今回われわれは, AgNORs (nucleolar organizer regions) 染色を喀疾細胞診に応用し, 核内のAgNORsの発現個数, 大きさ, 形態 (染色パターン) が, 扁平上皮系異型細胞の鑑別に有用な指標になり得るかについて検討した.その結果, 1) 核内平均発現個数 (mean±SD) は, 10例の異型扁平上皮細胞では2.43±0.3, 5例の早期扁平上皮癌細胞では3.29±0.3, 5例の扁平上皮癌細胞では4.51±0.7であり, 三者間に有意差を認めた (P<0.005).2) 平均直径 (mean±SD) では, 異型扁平上皮細胞では1.04±0.53μm, 早期扁平上皮癌細胞は1.48±0.65μm, 扁平上皮癌細胞は2.14±0.87μmであり, 三者間に有意差を認めた (P<0.005).3) 形態的観察結果では, 核小体内に5個以上小穎粒を有する細胞は異型扁平上皮細胞で15%, 早期扁平上皮癌細胞では57%, 扁平上皮癌細胞では78%に認め, 細胞異型度が進展するにつれ増加傾向を示した.4) 小穎粒が核内に多数分散してみられる細胞の出現は, 早期扁平上皮癌, 扁平上皮癌の悪性細胞で観察され, 異型扁平上皮細胞では認められなかった.
以上の結果からAgNORs染色は喀疾細胞診にも応用が可能で, その発現個数のみならず, 大きさや形態的観察などを加味し, 総合的に評価することで扁平上皮系異型細胞の鑑別の一助として有用であることが示唆された.
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