背景:われわれは臨床および細胞学的に悪性腫瘍との鑑別が問題であった結核性子宮内膜炎の1例を経験したので報告する.
症例:68歳, 女性. 既往歴に腹膜炎.原発性無月経, 陳旧性肺結核症の病歴あり. 主訴は, 不正性器出血. CT, MRIで, 子宮体部の腫瘤が指摘され, 当院を紹介受診. 臨床的に悪性腫瘍の可能性が除外できず子宮摘出術が施行された.頸管塗抹細胞診では, 壊死のない多数の好中球, 単核細胞の認められる炎症性背景の中に, ゆるい結合性を示す紡錘形, 類円形細胞の出現よりなる類上皮細胞肉芽腫が認められた.類上皮細胞の核は卵円型から類円形.さらに少数の異型細胞が認められた.異型細胞は, 多角形から類円形細胞で, N/C比は高く, 核クロマチンは増加しているが均等分布し核縁は平滑であった.多核巨細胞は認められたが, 典型的なLanghans型巨細胞ではなかった.子宮頸部生検, 摘出子宮の検索およびPCRの結果から, 結核性子宮内膜炎および腺筋症と診断された.内膜腺上皮細胞に再生異型があり, 細胞診の異型細胞に相当すると考えられた.術後, 抗結核剤が投与され, 他臓器結核の発症はなく順調に回復.
結論:結核性内膜炎の細胞像は壊死やLanghans型巨細胞などの特徴的所見を欠くことが多く, 類上皮細胞肉芽腫の認識が重要である. また他の肉芽腫性病変との鑑別には細菌学的検索による結核菌の同定が必須である. 結核性子宮内膜炎では, 異型的な内膜腺上皮細胞が出現することがあるが, 炎症による再生異型と考えられた.
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