日本臨床細胞学会雑誌
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35 巻, 6 号
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  • 丸田 淳子, 野口 志郎, 山下 裕人
    1996 年 35 巻 6 号 p. 513-516
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺疾患とu-PA, u-PARの発現性との関係を検討するため, 組織標本と捺印標本を用いて免疫染色を施行した.乳頭癌31例および濾胞癌3例のu-PA染色結果は, 組織標本では全例陽性で, 捺印標本ではおのおの22例 (71%) と2例 (67%) が陽性であった.組織標本, 捺印標本ともに濾胞腺腫21例および腺腫様甲状腺腫24例に比して有意に高い陽性率を認めた (p<0.001).組織標本のu-PA染色陽性例における陽性細胞の割合の平均 (mean±s. e.) は92.4±0.9%(Range;80.1~100%) であった.陽性細胞の割合が高い症例ほど腫瘍の多発傾向がみられた.また, u-PAR染色では悪性腫瘍の全例が陽性であり, u-PA, u-PARの染色結果は全症例79例中73例が一致した (Kappa index=0.85). 組織標本でのu-PA染色陽性細胞の割合が高い症例ほど捺印標本を用いた場合に陽性となる傾向があり, 組織標本の染色結果を基準とすると捺印標本の感度は70%, 特異度は92%であった.u-PA, u-PARは甲状腺分化癌で高発現し, 組織標本での解析結果は細胞診材料に応用できる可能性があると考えられた.
  • 小松 彦太郎, 宮島 邦治, 田村 厚久, 田島 紹吉, 蛇沢 晶
    1996 年 35 巻 6 号 p. 517-523
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肺癌切除例89例を対象に腫瘍の捺印細胞標本を用い, 増殖細胞核抗原 (PCNA) およびp53の免疫染色を行いそれぞれの発現率と予後の関連について検討した.1) PCNA発現率が25%未満の群は25%以上の群に比較し予後が良かった (p<0.001).絶対的治癒切除例 (p<0.001), p53陽性例 (p<0.01) でも同様の結果がみられた.2) p53発現率と予後の間には切除例全例では有意差はみられなかった (p<0.1) が, 絶対的治癒切除例で陰性例が陽性例に比較して予後が良かった (p<0.01).3) Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析でp値が5%以下のものは, 根治度, 性別, 細胞異型, PCNA発現率であった.
    以上よりPCNA発現率は独立した予後因子であり, 細胞増殖能および生物学的悪性度の指標として重要と考えられた.また, p53発現率も絶対的治癒切除例で予後因子としての有用性が認められた.
  • 上田 順子, 岩田 隆子, 岡野 こずえ, 山下 勝, 村上 喜信
    1996 年 35 巻 6 号 p. 524-530
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ISHにより尿中のヒトポリオーマウイルス感染細胞 (HPoV) を検出し, HPoV感染の経過観察を行った.また, 免疫染色により他のウイルス感染細胞の有無についても検索した.
    1) パパニコロー (Pap.) 染色でHPoV感染を疑った19例のうち14例がHPoV-ISH陽性で, その基礎疾患は臓器移植, 造血器腫瘍, 糖尿病, 膠原病などであった.
    2) HPoV-ISH陽性のうちBKウイルス (BKV) とJCウイルス (JCV) の重複感染が11例を占め, 単独感染はJCV陽性2例, BKV陽性1例のみであった.
    3) HPoV感染細胞は4ヵ月間持続して認められたが, 白血病治療のため骨髄移植が行われた患者では, 経過を反映して感染細胞が増減する傾向が認められた.
    4) HPoV陽性症例尿の中に, サイトメガロウイルスやアデノウイルス陽性の細胞を認めるものが4例あった.また, HPoV感染を疑いながらHPoVは陰性で, 他のウイルスが陽性の細胞もみられたので, HPoV感染同定のためにはISH法が有用である.
  • 沓澤 武, 清野 邦義, 藤田 博正, 安田 晶子, 佐藤 春美, 守谷 修而
    1996 年 35 巻 6 号 p. 531-537
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    悪性腺腫では子宮頸部に多嚢胞形態と構造異型を呈して粘液性帯下の増量を伴う.著者らは, この粘液中でシダ状結晶 (FLP) 陽性が観られるのに着目してMPA負荷試験による補助診断の可能性について検討し, 次の結果を得た.1) 50歳台の粘液性帯下を主訴とした4例では, 閉経後も含めすべてFLP陽性が観察された.3例 (54, 59及び50歳) の血中E2は20,<10,124pg/ml, また後者の2例ではMPA2,000mg負荷後も陽性持続し, 粘液増量とFLP陽性は血中E2とは無関係と推測された.この3例では子宮卵管造影や経膣エコーの画像に一致する多嚢胞像が頸部のほぼ全周にみられ, また小腺管の多発を呈しCEA (+), CA19-9 (+++) で本症と見做された.2) 他の50歳例では粘液増量での陽性はMPA5,600mg投与で陰性化した.この例もエコー像に一致して頸部の約半周で多嚢胞像と小腺管の多発を呈したが, CEA (-) で良性病態と考えられた.3) これらに共通の細胞所見は核密度の高い腺集団や異型の乏しい円形配列 (約50μ) などであった.
    以上より細胞診, 画像診断の他に粘液中のFLP形成能がgestagenで阻止されなければ, その増量はestrogen非依存性を強く示唆し, 補助診断に有効と考察された.
  • 蒲 貞行, 青木 孝允, 深津 俊明
    1996 年 35 巻 6 号 p. 538-548
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ホルモン補充療法での子宮内膜変化を細胞診と組織診で照合検討した.対象は細胞診と組織診が同時に実施された良性69例, 異常15例 (不規則増殖像13例, 単純型内膜増殖症2例) 計84例.またホルモン投与方式別内訳は,(1) エストロゲン単独周期性16例,(2) エストロゲン・プロゲスチン周期性52例,(3) 同持続性16例であり, 各方式別に細胞診での腺管の形態, 出現性, 最大拡張腺管直径線上核数などを検討した.良性例において上記 (1) の方式では組織診が萎縮像または増殖期, 細胞診ではシート状被覆上皮と繊毛円柱上皮化生の共存.(2) の方式では, 投与周期前半の組織診は増殖期であり, 細胞診では細長腺管が出現.また中後半での組織診は分泌期, 細胞診では核下空胞を伴う短腺管.(3) の方式での組織診は萎縮像, 細胞診では腺管は少なく, 織の有るシート状被覆上皮に萎縮細胞の混在する像がみられた.一方, 異常例の細胞診では, 40個以上の最大拡張腺管直径線上核数, 腺管突出-分岐像, 腺管密集像および腺管付着間質共有像を認め, さらに単純型内膜増殖症では不規則拡張蛇行腺管を認めた.これらの異常所見はホルモン補充療法での内膜異常を細胞診で早期に検出する際の有用所見と考えられた.
  • 畠 榮, 鐵原 拓雄, 三宅 康之, 広川 満良
    1996 年 35 巻 6 号 p. 549-555
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣原発の明細胞腺癌の捺印塗抹細胞診ならびに腹水細胞診の細胞像を形態学的および免疫組織細胞化学的に検討した.
    両標本に共通する細胞学的特徴は1) collagenous stromaを有する細胞集塊, 2) ミラーボール状集塊, 3) 細胞質の辺縁が明瞭な腫瘍細胞, 4) 硝子様細胞質内封入体, 5) 細胞質内グリコーゲン顆粒などであった.また, collagenousstromaは基底膜物質と考えられ, それを有する細胞集塊は卵巣原発明細胞腺癌に特徴的な所見で, 組織型推定の鍵となると推測された.
  • 清水 恵子, 小椋 聖子, 村田 匡好, 高尾 由美, 吉田 昌弘, 桜井 幹己
    1996 年 35 巻 6 号 p. 556-561
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣未熟奇形腫5症例の捺印細胞像の検討を行った.卵巣を対象とする細胞診は, 病期の決定のために腹水や腹腔内洗浄液に対して主として施行されているが, われわれはさらに術中に卵巣捺印細胞診を行い, 腫瘍の組織型, 悪性度を類推し, 組織診が確定するまでの治療方針の決定, および組織切片の切り出し部位の選択にもその情報を活用している.われわれが経験した未熟奇形腫症例では, 特に捺印細胞診からの情報が腫瘍の正確なgradingを行う上で有用であった.未熟奇形腫の構成成分中, 特に悪性度の判定上重要視されている未熟な神経細胞は剥離性が高く, 捺印細胞診標本中に各腫瘍の悪性度に比例した数が出現しており, その細胞像は細胞境界不明瞭, N/C大, 微細で増量した核クロマチンを持つ小型異型細胞で, 容易にスクリーニングで確認できる細胞であった.
  • 中村 雅哉, 須永 義市, 柏瀬 芳久, 泉福 明子, 山根 伸夫, 高橋 峰夫, 小島 勝, 城下 尚
    1996 年 35 巻 6 号 p. 562-566
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    唾液腺のまれな腫瘍である悪性筋上皮腫の1例を経験したので, その術中捺印細胞像を中心に報告する.症例は59歳女性, 軟口蓋の腫瘤を主訴として近医歯科を受診し腫瘍が疑われたため, 当院を紹介され腫瘍摘出術を施行した.術中での捺印細胞診標本にPapanicolaou染色を行うと, 腫瘍細胞は孤立散在性ないし結合性の弱い小集塊を形成して出現して, 細胞の細胞質の辺縁は不明瞭で核の大小不同が目立ち, 巨核の細胞や核内封入体を有する細胞もみられ, 大きな核小体を持つのも多数認められたため, 未分化癌ないし肉腫を疑った。また同標本のGiemsa染色では形質細胞に類似した好酸性で多辺形の広い細胞質と偏在性の核を有する腫瘍細胞が多数みられ, 核内封入体も認められた。しかしPerinuclear haloは認められなかった.病理組織学的にはH-E染色標本で大小不同のみられる好酸性の広い細胞質, 偏在性の核を有する腫瘍細胞が柵状ないし蜂巣状に増殖していて多核の細胞も混在していた.被膜浸潤はみられなかったが, 間質への浸潤があること, 少数の核分裂像がみられること, 細胞異型が比較的目立つことから低悪性度の形質細胞様細胞型の悪性筋上皮腫と診断した.免疫組織化学的検索でも腫瘍細胞の大部分はS-100蛋白, Vimentinが陽性で一部の細胞は平滑筋Actin, Keratinが陽性で本症例の筋上皮由来を支持していた.本症例のような形質細胞様細胞型の悪性筋上皮腫を細胞診で推定し得るのにGiemsa染色はきわめて有用と考えられる.
  • 原 仁, 須田 耕一, 小山 敏雄, 木村 正博, 石井 恵理, 井上 智美, 堀家 誠一, 高相 和彦
    1996 年 35 巻 6 号 p. 567-571
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膵の粘液性嚢胞腺癌を1例経験し, その細胞像を検討した. 症例は35歳女性, 主婦. 左季肋部痛, 左背部痛出現. 超音波検査にて膵尾部に中心低エコー領域を示す大きな腫瘤があった. エコー下吸引細胞診では出現パターンが多彩で, シート状, 柵状, 乳頭状配列があり, これらは相互に移行していた. すなわち, シート状配列は密で1~6層の円柱状細胞からなり, 表面に細網状の赤色物質がみられた. また小型で良性にみえる細胞からなるシート状集団もあった. 柵状配列は淡緑色の高円柱状細胞からなり, 核偏在や核の重畳化がみられた. 乳頭状配列は細胞境界が明瞭で, 核のくびれや陥入像が顕著であった. 以上の細胞像および画像所見より粘液性嚢胞腺癌の診断のもとに膵体尾部脾切除術施行. 摘出腫瘍は11×10×8cmで, 組織学的には粘液性嚢胞腺癌であった. 術後10年経過の現在まで再発はない. また本例のような粘液性嚢胞腺癌と膵管内乳頭腺癌や粘液産生が目立つ管状腺癌との鑑別についても考察した.
  • 原武 晃子, 大田 喜孝, 伊藤 園江, 中野 祐子, 大田 桂子, 楳田 明美, 伊藤 裕司, 中村 康寛
    1996 年 35 巻 6 号 p. 572-575
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    後腹膜リンパ節原発の悪性腫瘍のなかでは悪性リンパ腫が最も多いが, 尿中に腫瘍細胞が出現した例は非常にまれである.われわれは泌尿器症状を初発とし, 尿中に腫瘍細胞が出現した後腹膜原発悪性リンパ腫を経験したので報告する.
    症例は51歳男性で, 血尿と背部痛を主訴に当院泌尿器科を受診した.精査の結果, 後腹膜腫瘍による右尿管閉塞, 水腎症と診断された.2回の尿細胞診が施行されたが細胞変性が強く, いくらかの異型を有するリンパ球様細胞を孤立散在性に認めた.しかし, これらはN/C比が高く, 一部に著しい核形不整も認めたため, 悪性リンパ腫を疑い免疫組織化学染色を行った.その結果, LCA (+) L26 (+) であったことよりB細胞由来の悪性リンパ腫と診断した.
    このように尿中にリンパ球系腫瘍細胞が出現した場合, 変性が強く本症例のようにパパニコロウ染色のみでは判定に苦慮することが多いが, 免疫染色を併用することにより的確な診断が可能と思われた.
  • 高橋 久雄, 安藤 智子, 加藤 拓, 上原 敏敬, 佐藤 信夫, 武田 敏
    1996 年 35 巻 6 号 p. 576-581
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 男性でG-CSF (Granulocyte Colony-Stimurating Factor) 産生を伴うきわめてまれな多形細胞型腎細胞癌を経験した. 主訴は右側腹部痛, 血尿. 本症例の穿刺吸引細胞像は結合性に乏しく, 高度の大小不同や著しい多形性を示した. しかしながら, 腫瘍細胞は核偏在傾向に加えてわずかに結合性を示し上皮性を示唆する所見であった. 血清中G-CSF測定で293pg/mlと高値を示し, 捺印細胞標本および組織標本を用いた免疫染色で陽性局在を確認できた. G-CSF高値を示した本症例の特徴所見としては腫瘍組織内への顆粒球の浸潤や腫瘍細胞の胞体内への穎粒球の取り組み像を認めた.この腫瘍内への顆粒球の出現は, G-CSF産生腫瘍の診断の手がかりとして重要と思われる.
  • その擦過細胞像
    清田 秀昭, 山田 昭二, 高橋 みどり, 工藤 玄恵
    1996 年 35 巻 6 号 p. 582-585
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    肩甲骨下部に発生したelastofibromaの細胞像について報告する.患者は茨城生まれ, 東京在住の61歳女性で, 受診1年程前より右肩甲骨下部に腫瘤を触知していた.穿刺吸引細胞診では診断しうる程の検体採取は不可能であった.摘出腫瘍のメスによる擦過細胞診において成熟した線維芽細胞, 脂肪細胞, 膠原線維の混在する検体が採取できた.そのパパニコロウ染色標本において, ライトグリーン好染性でやや光沢のある球状-数珠状の線維構造物がみられた.脱色後のエラスチカ・ワンギーソン染色で黒-黒褐色に染まり, 弾性線維であることを確認した.H-E染色組織標本では, 細胞成分の少ない錯走する線維性結合織の中に好酸性を示す, 球状-数珠状の線維構造物が無数にみられた.エラスチカ・ワンギーソン染色で特徴的な形状の黒-黒褐色に染まる弾性線維であることを認め, elastofibromaと診断された.本疾患の検体採取は, 通常手術材料からメスなどによる擦過法以外の方法では困難と考えられるが, 細胞組織が採取できれば, その成熟軟部組織内に特徴的な弾性線維が認められるため, 本疾患の診断は細胞診検体においても容易といえる.
  • 郡谷 裕子, 小谷 広子, 三原 勝利, 西田 雅美, 奥村 博, 丸山 博司, 松田 実
    1996 年 35 巻 6 号 p. 586-589
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    左恥骨の病的骨折を契機に, 白血化を伴った多発性骨髄腫と診断され, 化学療法により寛解状態であった患者に発熱と見当識障害が出現し, 臨床的に髄膜炎と診断されたが, 髄液中に異型形質細胞が出現したため, 多発性骨髄腫の髄膜浸潤が判明した1例を経験したので報告する.
    症例は62歳女性で, 血清中にIgA型M蛋白が証明され, 免疫電気泳動にてM蛋白はκ型であった. 化学療法により末梢血液中の形質細胞は消失し, 骨髄中の形質細胞も90%から30%へと著明に減少したが, 経過観察中に上記症状が出現したため髄液細胞診が施行され, 炎症細胞とともに異型形質細胞が認められた. 異型細胞は正常の形質細胞に比べて胞体・核ともに大きく, 核が偏在し, 大型の核小体がみられた. 多核細胞も出現していた. ギムザ染色では, 好塩基性の豊富な胞体の辺縁の一部が赤染し, IgA型の特徴を有していた. 脳のCTでは明らかな腫瘤が認められず, 大脳の腫脹と髄膜炎の所見が示されており, 髄液の所見と併せて多発性骨髄腫の浸潤を伴った髄膜脳炎と診断されたが, 髄液細胞診は髄膜浸潤の診断に有用であった.
  • 細根 勝, 前田 昭太郎, 片山 博徳, 礒部 宏昭, 吉田 知永, 長江 康, 向後 俊明, 浅野 伍朗
    1996 年 35 巻 6 号 p. 590-594
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸水穿刺吸引細胞診材料のみを用いて非ホジキンリンパ腫リンパ芽球型と最終診断し得た1例を経験したので報告する. 症例は14歳の男性, 乾性咳嗽, 顔面浮腫を主訴に来院し, 胸部X線写真にて縦隔腫瘤を指摘され入院した. 明らかな表在リンパ節腫脹や肝・脾腫は認めなかった. 胸水穿刺吸引細胞診ではN/C比の大きい, 核クロマチンの非常に繊細な芽球様細胞の浸潤を認めた. これらの細胞は大部分中型リンパ球程度の大きさであり, 核には切れ込みが認められた. 免疫染色の結果はCD 45ROが陽性で, CD20は陰性であった. 以上の細胞所見, 免疫染色, 胸水のセル・ブロック材料の電顕所見, および年齢, 腫瘤の存在部位などから総合的に本症を非ホジキンリンパ腫リンパ芽球型 (T-cell, convoluted type) と最終診断した. このため, 縦隔腫瘤に対する新たな生検は施行せず, ただちに化学療法を開始, 完全寛解に入り, 以来現在まで寛解を維持している. 非ホジキンリンパ腫リンパ芽球型のうち, 病変が縦隔に限局し, 表在リンパ節の腫大をみない例では一般に診断は困難であるが, 胸水の貯留を認める場合は自験例のように細胞診の材料のみでも最終診断に至ることが可能であり, 有効な診断法と思われた.
  • 清水 健, 青木 淳一, 西野 るり子, 是松 元子, 平野 剛, 江原 輝彦
    1996 年 35 巻 6 号 p. 595-599
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    術前細胞診断において組織型推定に苦慮した子宮頸部すりガラス細胞癌を報告した.
    症例は35歳女性. 血性帯下を主訴として来院し, サイトブラシスメアで陽性と判定され子宮頸癌Ib期として手術された. 術前細胞標本では, 著しい炎症性背景中に一部で軽度の重積を示す平面的な集塊や, 孤立散在性に出現する多数の腫瘍細胞が得られた. 腫瘍細胞は, 穎粒状でライト緑に淡染する大型の細胞質と, 中心性に位置し異型性の目立つ大型類円形の核を有していた. 核クロマチンは細穎粒状から穎粒状で不規則に分布し, 1~2個の大型の核小体もみられた. 純粋な腺癌あるいは扁平上皮癌を示唆する所見に乏しく, すりガラス細胞癌を含めた低分化腺扁平上皮癌が疑われた. 手術材料の病理学的検索にて, 子宮頸部に限局したすりガラス細胞癌が確認された. 細胞診断学的には, 集塊の性状, 細胞質, 核クロマチンの所見などから非角化型扁平上皮癌, 低分化頸部腺癌との鑑別は可能と考えられた.
  • 梅澤 聡, 平井 康夫, 星 利良, 芳賀 厚子, 山内 一弘, 宇津木 久仁子, 都竹 正文, 荷見 勝彦
    1996 年 35 巻 6 号 p. 600-603
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本邦ではまれな子宮頸部明細胞腺癌の1例を経験したので報告する.症例は47歳, 女性.子宮癌検診にて子宮頸部上皮内癌を指摘され当科を紹介された.外来受診時および入院時に行われた子宮頸部細胞診により, 子宮頸部明細胞腺癌を推定診断し得た.細胞所見では, 明細胞型の腫瘍細胞と, 大型裸核腫瘍細胞を認めた. 明細胞型の腫瘍細胞は, レース状の淡い豊富な細胞質が目立っが, その他の所見は内頸部型腺癌の細胞学的所見と同様で, この所見単独では, 明細胞腺癌の推定診断は困難であった.しかし, 散在性に大型で著明に腫大した核小体をもつ大型裸核腫瘍細胞が多数出現していることから本疾患の推定が可能であった.子宮頸部明細胞腺癌は, まれな疾患であるが本疾患の進行例の予後は不良であることから, 細胞診スクリーニングによる早期の診断推定は重要である.
  • 則松 良明, 古谷 満寿美, 香田 浩美, 尾関 祐里, 沖野 毅, 津嘉山 朝達
    1996 年 35 巻 6 号 p. 604-608
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性, 近医で子宮後方の腫瘍を指摘され精査のため受診. 子宮内膜擦過細胞診で核異型の強い, オレンジGに濃染する異常角化細胞や流れるような配列を示す異型細胞集塊と内膜腺上皮が認められた. 頸部・頸管擦過細胞診は異型細胞がきわめて少数であったことより体部原発の扁平上皮癌が疑われた. 病理組織学的には子宮体部原発低分化型扁平上皮癌であり, 両側卵巣は著変なく, 両側傍卵巣, 傍卵管の多嚢胞性病変 (部分的には小結節状の反応性中皮増生がみられた) を伴っていた. 左側嚢胞壁には扁平上皮癌の浸潤が認められた. 子宮体部原発扁平上皮癌はまれであり, 多少の文献的検討結果も加えて報告する.
  • 飛岡 弘敏, 佐藤 正幸, 前島 澄子, 吉田 佳子, 菊川 美一, 山内 智文, 佐野 文男, 森 道夫
    1996 年 35 巻 6 号 p. 609-612
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    術前の子宮内膜細胞診で腫瘍細胞が検出された腺線維腫 (adenofibroma) の1例を経験したので報告した. 症例は45歳女性で, 月経過多と下腹部痛を主訴とし, 腹部超音波検査で, 子宮腔内に, 漿液を入れた嚢胞を含む腫瘍が発見された. 経過中, 膣より淡黄色の漿液の流出を認め, その後腫瘍が縮小, 症状が軽減したことから, 腫瘍内嚢胞の穿破が生じたものと考えられた. その後の子宮内膜細胞診で, 一部に線毛を伴う, 異型性に乏しい高円柱上皮細胞のシート状集塊を認めた. 摘出された腫瘍は組織学的に, 子宮内膜および筋層と明瞭に境され, 一層の高円柱上皮細胞で覆われた線維性結合組織の葉状, 乳頭状の増生からなっていた. 上皮, 問質成分のいずれにも, 細胞異型, 細胞分裂像は認められなかった. われわれの検索した限りでは, 内膜細胞診で腫瘍細胞を認めた子宮adenofibromaの報告はみられない.
  • 佐藤 康美, 五十嵐 信一, 加藤 幸一, 奈良 幸一, 細部 貞廣, 田中 俊誠
    1996 年 35 巻 6 号 p. 613-616
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    正常大卵巣癌症候群 (normal-sized ovary carcinoma syndrome) は腹腔内播種が著明であるが, 卵巣は正常大で, 卵巣表面が細顆粒状か全く正常であるものをいう. 今回, われわれは当症候群と考えられる症例を経験したので, その腹水細胞診を中心に報告する.
    症例は55歳, 女性. 腹部膨満感を主訴に受診. 超音波検査で多量の腹水を認め, 腹水細胞診で腺癌細胞を認めた. 細胞像では細胞質内空胞 (PAS陽性) を持つ細胞が集塊状に出現し, 核縁は切れ込みが目立ち, 赤色の大きな核小体を有し, 腺癌細胞と考えられた. 組織像では乳頭状増殖を示す部分と充実性増殖を示す部分が混在していた. 免疫組織学的検討ではEMAが陽性で, Vimentin, CA-125が陰性であった. ピアルロニダーゼ消化コロイド鉄染色では, 腫瘍細胞のコロイド鉄染色の染色性の低下は認められなかった. 以上より, 本症例は組織学的に漿液性乳頭状腺癌と診断された.
  • 土屋 眞一
    1996 年 35 巻 6 号 p. 617
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 細胞形態と組織型との関係
    渡辺 達男, 土屋 眞一, 町田 智恵, 石井 恵子, 寺井 直樹, 小池 綏男, 傅 麗
    1996 年 35 巻 6 号 p. 618-625
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    浸潤性乳管癌176例 (乳頭腺管癌44例, 充実腺管癌51例, 硬癌81例) と浸潤性小葉癌12例, 総数188例の穿刺吸引細胞診材料を用いて, 小型癌細胞 (細胞長径: 10μm前後) の症例出現頻度, 細胞・核の平均長径および細胞出現パターンなどの形態学的特徴から, おのおのの組織型別での鑑別点を検討した. 小型癌細胞の症例出現頻度は, 45.7%(188例中86例) と約半数で, 組織型別には乳頭腺管癌: 40.9%(18/44例), 充実腺管癌: 23.5%(12/51例), 硬癌: 55.6%(45/81例), 浸潤性小葉癌: 91.7%(11/12例) であった. 小型癌細胞は従来から指摘されているように硬癌や小葉癌に多いが, 乳頭腺管癌の約半数, 充実腺管癌の1/4程度にも出現していた. 細胞長径平均値は11~14μmと各組織型ごとに異なっていたが, 核長径平均値は7μm程度で共通していた.細胞出現パターンは小型癌細胞であっても, それぞれの組織型を模倣した特徴的な所見を示すことから, その大部分は組織型推定が可能であったが, 各症例に6~20%の割合で出現する “少数孤立散在パターン” の組織推定には十分な注意が必要と思われた. このパターンの各組織型での鑑別点としては, 乳頭腺管癌では円柱状形態の出現や円柱状平行細胞 (parallel cell) の出現, 充実腺管癌では広い細胞質や辺縁の鈍角な多角型細胞 (polygon cell) の存在, 硬癌では問質基質や変性した間質細胞, お互いの核が接着する接触変形核 (contact unclei), 細胞質の一端が鋭角を示す三角形細胞の出現, 浸潤性小葉癌では微細に充満するクロマチンや立体回旋構造を示す緊満回旋核 (convoluted nucleus) などがあげられた.
  • 鑑別に有用な所見の出現頻度について
    伊藤 仁, 宮嶋 葉子, 梅村 しのぶ, 堤 寛, 長村 義之
    1996 年 35 巻 6 号 p. 626-631
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺細胞診において, しばしぼ診断困難となる小型細胞を主体とする乳癌の細胞学的特徴を把握するために, 診断上重要な所見である核形不整, 細胞質内小腺腔 (ICL), 孤立性上皮細胞, 構造異型 (飾状構造, 索状配列) および細胞学的二相性の欠如, 免疫細胞化学的二相性の欠如についての検討を行った. 各所見の陽性率は, 核形不整39%, ICL41%, 孤立性上皮細胞78%, 構造異型31%, 細胞学的二相性の欠如90%, 免疫細胞化学的二相性の欠如94%を示した. 各所見の陽性率は組織型により異なっており, 乳頭腺管癌では核形不整, ICLなど細胞個々の異型性に乏しい場合が多く, 硬癌, 充実腺管癌では, これらの細胞異型がみられる頻度が高い. また, 硬癌では腫瘍の浸潤を示唆する特徴的な索状配列が42%で観察され, 充実腺管癌では, すべての症例で著明な散在傾向を示した. 二相性の欠如は組織型に無関係に高い陽1生率を示し, 他の悪性所見に乏しい乳頭腺管癌においても差異がみられず, 小型細胞を主体とする乳癌の診断に重要な所見と考えられた.免疫細胞化学的手法は二相性の判定に有用であるが, 筋線維芽細胞, 非浸潤癌における残存筋上皮細胞の可能性に留意することが肝要であると考えられた.
  • 畠山 重春, 川名 展弘, 末吉 弘子, 杉山 勇治, 大橋 浩文, 塩田 敬, 辻本 志朗, 三浦 妙太
    1996 年 35 巻 6 号 p. 632-639
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診Pap. 染色標本を用いて, 浸潤性乳管癌通常型142例 (乳頭腺管癌23例, 充実腺管癌47例, 硬癌72例) の小型細胞癌例の頻度, 浸潤性小葉癌14例の特徴を分析した. 95%以上の細胞が小型細胞から成る通常型乳管癌例を142例中29例20.4%に認めた. 最も多いのは硬癌で72例中18例25-0%であった. 小型細胞癌例か否かの認識は, 組織標本との問に乖離がみられた.組織で淡明豊富な胞体をもつ細胞が小型核を有する場合, 細胞診では小型細胞癌例として認識される例を乳頭腺管癌, 充実腺管癌でみられた. 細胞診で小型細胞とされるのは核径に左右されることが明らかとなった. 小葉癌細胞の出現パターンをTYPE-IからTYPE-Vに分類した.組織型推定上, TYPE-II: 敷石状の疎な結合を示す立方状・多辺形細胞, TYPE-V: 索状配列が特に有用と考えられたが, それぞれ28.6%, 35.7%と低出現率であった.小型明瞭な核小体を含む, スリガラス状から細顆粒状クロマチンの細胞と, 出現パターンとの組み合わせが大切である.
  • 特に小型硬癌細胞を中心に
    北村 隆司, 光谷 俊幸, 土屋 眞一, 渡辺 糺, 松井 成明, 津田 祥子, 五味 邦英, 太田 秀一
    1996 年 35 巻 6 号 p. 640-646
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    小型細胞で構成される乳腺硬癌48例を用いて, それらを組織形態別に索状型, 腺管型, 充実型の三亜型に分け, おのおのの細胞学的特徴 (穿刺吸引細胞診) の検索を行った.さらに, 腺管型における腺上皮一筋上皮系細胞の二相性の有無についてもsmooth muscle actin (以下, SMAと略記) 染色を施し, 検討を行った. その結果, 小型細胞からなる硬癌の診断のポイントは, 索状型硬癌では採取癌細胞が少数であることから, 核形の不整あるいはICLsの出現の有無に, 充実型硬癌ではmonotonousな腫瘍細胞の散在性出現と細胞極性を認めない小充実集団の存在に, 腺管型硬癌では他の亜型に比べ細胞異型に乏しく良性病変との鑑別が必要となることから, 鋳型状集団の出現や腺管状から鋳型状への移行像の存在, ならびに筋線維芽細胞との鑑別に留意したSMA染色の反応性に着目することが重要と思われた.
  • 小林 照明, 三宅 洋子, 前田 陽子, 柳田 真岐, 三浦 妙太
    1996 年 35 巻 6 号 p. 647-648
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 小林 博久, 鐵原 拓雄, 伊禮 功, 清水 道生, 広川 満良
    1996 年 35 巻 6 号 p. 649-650
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 金城 満, 渡辺 寿美子, 濱野 克彦, 鷺山 和幸
    1996 年 35 巻 6 号 p. 651-652
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 特に捺印細胞像について
    吉川 千明, 園部 宏, 真辺 俊一, 山本 直美, 大朏 祐治
    1996 年 35 巻 6 号 p. 653-654
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 特に捺印細胞像について
    山本 直美, 園部 宏, 真辺 俊一, 吉川 千明, 大朏 祐治
    1996 年 35 巻 6 号 p. 655-656
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 免疫細胞化学的検索およびISH法への応用
    大野 綾子, 喜納 勝成, 岡崎 哲也, 古谷津 純一, 石 和久
    1996 年 35 巻 6 号 p. 657-658
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 圧挫標本併用の有用性について
    望月 衛, 永久保 守, 江尻 晴博, 高橋 勝美, 山崎 一樹
    1996 年 35 巻 6 号 p. 659-660
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 則松 良明, 沖野 毅, 桐野 玲子, 香田 浩美, 尾関 祐里
    1996 年 35 巻 6 号 p. 661-662
    発行日: 1996/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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