日本臨床細胞学会雑誌
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36 巻, 4 号
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  • 植嶋 しのぶ, 植嶋 輝久, 山村 章次, 安陪 隆明, 工藤 浩史, 広川 満良
    1997 年 36 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胃生検捺印塗抹細胞診におけるHelicobacterpyiori (以下H.pylori) 検出の有用性について検討した.
    対象は228ヵ所からの胃生検標本で, 同部位より2個ずつ生検し, 1個をウレアーゼ試験に供し, 他の1個を捺印塗抹した後, 組織切片を作製し, HematoxylinEosin染色 (H-E), ギムザ染色, 抗H. pylori抗体免疫染色を行った.捺印標本はパパニコロウ染色, Diff-Quik染色, ギムザ染色を行い, H. pylori陽性ギムザ標本はMount-Quickで細胞転写後, 免疫染色を行った.また, 細胞診標本の背景に出現する炎症細胞を観察した.
    捺印標本ではH.pyloriの観察が短時間ででき, 菌の形態を確認しやすかった.
    H.pylori検出率は捺印ギムザ63%, Diff-Quik62%, パパニコロウ55%, CLOテスト44%, 組織ギムザ43%, 組織免疫染色56%であった。H.pylori陽性例の背景には好中球, リンパ球などの炎症細胞が多くみられた.また, H.pylori陽性例の86%, H.pylori陰性例の31%に好酸球の出現を認め, その数は前者では弱拡大1視野に1-51個 (平均6個), 後者では1-6個 (平均1.6個) であった.
    また, 背景の好酸球はH.pylori存在の指標の一つになる可能性が示唆された.
  • 池田 聡, 芝田 敏勝, 木村 博, 深沢 徳行, 本間 恵美子, 鈴木 恵子, 船越 尚哉
    1997 年 36 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    C-kit遺伝子産物 (CD117) は分子量約145kDaの受容体型チロシンキナーゼである. われわれは乳腺腫瘍についてこの蛋自を免疫細胞化学的に検索し, その発現の有無が細胞診材料での良悪性の鑑別に応用できるかどうかの検討を行った. 101例の乳腺腫瘍 (良性42例, 悪性59例) の割面捺印標本において, 良性腫瘍では88.1%に発現がみられ, 一方, 悪性腫瘍ではその発現はわずか8.5%であった. また, 過去に診断した穿刺または分泌物の細胞診標本19例の検討でも, 悪性と判断した細胞には全く発現がみられなかった. これらのことより乳腺細胞診材料においてc-kit遺伝子産物はその良悪性鑑別に有用なマーカーとなり得ると考えられた.
  • 竹内 隆子, 藤井 華子, 三村 由香, 平岡 芙美子, 平田 祐子, 亀井 美由紀, 原田 美枝, 竹内 啓晃, 村上 知之
    1997 年 36 巻 4 号 p. 349-357
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    最近, TdT-mediated digoxygenin (biotin)-dUTP nick end labeling (TUNEL) 法でアポトーシス細胞を同定した研究が数多く報告されるようになった. しかし, パラフィン包埋組織標本については感度や特異性の点で問題があり, その染色条件が十分に検討されているとはいえない. また, 細胞診標本への応用の報告は少ない. そこでわれわれはパラフィン包埋標本や細胞診標本についてのTUNEL法の染色条件の基礎的な検討を行った. 材料はアポトーシス細胞比率があらかじめわかっているHL-60細胞を用いた. また, 癌を含む種々の外科手術標本の染色も試みた. 染色試薬はApopTagTM (Oncor社) を用いた.
    TUNEL染色の結果は種々の条件 (固定・プロティナーゼK (PK) 処理など) に大きく影響されることが明らかとなった.細胞診標本での良好な条件は, 3%緩衝ホルマリンで15分間前固定を行い,-20℃の95%エタノールで固定し (1晩-1週間), PK処理は行わずに, TdT濃度をキットのプロトコールの1.5倍とするものであった. また, パラフィン包埋組織についての良好な条件は, 10%ホルマリン水溶液1週間固定の場合, プロトコールどおりのPK処理を行い, TdT濃度をプロトコールの1.5倍にするものであった. また得られた最適条件で, 各種ヒト組織25検体のタッチスメアとパラフィン包埋切片の染色を試みた.いずれも陽性率は5%以下であり, 陽性細胞のほとんどは, 形態学的にもアポトーシスとして矛盾のないものであった.
  • 根本 則道, 中村 尚志, 隆 孝太郎, 飯島 和子, 古瀬 慶子, 長田 宏巳, 絹川 典子, 桜井 勇
    1997 年 36 巻 4 号 p. 358-363
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞診検体におけるTUNEL法によるアポトーシス検出に関する基礎的検討を, ヒトリンパ球樹立細胞株 (C5/TK1), 担癌ならびに非担癌患者腹水細胞, ならびに組織捺印ないし圧挫塗抹細胞標本を用いて行った. 固定液の検討では95%エタノール, 100%メタノールは日常的な固定時間ではほとんど差を認めず, 最長10ヵ月の浸漬固定でもアポトーシスの検出が可能であった. 一方, 長期のアルデヒド系固定では非特異反応が生じやすく長期保存には不適であった. タンパク分解酵素処理はいずれの固定条件でも必要であり, 室温15分の反応では10μg/mlのPK処理で良好な結果が得られたが, 20μg/ml以上の濃度では消化による細胞剥離に加え, さらに高濃度では非特異反応が生じやすく不適であった. 光顕による細胞所見ならびに組織でのアポトーシスの局在・分布との比較からは細胞診検体上でのTUNEL法によるアポトーシス検出の信頼性が確認された.
  • 渡辺 芳明, 佐藤 由美, 泉田 佳緒里, 須貝 由美子, 宇佐見 公一, 西村 広栄, 桜井 友子, 本間 慶一, 根本 啓一
    1997 年 36 巻 4 号 p. 364-368
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診検体を生理的食塩水 (生食水) で洗源した標本では, しばしば細胞染色性の低下がみられる. われわれは, この現象は生食水処理中に細胞内の蛋白成分が溶出することが一因と考え, アルブミンを多く含む生食水やpH7.4リン酸緩衝食塩水 (緩衝液) を洗源液として使用することにより染色性低下を防ぐことが可能であるか否か検討した. 10症例を対象に, 生食水と緩衝液の他, 両者のそれぞれに0.3%, 1.0%, 3.0%濃度に牛アルブミンを添加した系列とサコマノ液について行った. 採取後各1, 3, 6時間後に作成した標本を直接塗抹標本の細胞像を基準として染色所見の隔たり程度を5項目についてスコア化して評価し, 集計した. 結果は生食水系列, 緩衝液系列ともにアルブミン濃度に相関して染色性が高くなる傾向が認められた. 項目別では核濃染性, クロマチン分布, 細胞質染色性は3%アルブミン緩衝液が良く, また核形状を良く保存していたのは, サコマノ液であった. 採取3時間以内に標本作成する場合は3%アルブミン緩衝液が良く, 6時間以上ではサコマノ液が, 良い結果が期待される. 今回の検討から洗源液に3%アルブミン添加緩衝食塩液を用いることにより, 細胞の染色性低下をある程度防止できることが示唆された.
  • 則松 良明, 香田 浩美, 尾関 祐里, 津嘉山 朝達
    1997 年 36 巻 4 号 p. 369-375
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜細胞診において細胞異型主体と細胞集塊形態主体に判定したそれぞれの期間の成績について比較検討した.
    その結果, 細胞診と組織診の一致率は内膜増殖症 (9%→90%), 内膜腺癌 (56%→92%) で顕著な向上がみられた.過小判定は内膜増殖症 (88%→10%), 内膜腺癌 (44%→8%) で顕著な減少がみられた.また細胞異型主体の判定期間での不一致症例を細胞集塊形態主体の判定方法で再判定したところ, 一致率は内膜増殖症 (9%→36%), 内膜腺癌 (56%→91%, 陰性例が皆無となった) で向上した.
    以上のことより内膜細胞診において細胞異型のみならず構造異型を反映した細胞集塊形態を加味した判定基準・方法の採用, さらにダブルスクリーニングの実施が必要であると考えた.しかし, 組織診で著変なしとされた症例の過大判定 (0%→43%) が増加した.今後, それらの特異性の向上は重要な課題と考えられた.
  • 田路 奈津子, 西村 博美, 橋本 泰吉, 松田 実
    1997 年 36 巻 4 号 p. 376-380
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    結核予防会大阪府支部では, 平成5年度の老人保健法に基づく肺癌検診で, 6,464件の喀疾細胞診が実施された.その結果, Eと判定された症例8例中, 胸部X線像に異常陰影なしと判定されていた症例は6例あり, そのうち5例は喀疾細胞診で扁平上皮癌と判定されており, 残りの1例が本症例で, 腺癌と判定された.本症例は58歳の女性で, 検診1ヵ月後に精密検査が行われた. 他院で撮影されたCTでは左肺尖部に小結節陰影が認められたが, 肺結核の既往歴があったためそれによる陰影と診断された.同時に行われた喀疾細胞診がやはり陽性であったため, 左上葉の気管支擦過細胞診および気管支肺胞洗浄細胞診が施行されたがいずれも陰性であった. その後, 喀疾細胞診は, ほぼ毎月施行されたが陰性が続いた. 検診から1年7ヵ月後, 喀疾細胞診が再び陽性と判定されたのでCTが施行され, 左肺尖部の病巣は肺癌が疑われた. 気管支擦過細胞診は陽性であり, 手術の結果, 組織学的に高分化乳頭型腺癌と診断された. 組織標本における腫瘍径は15×12mm, 術後病期はpTlN0M0であった.本症例は, 術後16ヵ月の現在も再発の徴候はなく生存中である. 本症例は腺癌の早期発見でも喀疾細胞診が有用であることを示した症例といえる.
  • 小林 貴代, 山口 みはる, 阿部 淳, 戸羽 美佐子, 北村 真, 蛭田 啓之, 亀田 典章, 山口 宗之
    1997 年 36 巻 4 号 p. 381-386
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹腔内に発生したdesmopiastic small cell tumorを経験し, 細胞学的, 組織学的所見に免疫組織化学的, 電顕的検索結果および文献的考察を加えて報告した.
    症例は17歳, 男性.試験開腹時の腹水細胞診では, 多数の腫瘍細胞が集塊状に認められた. 核は小型でくびれが目立ち, クロマチンは増量し明瞭な核小体を有していた. 細胞質は一般に乏しいが, 一部の細胞の細胞質にはライトグリーン好染性の封入体様構造物が認められた.組織学的には小型類円形細胞が線維性結合組織で隔てられ, 一見, 小細胞癌の転移と見誤るような胞巣形成性の増殖を示していた. 免疫組織化学的には腫瘍細胞はvimentin, NSE, desmin, cytokeratin, EMAなどに陽性であった. 細胞質内にドット状に染まるdesmin陽性物質は電顕における中間径フィラメントの集塊に一致するものであり, 細胞診断学的にもっとも有用な所見と考えられた.
  • 寺内 利恵, 山下 学, 朝倉 善史, 中野 万里子, 佐々木 恵子, 松能 久雄, 野島 孝之
    1997 年 36 巻 4 号 p. 387-391
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    尿道に発生した悪性黒色腫の尿細胞診像を経験したので報告する. 症例は69歳男性で, 排尿困難と血尿を主訴に受診した. 尿道生検にて移行上皮癌Grade 3と診断され, 化学療法を行った効果なく, 陰茎切断術が施行された. 腫瘍は尿道振子部に存在し, 組織学的にはメラニン穎粒を有する腫瘍細胞が充実性に増生していた. 膀胱鏡をはじめ画像検査にても他臓器に異常を認めず, 尿道原発の悪性黒色腫と最終診断した. 患者は術後8ヵ月で全身転移により死亡した. 術前尿細胞診像では, 孤立散在性から疎な乳頭状配列を示す腫瘍細胞がみられ, 核は類円形でクロマチンは穎粒状に増量し, 明瞭な核小体を有していた. 術後の蓄尿細胞診像では, 術前の細胞診像に比べ, 腫瘍細胞は孤立化, 大型化, 核偏在化を示していた.免疫染色では腫瘍細胞はHMB-45, S-100蛋白に陽性を示し, 電顕的にはメラノソームを細胞質内に認めた. 尿道に発生する悪性黒色腫はきわめてまれであるが, 尿中に出現することもあり, 鏡検する上で十分考慮し, 悪性黒色腫の可能性がある場合, 特殊染色や免疫染色を行い早期に診断することが重要であると考える.
  • 荻田 達二, 大原 信哉, 大倉 強
    1997 年 36 巻 4 号 p. 392-397
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    当院で経験したanaplastic large cell lymphoma (ALCL) の3例につき, その細胞像を検討した.症例は18歳および22歳男性, 85歳女性で, リンパ節生検にて, Ber-H2 (CD30) 陽性のALCLと診断された.生検材料の捺印細胞像は, 細胞質が広いものが多く, 核は大型で, 形の不整, 深い切れ込みやしわがあり, 背景には成熟リンパ球や組織球がみられた. また症例により, 数の多少はあるが, ドーナツ状環状核や花冠状配列を認め, ALCLの特徴と考えられた.ただし, 症例問で, 核形や核の大きさ, 多核細胞の混在の程度などの所見には差があり, 1例ではリンパ節材料の細胞像と経過中の腹水材料のそれとの間にも若干の差異がみられた. また, いずれの症例にもHodgkin細胞と類似する腫瘍細胞もあった.ALCLを疑った場合は, 細胞像の詳細な観察とともに, 組織診, 免疫組織染色をあわせた検討が必要と考えられた.
  • 香田 浩美, 則松 良明, 尾関 祐里, 沖野 毅, 津嘉山 朝達, 長谷川 雅明, 濱崎 周次
    1997 年 36 巻 4 号 p. 398-402
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    まれな子宮頸部原発Villoglandular adenocarcinoma (VGA) の1症例を経験したので, その細胞像を中心に報告した. 症例は30歳女性, 1妊1産. 下腹部痛, 腰痛を主訴とし, 当院産婦人科を受診. 子宮頸部に微細な乳頭状病変を認め, コルポスコピーでも同様の所見であった. 子宮頸部・頸管擦過細胞診では, 比較的小型の腺系細胞が平面的にやや不規則な配列で出 現していた. クロマチンは繊細で核小体は目立たなかった. また標本中の1箇所に, 不規則に突出・分岐した多数の腺管からなる大型細胞集塊がみられ, 早期の頸部腺癌を推定した. 生検組織診で, 丈の高い乳頭状あるいは絨毛状構造がみられ, VGAと診断された. conebiopsyの結果, 12切片中の3切片に, Adenocarcinoma in situ (AIS) を認めた. VGAは, 現在までに世界で40数例の病理組織学的報告があるが, 本邦での細胞学的報告は, われわれの知る限りでは未だ1例もない.
  • 稲垣 昇, 藤井 義弘, 西野 るり子, 是松 元子, 清水 健, 長谷川 清志, 北井 啓勝
    1997 年 36 巻 4 号 p. 403-407
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部の明細胞腺癌と漿液性乳頭状腺癌が共存した本邦では非常にまれな1症例を経験したので報告する. 症例は68歳, 女性. 不正出血にて近医受診したところ子宮頸部i擦過細胞診にてClassIVと診断され, 当院へ紹介された. 子宮頸管プラン細胞診および子宮頸管キュレット組織診にて子宮頸部腺癌と診断し, 広汎子宮全摘術を施行したところ浸潤部で明細胞腺癌を認めた. 術前の子宮頸管ブラシ細胞診を再度鏡検したところ, 一部に広くレース状の細胞質を持ち, 淡染性のクロマチンを持った, 核小体がかなり明瞭で大型の細胞集団が認められた. 卵巣や子宮体部を含め明細胞性腺癌の予後が非常に悪いことを考えれば, 子宮頸部擦過細胞診で腺癌細胞が検出されたときには注意深く鏡検し, 明細胞性腺癌の存在が疑われるような細胞が検出されたときには, 積極的に明細胞性腺癌の混在や共存も考える必要があると思われた.
  • 白川 律子, 丸山 理留敬, 荒木 剛, 小池 美貴男, 長岡 三郎, 柳光 寛仁, 高橋 健太郎
    1997 年 36 巻 4 号 p. 408-412
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    ミュラー管混合腫瘍のうち, 悪性の上皮成分に良性の問質成分を伴ったものはcarcinofibromaとして数例の報告をみる. 今回われわれは子宮峡部を中心に発育したcarcinofibromaを経験しその細胞診像を得たので報告する.
    症例は49歳女性で, 異常性器出血の精査目的で受診. 頸管細胞診でclassV, 内膜細胞診陽性, 超音波エコーにて腫瘤を指摘された. 生検にてadenosquamous carcinoma, CT, MRIにて子宮頸癌StageIbと診断された。抗癌剤動注後, 広汎子宮全摘出術が施行された.
    捺印細胞診では, 明らかな上皮系悪性細胞とともに間質と思われる多数の紡錘形細胞の出現が認められた. このような細胞はretrospectiveにみると術前内膜スメアにも存在していた. しかしながら, われわれの経験した症例では, 細胞診標本上で細胞密度, 核異型からは悪性との差異ははっきりしなかった. 実際上はこのような細胞が内膜や頸部のスメアに多数出現した場合鑑別は容易ではないと思われ, 今後の症例の蓄積が必要と考えられる.
  • 浦岡 孝子, 辻本 正彦, 黒川 和男, 大西 あゆみ, 奥田 敏美, 郡司 有理子, 寺尾 壽幸, 滝 一郎
    1997 年 36 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    婦人科細胞診標本において, 生殖器癌以外からの転移性癌由来の悪性細胞の出現をときに経験することがある. 本邦ではその大部分を胃癌が占め, 欧米で第1位とされる乳癌の子宮転移は少ないとされている.
    今回の症例は, 検診にて卵巣嚢腫と多発性の乳腺腫瘤を指摘され, 同時期に婦人科細胞診と乳腺穿刺吸引細胞診 (Aspiration biopsy cytology: 以下ABC) が行われた. 当初のABCでは, 細胞量少数のため陽性の所見は得られなかったが, 内膜細胞診にてIndian file状配列や細胞質内小腺腔を認め, 転移性子宮癌, 特に乳癌が疑われ, 全身および再度乳腺を精査した結果, 乳腺原発浸潤性小葉癌が判明した症例である. 乳癌子宮転移例の内膜細胞診所見について, 若干の文献的考察を加えて報告する
  • その細胞診像と免疫組織学的検討
    佐藤 さきよ, 吉田 弘美, 寺崎 泰子, 今井 由紀子, 村田 寿美, 芝 徹, 秦 順一, 鬼島 宏
    1997 年 36 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    若年層に好発し, 特徴的な組織像を示すとされている, まれな良性卵巣腫瘍である硬化性間質性腫瘍の1例を経験したので, その細胞像と免疫組織学的特徴を報告する. 症例は33歳の女性で不妊症にて他院受診後, 卵巣腫瘍の疑いにて当院に紹介となった. 内診で子宮後方に鵞卵大腫瘤が触知された. 超音波検査, CTにて充実性腫瘍が認められ, 右卵巣摘出術が施行された. 手術時の捺印細胞診では, 異型性に乏しい小型の2種類の細胞が散見された. 一方は豊富な細胞質に円形核を有する細胞で, 他方は紡錘核を持つ比較的裸核状の細胞であった. 背景はきれいで, 壊死細胞などの悪性を示唆する所見もなく, 良性と診断された. 組織学的にこの充実性卵巣腫瘍は, 浮腫状の部分と細胞豊富な部分から構成されていた. 後者では細胞像に一致して, 豊富な細胞質に円形核を持つ細胞と, 紡錘状細胞質に紡錘核を持つ細胞との2種類が認められた. 酵素抗体間接法による免疫染色で, 2種類の細胞とも, 非上皮性マーカーのvimentin, desminに対し陽性所見がみられた. 硬化性間質性腫瘍に関する今回のわれわれの報告では捺印細胞像と組織像とを比較検討できたものの, 今後症例を集積してさらに検討する必要があると思われる.
  • 坂本 穆彦, 越川 卓
    1997 年 36 巻 4 号 p. 423
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 越川 卓, 上山 勇二, 奥田 克子, 伊藤 緑, 所 嘉朗, 谷田部 恭, 中村 栄男, 小川 徹也, 長谷川 泰久, 松浦 秀博
    1997 年 36 巻 4 号 p. 424-430
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    愛知県がんセンターにおける甲状腺穿刺吸引細胞診の診断精度について検討した. 平成4年~7年の四年間で391名の患者に対し524件の甲状腺穿刺細胞診検査が施行され, このうち147名が手術を受け病理診断が確定した. 147症例の病理診断の結果は良性病変; 59例, 悪性腫瘍; 88例であった. 一方, 147症例の細胞診判定は, 陰性;51例, 疑陽性;26例, 陽性; 65例, 検体不良; 5例であり, 細胞診の各判定区分における悪性率は, 陰性で14%(7/51), 疑陽性で54%(14/26), 陽性で97%(63/65), 検体不良で80%(4/5) であった. これらの結果から, 手術によって病理診断が確定した147症例における甲状腺細胞診の診断精度は, 感度;90%, 特異性;81%, 正診率;87%と評価された. これらの診断成績は諸家の報告と比較して遜色のないものであり, 今回の検索によって愛知県がんセンターにおける甲状腺穿刺細胞診検査は高水準の診断精度に裏付けられていることが示された.
  • 広川 満良
    1997 年 36 巻 4 号 p. 431-436
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌には診断的価値のある多くの細胞学的特徴があるが, それらの判定基準や診断的価値に対する評価は個人によりさまざまで必ずしも一致していない. 本稿では甲状腺乳頭癌の診断に役立つ細胞所見の判定基準や診断的価値がまとめられており, 診断の際にはそれらを十分に理解しておくことが大切である.
  • 坂本 穆彦
    1997 年 36 巻 4 号 p. 437-440
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌・濾胞癌の組織分類 (「甲状腺癌取扱い規約」・第4版, 第5版) では組織学的分化度からみた分類としてそれぞれ高分化型well differentiated, 低分化型poorly differentiatedの定義が記載されている.しかし, 細胞診標本による甲状腺癌の組織学的分化度分類は実地に用いられるには至っていない.とりわけ濾胞癌に関しては, 細胞診での判定で濾胞癌そのもののクライテリアが未確立であるので, 分化度分類を考慮する段階には達していない・したがって, 分化度分類は乳頭癌に論考を限ることが今日的には現実的な立場であるといえよう.乳頭癌の分化度分類での細胞診における指標を細胞集塊の出現状況におくことができるであろうことは従来よりのわれわれの考え方である (日臨細胞誌25: 993~996, 1986)。その後の乳頭癌における細胞集塊の分析を通して, 細胞集塊内の細胞配列も分化度分類の指標になし得る可能性を見出しつつある.いずれにしても, 甲状腺濾胞上皮細胞由来の悪性腫瘍の増殖・進展の過程で, 高分化癌から低分化癌へ, さらには未分化癌へというプログレッションが組織構築レベル, 細胞レベル双方の異型の程度の変化と密接な関係のもとに進行する.したがって, 分化度分類の鍵となるべき所見は形態像の中に反映されていると考えられる.それがいかなるものであるかをまず乳頭癌において明確にすることが問われている.
  • 覚道 健一, 谷口 恵美子, 中村 美砂, 布引 治, 甲斐 美咲, 中村 靖司, 横井 豊治
    1997 年 36 巻 4 号 p. 441-444
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺髄様癌の細胞所見を列挙すると次のごとくとなる. 1) 腫瘍細胞は, 疎結合性, 散在性の出現パターンを主とする. 2) 細胞の形は, 多稜型, 円形, 不規則で, 一部に紡錘型のものがある. 3) 核は, 小型類円型のものが多く, クロマチンの増量の明らかなものと, リンパ球, プラズマ細胞様のものがある. 4) 細胞質は広く, ギムザで細胞質穎粒を認めることがある. 5) アミロイド物質は, 約半数の例に認められ, 砂粒体はまれである. 以上の点に着目すれば, 甲状腺髄様癌の質的診断は信頼度が高い.
  • 加藤 良平
    1997 年 36 巻 4 号 p. 445-449
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞診断学における免疫染色の有用性は広く認識されている.今日, 抗体が入手可能な甲状腺特異蛋白はサイログロブリン, トリヨードサイロニン, サイロキシン, カルシトニン, カルシトニン遺伝子関連蛋白, 甲状腺刺激ホルモン受容体などがあげられる.このうち, 前3者は濾胞上皮由来の病変の解析に使用され, 腫瘍の組織由来, 分化程度, 予後などの推定に有用である.カルシトニンは甲状腺C細胞が産生するホルモンで, この細胞に由来する甲状腺髄様癌の診断にはきわめて重要な蛋白である.甲状腺未分化癌はいずれの特異蛋白も免疫染色で陰性を示すことが多いが, サイトケラチンの証明が上皮由来の根拠となることが多い.表皮型のサイトケラチンは乳頭癌 (陽性) と濾胞性腫瘍 (陰性) の鑑別にも有用である.悪性リンパ腫と橋本甲状腺炎の鑑別には, 免疫グロブリン染色による浸潤細胞のクローナリティの検索が補助診断となりえる.以上, 免疫染色は診断の精度の向上や病変の理解に有用な補助的検査である.しかしながら, 細胞診断の迅速性を損なうことのないよう十分考慮すべきである.本稿では, 甲状腺特異蛋白の基本的知識と甲状腺病変の鑑別診断における免疫染色の有用性について述べた.
  • 上杉 忠雄, 木村 雅友, 中井 由香, 蛭間 真悟, 佐藤 隆夫
    1997 年 36 巻 4 号 p. 450-451
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
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  • 中井 由香, 木村 雅友, 上杉 忠雄, 蛭間 真悟, 佐藤 隆夫
    1997 年 36 巻 4 号 p. 452-453
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
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  • 遠藤 久子, 佐々木 毅, 村上 俊一, 小林 薫
    1997 年 36 巻 4 号 p. 454-455
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
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  • 氏原 明子, 園部 宏, 中尾 健, 真辺 俊一, 大朏 祐治
    1997 年 36 巻 4 号 p. 456-457
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
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  • 特に尿細胞診検体を用いて
    辻下 亜紀子, 深沢 政勝, 池沢 剛, 鈴木 悦, 中牟田 稔
    1997 年 36 巻 4 号 p. 458-459
    発行日: 1997/07/22
    公開日: 2011/11/08
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