日本臨床細胞学会雑誌
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35 巻, 2 号
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  • 中嶋 隆太郎, 白鳥 まゆみ, 佐藤 博俊, 東岩井 久, 佐藤 雅美, 斎藤 泰紀, 藤村 重文
    1996 年 35 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    宮城県では検診開始当初よりスクリーニングの段階でC判定以上と判断した場合には, 保存してある沈渣よりさらに4枚の標本を作製してスクリーニングし, 最初の2枚と併せて6枚の標本で診断に供している. このような再塗抹の有効性について検討した.
    昭和62年度から平成5年度までの7年間に, 主にRetrospectiveに検討した結果では, 最初の2枚をスクリーニングした時点でC判定とした452例のうち, 再塗抹した標本を追加することにより最終的にD判定へと判定を変更した症例は54例あり, そのなかから5例の癌と9例の境界病変を発見した. また, 平成5年度にスクリーニング時から再塗抹, 最終診断へと診断過程を詳細に把握しえた34例では, スクリーニング時C判定とした13例のうち, 再塗抹により4例がD判定, 1例がE判定へ, また, スクリーニング時D判定とした21例中7例がE判定へと判定を変更し, 5例の癌と1例の境界病変を発見した.
    以上より, 再塗抹は限られた材料からより多くの情報を得, 診断をより確実なものにする手段として有用な方法であると思われた.
  • 清山 和昭, 重平 正文, 栗林 忠信, 古賀 和美, 綾部 睦夫, 駒田 直人
    1996 年 35 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1990年~1995年までに限局性肝疾患に対しエコーガイド下に肝穿刺吸引細胞診を施行した81症例について検討を行った. 対象は病理診断の確定した肝細胞癌48例, 胆管細胞癌4例, 転移性肝癌11例, 肝細胞腺腫1例, その他の良性病変17例である. 穿刺吸引細胞診において, 肝細胞癌48例中44例が陽性, 4例が疑陽性であった. 陽性44例中43例は肝細胞癌と診断が可能で, 1例は肝細胞癌と確定できなかった.
    疑陽性と判定した4例は細胞異型が弱く悪性にできなかったもの3例, 残り1例は細胞異型は認めたものの細胞量不十分であることから疑陽性と判定した. 胆管細胞癌4例ではすべて細胞診陽性で, 3例を腺癌と診断したが, 1例は確定できなかった. 転移性肝癌11例では腺癌9例, カルチノイド2例が診断できた. その内訳は大腸癌9例 (腺癌7例, カルチノイド2例), および膵癌1例, 胃癌1例. 肝細胞腺腫1例は細胞異型を認めず陰性と判定した. その他良性病変は17例中5例を疑陽性と判定した. これらはいずれも大小不同, 核小体を過大評価にしたことが原因であった. 肝細胞癌, 特に高分化型肝細胞癌の細胞像について, N/C比の増大, クロマチン分布の不均一性, しかも単一細胞出現が重要と思われた.
  • 小野寺 博義, 武田 鐵太郎, 植木 美幸, 小室 邦子, 大沼 眞喜子, 阿部 美和, 佐藤 郁郎, 立野 紘雄
    1996 年 35 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肝血管腫の超音波映像下穿刺吸引細胞診における細胞像を検討した. 一般的な像は血性背景で, 結合織の破片が存在するものであった. 細胞集塊は二種類に分けられた. 第1は長楕円形の核を有する紡錘形の細胞が含まれる集塊で, 血管内腔と思われる間隙が認められた. この長楕円形の核を有する紡錘形の細胞は, その形態的特徴や間隙を取り囲むように存在していることから内皮細胞と考えられた. 第2は長楕円形の核を有する紡錘形の細胞が含まれておらず, 類円形の核を有する細胞のみの集塊である. このような集塊でも, 血管内腔と思われる間隙が認められる場合には, 血管腫と診断することは可能であると思われた.
  • 自然尿と膀胱洗浄液の比較検討を中心に
    小谷 広子, 郡谷 裕子, 三原 勝利, 西田 雅美, 奥村 博, 百瀬 均, 山田 薫, 丸山 博司, 松田 実
    1996 年 35 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    自然尿および膀胱洗浄液 (以下洗浄液) 細胞診がともに施行された膀胱の移行上皮癌患者66名のべ81例を対象として, その細胞診成績および細胞所見を比較検討した. 自然尿の陽性例は33例 (40.7%), 洗浄液の陽性例は59例 (72.8%) で, 洗浄液細胞診の方が有意に陽性率が高かった. 洗浄液において, Grade1の膀胱癌8例 (66.7%) およびGrade2の膀胱癌35例 (66.0%), 乳頭状腫瘍の48例 (70.6%) および非乳頭状腫瘍の11例 (84。6%), 浸潤癌の51例 (72.9%) および非浸潤癌の8例 (72.7%), 再発例の29例 (80.6%) がおのおの陽性であった. 他方, 自然尿においてはGrade1の膀胱癌2例 (16.7%) およびGrade2の膀胱癌16例 (30.2%), 乳頭状腫瘍の27例 (39.7%) および非乳頭状腫瘍の6例 (46.1%), 浸潤癌の30例 (42.8%) および非浸潤癌の3例 (27.3%), そして再発例の12例 (33.3%) がおのおの陽性であった. 発育様式をGrade別に分け, 自然尿および洗浄液細胞診の成績を比較すると, 乳頭状浸潤型膀胱癌Grade2において両者の陽性率に有意差が認められた. 細胞所見については, 洗浄液では多数のよく保存された細胞が出現し, また自然尿にみられる細胞より大きく, 核縁は薄く核内構造も明瞭に観察できた.
  • 104例の検討
    瀧澤 雅美, 中村 恵美子, 清水 敏夫, 和食 正久, 川口 研二
    1996 年 35 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    前立腺分泌液細胞診を施行した104例を対象に, 前立腺癌の早期診断における本検査の有用性について検討した. 組織学的に癌が確認された29例の細胞診所見はclass II 5例, III a 1例, IIIb 8例, IV4例, V11例であった. class IIIb以上の症例は23例で疑陽性を含めた陽性率はおよそ79%であった. 29例中触診で結節の明らかな症例は23例, 不明瞭な症例は6例で細胞診class IIIb以上と診断されたのはそれぞれ20例 (87%), 3例 (50%) であった. class IIの症例は細胞採取量不足によるもので, classIIIb8例には細胞採取量の少ない症例, 採取時の出血により細胞の変性が強い症例, 比較的早期の臨床病期B2の症例が含まれていた. 細胞診疑陽性で生検陰性の5例のうち2例に, その後のTUR-Pで癌が証明された. 病巣の部位や大きさにあまり左右されず, 広領域からの細胞が観察可能な前立腺分泌液細胞診は, 十分な採取細胞量があれぼ前立腺癌の診断法として簡便で有効な検査法と考えられる。
    当院ではランダム針生検と組み合わせ, 腫瘍マーカーの異常はあるが, 臨床的に結節の不明瞭な, 癌の疑いのある症例の経過観察の一手段として活用している.
  • 画像解析装置を用いて
    佐久間 暢夫, 亀井 敏昭, 渋田 秀美, 岡村 宏, 権藤 俊一, 石原 得博
    1996 年 35 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    悪性中皮腫は体腔膜に原発するまれな悪性腫瘍であり, 腺癌との鑑別が問題となる. 体腔液細胞診における悪性中皮腫細胞の特徴を客観的に表現するために, 胸水中に出現した悪性胸膜中皮腫細胞 (上皮型7例, 174個, および二相型3例, 84個) および肺低分化腺癌細胞 (10例, 271個) をPapanicolaou染色し, 画像解析装置を用いて計測し三群を比較した.
    形態計測の結果, 上皮型と二相型の問に有意な差は認めなかった. 核面積は, 腺癌細胞に比し中皮腫細胞が有意に小さく, 面積にはばらつきが少なかった. 核凹凸度により, 核の形状は, 腺癌細胞に比し中皮腫細胞が有意に正円に近かった. 細胞面積は, 腺癌細胞に比し中皮腫細胞が有意に小さかった. 核/細胞面積比には有意な差は認められなかった. 一腫瘍細胞あたりの核数は有意差はないものの中皮腫細胞の方が多い傾向があった.
    以上より, 胸水中に出現する悪性中皮腫細胞は上皮型と二相型で基本的な形態に差はなく, 腺癌細胞と比較して悪性中皮腫細胞の特徴は,(1) 類円形ないし正円形核である,(2) 核が小さい,(3) 核大小不同性に乏しい,(4) 細胞が小さい,(5) 多核細胞が比較的多いことを定量的に示すことができた.
  • 藤井 雅彦, 山本 寛, 大河戸 光章, 松永 忠東, 小宮山 京子, 村田 淳, 庄野 幸恵, 石井 保吉
    1996 年 35 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    アポクリン癌の細胞学的特徴を明確にするため, アポクリン癌9例と対照としてアポクリン化生の目立つ良性症例15例の穿刺細胞標本を用い, 細胞集塊の形態や個々の細胞所見について検索を行い, 以下の結果を得た.
    1. アポクリン癌は好酸性穎粒状の広い細胞質を有する良性化生細胞に類似した細胞からなるものの, 良性例と比べて多少なりとも細胞の散在性や重積性を示す傾向にあった.
    2. アポクリン癌にみられる細胞集塊は, 細胞境界が不鮮明なことが多く, しばしば泡沫状の細胞質を伴っていた.
    3. アポクリン癌では通常, 核の腫大や大小不同が目立っており, また大型の核小体が高頻度に出現した.
    このような細胞像の特徴を判定に活かすことにより, 穿刺細胞診におけるアポクリン癌の診断がより的確になるものと思われる.
  • 稲垣 貴子, 大津 久美子, 原 正道, 下山 潔, 原田 章子, 清水 薫, 田山 三郎
    1996 年 35 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    中枢神経に病変のない剖検脳6例を用い, 中枢神経系細胞診の基準像の作成を試みた. 剖検時に11箇所より組織を採取し, 圧挫・捺印・組織標本を作成した. すなわち, 終脳, 小脳, 基底核, 視床, 黒質, 脊髄 (前角), 脈絡叢, 松果体のそれぞれについて細胞・血管を観察した. また, 終脳・小脳・基底核・視床については, 400倍で30視野を観察し一視野平均細胞数と一視野平均百分率を算出した. さらに, 組織標本と脳腫瘍 (良性星状膠腫: GradeI~II, 悪性星状膠腫: GradeIIIをそれぞれ3例用いた) について同様に観察し基準像との比較検討を行った.
    観察検討の結果, 圧挫・捺印標本の背景像, 部位による細胞数・種類, 血管数・性状を明らかにした. 神経細胞とグリア細胞の合計一視野平均細胞数は圧挫標本で終脳皮質108個, 同髄質130個, 大脳基底核83個, 視床77個, 小脳皮質405個, 同髄質133個であった. 捺印標本では終脳皮質66個, 同髄質58個, 大脳基底核65個, 視床50個, 小脳皮質222個, 同髄質116個であった. 血管数は圧挫標本で約1.0本, 捺印標本で約0.5本であった.
    また, 基準像と脳腫瘍の比較で良性星状膠腫 (GradeI~II) ではわずかに基準像との間に差がみられ, 悪性星状膠腫 (GradeIII) になると明らかな差がみられた. また, 血管数・血管内皮細胞の増加もそれぞれで認められた. この結果, 腫瘍の細胞像判定の基盤として基準像が有用であることが明らかになった.
  • 円錐切除術時断端陽性例を減らすために
    松本 和紀, 株本 和美, 小田原 靖, 佐々木 寛, 北川 道弘, 落合 和徳, 田中 忠夫
    1996 年 35 巻 2 号 p. 114-117
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    CIN (Cervical Intraepithelial Neoplasia) の治療において円錐切除術やLEEP (Loop Electro Excision Procedure), レーザー円錐切除, レーザー蒸散などが行われている. 頸管外の病変の拡がりはcolposcopeにより術前に正確に把握されているが, 頸管内の病変の拡がりは術前に把握できず, ときとして切断端陽性となることがある. そこで新しい細胞採集器具, Cell-Sweep®を用いて, CINの頸管内病変境界が術前に把握できるか否かを検討した.
    その結果, 10例中4例が細胞塗抹標本上の異常細胞出現範囲と一致し, 1mmの誤差が2例, あとは, それぞれ2mm, 3mm, 5mm, 7mmの誤差のものが各1例であった. したがって術前にCell-Sweep®で塗抹標本上の異常細胞出現範囲を検討すれば7mm以内の誤差で頸管内病変の拡がりが把握できたことになる.
  • 横須賀 薫, 加藤 友康, 手島 英雄, 山内 一弘, 荷見 勝彦, 南 敦子, 荒井 祐司, 古田 則行, 都竹 正文
    1996 年 35 巻 2 号 p. 118-125
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部腺癌75例のPapanicolaou標本を再鏡検し, 細胞学的所見を検討した。また, そのうちの25例に対してmorphometryを施行して客観的に観察 (核の大きさ・丸さ・不整, 核小体径・数・不整) し, 頸部腺癌各組織型の鑑別を試みた. 25例の内訳は, 内頸部型腺癌12例 (高・中分化型各5例, 低分化型2例), 類内膜腺癌5例, 悪性腺腫4例, 上皮内腺癌4例であった. morphometryの対照として, 良性病変20例の正常頸管腺細胞 (卵胞前期・後期, 黄体前期・後期各5例) と比較検討した. morphometryの結果, 核の丸さより頸部腺癌群と正常頸管腺細胞は判別可能であった (p<0.05). また, 内頸部型腺癌の各分化型の判別はやや難しいものの, 内頸部型腺癌と他の組織型の頸部腺癌との鑑別は可能と思われた. これらに一般的細胞診所見を加味すれば, 頸部腺癌における各組織型の細胞診による鑑捌診断の精度はより高くなるものと考えられた.
  • 特にRPMI1640培養液使用の有用性について
    則松 良明, 梶谷 博則, 桐野 玲子, 浜崎 周次, 沖野 毅, 津嘉山 朝達
    1996 年 35 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは子宮内膜細胞診における細胞回収率の向上を目的に直接塗抹標本 (以下直接塗抹法) 作製後, 採取器具を浮遊培養用培地RPMI1640 (以下培養液) で洗浄し, その沈査を標本にする洗浄法を試みた. その結果,(1) 細胞集塊数では非癌100例において洗浄法でかなりの内膜上皮細胞が採取器具に残存していることが判明した. また高分化型腺癌5例と腺腫性増殖症5例においても, 洗浄法が直接塗抹法より細胞集塊が多い症例が多かった.(2) 経時的な細胞変化の観察 (核クロマチン, 核縁, 核径) で, 培養液, 生理食塩水 (以下生食) およびビメックス液 (以下ビ液) おのおの15例検討した. 生食では採取後30分で核の変性, 膨化がみられ, 経時とともに著しかった.培養液では核所見の変性が採取後3時間より若干みられたが, 核径の変化はほとんどなく保存性は良好であった, ビメックス液は5時間経過しても変性, 膨化はみられなかったが, 赤血球が多い場合溶血残渣の細胞被蓋で鏡検しづらい欠点があった. 以上より浮遊培養用培地RPMI1640は洗浄液として有用であり, 洗浄法を行うことで多くの細胞を回収でき, さらに直接塗抹法と合わせて鏡検することにより正確な診断をするための一助になるものと考えた.
  • 国井 勝昭, 大橋 洋子, 草苅 裕子, 国井 兵太郎, 高橋 亨正, 関 和彦, 斉藤 憲康
    1996 年 35 巻 2 号 p. 132-141
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    性周期を, 月経期, 増殖期初期, 増殖期中期, 増殖期後期, 中間期, 分泌期初期, 分泌期中期, 分泌期後期, 月経直前期の9期に分け, 子宮内膜細胞診による性周期の推定を試みた.
    対象としたのは, 子宮筋腫などで摘出した子宮のうち月経が比較的順調で, 内膜組織が典型的に上記各周期に当てはまる各周期約10例 (合計108例) の子宮内膜細胞診標本である.
    性周期推定の基となる所見は, 基本的にはNoyesの所見 (腺細胞の核分裂, 核偽重層, 核下空胞, 分泌, 問質浮腫, 脱落膜様変化, 白血球浸潤) と (問質細胞核分裂は除いた) 細胞診に特有な所見, 細胞数, 腺腔数, 集塊の長さおよび細胞数, 集塊の出現様式を加え, さらに細胞質境界の明瞭さ, 核の大小不同, クロマチンの性状, クロモセンターの数, 核の大きさを加え18項目とした.
    これらの所見の組み合わせにより性周期の推定は可能と思われた.
    細胞採取方法は増淵式吸引装置またはエンドサイトを用いた.
  • 鵜野 裕治, 石川 誠, 小松 良一, 里 悌子, 近藤 信夫, 安藤 政克
    1996 年 35 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肺芽細胞腫の1例を経験したので報告する. 症例は47歳, 男性. 健康診断にて右上肺野に径3cm大の腫瘤陰影を指摘された. 術前に行われた喀痰細胞診, 気管支擦過細胞診ではともにclassIであり, 確定診断は得られなかったが, 画像上, 増大傾向がみられ悪性腫瘍が疑われたため試験開胸となった. 術中に施行された穿刺吸引細胞診では高分化型腺癌が疑われ, 右肺上葉切除術が行われた. 細胞像は平面的配列をする細胞密度の高い細胞集塊として出現し, 集塊内には極性の乱れの少ない腺腔様配列が認められた. 組織学的には胎児肺類似の組織像で, 一部軟骨成分が認められたものの, 肉腫様の異型はみられず, 肉腫成分を欠いた肺芽細胞腫と診断した.
  • 坂元 和宏, 広川 満良, 真鍋 俊明, 鐵原 拓雄, 有安 早苗, 山口 昌江
    1996 年 35 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    切除標本の穿刺吸引細胞診にて多数のbluebodiesを認めた肺腺癌の1例を報告する. 症例は73歳, 女性で, 左肺下葉に腫瘍を認め, 切除術が施行された. 組織学的には高分化型乳頭状腺癌で, 肺胞腔内にヘマトキシリンに濃染する層状の石灰化小体 (blue bodies) を認めた. この石灰化小体は細胞診では透明な層状構造物として観察され, 偏光顕微鏡下で複屈折性を示し, X線分析では主成分はカルシウムであることが判明した. 文献的には細胞診でのblue bodiesの出現頻度は約10%とされているが, 日常検査での観察頻度は少なく, 見過ごされている可能性が高い. bluebodies自体は疾患的特異性は少ないが, 診断にあたっては砂粒体との鑑別が重要であると考えた.
  • 三宅 康之, 有安 早苗, 広川 満良, 椎名 義雄, 郡 秀一, 三宅 実甫子, 吉沢 梨津好
    1996 年 35 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    保存尿の免疫細胞化学的検索により, デコイ細胞がポリオーマウイルス感染細胞と断定し得た1例を報告する. 症例は15歳, 女性で, 神経芽細胞腫の治療経過中に尿中にデコイ細胞が観察された. 後日, 尿沈渣保存液中に保存しておいたデコイ細胞の免疫細胞化学的検索にて, ポリオーマウイルス感染細胞であることが証明された. 尿沈渣を保存することの重要性とその活用について述べる.
  • 佐々木 健司, 米原 修治, 野島 裕子, 西原 弘子, 黒田 義則, 小川 喜輝
    1996 年 35 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診でmucocele-like tumor (Rosen, P.P.1986) との鑑別が必要であった乳腺低乳頭癌を経験したので, その細胞所見を報告する. 患者は46歳, 閉経前女性である. 初回の穿刺吸引標本では, 上皮性の結合を示す細胞集団が少数みられ, 背景には豊富な粘液状物質の出現を認めた. 細胞集団はシート状で平面的な配列を示しており, 個々の細胞は核間距離が均一で, 核の大小不同は認めず, 核異型性に乏しいやや大型の円形核を有していた. 2回目の穿刺吸引標本では, 大部分の細胞集団は平面的であったが, 比較的つよい核異型性を認めた. 塗抹細胞量が少なく, 大部分の細胞集団がシート状で平面的な配列を示していたことから, Rosen (1986) の提唱したmucocele-like tumorとの鑑別が問題となった. 本乳癌の穿刺吸引細胞診においては, 重積性の乏しい, シート状の細胞配列所見にのみとらわれることなく, 粘液の存在や核形不整, およびクロマチンパターンなどの核異型性の慎重な判定が不可欠であると思われた.
  • 望月 衛, 永久保 守, 九里 孝雄, 吉田 京子, 蛭田 道子, 森 菊夫, 高橋 優
    1996 年 35 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症 (familial adenomatous polyposis, 以下FAP) に合併した多中心性甲状腺乳頭癌の18歳女性例を報告する. 左頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診では, 充実性, シート状配列を示す細胞集塊と, 重積性, 乳頭状配列を示す細胞集塊が混在して出現していた. 前者では腫瘍細胞は豊かな細胞質を有し, 核溝は目立たず, 粗大な核クロマチンを有していた. ライトグリーン淡染性の無構造物も観察された. 後者では, 核縁不整と核内細胞質封入体を多数認めた. 甲状腺乳頭癌と診断し, 甲状腺左葉切除術を施した. 切除標本の病理組織学的検索では, 乳頭癌の多中心性発生が認められた. 家族歴調査および術後の大腸内視鏡検査でFAPと診断し, 全結腸直腸切除術を施した. 甲状腺左葉切除術の約14ヵ月後, 右葉にも乳頭癌を認め, 残存甲状腺の切除術を行った. 甲状腺検査は, FAP患者の経過観察や, FAPの家系にある者のスクリーニングに不可欠と考える. さらに, 甲状腺乳頭癌の若年例に遭遇した場合, 家族歴を詳細に調べるとともに, 念のためFAPの有無を精査すべきであると考えた.
  • その穿刺吸引細胞診像および他腫瘍との鑑別
    吉田 真理, 大井 静江, 梅井 民子, 谷本 一夫, 水上 勇治
    1996 年 35 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    68歳の男性で肋骨に発生した軟骨肉腫の1例について針穿刺液の細胞所見とともに類似病変の鑑別を主に考察を加えた. 左前胸壁の痛みを主訴とし, CTおよびMRIで左肋軟骨部に辺縁明瞭な腫瘤を認め, 針穿刺吸引細胞診を施行した. 細胞診所見は, 背景に軟骨基質があり, その中に細胞の大小不同, 核の肥大化, 核小体の明瞭化や2核細胞も混じえる腫瘍細胞を多数認めた. また, 散在性に大型細胞で細胞質の空胞や核の核小体が目立つ腫瘍細胞も認めた. 年齢, 性別, 採取部位などと併せ, 軟骨肉腫と診断. 切除腫瘤の病理組織診で左第4肋骨原発の高分化型軟骨肉腫と診断された
  • 林 和彦, 飯田 智博, 竹内 久清, 与那嶺 京子, 諏訪 秀一, 安田 玲子, 半田 留美子, 品川 俊人
    1996 年 35 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肥満の閉経婦人では, 過剰な脂肪組織でandrostenedioneからestroneへの変換と, さらにestroneからestradiolへの変換が起き, しかも, 血中ではsexhormone binding globulin濃度の低下があるために相対的にfreeのestrogenが増加した状態が惹起されている. そしてそのestrogenは子宮内膜に持続的作用を及ぼし, 子宮内膜癌の発生しやすい状態をもたらしている. 一方では, estrogenを自ら産生する表層上皮性卵巣癌や穎粒膜細胞腫などの報告も認められる. いずれにしろ, 閉経婦人における高estrogen環境は, 子宮内膜癌や卵巣癌の存在に留意すべきである. 今回は, 高齢婦人でありながら,持続的estrogen作用の存在を示唆する多量の頸管粘液を認め, 子宮内膜細胞診でも経過観察の過程で, 内膜病変の進展が推測された症例を経験した. 本例は肥満もなく,血清estrone (Eo) 値とestradiol (Ed) 値も低かったが, 頸管粘液は多量に分泌されていた. 閉経婦人で高estrogen状態が示唆された場合には, 子宮内膜癌や卵巣癌の存在に留意しておく必要がある.
  • 佐藤 康美, 五十嵐 信一, 加藤 幸一, 田中 俊誠
    1996 年 35 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    ミュラー管腺肉腫は, 非上皮性成分が肉腫様の悪性成分で上皮性成分が良性であるものをいう. Clementら1) が初めて報告したが, 本邦での報告例は少なく, 非上皮性成分が異所性の横紋筋肉腫であるものの報告は認められない. 今回, われわれは, 異所性成分が横紋筋肉腫であることをPTAH染色, 免疫染色で確認したミュラー管腺肉腫を経験したので, 細胞診所見を含め, 報告する.
    症例は58歳の女性, 多量の性器出血で受診し, 子宮体部腫瘍の診断で入院した. 子宮内膜細胞診では, 腫瘍性背景の中に細胞質に乏しく, 楕円形の核を持つ細胞が孤立散在性に存在し, 肉腫が疑われた. 組織学的には問質成分は多型性に富む細胞質を持ち, 高度の核異型を持つ, 腫瘍細胞で占められ, PTAH染色で横紋を認めた. 上皮成分は増殖期の子宮内膜腺に類似し, 異型は認められない. 免疫染色では肉腫部分でデスミンおよびミオグロビンが陽性であることより, ミュラー管腺肉腫 (heterologous) と診断された.
  • 術中捺印細胞診と迅速組織診併用の有用性
    望月 衛, 吉田 京子, 蛭田 道子, 森 菊夫, 九里 孝雄
    1996 年 35 巻 2 号 p. 181-182
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 糸数 リツ子, 遠藤 克則, 高橋 善和, 平田 守男, 山田 喬
    1996 年 35 巻 2 号 p. 183-184
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 特に捺印細胞像について
    山本 直美, 園部 宏, 真辺 俊一, 吉川 千明, 大胎 祐治
    1996 年 35 巻 2 号 p. 185-186
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 古田 則行, 都竹 正文, 山内 一弘, 川口 智義, 石川 雄一
    1996 年 35 巻 2 号 p. 187-188
    発行日: 1996/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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