日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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39 巻, 2 号
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  • 横山 俊朗, 河原 明彦, 吉田 友子, 杉島 節夫, 島松 一秀, 鹿毛 政義, 古賀 稔啓
    2000 年 39 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的: 乳腺穿刺吸引細胞診において良悪性の鑑別を正確に行うために良性および悪性腫瘍のおのおのの細胞集塊形の特徴について検討した.
    対象: 乳頭腺管癌16例 (356 clusters), 線維腺腫15例 (251 clusters) の乳腺穿刺吸引細胞標本を用いた.
    成績:細胞異型の乏しい乳頭腺管癌の集塊の縦横比は1に近く, 形状は多分岐状で, 個々の細胞の突出による凹凸を有する輪郭を形成していた. 細胞重積性による半島状に突出した複雑形状となるものもみられた. 一方, 線維腺腫の細胞集塊形状は直線的に長いものと滑らかな曲線からなり, 円形に近いものがみられた. 集塊形は集塊内の細胞重積性の有無とその分布と関連し, 複雑な輪郭を来たす機序が異なっていた. 線維腺腫では集塊の辺縁部に重積性を伴い, 核間距離の不整が多くみられた. 一方, 乳頭腺管癌では細胞集塊の中心部から辺縁部にかけて重積性がみられたが, 辺縁部においては比較的重積性は少なく個々の細胞の結合性の不均一性から生じた, 複雑な輪郭を形成していた.
    結論: 今回の検討により, 良性ならびに悪性腫瘍細胞集塊形状に特徴があることが明らかになり, 乳頭腺管癌では細胞集塊の大きさに依存しない集塊形状が明らかになった.
    細胞異型の乏しい乳腺腫瘍の細胞診の診断に際しては, 個々の細胞の所見に加え, 細胞集塊形状に注意を払うことにより, より正診率を高めることが期待できる.
  • ラットを用いた実験的研究
    岩井 重寿, 佐藤 房枝, 渋田 秀美, 亀井 敏昭
    2000 年 39 巻 2 号 p. 68-75
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    目的: 体腔液中で様々な形態を示す反応性中皮細胞 (reactive mesothelial cells以下RMCs) の出現背景を明らかにするため, その出現様式と漿膜の病理組織学的変化を比較検討した.
    方法:材料はラットの腹腔内にCarrageenan溶液を一回投与後の1, 3, 7および14日目に得た細胞と壁側腹膜を使用した.
    成績: RMCsは9種類の型に分類できた.1日目はroundtypeを主体とした.3, 7日目にpairtype, irregular typeおよびbinucleated typeが最も高頻度に認められた.14日目では他の時期と比してspindle type, polygonal type, interstitium-liketypeおよびacinar typeが有意に増加した.また, morula-1iketypeが7日目と類似した頻度で出現した.漿膜は中皮細胞の剥離を生じた炎症性変化に始まり, 滲出性変化を経て中皮細胞の再生を伴いながら肉芽腫の形成とその退縮像に移行した.
    結論: 種々の形態を示すRMCsは漿膜の変化を反映して特徴ある様式で出現するものと思われた.
  • 小野瀬 亮, 宮城 悦子, 松下 径広, 加藤 久盛, 中山 裕樹
    2000 年 39 巻 2 号 p. 76-82
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的: 卵巣癌診断における増淵式内膜吸引細胞診 (内膜細胞診) の有用性を検討した.
    方法: 卵巣癌118症例につき内膜細胞診の検討を行った.
    成績: 内膜細胞診陽性例は28例であり陽性率は23.7%であった.臨床進行期が上がるにつれ陽性率が上昇した.組織型別には漿液性, 明細胞腺癌では陽性率が高く (30.0%, 38.5%) 粘液性腺癌では低かった (4.8%).内膜細胞診陽性例のうち13例 (46.4%) が子宮頸部細胞診 (頸部細胞診) 陽性であった.腹腔内細胞診陽性例は79例であり, そのうち内膜細胞診・頸部細胞診の陽性率は35.4%, 16.5%であった.内膜細胞診・頸部細胞診陽性例は, 全例腹腔内細胞診陽性例であった.内膜細胞診陽性率と腹水量との関係は見出せなかった.内膜細胞診陽性例28例中27例においては子宮外由来の癌の推定診断が可能であった.同時にエンドサイト法を施行し得た卵巣癌4例のうち2例に陽性例を認めた.当院で正常大卵巣癌と診断された5例について検討すると内膜細胞診が診断の大きなきっかけとなっていた.
    結論: 内膜細胞診は正常大卵巣癌を含む卵巣癌診断における有用なスクリーニング検査と考えられた.
  • 大江 信哉, 稲葉 行男, 渡部 修一, 井上 恒行, 相原 美由紀, 布山 繁美
    2000 年 39 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌に合併した硝子化索状腺腫 (hyalinizing trabecular adenoma, 以下HTA) の1例を経験した.症例は53歳女性, 前頸部腫瘤を主訴に来院.甲状腺左上極に径1.5cm, 右下極に径2cmの腫瘤を触知した. 左右の腫瘤に対し穿刺吸引細胞診 (fine needle aspiration cytology, 以下FNA) を施行したところ, 左右ともに核溝, 核内封入体を有する腫瘍細胞がみられたため左右いずれも乳頭癌と診断した. 手術後の病理組織像では, 左腫瘍は高分化型乳頭癌であった. 右腫瘍は周囲を薄い被膜に被われた腫瘍で腫瘍細胞は索状に配列し, 胞体は好酸性で間質は硝子様だった.腫瘍細胞の核には多数の核溝, 核内封入体がみられ, PAS染色で間質が陽性を示し, 免疫染色でThyroglobulin陽性, CEA, Calcitonin陰性だったためHTAと診断した. また, MIB-1免疫染色で細胞質および細胞膜に強陽性像を示した.
    同一甲状腺上に発生した乳頭癌とHTAのFNA所見を比較したが, 今回得られた細胞診標本では乳頭癌とHTAを細胞像で鑑別することは困難と思われた. しかし, 病理標本のMIB-1免疫染色が乳頭癌とHTAの鑑別診断に有用であることが判明した.
  • 細胞診および組織学的検討
    木村 実千明, 榊原 美由貴, 高橋 伸二, 竹川 義則, 日野 侃, 根本 則道
    2000 年 39 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    睾丸性女性化症候群の患者に発生した高分化型セルトリ細胞腫を経験したのでその細胞診所見と組織所見を報告する. 組織学的にはセルトリ細胞様の腫瘍細胞が管腔形成ないし索状に配列して増殖していた. 睾丸性女性化症候群に発生した高分化型セルトリ細胞腫は卵巣および正常男性の精巣より発生したものと組織学的には同様の所見で相違は認められなかった.細胞診標本でも組織所見を反映しており組織型の推定は比較的容易であった.しかし分化が低くなるに従い細胞腫異型や構造異型が強くなるため他腫瘍との鑑別が問題になると思われた.
  • 元井 紀子, 荒川 文子, 遠藤 久子, 村上 俊, 加藤 賢朗
    2000 年 39 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:われわれは臨床および細胞学的に悪性腫瘍との鑑別が問題であった結核性子宮内膜炎の1例を経験したので報告する.
    症例:68歳, 女性. 既往歴に腹膜炎.原発性無月経, 陳旧性肺結核症の病歴あり. 主訴は, 不正性器出血. CT, MRIで, 子宮体部の腫瘤が指摘され, 当院を紹介受診. 臨床的に悪性腫瘍の可能性が除外できず子宮摘出術が施行された.頸管塗抹細胞診では, 壊死のない多数の好中球, 単核細胞の認められる炎症性背景の中に, ゆるい結合性を示す紡錘形, 類円形細胞の出現よりなる類上皮細胞肉芽腫が認められた.類上皮細胞の核は卵円型から類円形.さらに少数の異型細胞が認められた.異型細胞は, 多角形から類円形細胞で, N/C比は高く, 核クロマチンは増加しているが均等分布し核縁は平滑であった.多核巨細胞は認められたが, 典型的なLanghans型巨細胞ではなかった.子宮頸部生検, 摘出子宮の検索およびPCRの結果から, 結核性子宮内膜炎および腺筋症と診断された.内膜腺上皮細胞に再生異型があり, 細胞診の異型細胞に相当すると考えられた.術後, 抗結核剤が投与され, 他臓器結核の発症はなく順調に回復.
    結論:結核性内膜炎の細胞像は壊死やLanghans型巨細胞などの特徴的所見を欠くことが多く, 類上皮細胞肉芽腫の認識が重要である. また他の肉芽腫性病変との鑑別には細菌学的検索による結核菌の同定が必須である. 結核性子宮内膜炎では, 異型的な内膜腺上皮細胞が出現することがあるが, 炎症による再生異型と考えられた.
  • 石井 恵子, 岩原 彩子, 唐沢 秀樹, 渡辺 達男, 町田 智恵, 上條 朋美, 山本 孝子, 土屋 眞一
    2000 年 39 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景: われわれは, 子宮頸部の悪性腺腫は胃幽門粘膜の形質を発現する腫瘍であること, 幽門腺型粘液の証明には, モノクローナル抗体であるHIK1083が有用であること, および, パパニコロウ染色では黄色調の粘液として現れることを報告してきた.
    今回は, 異型のない黄色粘液細胞の出現が発見のきっかけとなった子宮頸部悪性腺腫の2例を経験したので報告する.
    症例: それぞれ49歳と70歳の女性で, 2例とも自覚症状はなかったが, 検診の頸部スメア上に, 頸管腺粘液細胞と明らかな色調の違いのある黄色粘液細胞集塊が認められた. 細胞異型は乏しく悪性所見は得られなかったが, いずれもMRIにて多房性粘液性の嚢胞状腫瘤が認められ, 1例目は帯下の恒常性増加が, 2例目は子宮頸部生検で胃上皮化生様腺管が確認されたため, 悪性腺腫の疑いにて子宮が摘出された. 手術標本の組織像は, HIK1083陽性で, 胃上皮化生様腺管を伴った悪性腺腫と診断された. なお, 2例とも細胞診標本上でも, HIK1083陽性粘液および粘液細胞を確認しえた.
    結論: 頸部スメアのスクリーニングを行う時は, 粘液の色にも注意を払うことが肝心である.
  • 川崎 辰彦, 尾上 一馬, 木寺 義郎, 原田 博史, 杉田 保雄, 林 逸郎
    2000 年 39 巻 2 号 p. 104-108
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    51歳, 女性の子宮頸部に発生した小細胞癌の1例を経験したので報告した. 患者は不正性器出血を主訴に近医産婦人科を受診. 子宮頸癌と診断され, 当院産婦人科に紹介され広汎性子宮全摘出術が行われた. 子宮頸部擦過細胞診では, 出血性背景に裸核状の細胞が散在性または一部疎な結合を伴って出現し, 核は円形ないし類円形で, クロマチンは顆粒状で増量し, 一部には核の切れ込みもみられ, 肺に発生する小細胞癌の細胞所見に類似していた. 病理組織では, 腫瘍細胞は胞体に乏しく, 紡錘形ないし類円形, 小型の好塩基性核を有し, 充実性, 一部分葉状の単調な増殖を示し, 一部には明らかな角化を呈する小塊状の細胞集塊や, 小腺管様構造を形成する部分も認められ, 形態的には未分化な像を呈しながらも一部には扁平上皮癌や腺癌への分化を示した. 免疫組織化学的には, 神経内分泌性マーカーが陽性を示し, 小細胞癌と診断された.
  • 小泉 真由美, 天津 邦子, 安達 由貴子, 海老原 善郎
    2000 年 39 巻 2 号 p. 109-110
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We encountered a case of bronchial carcinoid in which the brushing cytology diagnosis was assisted by the presence of a capillary network. An atelectatic X-ray shadow in the left lung field of a 52-year-old man was identified as a nodule obliterating the B8 bronchus. Brushing cytology of the nodule revealed numerous tufts of a capillary network along with small round cells with mild nuclear atypia. Although biopsy was non-contributory, an assumption of carcinoid was made. The diseased lobe with the nodule was resected and typical carcinoid was diagnosed histologically.
    In cytological diagnosis, supporting components of the disease morphology may also provide important clues to the diagnosis.
  • 赤坂 喜清, 桑原 淳, 工藤 圭美, 石川 由起雄, 増田 隆夫
    2000 年 39 巻 2 号 p. 111-112
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    The imprint cytologic features of a myelolipoma of the adrenal glands are reported. The patient, a 42-year-old man, noticed abdominal fullness and pain in the left upper quadrant. The imprint smear of the surgically resected tumor consisted of loosely cohesive groups of mature adipose tissues and isolated hematopoietic tissues containingerythroid, granulocytic and megakaryocytic elements. Histologic sections revealed a mass composed largely of mature adipose tissue with scattered hematopoietic tissue containing erythroid, granulocytic and megakaryocytic elements. Cytological examination of the megakaryocytic elements confirmed the diagnosis of myelolipoma of the adrenal gland, emphasizing the usefulness of cytology.
  • 寺澤 孝一, 花牟禮 富美雄, 下高原 哲朗, 浅田 祐士郎
    2000 年 39 巻 2 号 p. 113-114
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    A 61-year-old female was found to have a nodule in the left lobe of the thyroid. FNA smears showed several clusters of atypical polygonal cells, some of which had bizarre nuclei and intranuclear inclusions. DPP IV staining was negative for these tumor cells. It was difficult to make a diagnosis of this thyroid tumor based only on the cytological findings. Histologically the tumor was encapsulated and composed of follicular and solid proliferation of atypical cells with frequent bizarre nuclei and intranuclear inclusions. These findings were compatible with those of atypical adenoma of the thyroid. Careful examination is recommended when making a cytological diagnosis of this type of tumor.
  • 山田 直子, 福永 真治, 野村 浩一, 本間 隆志, 小林 久仁子
    2000 年 39 巻 2 号 p. 115-116
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Cytologic features of a case of inverted papilloma of the urinary bladder are described. A 33-year-old man presented with gross hematuria. Endoscopic examination revealed a pedunculated, non-papillary lesion measuring 15×10 mm near the left ureteral opening in the urinary bladder. Cytologic examination of the spontaneous urine exhibited small and intermediate-sized clusters of spindled-shaped cells with benign-looking oval nuclei with fine chromatin on a hemorrhagic background. Focal arrangement of tall columnar cells was observed. Histologically, the tumor was typical inverted papilloma. We should be aware of the cytologic features of this tumor in spontaneous urine samples.
  • 藤田 千歳, 米山 剛一, 荒木 勤, 杉崎 祐一, 前田 昭太郎
    2000 年 39 巻 2 号 p. 117-118
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    A case of NSOC syndrome revealed by cervical smear screening in mass surveys was presented. The patient was a 50-year-old woman who had not complained of any problem. In cytology, tumor cells could be seen as a cohesive and overlapping cluster in a clean background and papillary adenocarcinoma originating from ovary or Fallopian tube was considered. We would like to emphasize that the rare NSOC syndrome always should be considered in the examination of cervical smears.
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