤 仁, 清野 重男, 土屋 眞一
    1995 年 34 巻 4 号 p. 603-607
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    正常乳腺および乳腺良性腫瘍の筋上皮細胞 (以下MECと略記) の形態学的特徴について検討した. 正常乳腺細胞の採取は乳癌にて手術された乳房を用いて, 癌とある程度の距離をおいた正常部分の大乳管および小葉に相当する末梢乳管を用いた. Papanicolaou (以下Pap. と略記) 染色, 写真撮影後, 脱色し, 酵素抗体法にてSmooth muscle actin (以下SMAと略記) 染色を施した後, 同一部位での各染色結果の比較検討を行った. 良性腫瘍は組織学的に診断が確定している線維腺腫と, 管内性乳頭腫の穿刺吸引細胞診を用いて同様な方法で比較検討した. 正常乳腺では, 大乳管にみられるMECはライトグリーンに好染し, 線維状の豊富な細胞質を有していた. 末梢乳管のMECは上皮細胞集団の辺縁あるいは内部にみられる細胞質不明瞭な紡錘形~卵円形核を呈する裸核状細胞として認識された. 線維腺腫のMECは紡錘形~卵円形核を有し, 濃染性核を示す裸核状MECと, 円形核でライトグリーンに淡染するレース状の細胞質を持つ裸核上皮様MECの末梢乳管のMECに類似した2種類がみられた. 管内性乳頭腫は裸核状を示す末梢乳管由来に類似したMECと, 線維状にライトグリーンに淡染あるいは濃染する明瞭な細胞質を有する大乳管由来のMECが認められた. 以上のことから, 乳腺のMECは正常乳腺および良性腫瘍において, 形態が異なる大乳管型と末梢乳管型の2種類が存在することが示唆され, 腫瘍の組織発生を考えるうえで興味ある知見がえられた.
  • 穿刺吸引細胞診における判定困難例を中心に
    加藤 拓, 高橋 久雄, 安藤 智子, 井田 喜博, 唐司 則之, 渡辺 義二, 佐藤 裕俊, 武田 敏
    1995 年 34 巻 4 号 p. 608-613
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺穿刺吸引細胞診を行い細胞量が豊富に採取されたが, 個々の細胞が小円形を示し, 良悪の鑑別が困難であった良性病変10例 (上皮増生の強い線維腺腫, 乳管過形成を伴う乳腺症, 乳管内乳頭腫), 悪性腫瘍20例 (非浸潤性乳管癌, 乳管内増殖優位な乳頭腺管癌および充実腺管癌) について, その細胞像を検討した.
    (1) 良性病変では背景に間質成分, 裸核状細胞 (線維芽細胞) をみることが多い. 個々の上皮細胞は結合性が強く, 散在性に乏しい. また核形不整に乏しく, 染色質は細顆粒状を示しやすかった.
    (2) 悪性腫瘍では背景に若干の塊死, 間質成分などはみるものの大部分は上皮細胞のみで個々の上皮細胞は良性病変に比べ, 結合性が弱く, 散在性に強く, 核形不整, 染色質粗顆粒状を示す傾向にあった.
    (3) 配列, 核大小不同, 核分裂については特に明らかな違いがみられなかった.
    乳管内増殖が強いこれらの病変の細胞像は小型で異型が乏しいが, 以上のように背景出現細胞, 上皮細胞の結合性, 核形, 染色質所見などを中心に詳細に検索することが大切であった.
  • 嚢胞内乳頭腫と嚢胞内乳頭癌を中心に
    横山 俊朗, 吉田 友子, 杉島 節夫, 古賀 稔啓, 一本杉 聡, 島 一郎, 鹿毛 政義, 神代 正道
    1995 年 34 巻 4 号 p. 614-620
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺の嚢胞内乳頭状腫瘍に由来する塗抹細胞像の良悪性の鑑別点を明らかにすることを目的に, 嚢胞内乳頭腫4例, 嚢胞内乳頭癌7例を対象に細胞計測を含む細胞学的検討を行った。
    嚢胞内乳頭腫と嚢胞内乳頭癌の細胞を細胞集塊および孤立散在性細胞について観察した結果, おのおの細胞学的特徴がみられた.
    要約すると嚢胞内乳頭腫では細胞核の長軸方向は一方向性で細胞集塊が形成されていた. 個々の細胞は豊富な細胞質を有し, 背景にはアポクリン化生様細胞の混在をみた.
    嚢胞内乳頭癌では細胞核が細胞集塊から飛び出す所見がみられた。孤立散在性に出現する嚢胞内乳頭腫においては, 細胞質は部分的に重厚感がみられ核は中心性であり一部に細胞質に空胞化がみられた. 嚢胞内乳頭癌においては裸核状細胞がみられた.
    嚢胞内の悪性細胞の核長径は平均9.2μmで良性細胞に比べ1.2倍と有意に大きかった. 核長径の変動係数は良性例25.2%, 悪性例は18.3%と良性例に核長径の大小不同性が高くみられた. 一方, 核面積は良性例33.0%, 悪性例34.5%と核長径ほどの大きな変動係数の差はみられなかった. 良性例の方が核長径の大小不同性は高く, 多彩になる傾向にあった.
    嚢胞内の遊離細胞の診断のうえで重要な点は, 弱拡大による細胞集塊構築の詳細な観察と孤在性にみられる細胞の総合的な判定が重要と思われた.
  • 石澤 貢, 佐藤 保男, 茂木 佐和子, 藤ノ木 淑子, 上杉 正好, 庄野 幸恵, 水口 國雄, 丹野 正隆, 山村 彰彦, 中村 恭二
    1995 年 34 巻 4 号 p. 621-627
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    嚢胞を伴う乳癌を細胞形態学的に検討した. 当院で最近6年間に手術された乳癌162例中6例 (3.7%) に癌病変に伴う径1cm以上の嚢胞を認めた. これら6症例のうち3例は嚢胞内腔に隆起する癌病変があり嚢胞内乳癌に相当する病変で, 組織型はすべて乳頭腺管癌であった. 2例では嚢胞内腔に隆起する病変がなく, 癌は壁の一部に存在し, 組織型は充実腺管癌と非浸潤性乳管癌であった. 以上5例は嚢胞液の細胞診を行い4例に陽性, 1例に境界域の異型細胞を認めた. 残りの1例は腫瘍内部の壊死により嚢胞化した症例で組織型は扁平上皮癌であった. この症例は皮膚に浸潤しており皮膚潰瘍部の擦過細胞診で悪性細胞を認めた. 以上6例の乳癌は術前細胞診で全例異型細胞が認められ, 細胞像は組織所見をよく反映した. 中でも嚢胞壁に癌が存在しながら嚢胞内に隆起する病変がなく臨床的に癌巣を認識できない例では細胞診が特に有意義と考えられた. このような症例は嚢胞内乳癌の前段階である可能性が推測された.
  • 佐藤 之俊, 池永 素子, 都竹 正文, 原島 三郎, 坂本 穆彦
    1995 年 34 巻 4 号 p. 628-633
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳癌肺転移に対し肺切除を施行し, 切除標本の病理組織学的検索により乳癌の肺転移と診断された42例の細胞像について, 原発性肺癌の細胞像との比較を中心に検討を加えた. 肺転移巣の細胞は, 主として小型の腫瘍細胞からなる小型細胞型small cell type (SCT) と, 大型の細胞が出現する大型細胞型large cell type (LCT) の2種類に分けられた. SCTは, 小型の細胞が乳頭状あるいはボール状の緻密な重積性の強い細胞集塊を形成するもので, 直径は好中球の2倍以下で, 核は円形を呈し核縁は平滑で核クロマチンは微細顆粒状であった. これらの細胞所見は主として乳頭腺管癌, 充実腺管癌の転移で認められた. これに対しLCTは, 大型の細胞が腺管状あるいは不規則な小集塊状に出現するもので, 細胞の重積性は強いが, 結合性はやや弱い. 細胞の大きさは直径が好中球の2倍以上を示し, 核クロマチンは微細顆粒状で, 核縁に乳頭状突起 (papillary process) を認める例がある. これらの所見は主に充実腺管癌, 硬癌の転移で認められた. これに対し, 原発性肺癌の細胞は乳癌細胞に比較して細胞異型と核の多形性が全般的に高度であり, また乳頭状突起は認めなかった.
    以上のような所見より, 細胞診による乳癌肺転移の診断は, 細胞の核所見や細胞集塊の構造の特徴から十分可能であり, 本疾患の診断上細胞診はきわめて有用であると考えられた.
  • 畠 榮, 大杉 典子, 鐵原 拓雄, 坂東 美奈子, 山口 昌江, 三宅 康之, 清水 道生, 広川 満良
    1995 年 34 巻 4 号 p. 634-639
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    8例の副腎褐色細胞腫と6例の傍神経節腫の塗抹細胞所見を検討したので報告する. 細胞学的特徴としては, 1) 腫瘍細胞の多くは散在性に出現し, 一部で上皮様集塊も認められた. 2) 核は円形から楕円形で, 巨大核, 多核, 核内細胞質封入体などが認められた. 3) 細胞は円形から多辺形を呈し一部で紡錘形の細胞も混在した. 4) May-Grüwald-Giemsa染色では好酸性や好塩基性の顆粒状物質を認めた. 5) 核・細胞質比が小さく, 細胞質は豊富で, ライトグリーン好性, 細顆粒状を呈していた. 6) 硝子滴, 毛細血管の内皮細胞などが認められた. 7) ヘモジデリン顆粒やメラニン顆粒様の物質, 嚢胞変性例ではコレステリン結晶が認められた.
    転移が認められた3例では, 腫瘍細胞は小型で, 結合性が乏しく, 単個で出現した. 一部紡錘形を呈する腫瘍細胞もみられた. 核・細胞質比はやや高く, 多くは単個で出現し, 多核巨細胞や, 巨大核などは認められなかった.
  • 辻 隆広, 飯尾 一登, 牛垣 由美子, 竹内 美穂, 児玉 明子, 家村 和千代, 田中 貞夫, 永田 行博
    1995 年 34 巻 4 号 p. 640-645
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    単純子宮全摘出術の4年後に腟断端に再発した子宮頸部悪性腺腫 (adenoma malignum) を報告する. 症例は41歳, 1回経妊1回経産婦で, 腟断端腫瘤の生検標本に腺癌が認められたため, 当科へ紹介され受診した. 初診時, 腟断端左側に数個の小豆大腫瘤を認め転移性腺癌を疑い, CTによる全身検索を施行したが, 原発巣と考えられる腫瘍は他に認められなかった. 4年前の摘出子宮標本を再鏡検したところ, 一部の頸管腺は既存の頸管腺領域を越えて小嚢胞を形成しており, その組織像は腟断端腫瘤の生検組織像ときわめて類似するものであった. 免疫組織化学的検索では, 腫瘍細胞の腺腔側の細胞膜上にCEA陽性所見が認められ, 4年前の子宮頸部標本をadenoma malignumと診断した.
  • 松井 成明, 古嶋 英代, 佐藤 育男, 松岡 規男, 滝本 雅文, 塩川 章
    1995 年 34 巻 4 号 p. 646-650
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部悪性腺腫 (adenoma malignum) の光顕像・組織立体構築像・核DNA量について報告した. 症例は68歳, 経産婦. 子宮頸部擦過標本に, 類円形核で著明な核小体を持ち, クロマチンが細顆粒状~ 細網状に増量した高円柱状腫瘍細胞がシート状・腺房状・柵状配列を呈して出現していた. 組織学的には粘液産生の著しい頸管円柱上皮型腫瘍細胞の増殖がみられ, 腺腔への乳頭状増殖と腺管の不規則な突出が下床基質の深部までみられた. 腫瘍腺管の組織立体構築の結果, 著明な腺管の拡張・不規則な分岐・外方突出像を認め, これらが細胞診所見上, シート状・腺房状集団として観察されたことが示唆された. 正常頸管腺と腫瘍腺管との立体構築像の比較検討から, 細胞診における腺房状集団の出現の有無は上皮内腺癌と微小浸潤腺癌の鑑別にも役立つものと思われた. DNA定量では2.2Cにピークをもつdiploidy patternを呈した.
  • 本邦第1例報告
    中村 恵美子, 滝沢 雅美, 清水 敏夫, 塚田 浩教, 西沢 由理, 川口 研二, 木村 薫
    1995 年 34 巻 4 号 p. 651-656
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部adenoid basal carcinoma (ABC) は, 1966年にBaggish, Woodruffによって, basal cell variantの扁平上皮癌として初めて記載された. 本疾患は細胞異型の弱いbasaloid cellが小型の充実性細胞巣を形成し, 部位によっては扁平上皮や腺上皮様分化やadenoid cystic carcinoma (ACC) 様構造を示す浸潤性病変である. 浸潤部の間質反応は乏しく, 脈管侵襲やリンパ節, および遠隔転移はまれであり, 予後は一般に良好である. また高率に扁平上皮内癌 (CIS) を合併する. これまでに英文で20例あまりの報告があるが, われわれが調べた限りでは, 本邦での報告は認め得ない. 今回, われわれは癌検診で発見されたCISを伴う60歳のABC例を経験した. 細胞診では, N/C比大でクロマチン増量の著明な小型の類円形ないし紡錘形細胞からなる重積性の細胞集塊がみられ, 一部に腺腔様構造もみられた. 細胞像からは, 腺異形成, 腺癌, 小細胞非角化型扁平上皮癌および腺様嚢胞癌が考えられた. 組織学的には皮膚の基底細胞癌 (BCC) に類似していた. 免疫組織化学的にも, CAM5.2が陽性であったが, epithelial membrane antigen (EMA), S-100蛋白, CEAはいずれも陰性であり, BCCと類似の所見を示した. また局所での浸潤が主体で, 転移はほとんどみられない点も皮膚のBCCと共通していた. これらのことによりABCとBCCは腫瘍発生のうえで類似性の高い腫瘍と考えられた.
  • 塩谷 雅英, 星野 達二, 小野 吉行, 池内 正憲, 高島 英世, 田中 敏憲, 白根 博文, 内田 博也
    1995 年 34 巻 4 号 p. 657-662
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮体部明細胞腺癌はまれで, その頻度は全子宮体癌の4%前後と報告されている. 当院では, 過去15年間で234例の子宮体癌の治療にあたり, その1.7% にあたる4例の子宮体部明細胞腺癌の症例を経験した. これらの臨床進行期別内訳はIb期3例, II期1例であった. 今回, この4例について細胞病理学的所見を中心に検討したので報告する. 組織学的にはSilverbergとKurmanの分類にしたがうと, solid patternが4例中3例に, tubular patternが4例全例に, papillary patternが4例中1例に観察され, 4例ともmixed typeであった. PAS染色は全例陽性であった. 組織診でsolid patternが観察された3例の内膜細胞診では, 出血性背景の中にシート状に配列した豊富な細胞質を持つ腫瘍細胞が観察され, 子宮体部明細胞腺癌の推定診断が可能であった. 組織診でtubular patternが観察された1例の内膜細胞診では, マリモ状の集塊が観察された. また腺腔側への偏在核を有するhobnail cell様腫瘍細胞がやつがしら状に配列した集塊が観察された. これらの所見から, 組織学的にsolid patternを呈する明細胞腺癌では豊富な細胞質を持つ腫瘍細胞がシート状に観察され, その細胞診による推定診断は比較的容易であると考えられた. また,“マリモ状の集塊” や “やつがしら状の集塊” も診断の一助になると考えられた.
  • 森下 嘉一郎, 皆川 幸久, 紀川 純三, 寺川 直樹
    1995 年 34 巻 4 号 p. 663-665
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    58歳女性にみられた子宮体部悪性中胚葉性混合腫瘍 (MMMT) の1例を報告する. 術前細胞診では肉腫成分と考えられる非上皮性悪性細胞と, 内膜型腺癌由来と考えられる腺型悪性細胞が混在して認められ, 内膜組織診による診断に先行して, MMMTの推定診断が可能であった. 組織学的には高分化型内膜型腺癌と異所性成分として横紋筋肉腫を有するMMMTであった. 2度にわたる拡大手術と強力な化学療法を施行したが, 初回手術から42カ月の経過で死亡した.
  • 五十嵐 裕一, 児玉 省二, 吉谷 徳夫, 田中 憲一, 永井 絵津子, 江村 巌, 渡辺 徹, 須貝 美佳
    1995 年 34 巻 4 号 p. 666-669
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮がん集団検診の頸部細胞診が端緒となって発見された卵管上皮内癌の1例を経験したので報告する. その細胞診像は, きれいな背景の中に, 大型で厚みのある重積性腫瘍細胞集塊としてみられ, 核は大型類円形で, 大小不同, N/C比の増大, 配列の乱れを示し, 細顆粒状クロマチンの密な分布と肥大した核小体を伴っていたことから, 腺細胞系由来の悪性細胞でクラスVと診断した. 子宮腔内細胞診および腹腔洗浄液細胞診でも同様な悪性細胞が出現した. 摘出左卵管は, 肉眼的に病変は明らかでなかったが, 組織学的に卵管上皮細胞の多層化と乳頭状増殖, 核異型, 核分裂像を呈する間質浸潤のない上皮内腺癌を認めた. 手術後, 化学療法を3コース施行し, 2年10カ月経過後も再発徴候を認めていない.
    本疾患はきわめてまれで, 術前に正しく診断することは困難とされる. 子宮頸部あるいは子宮体部の細胞診で腺癌細胞が出現し, 組織診で悪性病変が明らかでないかきわめて少量の場合には, 本疾患を疑うことが必要である.
  • 宇井 万津男, 小澤 聖史, 飯塚 真理, 菅原 恒一, 伊吹 令人, 城下 尚, 倉林 良幸, 木村 茂
    1995 年 34 巻 4 号 p. 670-674
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣癌IV期の62歳の女性で癌性髄膜炎を併発した一症例を報告する. 腹水細胞診およびCTにて平成4年9月に卵巣癌と診断され, 11月に1回目の開腹術を施行するも腫瘍摘除不能で, 3クールの化学療法の後, 平成5年2月に2回目の開腹術を行い腫瘍をほぼ全摘した.
    原発性卵巣腫瘍で組織型は漿液性嚢胞腺癌でリンパ節転移は認められなかった. その後2クールの化学療法を施行し4月に退院したが, 直後より脳神経症状が出現して再入院し頭部精査を行った. CT, MRIでは多発性脳梗塞を思わせる所見が認められたが, 髄液細胞診にて癌性髄膜炎が示唆されてまもなく全身状態悪化し, 平成5年5月永眠された.
    化学療法の進歩による卵巣癌の生存期間の延長に伴いその中枢神経系への転移は増加している. その早期発見のためには画像診断だけでは不十分で髄液細胞診は有効な一助となり得る.
  • 徳永 英博, 鶴田 潤二, 大河原 進, 杉内 博幸, 工藤 信次, 中川 雄伸, 竹屋 元裕, 石丸 靖二
    1995 年 34 巻 4 号 p. 675-679
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    13歳の女性の胸腺原発の悪性リンパ腫の胸水中に, リンパ腫細胞を胞体内に保有する大型細胞が多数観察された. 通常の喰食現象と異なり, 胞体内のほとんどのリンパ腫細胞には核の崩壊像, cell debrisは認められず, 核分裂像が散見されることからviableであると考えられ, いわゆるemperipolesisに相当する所見と考えた. 細胞表面マーカーの検討と免疫染色の結果, 大型宿主細胞はマクロファージのマーカーが陽性であり, リンパ腫細胞はT細胞性リンパ芽球性であった. Emperipolesisの意義については明確ではないが, 悪性リンパ腫の体液中に著明なemperipolesisが観察された報告はきわめてまれであり, 今後の参考になると考えた.
  • 畠山 重春, 川名 展弘, 黒田 清一, 大久保 修二, 近藤 近江, 渡辺 宏志, 土屋 真一, 三浦 妙太
    1995 年 34 巻 4 号 p. 680-686
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    71歳女性の右BD領域に発生した原発性印環細胞癌の細胞像を中心に, 組織像, 粘液染色, および免疫組織化学染色所見を報告した. 腫瘤の大きさは19.0×13.0cm, 周囲組織との境界不明瞭であった. 腫瘍組織の95%以上に印環細胞型腫瘍細胞のびまん性増殖像がみられ, 一部に乳管由来を示唆する乳管内侵展巣を確認したこと, 消化管などの検査によって異常を認めなかったことから乳腺原発の印環細胞癌と診断した. 穿刺吸引細胞診では粘液様物質のない背景に胞体辺縁明瞭な腫瘍細胞が主に孤立散在性に多数出現していた. Pap. 染色で泡沫状細胞質の中央部は榿黄色調を呈した. 類円-一部不整形を示す核は偏在性に位置し, 増量した粗顆粒状クロマチンは均等分布を示した. 核小体は1個がほとんどだが数個有するものもみられ, いずれも明庭帯によって境されていた. PAS染色では細胞質全体が強陽性の粘液細胞型を示した. 粘液染色ではSialomucinが主体だがSulfomucinの混在が証明され, 免疫組織化学染色でGCDFP-15が陽性であった.
  • 副甲状腺穿刺吸引細胞診におけるpitfall
    望月 衛, 吉田 京子, 蛭田 道子, 森 菊夫, 永久保 守, 九里 孝雄, 高橋 優, 若狭 治毅
    1995 年 34 巻 4 号 p. 687-691
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    副甲状腺腺腫と甲状腺乳頭癌を合併した46歳の女性症例を報告する. 右頸部腫瘤を主訴として来院, 副甲状腺機能性腺腫の臨床診断にて腫瘤の穿刺吸引細胞診が行われた. 穿刺液による細胞診標本には重積性と乳頭状配列を示す細胞集塊が出現し, 核の大小不同, 核内空胞, 核溝など甲状腺乳頭癌の所見を示す細胞を認めた. 副甲状腺腺腫と甲状腺乳頭癌の合併を疑い, 術中迅速診断が計画された. 術中所見では, 腫瘤は右甲状腺上極背側に位置し, 甲状腺との境界は明瞭であった. 腫瘤近傍の甲状腺には癩痕形成が認められた. 腫瘤組織の術中捺印細胞診では, 同大の円形核と顆粒状の細胞質を有する小型細胞が平面的な細胞集塊を形成していた. 迅速組織診では, 腫瘍組織は大小の濾胞構造より成り, 副甲状腺腺腫の組織像であった. 以上の術中迅速診断結果より, 術前に採取された穿刺吸引細胞は, 副甲状腺腺腫近傍の微小甲状腺乳頭癌から採られたものであると判断し, 甲状腺右葉が追加切除された. 摘出甲状腺上極には直径5mm大までの乳頭癌の小病巣が3ヵ所認められた. 副甲状腺腺腫の穿刺吸引細胞診では, 甲状腺乳頭癌 (non-medullary carcinoma) の合併が診断上のpitfallになると考えられた.
  • 星田 義彦, 原留 成和, 山下 展弘, 村上 一郎, 宮宅 健司, 宮谷 克也, 吉野 正
    1995 年 34 巻 4 号 p. 692-697
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    われわれは, 甲状舌骨嚢胞からの穿刺吸引細胞診によって術前に癌化を診断しえた甲状舌管癌の1例を経験したので報告する. 症例は67歳の女性. 2年前より, のどぼとけのような前頸部の小腫瘤に気付いていたが放置していた. 数ヵ月前より, 急に腫瘤が増大したため, 当院外科を受診し入院となる. 甲状舌骨嚢胞と考えられたが, 嚢胞内の穿刺吸引細胞診を施行したところ一部で核内細胞質封入体を認める乳頭状癌の像を呈した. 甲状舌管癌の診断のもと腫瘍摘出, 所属リンパ節廓清を行った. 摘出腫瘤は直径6cm大で弾性硬, 表面平滑. 割面では嚢胞状部と嚢胞内腔に乳頭状に突出する充実性の腫瘤形成がみられ, 組織学的にも乳頭癌であった. 甲状舌骨嚢胞の癌化の頻度は長嶺らによると1.61%であり, 本邦での報告例は自験例を含めて26例と比較的まれである. 甲状舌骨嚢胞の癌化を腫瘍摘出前に知ることは重要なことであるが, 画像診断のみから良悪性を判定することは難しい. したがって, 甲状舌骨嚢胞の摘出の術前に侵襲の少ない嚢胞穿刺細胞診を行うことは有用であると考える.
  • 穿刺吸引細胞像の検討
    北爪 弘美, 中谷 行雄, 北村 和久, 菊地 美保, 北村 均, 稲山 嘉明, 古川 政樹, 佃 守
    1995 年 34 巻 4 号 p. 698-703
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    唾液腺原発の真性悪性混合腫瘍 (癌肉腫) はきわめてまれな高悪性度の腫瘍である. 今回われわれは右耳下腺の良性多形性腺腫からの発生が疑われた本腫瘍の穿刺吸引細胞診の1症例を経験したので報告する.
    症例は60歳男性. 右耳下部腫張を主訴に当院受診. CT, MRIなどにより多形性腺腫を疑ったが良悪の判定がつかず, 外来にて穿刺吸引細胞診 (FNAC) を施行. 未分化癌の疑いにて摘出術を行った.
    FNAC細胞所見では, 粗穎粒状のクロマチンおよび1-数個の明瞭な核小体を伴う大型核とライトグリーン好性の胞体を有する卵円形-紡錘形の未分化な上皮細胞が散在性および集合性に出現. また核腫大, クロマチン増量, 核小体腫大のみられる少数の軟骨細胞が軟骨基質様物質とともに認められた. これらに混在して異型に乏しい破骨細胞様多核巨細胞も多数みられた.
    摘出標本の組織所見では, 高度の異型性を呈する多角形-紡錘状腫瘍細胞がシート状に増殖する未分化癌部分と軟骨肉腫部分が混在し, 多数の非腫瘍性破骨細胞様巨細胞もみられた. 一部に良性多形性腺腫の残存を認めた.
    本症例は細胞診上, 軟骨肉腫成分がきわめて少量のために確定診断が困難であった. 唾液腺悪性腫瘍の診断にあったては上皮性, 非上皮性腫瘍とともにまれながら両者が混在する本腫瘍の可能性も念頭に置く必要があると考えられた. 文献的考察を加えて報告する.
  • 特に術中迅速材料に対する捺印標本および電顕標本の所見について
    植松 邦夫, 山本 格士, 平良 信弘, 鳥居 良貴, 岡村 義弘, 糸山 雅子, 久住 利香
    1995 年 34 巻 4 号 p. 704-711
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    51歳女子の膀胱粘膜と左腎腎盂粘膜に発生したマラコプラキア (Mp) の1例で, この組合わせは文献的にかなり珍しいと考えられる. 膀胱と腎盂のMpは病理組織学的にほとんど差異はなく, このうち腎盂のMpについて, 捺印細胞診と電顕観察を行うことができた. 尿の細胞診では2回ともMichaelis-Gutmannbody (M-G小体) を含む細胞を見出し得なかった. 捺印細胞診では1~2個のM-G小体を含む組織球が多数観察され, M-G小体は直径3.5~7.0μmのふくろうの眼あるいは標的状の同心円状層構造を示し, この他に細胞質内に二重構造を示さない2μm以下の小体も存在した. 組織学的にMp内組織球の細胞質にα1-antichymotrypsin抗体による酵素抗体法染色で陽性顆粒が充満し, いずれもphagolysosome (Pl) と考えられ, またM-G小体もコア, 外殻ともに陽性像を示した. 電顕的にいくっかのM-G小体を観察したが, 電子密度の高く, 針状結晶を含むコア部分とその周辺の電子密度の低い外殻部分を認めた. 他に多数のP1がみられ, 2種類のものが区別された. M-G小体内にはPlにみられた指紋様層状構造が含まれ, Plの融合によって生じたことが示唆された.
  • 小池 昇, 小岩井 英三, 沢辺 元司, 田久保 海誉
    1995 年 34 巻 4 号 p. 712-715
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    自然尿細胞診でHPV感染性変化と思われる細胞所見を認めた5症例を経験した.
    5例は全例男性で, 年齢は73歳から84歳 (平均79.4歳). 患者の主要疾患はそれぞれ膀胱腫瘍, イレウス, 肝硬変, 前立腺肥大, 胃癌術後であり, いずれも外生殖器にはコンジローマなどの該当病変を認めていない。
    細胞像は扁平上皮細胞におけるkoilocyte, dyskeratocyte, 2核ないし多核化などで, 軽度から高度の核異型を伴ってみられた. 免疫細胞化学的に検索できた2例のうち1例にHPV陽性所見を得た.
    5例中1例は剖検により, 他の1例は生検と尿管カテーテル尿細胞診などにより検索されたが, 腎盂, 尿管, 膀胱に該当病変を認めなかった. また他の1例では上記細胞所見に加えトリコモナスもみられたことから, これらHPV感染性変化は尿道に由来すると判断された.
    また高度核異型を伴う症例は悪性細胞と誤認されており, 鑑別診断上注意が必要と思われた。
  • 平沢 浩, 須藤 健助, 伊藤 裕子, 舟橋 正範, 黒田 誠, 溝口 良順, 笠原 正男
    1995 年 34 巻 4 号 p. 716-721
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    脊索腫は主に高齢者に発生し, その多くは脳底部斜台, 仙骨部に好発する. われわれは, 斜台と頸椎に発生した脊索腫の2例を経験したので細胞所見, 組織所見を中心に報告する.
    2例とも背景所見は粘液様を呈した. 斜台に発生した症例は小型多稜形の細胞が主体で, 頸椎に発生した症例では, 上皮様の結合性を有する大型の細胞で, 胞体内に大小の空胞を有し, 巨細胞や高頻度に核内細胞質封入体を認め, 両者は異なる細胞像を呈した. 組織学的には小型の星芒細胞, 大型の担空胞細胞, 両者の移行型細胞により構成されるが, 組織型, 変性の程度により脊索腫の細胞像は著しく異なることに留意すべきと思われた.
    脊索腫と鑑別が問題とされる軟骨肉腫との比較では, 背景所見はきわめて類似していたが, 脊索腫は上皮様の結合性を有する点が鑑別上重要と思われた.
  • 古田 則行, 都竹 正文, 星 利良, 南 敦子, 古田 玲子, 山内 一弘, 川口 智義, 坂本 穆彦
    1995 年 34 巻 4 号 p. 722-727
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    60歳, 女性の腋窩部に発生した類上皮血管内皮腫の1例を経験し, その細胞像について鑑別診断を中心に検討した.
    腫瘍細胞は主に乳頭状ないし平面状の上皮様細胞結合を示す集塊として出現していた. その細胞質には病理組織学的に特徴とされている大小の細胞質内空胞がみられた他に, 核には溝や, 核内細胞質封入像様の構造がみられた. 鑑別すべき腫瘍に上皮様細胞結合を示す腫瘍, 核溝や核内細胞質封入像様の構造がみられる腫瘍, 細胞質に空胞様の構造がみられる腫瘍があげられるが, 核, 細胞質双方に所見を合わせもっている腫瘍は少なく, 腫瘍の出現様式, 核所見, 細胞質所見を合わせて検討することで, 本腫瘍を推定診断することが可能ではないかと思われた.
  • 杉森 甫, 垣花 昌彦
    1995 年 34 巻 4 号 p. 728
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 福田 耕一, 中村 聡, 岩井 京子, 松尾 憲人, 岩坂 剛, 杉森 甫, 次富 久之, 山崎 文朗, 武藤 文博, 原 浩一
    1995 年 34 巻 4 号 p. 729-736
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部腺癌における寛解導入化学療法の臨床的効果と細胞変化について検討した. 対象は当科にて寛解導入化学療法MEP (MMC, Etoposide, Cisplatin) を施行した14症例である. 化学療法後の臨床奏効度と細胞組織学的効果の関連を検討した. 化学療法による腺癌細胞の変化は, まず背景は炎症性だが比較的きれい, 細胞配列はシート状, 細胞質は菲薄化, 空胞化あるいは泡沫状に変化, また多染性がみられた. 核の変化は腫大, 多核, 核小体一部腫大, そしてクロマチン・パターンは微細穎粒状で均一に分布していた. このような細胞変化を認めた場合は化学療法の効果があることが示唆された. ただし, 間質浸潤が深いにもかかわらず表層に病変がないものや表層が壊死に陥っているものでは細胞診と組織診の不一致がみられた. また粘液産生腺癌細胞は細胞質の変性のみで核異型は保持されていることがあった. この場合腺構造はなかなか崩壊せず, また細胞配列が孤立散在性になっても異型細胞が残存する傾向にあった. 寛解導入化学療法の臨床奏効度はCR2例, PR4例, NC7例で奏効率は6/13=46.2%で, 臨床奏効度と細胞組織学的効果はほぼparallelであった. 化学療法における腺癌細胞の変化は放射線療法と比較し, ダイナミックな変化はないが, それが薬剤投与量の問題なのか, 腺癌の生物学的特性によるものか今後の検討が待たれる.
  • 井筒 俊彦, 西谷 巖
    1995 年 34 巻 4 号 p. 737-742
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌における放射線療法, 抗癌剤動注療法の効果判定ならびに予後の推定を目的として画像解析装置を用いて治療前後における癌細胞の解析を行った.
    1. 子宮頸癌放射線療法施行例では, 線量の増加に伴いTotal nuclear extinction (TE), 5Nexceeding rate (5NER), Nucleararea (NA) は増加した.
    2. good response casesでは, 照射に伴い著明な5NER, NAの増加がみられその後smear中の癌細胞は消失した.
    3. poor response casesでは, 照射線量の増加にもかかわらずTE, 5NER, NAの増加は著明ではなかった.
    4. 子宮頸癌放射線療法施行症例のうち予後良好例の5NERは, 予後不良例のそれに比し有意に高値であった.
    5. 子宮頸癌CDDP動注症例においては, 腫瘍縮小が著明な症例ほど5NER, NAの増加が著明であった.
  • 関口 勲, 鈴木 光明, 佐藤 郁夫, 村田 道里, 土田 修一
    1995 年 34 巻 4 号 p. 743-750
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    シスプラチンが5種のヒト卵巣癌細胞株の形態に及ぼす所見につき基礎的に検討した. シスプラチンによる癌細胞の死はapoptosisとnecrosisの両パターンを示し, シスプラチン接触初期にはapoptosis細胞が, また, その出現に遅れてnecrosis細胞の出現する傾向のあることが判明した. さらにシスプラチンに対する感受性とapoptosis細胞の出現しやすさは相関する傾向が認められた. apoptosisおよびnecrosisの細胞所見での鑑別は可能であり, 細胞診断の臨床応用への可能性が示唆された
  • 平井 康夫, 清水 敬生, 梅沢 聡, 山脇 孝晴, 藤本 郁野, 山内 一弘, 池永 素子, 南 敦子, 都竹 正文, 荷見 勝彦
    1995 年 34 巻 4 号 p. 751-756
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    皮下に留置されたリザーバーを用いて, 腹腔内洗浄細胞診を繰り返し施行し, この化学療法効果判定手段としての有用性を検討した.
    1. リザーバーを利用した腹腔内洗浄細胞診は, 容易に何回でも連続して施行でき, 腹腔内細胞像の経時的変化の観察が可能である.
    2. リザーバーによる洗浄細胞診と開腹時の細胞診の結果はすべて一致し, 両者の信頼度は同等と考えられた。
    3. 開腹所見から判定したリザーバーからの細胞診陽性所見の特異度は100%, 腹腔内悪性病変の検出感度は62.5%であった. 細胞診が化療により陰性化したとき, 治療効果判定手段としての特異度は86%と良好であった. 逆に細胞診が陽性化しても画像診断, 腫瘍マーカーは陰性のままであることが多く, この細胞診は腹腔内再発病巣の早期発見手段としても有用である.
    4. 腹腔内化療後にみられる悪性細胞の変性所見は, 化療有効例でも無効例でもみられ, 腫瘍の化療に対する感受性を必ずしも反映しない.
    5. リザーバーからの制癌剤や免疫療法剤 (Sizofiran/Lentinan) 投与は, 腹腔内の細胞像の変化をもたらし, 診断の際に考慮する必要がある.
  • 馬場 紀行, 川端 英孝, 幕内 雅敏, 内田 悦子, 佐々木 次郎, 副島 和彦, 森 正也
    1995 年 34 巻 4 号 p. 757-765
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    15例の進行乳癌および4例の術後再発乳癌に対して, 集学的治療 (化学療法, 内分泌療法, 放射線照射) を施行し, 臨床的効果と細胞形態学的に認められた変性所見とについて検討した. 有効率は16例/19例 (84.2%) であり, 特に初治療症例13例のうち12例 (92.3%) にPR以上の腫瘤縮小効果をえた. 治療前, 治療後にえられた細胞診標本を比較検討したところ, 変性所見は細胞核に最も顕著に認められ, クロマチン濃度や分布の変化 (18例), 核の腫大 (14例), 核小体の不明瞭化 (11例) が高頻度に出現していた. 空胞化や細胞質の変化はこれまでの報告と較べると低率であった. 腺癌が主体である乳癌は, 扁平上皮癌とは抗腫瘍治療に対する反応性が異なると考えられた. 放射線照射を施行した症例においては, 施行しなかった症例よりも変性所見が高頻度に認められた. しかし臨床的効果と細胞形態学的変性所見とは必ずしも一致せず, 今後の検討が必要と思われた.
  • 広岡 保明, 浜副 隆一, 塩田 摂成, 大谷 真二, 小林 誠人, 貝原 信明
    1995 年 34 巻 4 号 p. 766-772
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診を用いて乳癌および転移性肝癌の治療効果判定を試み, その有用性を検討した。
    動注化学療法あるいは局所温熱療法併用下に動注化学療法が施行された乳癌3例, 転移性肝癌14例 (大腸癌: 10例, 胃癌: 4例) を対象として, 穿刺吸引細胞診の手技を用いて癌細胞を採取し, 治療前後における癌細胞の変性度 (degeneration index: DI) と腫瘍縮小率より判定した奏効度および患者生存期問とを対比検討した。
    治療後の癌細胞には, 核の腫大・膨化, 巨細胞・多核巨細胞化, 核クロマチンの粗造化など, 核の変化が主に認められた。治療後のDIの変化と奏効度とはよく一致し, DIの変化が+5点以上の症例は全例partial response (PR) 群であった。大腸癌肝転移症例の治療後のDIの変化と治療後生存期間との間には有意 (P<0.001) な相関関係を認めた.
    以上より, 乳癌および転移性肝癌における治療後のDIの変化は, 局所治療効果の判定ならびに予後予測因子として有用であることが示唆され, 穿刺吸引細胞診を用いた本法は治療効果判定法として有効であると考えられた.
  • 元井 信, 蔵重 亮, 森 真理子, 藤原 喜枝, 村上 渉, 内藤 絹代, 水島 敏枝
    1995 年 34 巻 4 号 p. 773-779
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膀胱癌の各種治療後, その効果を判定し, 以後追跡し, 再発を予知することはきわめて重要である. 尿細胞診は, 患者への負担が少なく, 検体採取が容易で, 反復して検査できる利点があり, この目的に適している. われわれは, 各種の方法により治療された膀胱癌症例の治療効果判定と追跡における尿細胞診の意義について検討した.
    治療効果の判定は子宮頸癌放射線治療効果の細胞診判定基準 (森脇ら) を準用し, 変性細胞の出現率と腫瘍細胞減少率を指標としてその程度により無効 (R0) から完全消失 (R4) までの5段階にわけた.
    対象症例は移行上皮癌42例, 扁平上皮癌1例で, 計43例, 428検体 (平均10回/症例) の細胞診を検討した. その内訳は, 異型度別G1;3, G2;29, G3;9, GX;1例, 深達度別pTis (CIS);8, pTa;2, pT1;7, pT2;1, pT4;2, pTX;22例で, 治療はpTis (粘膜内癌, CIS) では全例が化学療法またはBG療法がなされ, pT1では経尿道腫瘍切除術 (transurethralresction, TUR-BT) 後化学療法 (膀胱内注入, 動注化学療法), 進行例では膀胱摘出と化学療法がなされていた.
    膀胱癌の治療後継時的に尿細胞診を行い, 総合的な治療効果を判定し, 簡単に記号化して報告することは効果的な治療の施行にきわめて有効で, 特にCISでは細胞診が唯一の効果判定法であった。また, 追跡により治療継続の必要性, 再発の早期発見に有効で9例の再発を検出できた. 判定にあたっては癌細胞のviabilityの判定, 反応性異型細胞と癌細胞との鑑別に問題があった.
  • 城崎 俊典, 石堂 統, 伊藤 以知郎, 小野 貴久, 半澤 儁
    1995 年 34 巻 4 号 p. 780-781
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 深沢 政勝, 菅間 博, 中村 靖司, 池沢 剛, 小形 岳三郎
    1995 年 34 巻 4 号 p. 782-783
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 石澤 貢, 佐藤 保男, 茂木 佐和子, 水口 國雄, 中村 恭二
    1995 年 34 巻 4 号 p. 784-785
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 野首 光弘, 本望 一昌, 久保野 幸子, 川井 俊郎, 斎藤 建
    1995 年 34 巻 4 号 p. 786-787
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 都築 豊徳, 稲熊 英俊, 青木 光治, 加藤 正和, 纐纈 博
    1995 年 34 巻 4 号 p. 788-789
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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